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君との英雄譚  作者: 長々
序章 目覚めの代償を
1/5

最後の日常

初投稿です。

誤字脱字がございましたら報告してくれると嬉しいです。

忙しくならない限りは、7日以内に一話ずつ投稿するつもりです。

 いつも通りの日常を過ごしていた。

 それが幸せなことだと気づかず。

 いつも通りの日常を欲した。

 それが幸せなことだと気づいたから。




*****




 小鳥の鳴き声で目が覚めた。

 目を開けると、外から差す陽の光が瞳に映り込む。


「ん〜」


 寝てる間に固まっていた体をほぐすように、背筋と腕を伸ばす。

 ずっと横になっていたいという考えがちらりと脳裏をよぎるが、今日一日の活動を開始するために寝間着から着替える。とても豪華とは言えない質素な服だ。母さんや二人からは、もう少し派手な物を着ろと言われるが、自分にはこのくらいが一番合っていうと思う。


「フレイーン。ご飯ができたわよー」

「はーい!」


 布団を片付けようと動き出したその時、母さんから呼ばれた。どうやら朝食ができたらしい。

 片付けは後でいいやと思い、急いで階段を降りる。下に降りると、既に両親が席についていた。


「「おはようフレイン」」

「おはよう」


 まぶたを擦りながら二人に朝の挨拶を返す。父さんは今日は仕事が休みらしく、いつもよりゆっくり朝食を食べている。


「フレイン、顔は洗ってきたのか?」

「いや、まだだよ。食べてから洗うよ」


 自分も席につき、皿に乗ったパンを食べる。今日の朝食はパンとスープだけだが、朝はこれで充分だ。

 まだ少し残っている眠気と闘いながらパンを食べていると、母さんから話しかけられた。


「ねぇフレイン。今日は暇よね?」


 どうやら母さんの中では僕は暇だということになっているらしい。事実その通りなのだから何も言えないのがとても歯がゆい……。


「そうだけど?」

「ほんと? じゃあ三人でコノア村にこの前頂いたお肉を届けてくれるかしら? シエルちゃん達に分けても余っちゃって困ってたのよ」


 そういうことなら仕方ない。僕の大切な休日を母さんに捧げるとしよう。まぁまだ働いていない僕は、毎日が休日みたいなものなんだけど……。


「ありがとう! じゃあ早速コノア村に行ってきてくれる? 二人はもう家の前で待ってるから」

「え?」


 母さんの言葉に驚いていると、近所にいる人達の事なんて全く頭に無いような、元気な声が外から聞こえてきた。


「フレイーン! 早くしないと置いて行くわよ!」


 アウラの声だ。彼女が置いて行くと言ったなら、きっと置いて行かれてしまうだろう。母さんからの頼みを聞いたばかりで、置いて行かれたら困るのですぐに支度をし、テーブルに置いてあった肉を持っていく。


「行ってきます!」


 両親の返事も聞こえないうちに家を飛び出す。母さんが言った通り、家の前には幼馴染みのシエルとアウラが待っていた。

 シエルは、白いワンピースを纏い、煌びやかな金色の長い髪を後ろでひとつ縛りにし、とても優しそうな碧眼をしている。一方シエルとは対照的に、アウラは袖のないシャツにホットパンツを履き、銀色の髪を短く切りそろえて、紫色の眼は活発なオーラを醸し出している。


「フレインおっそーい!」

「ごめんなさいフレイン。アウラが急かしちゃったみたいで……」

「いや、大丈夫だよシェル」

「そう。それならよかった」


 シエルがほっと胸を撫で下ろす。そんな仕草をすると、彼女の大きな胸が……。


「……フレイン、どこ見てんの?」

「えっ!? いや、別に!?」

「ふーん……。まあいいや。二人とも、早く行くよ。とっとと肉を届けて日が暮れる前に帰ってこよう」

「うん。そうしようか」


 どうやらお咎めは無いようで安心した。

 アウラがため息を吐きながら自分の胸を見ていたことは気にしないでおこう……。



 コノア村まではそこそこ距離があるので馬車で行っている。いつもと同じく、今日も、馬車の貸し出しをしているアウラの家の馬車を借りて行くようで、三人でアウラの家に行って馬車を借りてから出発した。ちなみに御者は僕だ。初めてアウラの家に行った時に何故か馬たちに懐かれてしまい、僕が手綱を握るようになった。


「フレインー。何か面白い話してー」


 コノア村までの距離が残り半分辺りまで来た時に、アウラがそんな事を言ってきた。僕はいつも家にいるし、家にいる時は大体寝ているので、そんな大層な話を持ち合わせているはずが無かった。


「アウラが何か話してよ。僕は運転してて忙しいから」

「えー。何も思いつかばないからフレインに言ったんだけどー」


 とても暇そうな声が返ってきた。僕だって思いつかないんだからしょうがないじゃないか。というか暇なら運転を代わってほしいんだけど。


「そういえば……」

「えっ!? シエルが面白い話してくれるの!?」

「いや、面白い話ってわけでもないんだけど……」


 何か話し始めようとしたシエルにアウラが食いつく。


「お父さんがね、嘘か本当かは分からないけど、ここ最近魔族を見たって話が騎士団の中で広まってるんだー、って言ってた」

「魔族ってあの魔族!? だとしたら大変じゃん!? そんな話初耳だよ!?」

「うん。そうなんだけど、まだ情報がはっきりしていない状態だから国民には言えないんだって。パニックになっちゃうかもしれないからね」

「ふ〜ん」


 魔族とは、今から二千年以上も前に世界を脅かした生き物のことだ。当時、エルフやドワーフなどの他種族と人間が争いを繰り広げていた。そこに魔族が現れ、世界の全てを支配しようとしていた。彼らは、黒く頑丈な体を持ち身体能力が飛び抜けていて破竹の勢いで占領地を増やしていた。そこで、人間やエルフなどの魔族以外のほぼ全ての種族が手を組み、最終的には『剣帝アラタ』と呼ばれた世界最強の男とその仲間達が魔族を纏めていた『魔王ゼアス』を討ち取り、その争いに終止符を打つことに成功した。その功績を讃え、剣帝は『勇者アラタ』と呼ばれることになった。だが、勇者を含めた五人の仲間達の内、三人が戦死し、残った二人はその余生を世界の平和の為に費やしたのだという。

 シエルの話を聞きながら、魔族なんていないだろうと思っていた僕は馬の鳴き声を聞きながら、頬を撫でていく向い風を浴び、口笛を吹いていた。


感想ないかなー

え?あるの?

まさかねー笑

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