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ヲタサーの姫は魔王さま  作者: オシボリ
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14話

 エリスが指定してきたコスプレイベントへとやってきた。

「おぉ、たくさんいるなぁ」

 マオは感嘆の声を上げる。

「そりゃ今回はコスプレ専門のイベントだからなぁ。この間みたいに同人誌即売会のオマケと違ってコスプレがメインなんだから、そりゃレイヤーの気合も違うよ」

 同行してくれた葵先輩が説明してくれる。3次には興味無いと、あまりコスプレに乗り気ではなかった葵先輩だったが、マオにコスプレを勧めた責任を感じたと今日は付いて来てくれた。だが、会場に到着してコスプレに興味を持ったのか、声は少し嬉しそうだ。

「まぁ、あの同人即売会はオタクたちの中では特別なイベントだからな。あそこでのコスプレに特別な意味を感じているレイヤーもいるだろうけどな」

「そうなんですねぇ」

 そう俺は相槌を打つ。

 コスプレ初心者の俺としては、コスプレをするという意味というか、意義のようなものを未だによくわかってはいないのだが、今日までゲイルさんの下、マオと一生懸命、衣装作りをしてきて、それをお披露目するというのは、学校のテストのような体育会系の部活でいう試合のような、また文化系でいえば、コンクールのようなそういった自分の何かを試すという意味合いがあるのかもしれない。

 隣には、ゲイルさんの指導の下、イルナさんにも手伝ってもらって作ったコスプレ衣装を来たマオがいる。

 マオは、せっかくだから魔王のコスプレがいいと、以前見たマジヤイバーのラスボス魔王エルドラのコスプレがしたいと言っていたのだが、ゲイルさんがそれでは可愛げがないと、敵女幹部チアーナの服を主体に魔王エルドラのマントを着せたような衣装となった。

 女幹部のチアーナはかなりグラマラスな大人の女性といったキャラなのだが、マオのあまり発育の進んでいない幼い体型には、あまり合っていない気が個人的にはしていたのだが、、、気が付くとマオの周りにかなり人が集まってきていた。

「じゃあ俺は適当に回ってるから、お前らも楽しんでこいよ」

 そう言うと葵先輩はふらっといなくなる。

「えっ? また自由行動ですか? 仕方ない、エリスを探そう」

 そう言ってマオを連れ移動すると、エリスの姿はすぐに見つかった。

 そう、人だかりの中心でポーズを決めていた。

 エリスの衣装は以前にも増してパワーアップしている。

 以前のをベースに、装飾が増え、しかし露出も増えている感じだ。

 あれから調べてみたが、魔王エリスとは魔界大戦争というスマホゲーのキャラクターの人気キャラなのだそうだ。そして最近、新たに魔王エリス第二形態という新バージョンが追加されたそうだが、今日はその衣装のようだ。

 ちゃんと、人気作品の人気キャラを押さえ、更に最近追加されたばかりのバージョンの衣装を用意してくるあたり、エリスのしたたかさというか、自身の人気のための真面目さが伺える。

 そんなエリスが、俺たちに気が付いたようで、こちらへとやってきた。

「あら、魔王のマオさん。お久しぶりね」

「おう、エリス。そなたも元気そうだな」

 ノリノリでカメラに向かってポーズを取っていたエリスがマオに挨拶すると、カメコたちの間で「おー」と歓声が上がる。どうやらエリスの知り合いが現れ、それが見知らぬコスプレイヤーと盛り上がっているようだ。

 エリスの知り合いというだけで、注目されるのか。エリスって結構人気なんだな。

 少し感心する。

「あっ、あなたも久しぶりね、晴人。元気そうで良かったわ」

「あぁ、エリスも相変わらずのようだな」

 エリスと少し挨拶を交わすと、まわりのカメコたちから、なにやら鋭い視線を感じた気がした。うん、ホントにエリスって人気あるんだな。あまり彼女に関わると身の危険を覚えそうだ。

「ところでマオさん。前回の衣装は何なのかよくわかりませんでしたが、今回はマジヤイバーとはなかなか懐かしいモノを選んでいらしたのね」

「そうだな。葵殿も好きな作品から選べと言っていたからな。マジヤイバーはなかなか面白い作品だからそうしたのだ」

「ですが、女幹部チアーナは、その大人の魅力から当時の子供たちの頬を赤く染めたと言われるくらいスタイルのよいキャラでしたが、あなたのようなちんちくりんにその魅力が引き出せるかしら」

「よくわからんが、確かに体型は違うな。しかしゲイル殿も、そこに服に愛を注げば、着た者の魅力を引き上げる力があると言っていた。未だに愛というのも何なのかよくわからんが、一生懸命作り上げたつもりだ」

「おぉ、素晴らしい」「いいぞー、マオちゃーん」

 マオの言葉に、まわりのカメコたちから共感の声が上がる。どうやら飛び入りのマオも、カメコたちに受け入れられているようだ。

「ではマオさん。約束どおり勝負といきましょうか」

「エリス、どうやって勝負するんだよ」

「決まってるでしょ。ここはコスプレイベント会場なのよ。どれだけの人気を集められるかよ」

「その人気ってのを、どうやって測るんだよ」

「そんなの何となくわかるでしょ」

「なんとなくかよ!」

「うむ、よくわからんが晴人よ。頑張るぞ」

「あぁうん。俺も全然よくわからんけど、とりあえず頑張るか」

 そして、誰もよくわからないまま、コスプレ人気対決がスタートした。


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