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眼光


異世界帰還者(Another world returnee)、リターナーと呼ばれる彼らは、異世界に何らかの理由で飛ばされ、そして無事に戻ってきた者たちである。

彼らの大半は異世界で培った何らかの特殊能力を得ていた。


リターナー、世界ではすでに数百人存在すると言われている。

日本で確認されてるだけで11名。そのうちの一人が緒方賢史郎、オタケンである。

全世界的にこの事はまだ一般公表されていない。

各国政府の極一部の人間しか、その情報はもたらされていない状況である。

各国のリターナーの情報は軍事機密に匹敵する秘匿性が高い案件なのだ。



某高等学校2年C組放課後

「オタケン!先週の約束!カラオケ行こうぜ!」

「うむ。そうであった。しばし待て、副部長に連絡をしてからだな」

「女子もどうよ!」

「えー、どうしようかな、オタケンってアニソンしか歌わなさそう」

「うむ。その通りだ。それ以外、我に何を歌えと」

「うえ、マジで」

「ふむ。女子同志たちには理解が足りんようだな。アニソンとは何か!魂の叫びである!アニメキャラクターを彷彿させ!さらにはストリー性までも表現し、アニソンを聞くだけでアニメを思い起こすことが出来るのだ!そして……………」

賢史郎は拳を振り上げ力説しだし、15分ものアニソン談義を始めてしまう。


その結果。女子は皆帰り、クラスメイト男子4人でカラオケに行くことに。

「す、すまぬ。つい熱く語りすぎてしまった」

「いいって、オタケン。女子連中にはオタケンが歌うアニソンの良さはわからねーんだよ」

「オタケン、アニソンめちゃうめーしな!普通の歌、歌っても結構いけてるんじゃね?」

「我は世間一般で言う。普通の歌など知らん」

「普通の歌手やバンドが有名なアニメのオープニングとか歌ってるじゃん。あんなのはどうよ」

「くっ、そこよ。オープニングアニメーションの作り手が一見アニメ内容とリンクしないあ奴らの楽曲を見事コラボレーションさせ、オープニングだけで一種のドラマ性を作ってしまうのだ。我は……我は……それに屈し、涙することも」

「……いや、誰もそこまで考えてないから」

「でもよ、オタケン。最近のアニソンや古いアニソンは歌うけど、ここ10年位のアニソンって歌わないよな」

「ふははははっ!それは昨年までの我よ!今の我はここ10年のアニソンをすべて網羅しておる!我に死角は無い!」

「……なにそれ、全部って。普通に引くわー」


そんなこんなで、クラスメイトと楽しいひと時を過ごす賢史郎。

カラオケボックスからの帰り際。


「あれ?あの制服、うちの学校の女子じゃね?」

「隣のクラスの女子だ」

「なんか怖そうな人に絡まれてね?」

繁華街の人気が無い裏路地で女子生徒二人がチャラそうな男四人に絡まれていた。


「ふむ。痴情のもつれだろうか?」

賢史郎は首を傾げ、冷静に皆に聞く。

この状況を見て普通は痴情のもつれとは誰も思わないだろう。

どこか一般常識からズレてる賢史郎。


「バカ、在りえねーだろ。あの子。優等生の山上さんだ。うちのクラスのバカ女子ならわからんがそれはねえよ」

「やば、なんかあいつら連れていかれるんじゃ……」

「……警察呼んだ方が」


「痴情のもつれではないとな。ふむ。どこの世界にも野蛮な連中がいるものだ。我がやめるよう言ってこよう。貴殿らはここで待機し警察に連絡をしておいてくれぬか」

「おいーー、オタケン待てーーー」

「オタケン、行っちゃたよ」

「あいつ、なんでこの状況で平然としてんだ……とりあえず警察だ警察」

賢史郎はそう言って、クラスメイト達が止めるのも聞かず、裏路地に入り、女子生徒二人とチャラ男4人に近づいて行く。



「ふはははははっ!我、遅ればせながら参上!女子同志達よ。今からアニソン縛りでカラオケである」

賢史郎はチャラ男共に絡まれてる女子生徒二人の前に、いつもの調子で現れる。


「え?」

「その…あの…」

急に現れ、訳が分からない事を言う賢史郎に対し、当然の如く、女子生徒は目が点になる。


「なんだ。こいつは?」

「兄ちゃんよ。俺達が今、この子たちと話してんだよ」

「ぷふっ、こいつオタクだぜ。ぜってーそうだって」

「オタクは家に帰ってアニメでも見てな」

チャラ男共は口々に珍入者である見るからにひ弱そうなどこにでもいる学生風の賢史郎に対し、 笑いながら邪険にする。


「ふむ。当方のほうが先に先約があったのだが?」

賢史郎は女子生徒とチャラ男共の間に堂々と入り、チャラ男共と対峙する。


「まじか?吹いてんじゃねーぞオタクよ」

「嬢ちゃん達、それは本当かよ」

チャラ男共は女子生徒に凄みながら聞くが、女子生徒は震えるばかりでまともに答えられない。


「ぷふ。嘘じゃねーか。なに?かっこよく助けにきたのボクチン?」

「なんだこいつ、この状況見てわかんねーのか?」

「アニメの見過ぎで頭いかれてんじゃねーのか?」

「オタクよー、お前、アニメのヒーローみたいにはいかねーんだよ」

チャラ男共は大笑いしながら、賢史郎を馬鹿にする。


一方、この状況を物陰から見ているクラスメイト男子たちは……

「おいーー、オタケン笑われてるぞ」

「どうするんだよ。オタケンもやられちゃうぞ」

「いや、これは時間稼ぎだ。きっと警察が来るまでのだ」

「でもよ。オタケンこのままだと……」

「だったらどうするんだよ。俺たちが出て行っても、どうにもなんねーじゃん。ここで警察待とうぜ」




「ふむ。大の大人が嫌がるか弱き女子に無理強いするのはどうかと思うが?」

賢史郎は臆する様子が全くなく、チャラ男共に平然と言い放つ。


「ふん。いい度胸じゃねーか。オタクのくせによ。ちょっと痛い目に合ってもらうぞ!」

賢史郎より10cm程背が高いスキンヘッドのチャラ男が賢史郎の胸倉をつかみ凄む。


「ふむ。ケンカはよくない。我も痛いのはごめん被る。ここは平和的に解決しようではないか」


「吹いてんじゃねーー!」

スキンヘッドのチャラ男は胸倉を掴んだまま、空いてる腕を振り上げ、賢史郎に殴りかかる。


賢史郎は眼鏡をはずし、鋭い眼光でスキンヘッドのチャラ男の目を見据える。

その目を見たスキンヘッドのチャラ男は、振り上げた腕を止め、掴んだ胸倉を外し、全身に脂汗を掻き、小刻みに震えだす。

賢史郎の目を見て、体が本能的に目の前に居る人物が危険だと判断し、竦み上がったのだ。


「おーーいどうした?殴らないのか?」

「さっさとやっちまえよ。この子達の相手もしねーといけねーしよ」

「先にこの子達の相手してるぞーーー」

殴るのをやめ、小刻みに震えだすスキンヘッドのチャラ男の様子に、残りのチャラ男共は口々に軽口を言う。


「こ……こいつ、やべーーよ。やベー目をしてる」

スキンヘッドのチャラ男は賢史郎の鋭い眼光を見たまま、震えながら後ずさりをする。


「はぁ?何言ってんだ?オタクだぞこいつ。俺が代わりにやってやるよ」

右頬にタトゥーを入れてるチャラ男が小刻みに震えるスキンヘッドのチャラ男を押しのけ、賢史郎の胸倉を掴み殴りかかろうとする。


賢史郎は眼鏡を装着し直し、一言。

「ふむ。お遊びはおしまいだ」


「はぁ?何言ってんだお前?」


その瞬間パトカーのサイレンの音が真直に鳴り響き、警察官が数人裏路地に突入してきた。

警察の事情聴取を受ける賢史郎達と女子生徒、そしてチャラ男共。

案の定、チャラ男共は何もやってないの一点張りだ。

実際にまだ手を上げていないのは事実だ。


その後、警察署に連れていかれ、幾つかの質問後解放される……


女子生徒2人は何度も賢史郎に頭を下げお礼を言っていた。

女子生徒達は親御さんが迎えに来るらしい。



賢史郎が警察署を後にすると、クラスメイトの男子が待っていた。

「オタケン!お前スゲーな!!」

「オタケン勇気ありすぎだろ?」

「もしかして、ヒーローが乗り移っちゃった的な?」

皆は興奮した様子で、賢史郎を持ち上げる。


「ふむ。ふと、某アニメの主人公を思い出してな。実践してみたまで。うまく行って良かったと内心ホッとしてるところである」

賢史郎はいつもの調子でそんなことを言う。


「ぷっ、なんかそれオタケンっぽい!」

「オタケン、チャラ男共を追っ払う!明日学校中で話題になるぞ!」

「オタケン!オタケン!オタケン!」


「うむ。気恥しいのだ」



翌日、やはり学校中で噂になり、しばらくこの噂は流れることになる。オタケンぱねー。と




賢史郎の鋭い眼光を目の当たりにしたスキンヘッドのチャラ男は、しばらく怯えて家に籠る事になる。

賢史郎は異世界では六人の勇者の一人にして世界最強の魔導士、数々の魔物や悪魔、魔族、更には魔王、時には敵対勢力の人間と対峙してきたのだ。

修羅場をくぐった数は100や200では済まない。

そんな賢史郎が殺気を籠った眼光を浴びさせたのだ。スキンヘッドのチャラ男はひとたまりもなかっただろう。

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