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ヲタサーの姫は魔王さま  作者: オシボリ
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11話

 マオを慌てて連れ出した俺は、とりあえずコスプレエリアへとやってきた。

 コスプレイヤーさんたちが、自身の衣装を披露したり、それをカメコたちが写真を撮ったりする場所だ。

「ほぉ~、本当に彼らはマースフィードの住人ではなくて、この世界の者たちが、それっぽい衣装を着ているだけなのか? それにしても、よく出来ているな」

「そうだな」

 あまりコスプレイヤーさんたちの衣装をまじまじと見たことはなかったが、本当によく出来ている。見た目だけでなく仕草まで真似ているので、まるでゲームやアニメの世界から飛び出してきたようにも見える。

「あのぉ~、一枚いいですか?」

 そんなことをマオと話していたら、一人のカメコがやってきた。

「一枚とはなんだ?」

「一枚写真を撮られてくれってことだよ」

「写真とはなんだ?」

「今の姿を紙に写すんだよ」

「写す? ようはその機械を使って、一瞬で紙に私の姿を模写するってことか?」

「まあそんなとこだな。すぐってわけではなくて、一度カメラの中にとりこんで、紙に写す作業をしなければならないけどな」

「ふーん。なら、ペンを操って紙に書かせる方が早い気がするがな。まあ良いぞ」

「えっ? あっ、はい」

 俺たちのやり取りで混乱したのか、少し戸惑った様子だったが、慌てて一枚取る。

「うわっ! 何か光ったぞ? 光魔法か?」

「フラッシュだよ。そうした方が綺麗に写るんだ」

「そうなのか? あまり心地のよいものではないな。まるでエルフの奴らに魔法で攻撃されているようだ」

「すっ、すみません。では、あまりフラッシュ焚かないようにしますね」

 そして、何気にもう一枚撮ると「ありがとうございました」と残して、その場を去っていった。

 しかし、それらを見ていたのか、他のカメコたちも集まってくる。

「すみません。私にも一枚」

「俺にも一枚お願いします」

「すみません。僕にも一枚」

「やばい、なんか人だかりになってきたな」

「そうなのか? 我は心の広い魔王だからな。別に写真とやらの一枚や二枚くらい、どうということはない。エルフどもの光魔法に比べればな」

 エルフとの間に何があったのだろう。それは聞けなかったが、気が付くとかなりの人が集まってきていた。

 皆、マオの服のクオリティが高いと言っているが、なんせ本物だからな。しかも魔力を硬質化して作った鎧とか、俺も聞いたことがない。せいぜい鉄の鎧に硬化の魔法付加くらいなものだ。やはり魔王はやることがエグい。

 騒動になるかとヒヤヒヤしたが、彼らもベテランのカメコたち。こちらが素人と見ると、俺たちを他の人の邪魔にならない場所に移動させると、順番にならび始め、枚数を決めて撮り始めた。マナーと団結力? がすごい。

 最初は意外とノリノリのマオだったが、最後の一人が撮り終わる頃には、さすがに疲れた様子だった。

 マオの突如としてはじまった撮影会をただただ見ているのも、途中で飽きた俺は、水の入ったペットボトルを二本買ってくると、それをマオに渡し、少し休憩することにした。

 しかし、そこへまた厄介そうなのがやってきた。

「どちら様か知らないけれど、随分と人気の様子ね」

「ん? そなたは誰だ?」

 マオと同じような、黒の鎧に黒いマントを羽織った女性が現れる。ただマオと違うところは、お腹や太ももなどやけに露出が多いところだ。

「私は魔王エリスよ。知らないの?」

「知らんな」

 即答するマオ。

 どうやら何かのアニメかゲームのキャラなのだろうが、正直、俺にもわからない。もしかしたら葵先輩ならわかるかもしれないが。

「そんなことも知らないの? エンドワールドってゲームの大人気キャラ、魔王エリスじゃない」

「いや、知らんな」

 またもや即答するマオ。俺も知らないんだが、どうやらその魔王エリスのコスプレをしている彼女は、マオの態度に少しイラついているようだ。というか、話しかけてきた時点でそうか。

「ところであなたは何のキャラクターなの? わたくし、見たことないんですけど」

「これは我が作り出した装衣だ」

「なんだオリジナルなの。ふーん。随分と地味な衣装なのね」

「衣装ではないのだが、、、」

「でもちょっとカワイイからって、少しチヤホヤされたからって調子に乗らないことね。私のようにハイクオリティなレイヤーにこそ、カメコたちの浴びせる光が相応しいのよ」

 あぁ、なんだ。ちょっとマオにカメコが集まったから妬いてるのか。

「ほう。あの光が好きなのか。そなた光属性の者なのか? 魔王を名乗っている割に光属性とか珍しいな」

「光属性? 陽キャってこと。失礼ね。私を陰キャだとバカにしてるの?」

 いや、マオそんなこと一言も言ってないんだが、勝手に勘違いしてる。

「陽キャ? 陰キャ? よくわからんが、それにしても随分と露出が多いのだな。それでは守れないだろう」

「守る? 身を守るよりも魅力を高める方が大切でしょ? レイヤーなんだから。どれだけ露出高めてカメコたちを打ちのめすかが、大切でしょ?」

「なるほど。身を守るより、防御の低さをアピールして、油断して寄ってきた敵を一網打尽にするという作戦ということだな。あのオーガやサイクロプスのような」

 え? オーガやサイクロプスが布きれ一枚なのってそういう意味だったの?

「私がオーガやサイクロプスですって。どれだけ失礼なのあなた!」

 あぁーあ。怒らせちゃった。マオはわかっていないようだが、魔王エリスはかなり怒っている。まぁ女性に、しかも自身の体に自信持ってそうな人にオーガやサイクロプスはないわな。

「わかったわ。そこまで言うのなら、私と勝負しなさい」

「ほう。我に勝負を挑むとは面白い。一瞬で消し炭にしてやろう」

 やめんか。心の中でツッこむ。

「消し炭? 何言ってんの? 違うわよ。次のコスプレイベントまでに新しい衣装を用意してくること。それで、どちらが多くのカメコたちを集められるか勝負するのよ」

 それってどうやって審査するんだ? よくわからんのだが。

「なるほど。いいぞ。受けてやろう。我は魔王。我以外の魔王との勝負というのも面白い」

 そして、世紀の魔王VS魔王という対決が決まってしまった。

 それからその魔王エリスのコスプレをしていた女性と対決の場となるコスプレイベントの打ち合わせなどのためにメアドを交換した。

 そういえば、こちらの世界の女性とメアド交換したの初めてかもしれない。なんか少し嬉しかった。

 そして彼女の名前は、山田尚子というらしい。案外、普通の名前だった。


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