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〈田舎者の嫁探し〉あるいは〈超越者の創世〉~種族的に嫁が見つからなかったので産んでもらいます~  作者: ナザイ
第3章〈アンミール学園の新入生イベント〉あるいは〈完全縁結びダンジョンの謎〉

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第七十ニ話 最終決戦あるいは決戦完編後編

明けまして、おめでとうございます。今年も、宜しくお願い致します。



…………大変更新が遅くなり、誠に申し訳ありません。

新年の挨拶を前書きでしようと思っていたら、経過報告するタイミングすら逃してしまいました……。


そして今回も、また二分割する事になりました。

 



 攻撃し続けるマサフミ先輩達に、比較的消耗していない先輩達もソドムの攻城に加わって行く。

 瞬く間に広大な都市は、攻撃に覆い尽くされた。それも一発一発がソドムからの攻撃の軌道を逸らす程度では無く、槍も砲丸も、魔術でさえ蒸発する程の高出力。


 しかし結界は破れない。

 幾つもの龍脈を束ねた星の魔力とでも言えるもので、完全に内部を守護している。

 全く破れていないと言う訳でも無いが、一瞬で再生し一発足りとも内部に到達する事は無い。


 そんな中、初めて成果を上げた人物は意外な人だった。


 それは一連の戦闘に参加していなかったどころか、ソドムから一歩も出ることの無かった人物。


 カイウス先輩とティナ先輩だ。


 大規模な戦闘から潜みながら逃げ続けていたらしく、ソドムから逃げさるチャンスをずっと探っていたらしい。

 モレクが沈黙したので、いよいよソドムから脱出するようだ。


 外の先輩達に対応するためにゴモラ兵が集結している城門と反対の城門近くに潜んでいる。

 その隠密行動は暗殺者であるセイバ先輩のそれよりも高度だ。

 夢魔由来の夢に潜り込む力を利用し、ゴモラ達の無意識に溶け込んでいる。

 仮に見つかっても、すぐに隠れれば夢が覚めたように思い出せない厄介な隠密技術だ。


 洋風の城壁に対し、和風の城の石垣が描かれた布で隠れると言うかなりアレな事をしているが、余程隠れる力が強いらしく、未だゴモラには見つかっていない。


 そして布に隠れたまま、横歩きに城門まで移動。


 カイウス先輩は刀身が線のように細いレイピアを腰から引き抜くと、ティナ先輩に得意げに告げる。


「僕がこの城門の鍵をレイピアで斬るよ」

「まあ、そんな細い剣で、素敵ですわカイウス様!」


 因みに、縁結びを仕掛けた時にカイウス先輩はやつれてしまっていたが、今は曰く拾ったマンドレイクを服用して完全回復している。

 寧ろ元気になったようで、実に得意げである。

 何故か小物感が凄いが、これは日頃の行いからだろう。


 カイウス先輩が素早く繊細にレイピアを振るうと、城門に有った複数の錠は音も無く開いてゆく。


 傍から見ると見事なレイピア捌きに見えるが、鍵はどれも斬られていない。

 普通に解錠されていた。


 よく視ればカイウス先輩のレイピアは、柄の部分だけそれらしく加工していたが、事実針金だった。

 それを使ってピッキングしたらしい。


 無駄に高度な技術だ。

 どんな物であれ、長い物ほど繊細な作業に向かなくなる。

 解錠でもそれは同じ筈だ。


 その器用さが有るのならば、別の道に活かした方が良いと思う。

 それを芸にするだけでもある程度の成功を収められそうだ。


 静かに城門が開く。

 人一人通れる隙間を開くと、素早く外に脱出。


 そして意気揚々と駆け出す。

 その走り方は短距離のものでも無く、マラソンのものでも無い。

 大凡その中間。

 素早くそこそこ長い距離を走る走り方だ。

 走り馴れて、いや逃げ慣れている。


「「あびゃっ!?」」


 そんな二人は少し進むと潰れたカエルのように、無様に宙にベチャっと張り付いた。

 結界だ。

 無色透明の結界を感知できずにぶつかってしまったのだ。


 二人は何も言う事なく、魔力が見えるモノクルを装着する。

 お互いの痴態を無かった事とし、かつ自分の痴態も無かった事にしたようだ。

 無駄に心が通じ合っている。


 カイウス先輩は再びレイピアもどきを構えた。

 ティナ先輩も懐からやたら豪華に見える短杖を取り出し構える。


「まさかこんな所に結界があったとはね。でも安心してくれ。僕のレイピアに斬れないものは無い」

「私も微力ながらお手伝いしますわ」

「そりゃあ心強い」


 お互いに空いた手で肩を寄せながらそう言い合うと、それぞれの得物を結界に突き立てた。


 そしてなんと、スルリと結界に突き入れた。

 あの、モレクを倒した先輩達の攻撃にビクともしない結界にだ。

 特に強大な力を込めた訳でも無く、元々そこに何も無かったかのように突き入れた。


 視れば、見事に術の隙間に差し込んでいた。

 刺すと言うよりも差す。

 包丁で刺すのでは無く、鍵穴に鍵を差す、決まった形にはめ込むように、そこに有って当たり前であるかの様に突き差していた。


 得物に魔力を流す。


 そしてガチャガチャと動かして行く。

 鍵穴の無いピッキングを行っているようだ。


 暫くすると、結果に急激な変化が生じた。

 破られる訳でも、開く訳でも無く、グニャグニャに歪んだのだ。


 そこに続いている外の先輩達の攻撃が当たり、結界はいとも簡単に崩れ去った。

 攻撃は貫通し、そのままソドムの街並みを破壊する。

 ついでに二人の潜ってきた城門も木っ端微塵だ。


 カイウス先輩とティナ先輩が行ったのは術式解体でも無ければ、術式破壊でも無い。

 ただ、術を狂わせたのだ。

 高度だが、高度な技術では無い。


 術式の狭間からピッキングする様に術式に侵入し、そこに適当に魔力を振りまき新たな道を開いたのだ。

 高度なのはその術式の狭間を見つけ、鍵穴よりも複雑なそこを通り抜けた能力。

 素晴らしく高度な技ではあるが、逆に言えば二人はそれを行っただけだ。高度なのはそこ止まり。


 結界の術式を理解していた訳では無い。

 術式の狭間を縫ってくぐり抜けた場所、最終到達点が術式の各所にある始点の一つだったと言う事だ。これは始点より術の深い場所など無いのだから当然である。

 そしてそこが乱れたら、波及して全体が乱れる。


 理論的には難しい事では無い。


 どうやら結界で守られた扉を、何故か正攻法で無い方法で開ける機会が多く、経験則から身に着けた技であるらしい。

 やっていて出来たから覚えた。それだけ。

 魔術を深く理解していたから出来た事では無い。


 凄い技と言えるが、称賛する、評価すると言う点においては少し残念な技である。


 そんな風に、結界を破る事に大いに貢献した二人であったが、彼らの目的、ソドムから逃げると言う目的が達成される事は無かった。


 結界を破壊されたソドムが、一時しのぎの手段として新たな城壁を生成したからだ。


 突然地面から生えてきた城壁に、カイウス先輩とティナ先輩はなす術なく唖然と突っ立っている。

 そして城壁の上にはゴモラ兵常備。


 二人は顔を見合わせ頷き合うと、くるりとソドムの中へ駆け出した。

 演劇でしか、演劇でも見たことが無いような派手派手の貴族っぽい、如何にも動きにくそうな服装なのに物凄く早い。


 カイウス先輩とティナ先輩は、あっと言う間に街に溶けて行った。


 うん、やはり素直に称賛し難い人達だ。


 ちょっとアレな二人だったが、彼らの功績は確かで大きい。

 手順や動機は兎も角、外にいる先輩達が破れなかった結界は揺らぎ、破壊が決定的となった。


 そして結界が破れた事により、戦況は動く。


 ソドムは結界の代わりに最も得意とし最も早く発動出来る都市創造の力を用い城壁を増やしたが、その程度の防御は先輩達の前では無意味。

 結界を穿いた攻撃にいとも簡単に破壊され、先輩達は一人残らずソドムへの侵入を果たした。


 真に、この階層の最終決戦の幕開けだ。



 ソドムに侵入を果たした先輩達だったが、簡単には先に進めなかった。


 行く手を次々と縦横無尽に生えてくる建造物、そしてそこら中にいるゴモラに行く手を阻まれる。

 そのせいで一気に最大攻撃を仕掛ける事も出来ないでいた。

 すぐ手前からニョキニョキと建造物が現れるからだ。


 アバウルス先輩はそれでも得意の広域魔法を使ったが、建造物を容易に突破するも、近くに建造物が現れた事で自分も炎に包まれてしまった。

 ゴモラの黒泥で大駆逐をしていたメービス先輩は、立体的に黒泥を展開するのが難しいようで、更地が復元した今、黒泥を十全に発揮出来ず苦戦している。

 同様に、広範囲戦が得意な先輩達が苦戦していた。


 ソドムのどこにいても対多数戦となる為、最も効果的な戦法が封じられた形だ。

 擬似的に、狭い室内で戦っているのと変わらない。


 例外は自分の攻撃が一部跳ね返って来ても無傷なイタル先輩とマサフミ先輩、そして全身がアダマンタイトの盾ようなトム先輩のアルゴーⅣ。


 特にイタル先輩は、そもそも爆撃魔法のような自分から射出する攻撃を用いているのでは無く、直接リア充認定された対象を爆破するリア充爆発の力で攻撃していた。


「こんなニョキニョキと次から次に現れやがって! どんだけお盛んなんだよテメェ等の種族は! つうか同時にって皆幼馴染じゃねぇか! しかも成人して出てくるとは、さては一緒に育てられた義兄妹の要素まで持ってんな!? どんだけ属性に充実しているんだよ! この野郎ぉ! “リア充、爆発しろぉーーー”!!」


 一体どこをどうやってリア充認定しているかは聞いていても謎だが、その殲滅能力は凄まじいとしか言い表せられない。

 ソドムの広域不特定多数の箇所から凄まじい爆発が咲き続ける。


 その被害はゴモラの密集している場所ほど悲惨で、瓦礫もきれいに吹き飛ばされ、元々何があったのか全く判らない融けた更地になっていた。

 更に爆風とその吹き飛ばされた瓦礫が新たな凶器となり、爆発範囲外も砲弾の嵐に曝されたような惨状を造り上げている。


 そんなイタル先輩を止めようと、多数のゴモラや建物が間近に生成されるも、構わず爆破。

 最も高密度化したゴモラの軍勢により、その爆発の威力も高まっており、凄まじい爆炎の中にイタル先輩自身も呑み込まれるが、防御の一つもせずに行進。決死に放たれるゴモラの攻撃すら防いではいない。


 効果的な対抗手段としてはゴモラ抜きで建物だけ生成して道を塞ぐ事、つまりリア充認定されるゴモラを生まない事だが、ソドムは自動で攻撃が出来ないらしい。

 ソドムの本質はどこまでも街。建物や道具は幾らでも生成出来るが、それを使うのはあくまでもゴモラで無ければならないようだ。

 結界はソドムだけで使えるようだが、核から放たれる儀式魔法だって、ゴモラを犠牲とした儀式として発動している。


 言ってしまえばソドム単体で使える攻撃は、ゴモラしかし無いのだ。


 守りの結界ですら、使えるのは最外城壁外部から街を包むものと、中心の核を守る最大範囲城外縁までの結界しか発動出来ない。


 ソドムは街と言う強大な存在であると共に、街の範囲に制限されている。


 だからと言ってソドムはただ進路を塞ぐと言う手段を取れない。

 いずれ攻め込まれるしか無くなるからだ。


 その為、効果がほぼ無いと判っていてもソドムは全力で、つまりゴモラ付きで建造物を構築し続けていた。

 そしてイタル先輩は、巨大隕石の衝突で地面がめくれ上がったと錯覚するような規模と速度で地面から構築される建造物を即爆砕。


 花火工場どころかミサイル工場に引火しても引き起こされないであろう大爆発が絶えず続き、全てを区別なく瓦礫の山に変える。

 中にゴモラが居て、結界や障壁を発動させていても、盾を構えていても関係ない。

 等しく瓦礫だ。


 その規模はもはや瓦礫の山と言うよりも普通の造山。

 爆破され融けた石材が吹き飛ばされ空から注ぎ、新たな破壊を引き起こしながら蓄積してゆく。

 動力源は爆発だが、その周囲で引き起こされているのは大噴火の破壊。そして大噴火の創造。


 地形を破壊するだけでなく、生み出す事にも成功したその攻撃は、ソドムの街造りと言う能力に打撃を与える事に成功した。

 何故なら破壊されるだけで無く埋もれたからだ。


 ソドムは土地に広がっている街。

 その力はその土地に及ぶが、ダンジョンのように空間全体に及んでいる訳ではない。

 創造物とそれが建つ大地。それがソドムの範囲だ。


 つまり拡がり積み上がる瓦礫の山はソドムの範囲外。


 ソドムは瓦礫を再度建造物に組み立てたる事も、瓦礫を消し去る事も出来ない。

 瓦礫にソドムだった痕跡、魔力が繋がったままで有れば話は別だったが、それは爆発により砕かれ吹き飛ばされいる。

 今はただの瓦礫だ。


 その瓦礫の山が新たな建造物の生成を阻害していた。

 支配している大地そのものでは無い瓦礫の上からの生成は出来ず、瓦礫を材料にする事も消し去る事も短時間では出来ない。

 つまり、瓦礫の山を押し退けて建造物を構築しなければならないからだ。


 元々、瓦礫を押し退けて建物を構築する能力の無いソドムは、構築により大きな力を裂き始めていた。


 イタル先輩の歩みは止められるどころか、障害を爆砕しながら加速してゆく。


 そして容赦無く進むのはマサフミ先輩も同じだ。


 弓矢も大砲も魔術も全てボッチ領域へは侵入出来ず弾き落とされ、自分の攻撃の余波もものともせず、崩れ落ちる瓦礫と爆炎の中をゆうゆうと歩く。


 使う魔術は変わらず白炎槍、ソドムの結界に止められていた攻撃であったが、その結界無き今は、誰も防げていなかった。


 ゴモラと違いはっきりと戦力としての役割を与えられているガーディアンゴモラは、単独で武技も魔術も玄人レベルに熟しているが、マサフミ先輩の前では大した意味を成せていない。


 大砲の一撃を確実に防ぐ盾の守りは綺麗にくり抜かれる様にして蒸発し、ほんの少し遅れてゴモラごと燃え上がり灰に変わる。

 ゴモラが銃弾をものともしない鎧を着込んでいても、結果は同じ。


 ガーディアンゴモラに成った事により技の技量と出力が、ソドムが首都級に変わった事により装備の質が、相乗効果で元より数段強化されている筈なのに一撃だ。

 しかもそれで終わらず幾重にもゴモラと壁を貫いている。

 更には穿けない箇所では槍の収束が解け爆炎に変わり周囲を爆破。


「「「“血塁”!!」」」

「「「“進刈”!!」」」


 自らの命を代償にした集団武技や武技を発動する事で、やっと防げている。

 マサフミ先輩の“白亜の夜空”は、イタル先輩のリア充爆発のように距離障害物関係無しの直通攻撃では無いからか、辛うじて大技を放つ余裕はあったらしい。


 真紅の城壁と結界の鎧を纏ったゴモラ兵が、白炎槍の進路を妨げる。


 白炎槍、“白輪槍”は炎を太陽のように白く輝くまで収束させた熱量と貫通力に優れる魔術だ。

 悪魔退治などは熱量が数段劣っていても、聖なる炎と言う概念を付加した魔術が、結界を破るには魔術を燃やすと言う概念を付加した魔術がより高い効力を発揮するが、特攻性の無い汎用性魔術の中ではトップクラスの火属性魔術と言える。


 特に対単体の火属性魔術の中では、特に他のスキルや特殊な才能の必要無い純粋な火属性魔術の中では、最強の火力を誇る。


 それでも、真紅の城壁と結界の鎧を纏ったゴモラ兵を簡単に破る事は出来ない。

 ヒビは入るも、突破は出来ずにいた。


 が、マサフミ先輩が発動している魔術は“白輪槍”では無い。

 それを連発する“白亜の夜空(クレテイシャスナイト)”だ。


 一発防げても二発目三発目には耐えられず、砕けてゆく。


 しかし、マサフミ先輩の妨害にはなっていた。


 元々、ゴモラの使った代償集団武技は、結界などの守りの技では無い。

 一言で表すと、殿しんがり魔法みたいなものだ。

 敵軍の追撃を抑え、味方を逃がす為の技。


 真紅の城壁、“血塁”は身命を代償に塁、小城を生み出す技だ。

 一面の城壁を生み出すのでは無く、何層もの城壁で造られた迷宮を張り巡らせる。

 防御結界と言うよりも、短時間の防御に秀でた封印に近い。

 同じ代償を必要とする封印ほど持続時間は無く、防御結界よりもその防御力は低い。


 強敵を一時的に足止めする技だ。


 だからこそ、マサフミ先輩に対しては効力を発揮していた。

 真紅の城壁は数発の炎槍を受け、崩壊してゆくも、その穴は直ぐに塞がれてゆく。

 城、一枚壁では無いその構造は、穴が塞がるまでの時間を稼ぎ、奥へ攻撃を進ませない。


 代償によって発動した技、つまり術者は既にこの世に存在せず、継続的な補強は出来ておらず、削られる一方であったが、確かにマサフミ先輩の侵攻を抑えている。


 そして同じように代償を以て発動された武技“進刈”。


 これは結界の鎧を纏う武技では無い。

 自らの身命を結界に変換してゆく武技だ。

 発動すると、最終的に術者はただの結界に変わり果てる。


 殿と同じ読みをする武技であるが、殿どころか勝利への切り札にもなる強力な技だ。


 この武技は、自らを代償とするが、全てが結界に変換させるまで意識を保てる。

 的確に相手の攻撃に飛び込み自らを盾とする事が出来るし、更には武技も魔術も最期まで使える。

 魔力や生命力を消費した分だけ完全変換されるまでの時間が縮むが、その時まで今まで出来た事なら何でも可能だ。


 そしてその結界は代償にした分だけ強固であり、多少穿かれても結界に変換された時から結界となるから、人としての弱点が無くなる。

 心臓を穿こうが、脳を穿とうが倒れる事はない。

 寧ろ、瞬間的な結界強度は散った生命力を吸収し、強固になる。


 短時間ではあるが、ほぼ無敵の戦士と化す。

 そんな技だ。


 “進刈”を発動したゴモラが“血塁”に空いた穴に飛び込み時間を稼ぎ、その僅かな時間で“血塁”は修復と、マサフミ先輩の侵攻を抑えていた。

 更には白炎槍を耐え抜いたゴモラは、マサフミ先輩に反撃を繰り出す。


 が、それでも、マサフミ先輩の妨害にしかなっていない。


 白炎槍が広域に連続的に撃ち込まれているからだ。

 修復しても時間を稼いでも、焼け石に水だ。ほんの少しマサフミ先輩の歩みが遅くなるだけ。

 ゴモラの反撃に関しては、元よりボッチ領域に進めず全く効いていない。


 次々とゴモラが補充されようとも、変わらず侵攻してゆく。


 そしてトム先輩の操縦するアルゴーⅣも無数に構築される建築物に戦略を限定される事なく、進撃を続けていた。


 モレクとの闘いで所々抉れたり融けたりと損傷しているが、外装だけで内部に深刻な影響は無い様だ。


 そんなアルゴーⅣの攻撃方法は突進。


 ただ全速力で走っているだけだが、ソドムとゴモラは殆ど対抗出来ていなかった。


 アルゴーⅣは単純に重い。

 主動力系は軽いミスリル鎖であるが、それ以外の部分は希少金属を含めてふんだんに用いられている。

 外装はほぼ全面、重いアダマンタイトだ。


 走る振動だけで倒壊する建築物も散見する。


 そして追い打ちをかけるように刻まれた術式を展開。


 進行方向には加速ゲートが開かれ、機体表面には硬化魔法、足元からは両面発動型の反発力が発生し、振動増幅魔法で元より大きくなった地面の揺れを更に大きくする。


 突進するまでも無く、進路上の建築物が倒壊してゆく。

 頑丈そうな巨大建築物であっても、寧ろそんな構造物ほど早く倒壊してゆく。

 ソドムの建築物はソドムの力で構築されても、構造上は通常の建築物なんら変わりないからだ。


 戦闘用に頑丈な壁や柱を有していても、それはあくまでも戦闘に備えて。

 大型トラックほどの猪の突進にも耐える壁も、点としては横からの力にも強いが、全体が動くような事態は想定されていない。

 揺れへの対策は皆無だ。

 揺れに耐える建築物があっても、対策したからでは無く、偶然でしかない。


 ゴモラ兵による迎撃も、アダマンタイト鍍金の外装には大した意味も無く、トム先輩の無双状態だ。


 揺れの影響の無い結界が張られても、その場所の倒壊で術者が下敷きになり間接的に破壊。

 結界の維持に成功しても、突撃には耐えられず次々と破られてゆく。


 トム先輩はそれでもまだ満足する事なく、魔法陣式ジェットエンジンを稼働。

 背面各所に展開された魔法陣から青白いジェットが吹き荒れ、吹き飛ぶように加速してゆく。


 トム先輩は止まりそうになかった。



 広範囲技が妨害されている先輩達も、ただ手をこまねいていた訳では無い。


 多くの先輩は、ゴモラ全てを相手にするのを諦め、目標をソドム討伐に絞った。

 全体的に討伐してゆくのでは無く、核だけを狙う作戦だ。


 ゴモラ兵が多くいても、避けられない対象以外は避け、最低限の戦闘で中央を目指す。


 その中で速いのはやはり暗殺者のセイバ先輩。


 行き止まりだらけの街を、住人全てが敵である街を止まる事なく駆け抜ける。

 足場はそこにあるもの全て。

 壁は勿論、ゴモラも砲撃も踏み台にして、先へ先へと駆け抜け跳ね抜けて行く。


 避けられない攻撃は超重ナイフで迎撃。

 重い砲弾も当たり前のようにナイフで跳ね除けて前進。

 避けられない、弾く事も出来ない大規模な魔術に対しては壁や扉、道路を蹴り飛ばして自分一人が通れる道を切り拓く。


 ゴモラ達の攻撃を避ける事で外れた攻撃が街をなぎ倒し、攻撃でなくとも避けなければならない障害物が不規則に飛ぶ中を、利用までして駆け抜ける。

 ただ避けて進んでいるだけなのに、街並みは崩れて行く。

 外れた攻撃以外にも、怪力な脚力は足場を砕き、攻撃を撃ち落とす為に投げられた超重ナイフは落とされる事なくどこまでも突き抜けている。


 そんな先輩にとっての鬼門は開けた広場。

 縦横無尽に走っていたセイバ先輩から横の足場が奪われる。

 勢いよく飛び出てしまったセイバ先輩は、待ち構えていたゴモラ兵から集中砲火を受けた。


 広場を抉り取るような集中砲火だ。

 広場全体が激しい光と炎に包まれる。


 そして激しい倒壊音が広場の外から鳴り響いた。


 広場に先輩は居なかった。

 先輩は倒壊音の先に居た。


 多少火傷を負っているが、集中砲火の影響はそれだけ。

 代わりに全身を強く打っている。


 先輩が取った行動は全力跳躍。


 暗殺者なのに無類の怪力を誇るセイバ先輩は今まで全力で地を蹴っては居なかった。

 全力を温存していた訳ではない。

 単純に制御出来ないからだ。


 その結果が今。


 広場から何とか離脱する事には成功したが、制御出来ない全力の踏み込みにより、建物に突っ込みそれを破壊する勢いで突っ込み続けたのだ。


 死は免れたが無事では無い。


 それでも休んではいられない。

 止まった先付近は衝突の衝撃でゴモラも倒れていたが、ゴモラはソドム中に居る。

 直ぐにセイバ先輩を仕留めようとゴモラ兵が現れた。


 倒れそうなその身に鞭打って、セイバ先輩は再び駆け出す。


 他の先輩も進む事を優先しているが、その歩みは遅い。


 しかし、進行速度以外は凄まじいものだった。


 先輩達は、自分も巻き込まれるような広範囲攻撃を使わなくとも、ゴモラ兵ごと周囲の建物を崩壊させている。

 首都級の都市が相手でなければ、一撃一撃が十分に効果的な広範囲攻撃だ。


 いくらランクアップしたソドムでも、首都全てを少し前に構築していた鋼鉄の砦のようには出来ないらしく、その構築展開は恐ろしい規模の破壊を加えているイタル先輩達にほぼ全て割かれている。

 ゴモラ兵の質も、そちらに集中して他では低い。


 だから街並みは通り抜け出来る道が無い以外、規模が大きいだけで戦闘用のものでは無い。

 兵の質もその規模に準じている。

 結果的に、規模の大きい普通の街だ。


 砦や城壁であれば破れない攻撃も、普通の建物なら簡単に破壊出来ていた。

 拡散する、障害物により自分の方にまで跳ねる攻撃以外、全て有効だった。


 破壊しても破壊しても、すぐに再生するが、抜けられない速さでは無い。


 ゴモラごと街を爆破し、ゴモラごと街を切り裂き、ゴモラごと街を殴り倒し、前へ前へと進んでゆく。

 遅いと言っても、戦車の突撃よりも速く、破壊の規模もそれより大きい。


 先輩達の周りは瓦礫の山と血の海。


 特に快進撃を進めるのはハービット先輩だ。


 無駄を許さない彼の戦闘スタイルは、武器から雑貨まで揃う街と言う戦場で十全に力を発揮する。


 四方八方をゴモラに囲まれているハービット先輩は、攻撃を行わない。

 向けられた矢の軌道を逸らし、剣を避け受け流し、魔術に極小の干渉し、軌道を誘導する事でゴモラを倒していた。


 敵に囲まれた乱戦はハービット先輩にとってボーナスステージ。


 しかもただ軌道を変えるだけでは無い。


 逸した矢はファイヤーボールを完成させたゴモラの足に、発射直前に足を射たれたゴモラのファイヤーボールは酒場の酒樽に、酒場の爆発により酒場のあった宿屋は倒壊、倒壊の勢いは隣の建築物に波及、そこのゴモラはまた誤射と、連続的に破壊をもたらしていた。


 逸らせない大規模魔術も、同じ対応。

 建築物を自分の前に倒す事で盾にして防ぐ。


 攻防一体、どこまでも効率的だ。


 そしてわらしべ連鎖をさせないと、まともに戦えない訳でもない。

 普段は武器どころか服も持っていないハービット先輩だったが、武器を使えない訳ではない。お金が無く用意できていなかっただけだ。


 装備を奪取し完全装備のハービット先輩は普通に強い。


 連鎖で討ち漏らした敵も一太刀で排除。

 急所のみを斬る余裕も存在している。


 武器を使わなくとも、蹴り飛ばされたゴモラは煉瓦の壁をぶち抜き、矢も掴んで投げ返す。


 弱点らしい弱点が存在していない。


 連鎖で崩せない頑丈な建築も、ゴモラの操作を奪って強力な魔術を強制的に発動。

 簡単に道を開けて征く。


 ハービット先輩の通り抜けた跡は、まるで軍に攻められたかのような惨状だ。

 一人で行った戦闘跡にはどうしても見えない。

 戦闘の傷跡があまりにも多種多様で、その数は多過ぎる。


 弓兵に射られたような跡があれば、剣兵に斬られた跡、魔術士に燃やされ跡。

 これだけなら一人の達人にも出来るが、その技量も事細か。

 矢に穿かれた者もいれば刺さっただけの者、剣で刺された者もいれば急所を一撃で斬られた者もいる。

 見事にその戦闘跡はバラバラだ。


 一人二役ならずの【一人軍役】。


 あっ、うっかりハービット先輩に二つ名を付けてしまった。


 それに伴って、ただでさえ良かった動きが更に良くなる。


 おっと、お知らせお知らせ。


「あ〜、あ〜、ゴホン、


 《ステータスを更新します。二つ名【一人軍役】を獲得しました》


 これで良しと」


 うん、視たところちゃんと伝わっている。


「……マスター、やはりそれ、本物では?」

「本物って何が?」

「ステータスの声です」


 そんなに声が似ていただろうか?

 別に誰かのモノマネでやっている訳では無いのだが、本物と間違えるほど完成度が高いのなら、趣味に過ぎなくとも誇らしい。


「ありがとう。でも違うよ、僕はタイミングを合わせて言っただけだからね。現に世の中には常に何処かにステータスが更新されている人がいるけど、僕は今普通に話しているだけでしょう?」

「それもそうですね。録音では、今のように新たな二つ名などの固有名詞に対応しきれないですし」


 コアさんは恐る恐る確かめると言った態度から、安心し納得したような様子に変わる。

 この様子だと、本当に僕の声を真に迫っていると評価してくれていたようだ。


 嬉しいから少しサービスしよう。


 僕は口を閉じる。


 そしてそのままステータスを告げる時と同じ口調と声音で話す。


 《腹話術みたいに口を動かさないでステータスの声を真似る事も出来るよ?》


「…………」


 あれ、期待した反応が返って来ない。

 安心したような笑顔のまま固まっている。


 《腹話術のまま同時に話す事も出来るよ》《腹話術のまま同時に話す事も出来ちゃうよ》《腹話術のまま同時に話す事も出来るんだよ》


 あっ、少し動いた。

 ほんの少し、目が見開いた。


 どうやら驚き過ぎたらしい。


 ならもっとサービス。


 《《《《《幾つ同時でも大丈夫だよ》》》》》


 一気に同時に話す数を増やしてみた。

 それぞれ別の事を言った方が驚いてもらえるだろうが、言う内容のパターンが思いつかないのでそれはやらない。

 尚、ステータスの声の真似をする時は、慣れたもので初見のものでも意識せず告げる事が出来るのだが、これもアピールのしようが無いからしない。


「………………」


 何故かコアさんは無表情、それも達観したような顔つきになった。



 しかしソドムでは今も戦闘の真っ只中。

 コアさんの意識はすぐに先輩達の元へと戻った。


 僕も同じ光景に目を奪われる。


「――変身――!!」


 突如、ヒーローが現れたからだ。

 虫のような、バッタをモチーフにしたらしいヒーロー。


 その正体はカリギュレオン先輩。


 ステータス上の名、ヒーロー名はバッタもん。

 カリギュレオン先輩は妙にバッタもんとやらを庇っていたが、その正体はカリギュレオン先輩だったらしい。


 腰のベルトから二本のビームセイバーを抜くと、一回転。

 ビームが伸び、広範囲のゴモラを建築ごと焼き切る。


 そして拓いた道を走りながらバイク、いやタイヤが同じくビームの刃で、地面と接地していないバイクっぽい乗り物を召喚すると、乗り込み爆走する。


 前方側面に付いた二つのガトリング砲からはビームが連射され、前方は爆発炎上、塞ぐものは存在出来ない。

 後方からは大量のオイルを放出、通り過ぎた道を燃やして征く。


 更にお腹のポケットから球状のものを幾つも取り出し投げ放つ。


 球は分裂するように複製されると、それぞれ瓦礫や炎を取り込み巨人、ゴーレムとなり辺りに破壊を振りまいた。

 瓦礫を増やす度に、瓦礫を取り込み巨大化してゆく。

 その瓦礫の中にはゴモラ、その魔石より魔力を吸収し、その力は増大し続ける。


 このゴーレム相手にも、ゴモラ達は有効な対応を出来ていない。


 ゴーレムの弱点は核となった球であるが、それは瓦礫の中心である最奥。

 そして核以外はただ集め操っているだけの瓦礫。弱点である核以外への攻撃は意味が無い。

 その瓦礫は全て、人にとっての鎧のようなものだ。


 焼け残った瓦礫、つまり石材や融け固まった金属で構成されたその肉体は矢も槍も剣も通さない。ほんの少し削れるだけだ。

 武技や魔術ではもう少し削れるが、ゴーレムの巨体からしたらそれもほんの少し。新たに作られた瓦礫を吸収して、あっという間に回復してしまう。


 ゴモラはゴーレムを相手にする為、武器をメイスやハンマー、砲に変え応戦するも、回復量を上回る事は中々できない。

 重装により機敏に動く事も出来ず、まとめて瓦礫の仲間にされていた。


 手も足もでないほど強力な訳でも無く、何体か既に倒れているが、ゴーレムは数が多く、カリギュレオン先輩が切り拓いた道を拡げるように破壊を振りまいていた。


 このゴーレムを無視する事は出来ず、相当数のゴモラはゴーレムの相手をし、カリギュレオン先輩に向かうゴモラの数は大きく減っている。


 通り過ぎた後方からの攻撃は滅多に無かった。


 カリギュレオン先輩はほぼ前を注視するだけで侵攻を進められた。


 先に進むほど、召喚時間に余裕のあったソドムは強力なゴモラや建築を用意していたが、殆ど関係なしに爆走。


 鋼鉄の建築や、破壊しきれない建築は接地していないと言うヒーローバイクの性質を活かして止まらず垂直走行。

 瓦礫の少ないところではゴーレムコアではなく、後方から出るオイルの発生源と同じ人造オイルスライムコア、そして酸を生成するアシッドスライムコアで足止めかつ攻撃。複製して大量にばら撒く。


 待ち伏せしていたゴモラの儀式魔法には、転移ゲートを展開。空間を歪めゲートを使えないような攻撃にはビームセイバーのビームの出力や属性を変え、打払い打ち開く。

 途中から、ソドムの空間支配能力により、同領域内の転移も封じられたが、特に苦戦することなく魔術を打払う。

 弱い攻撃は迎撃せずとも反射結界に跳ね返しと、その勢いは止まりそうに無い。


 そして遂にはソドムの中央区、城壁前まで辿り着く。


 しかし城壁に沿って強固な結界が張り巡らされており、ここの突破は出来なかった。


 ヒーローバイクのビーム銃も、まるで効いた様子が無い。

 激しい光と爆音に包まれるも、ビームが弾けただけだ。


 カリギュレオン先輩はバイクから跳び降りる。


 バイクはそのまま直進。

 ビーム丸鋸とでも言うべきタイヤを結界に突き立てる。

 そしてタイヤを軸に後輪も合流、逆回転させその場で留まりつつ回転を加速させてゆく。


 が、火花が散るばかりで破れる様子は無い。


 そして速さを失ったカリギュレオン先輩めがけて無数の攻撃が飛ぶ。


 これに対してカリギュレオン先輩は盾を召喚。

 ストーンサークル状に身長の二倍程もある大盾を無数に突き立てた。


 盾は頑丈さで守るのではなく、エネルギーを散らして守る構造のようで、完全に反射出来なくとも周囲に受け流す事で攻撃を返す。

 そしてそのエネルギーが更に後続の攻撃を散らし、先輩の元まで向かわせない。


 魔術なら同属性のもの、物理なら物理のエネルギーしか一度に受け流せない構造のようだが、同時に受けなければ問題無いらしく、幾つかは砕けるも、第一波を乗り切った。


 そしてゴモラ達は大技で一斉攻撃したようで、力強く剣を振り下ろした後と同じように反動で次の攻撃まで僅かな隙が生じた。


 その隙にカリギュレオン先輩はまた球体を投げた。

 球体はカリギュレオン先輩の力で複製され、分裂するように数を増やし、地面に落ちる頃には三十程になる。


 球体は塵を巻き上げると、カリギュレオン先輩の姿、バッタもんの姿に変わる。

 まるでカリギュレオン先輩が分身したようだ。


 そして散開する。


 見ただけだとどれが本物だか見分けがつかない。

 そして動きもカリギュレオン先輩の速さを持っていた。

 本体は球体で他は立体映像で有るから縦横無尽に素早く動く事が可能なようだ。

 更に球体以外は立体映像だが、塵を巻き上げ操作する事で限定的な物理接触も可能としている。足音や駆け抜ける風まで再現してゴモラを撹乱してゆく。


 ただ、直接思考操作しなければならないらしく、カリギュレオン先輩自身の動きが少し鈍ってしまっている。

 それでも分身を匠に操り、陽動で生じた隙にゴモラを各個撃破してゆく。


 そしてその攻撃はバイク乗りキックや宇宙物質っぽい光線、更には亀の拳法と少々詰め込み過ぎだが、正しくヒーローのそれ。

 時には巨大化や幽体化などの特殊能力も使ってゴモラを殲滅してゆく。


 ゴモラの方が圧倒的多数で、私服ゴモラや街並みも丸ごと倒しているので、傍からはヒーローでは無く破壊活動に勤しむヴィランに見えない事も無いが、そこは気にしてはいけない。


 他の先輩達のも虐殺劇に見えなくもない、と言うか見えてしまうが、気にしてはいけないのだ。


 特にメービス先輩に関しては、カリギュレオン先輩に先を越されたのは丁寧に根絶やしにしたからじゃないかと思う程、凄まじい事になっているが、これも気にしてはいけないのだ。

 悲鳴の鳴り止まない燃え盛る街並みも、串刺しになり血の海を提供しているゴモラも、烏のような黒泥に食い殺されるゴモラも気にしてはいけない。


 見かけを気にしなければ、姿に囚われず本質を見て戦う素晴らしき戦士なのである。

 普通の人間に、例え武器を隠し持っている暗殺者だとしても、子供を抱いた母親を攻撃する事など出来ないのだから……。


 まあつまり、先輩達は偏見に囚われない凄い精神力を誇る素晴らしい人だ。


 そう言う事にしておこう。





 《用語解説》

 ・血塁

 代償集団武技。自らの全てを代償に、自らを障壁と化す。

 血涙とかけた駄洒落な名称だが真面目でかなり強力な武技。


 武技に分類されるが特定のスキルは必要としない。

 その代わりに魔力が無くなっても生命力で代用出来る、また限界を超えて無理矢理行動できる技量が必要。

 後は強い意志さえあればそれを技として具現化し発動出来る。

 武技だが代償儀式魔法や概念魔法とも言える。

 一人でも発動出来るが、塁、小城並の規模にするには集団で発動する必要があり、一人の犠牲では他の代償武技として比べ見劣りする。


 一点への防御力が高い武技では無く、規模と持久力、そしてその割には高い防御力を誇るバランスの取れた武技。

 強大な代償儀式魔法は防げないが、戦略級魔術を連発する軍勢なら防げる足止め用。

 広範囲の何重にも張り巡らせられた障壁が再生し続けるのが最大の特徴で、弱らせなくても一時ならば強大な敵も実質的に封印出来る。


 史上、あらゆる世界で強大な敵を足止めし、友軍を救ってきた技。

 倒せない相手に対して使われてきた。

 特に対魔王、対邪神などの戦争で人類を救ったとの記録が多数ある。




 ・進刈

 代償武技。自らの全てを代償に、自らを結界に変換する技。

 殿とかけた駄洒落な名称だが真面目で強力な武技。


 “血塁”と同じく、武技に分類されるが特定のスキルは必要としない。

 その代わり“血塁”と同じく魔力が無くなっても生命力で代用出来る、また限界を超えて無理矢理行動できる技量が必要。

 後は強い意志さえあればそれを技として具現化し発動出来るが、“血塁”よりもその難易度、技量と意志はより高いものが必要となる。

 詠唱を用いて発動される事が多い。

 武技だが代償儀式魔法や概念魔法とも言える。


 結界を生成するのでは無く、自らを結界に変換、つまり結界人間とでも言える存在に変換する。

 最期の瞬間まで意識を保て、残り魔力と生命力によって時間制限があるが、発動前と全く変わらない行動が可能。

 発動した瞬間から全てが結界へと捧げられるので、弱点が無くなる。心臓も脳もその形をしているだけの結界と化す為、そこを破壊しても新たな結界が展開されるだけで弱点とはならない。

 時間切れか変換された全ての結界を破壊されない限り止まらない。


 殿と読みが同じように、殿用に生まれた武技であるが、倒せない相手からの撤退よりも、その相手を倒す為の切り札として用いられる事が多い。

 この武技によって魔王や邪神などの脅威を討伐した英雄の伝説も各所に遺っており、あらゆる世界で有名な武技でもある。




最後までお読み頂き、ありがとうございます。

次話はゴールデンウィーク内には投稿したいと思う今日この頃です。文字数的には既に一話分有ります。


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