第四十五話 世界の危機その2あるいは未来
投稿が遅くなってすみません。
今回は改元に合わせてみました。
無理矢理合わせたので、暖かい目で読んで頂けると幸いです。
絶え間なく僕達に襲い掛かる親族達。
一撃で世界を滅ぼしそうな攻撃を躊躇無く放ってくる。
「定技“天災―大嵐―”!!」
「「定技“エターナルライト”!!」」
「「「──神技“神雷”!!」」」
スキル技、武技の究極技、奥義を越える技の数々だ。
恐らくは真に技を極めたもの、自らをその道の到達点としたとものが生み出し定義した新たな究極にして真理、使いこなした権能による技、定技だ。
大人災も大半はこれで生じている。
人々どころか神々、その次元までも越えて世界すら抵抗出来ない新たな理を生み出し刻み込む技、原理なのだ。
どうあっても人に向けるものでは無い。
必要とした事すら無いだろう。
発動できるものならば、態々使わなくとも大抵の相手に勝てる。
それこそ世界の法則を壊すとか、大災害を消すとか、そんな用途にしか使わないし使えない。
単純に世界を破壊する力の方が数倍は簡単だ。
そんな攻撃を僕達に向けてくるとは……。
いや、ダメージ自体は一切無いから攻撃では無いのだろうけれども……。
何にしろやり過ぎにも程がある。
多分僕に技を見て欲しいとか、久々に遊びたいとか、そんな理由からだとは思うが止めて欲しい。
技の威力以前にも僕達には魔力測定と言うやらねばならない事が待っているのだ。
それに皆渾身の一撃過ぎて消耗している。
僕達にダメージは無いが、本気で放っているのだろう。
理論は解らないが、ダメージが無いのはきっと上手くコントロールして寸止めをしているのだ。
エネルギー量からして見掛けだけではなく、本物の技に違いない。
だから消耗するのも当然。
本物の世界を数多に創造したり、それに手を加えて創世したり、果ては終焉させエネルギーに変える力を行使して、無事で居られる訳がない。
本格的な創造の時点で本格的な神々がオマケとして創造されるレベルの至上技術、至高の神業だ。
世界神が一つ二つなら兎も角、大勢で行使したとは言え、限りなく無限に創造し続ける何て正気の沙汰ではない。
理を変える権威による定技も同様。
絶対なる筈の世界の理を改変し、存在するだけでその力の大きさから、生み出した理を変えさせないと言う因果から世界の滅びすらも許さない、大人災を引き起こす技を使ってただで済む筈がない。
お陰で村の皆が消耗した分を仕方がないな~と回復補充させている。
……村の皆までそっち側なのね。
村の皆が回復しているせいで、親族達は止まるどころか激しく過剰になって行く。
普段、強大な余り抑えている神威を解放する人までいる始末だ。
「――勇者の目指したものは笑顔なり、始まりの希望が求めしは幸せなり、その者ら掴みしは築きしは願いの行き渡る理想郷、その名は喜劇、我は代弁者我は希望我は願い、我は理想を体現せし、喜劇が使者――“喜劇の始まり”!!」
存在するだけで世界を喜劇に塗り替える神威を解き放つ【喜劇のヒロイン】アキホ。
後ろには神威を浴び、喜劇の力を限界まで高め続ける【喜劇の勇者】や【喜劇の登場人物】。
更には彼女達を信仰する、憧れから半ば眷属にまで上り詰めた英雄達。
おまけにアキホが何故か名誉主神と言う訳の解らない名誉職に着く世界勢力の、異世界人や勇者達までも集結、強化されて行く。
「――恥を脱ぎ捨てよ、仮面を脱ぎ捨てよ、恥も仮面も汝と他を結ぶ糸、故に解き放て、汝の真意を、解き放て、汝の想いを、救いは救いにのみあり、脱ぎ捨てよ、汝が甲羅を、脱ぎ捨てよ、汝が服を、真は常にあり、我は――“露出卿”!!」
知りたくもない原理で股間付近から神威を解放する【露出卿】レイシャル。
追随するのは勿論露出教の露出狂達。
神威に共鳴して自らの身も同じように謎の光で光らせる。
悔しいが、全裸がただの神話の光景の一部に見えてくる。
「――正義とは何か、善とは何か、答えは常にあり、迷いは則ち間違いであり悪である、法が許そうとも人が許そうとも悪は赦されはしない、正義は絶対なり、我は絶対正義の体現者、悪の滅びは正義である、故に我は行こう――“最期の審判”!!」
「――正義をなすには悪が必要である、善を成すには悪が必要である、人の秤に乗るのは其れのみ、乗らぬは二面の無、善が満ちれば悪が満ちる、故に我は悪となろう、全ての悪を裁きただ一つの悪として、永久の悪として立とう、必要悪として――“一にして全ての悪”!!」
反対であるのに、非常に似た神威を解き放つのは【絶対正義の勇者】ザラシュトラと【必要悪の魔王】アンリ。
負を一手に背負い悪を全て滅ぼそうとする、違うのは象徴の姿、立ち位置だけ。
そんな神意をこれでもかと感じさせる、誰もを正面から見詰め見詰めさせる堂々たる神威だ。それこそ悪は存在を赦されず圧殺させられてしまうだろう。
そんな孤高を自ら望む彼らに追従する眷属達は、神威に平伏せるどころか真っ直ぐ受け止め、力として共鳴させる。
流石は絶対正義と必要悪を貫く存在。
覚悟と意志の強さが違う。
意志の強さだけで言えば露出教の方が凄まじく思えるけれど……。
「――全ては数式において平等である、データは全て、結論はただ一つ、何も言うことは無い、結論は決まっている、善は善、悪は悪、我が前において明白なり、故に汝らに平等を与えよう、白日の下で――“絶対平均”!!」
全てを調和させ、意義に基づき再分配構成しようとする神威を解き放つのは【絶対平均】タナカ=タロウ。
凄まじく真面目な市役所職員のような雰囲気を持つ男の人だ。
恐らく偽名、存在も異世界人に似ているが異世界人では無い。色々と隠している。
それでもその神威は真っ直ぐ。
全てを理解し、認め、それに報いようとする神意を感じさせる。
眷属達も融通が利かないような雰囲気の人が多いが、平等の第一歩は他者を知ること、それを成そうとする人達だ。
知って評価しようとする事は、合理性に偏っているのかも知れないが、確かなる強い意志を持っている。
だけども僕はこういう時、真面目に僕達の相手なんかせずに仕事をしていた方がいいと思う。
こんな時に強い意志を発揮させなくていい。
「――正義の果てに地獄を見た、人の果てに地獄を見た、清流に繁栄は無く、濁流に繁栄はあった、さりとて濁流に安寧は無し、進めば消耗、退けば衰退、救いはどこか、見よ、楽になれ、身を任せた先は大海なり、全てが流れ揃う悠久に青き果て、人は人ではない、人々である、平和を求めるならば、平穏を求めるならば、休むが良い、望むなかれ自愛せよ、汝は良くやった、汝を知る我が認めよう――“幸福は休日の中に”!!」
春の微睡みのような優しい神威を解き放つのは【平穏なるニート】ゼン。
予想外に真面目で真っ直ぐとした詠唱、そして神意だ。
後方には強すぎるあまりに平穏を望んだ絶対強者な眷属達。
此方も彼等の主神と同様。
意志の強さでも露出教並みの人までいる。
他の世界神な親族達も、各々強大過ぎる力を解放して行く。
神の全力、それも世界神の全力モードだ。
漏れでる波動だけでその神威、神意に従い周囲の環境が書き換えられて行く。
そんな普段、古今東西今まで一度も必要となった事が無いであろう遥かなる高みの力を皆は僕達に向けた。
無言で絶え間なく攻撃を放つ。
全てが奥義を越え、神業や定技の領域にある技までもが僕達に叩きこまれて行く。
例えば喜劇の勇者達による劇中技。
喜劇の勇者達は一人の例外もなく、史上稀に見る外れスキルの所持者であり、単体ではろくなに魔物が狩れないどころか、よく近所のおばちゃんにボロ雑巾にされていたらしい。
史上初の勇者にして、史上稀に見るポンコツ勇者。
尤も、初代勇者である彼等の時代はまだ創世時代の残り香が存在する頃、一般人から雑魚魔物に到るまで今と比べようも無く強かったらしいが。
兎も角、それが喜劇の勇者。
しかしもう一つ伝えられている事実がある。
全員揃えば最強の勇者。
最も団結し、最もパーティーとして完成していた勇者。
それも喜劇の勇者だ。
各々転生前に担っていた喜劇の役割に由来する力を持っていた喜劇の勇者は、全員揃った時に最強の真価を発揮する。
現に、喜劇の勇者担当は武器が段ボール製の剣なのに、台本担当、進行役担当、照明担当、小道具担当、音響担当の導きサポートに従う事によって地を裂き天を裂き。
更には周囲にいる味方担当、村人担当がいることによって強化、対面にいる魔王担当、敵役担当に向かって攻撃を放つことで凄まじい事になっている。
敵役サイドに攻撃を放つと望む演出通りの、有り得ないレベルの威力を生み出す事が出来るようだ。
僕達をその中心に置くことで、その望み通りの威力と言う馬鹿げた脅威を僕達に向けている。
大災害、大人災も真っ青なレベルだ。
参加型の観客と言う役割を与えられた眷属達の猛攻、そして一人全役を熟すアキホが居ることでそれを成している。
「アーク様~、少し付き合ってくださいね~」
幸い、本当に僕達に危害を加えようとはしていないらしいが、恐ろし過ぎる。
万が一にでも直撃、いや直撃は常にしているけれども……兎も角、うっかり制御が利かなくなったらどうするつもりなのか。
もしそんな事になったらか弱い僕達なんて一瞬で終わりだ。
こうなったら、さっさと技自慢チャンバラごっこに付き合って満足させよう。
アンミールお婆ちゃん達の反応を視る限り、どんな妨害を受けても折れそうにないから満足させてあげるに限る。
僕は手元に一振りの木刀を生み出す。
世界の魔力を浄化循環させている循環種の世界樹、それにゼウスオークや幻想種ポセイドンオリーブを初めとした木を掛け合わした、丈夫で魔力の通り、そして魔力の現象への変換効率のいい木から作った一品である。
杖の材料に向いている木から作った木刀だから魔剣っぽい木刀だ。
魔力を軽く流すだけで木の性質が現れ、魔術を使っているみたいに出来る。
皆派手な攻撃を僕達に向けて披露しているから、僕も格好いい技が出せるような武器にして合わせてみたのだ。
植物関係の魔術ぐらいしか使った事がない僕でも、この木刀なら攻撃魔術っぽい演出が出来る。
まあ、演出に過ぎないだろうが、チャンバラごっこには丁度いい。
さて、一振り。
「それっ!」
まずはゼウスオークの性質を顕現。
「「「うぎゃぁぁぁぁぁあーーーーっっっ!!!!」」」
黄緑と白亜の雷霆がチャンバラごっこ希望の親族達を貫く。
丁度近くにいた喜劇な親族達は黒焦げアフロになってキランとお星さまになった。
喜劇な親族達は退場の仕方まで喜劇様式らしい。
これ、意外と楽しいかも。
「それっ! それっ! それ~!」
楽しくなってきたので遠慮無く乗っかる。
幻想種ポセイドンオリーブ、月桂樹アポロンダフネ、ハデスザクロの性質を顕現。
海による大竜巻、太陽な焔光、地獄の氷獄焔を皆に向けて放出する。
「“神装甲”“神鉄体”“神鉄顕現”“堅牢無類”“ワールドガード”っっっ!!!! だぁぁぁぁっっっ―――!!!!」
「“時空障壁”“次元軸転換”!! なっ!? “世界転移”“世界転移”“世界転移”せかいてんっっ――――イヤァァァァっっ!!!!」
「“創星”“自転加速”“重力崩壊”“ワームホール”!! ぎぃぃっやぁぁぁぁぁ!!!!」
親族の皆は各々対処しようとするが、為す術なく僕の演出に巻き込まれてくれた。
英雄の領域に居る皆は本物の危機を体験しているからか、演技がとても真に迫っている。
絵としても音声としても気持ちが伝わってくる程に素晴らしい演技だ。
チャンバラごっこなのに皆の本気度がこれでもかと伝わってくる。
何もかもが本格的だ。
防御回避に使う技自体は全て本物。しかも至上の技。
絶対防御、難攻不落の城砦のような英雄の人が使った〈鎧術〉〈格闘術〉〈盾術〉や〈守護〉スキルの武技も奥義、それも特定の職業でなければ使えない技だ。
時空間魔法はそもそもが稀少かつ高等技能だし、限定的とは言え次元軸の一時すり替えは創世神にも迫る、もしくは追い越す力だ。
本格的なワームホールの生成も当然高等技能。ブラックホールは見飽きる程に発生していたが、この回転を維持したブラックホール、ワームホールはブラックホールの力をそのままに、繋がる先までしっかりと制御されている。ただの力技では無く計算された高等技能だ。
そんな技を見せつけつつ、わざと負ける演技は凄まじく素晴らしい。
金剛のごとく堅牢な奥義を使いつつそれを砕き、世界を渡る転移をしながらも上手く僕の演出に巻き込まれ、絶対的な重力を持つ異空の穴を開けながらも僕の攻撃に巻き込まれる。
どれも相当な技術がなければ無し得ない、ただ技を使うよりも遥かに高等な力だ。
演技力もそこに加わり、僕には本当にヤられているようにしか視えない程に凄い。
ステータスまでそう視えるし、どこまでも手を抜かない本気加減。
「マ、マスター、大丈夫ですかね? やりすぎでは?」
攻撃をさっきまで僕と同じく浴びせられ、演技とは言え被害者なコアさんも自分の状況を忘れ心配している。
それ程までに、本当に凄い演技だ。
チャンバラごっこに使うレベルを遥かに凌駕している。その手の大会があればエントリーしていなくても優勝トロフィーが独りでに転がり込んで来るだろう。
コアさんが見破れないのも無理はない。
僕だって皆の日頃から思考回路を読めただけなのだ。
演技から演技だと見破れた訳では無い。
僕にダメージの無い状況と、視かけ上の技の力から判断出来たに過ぎないのだ。そこ以外に違和感は感じられなかった。
親族な僕でも日頃との違いでは見破れないのだから、コアさんが見破れないのは仕方がない。
だから不安そうなコアさんに安心するよう説明する。
「大丈夫だよ。コアさん、これはチャンバラごっこだから」
「ごっこ遊び? 皆さん奥義定技、果ては権威に権能まで行使していますが? 神を越える英雄の切り札が当たり前のように連発されていますが? マスターも大災害も白旗をあげる大天災らしきものを放っていますよね?」
コアさんは半ば放心しながらそう言う。
「だからこそチャンバラごっこなんだよ。そんな技が当たって平気な訳が無いでしょう? でも僕達は無傷。これは自分達の力をアピールしつつ僕達を楽しませたい想いから始まった、究極なまでに本気のチャンバラごっこなんだよ。僕の見かけ倒しの攻撃で、奥義を使った防御を破れる筈も無いしね。
コアさんも楽しみなよ? 皆全力で付き合ってくれるよ? 寧ろ皆の方がやる気なんだから皆の為にもチャンバラごっこをしよう?」
何だか親族の皆は全力で首を横に振っている気がするが、これは気のせいである。
あんな高速の否定の表現がある筈がない。
きっとコアさんも交ざると確信して首の準備運動をしているのだ。若く見えても実年齢は文字通り神話級だから捻ったりしないように注意が必要なのだろう。
「確かに皆さん、やる気に満ち溢れているのか、首の準備運動を始めましたね」
コアさんも同意見のようだから間違いない。
コアさんの言葉に反応した皆も首の振りを激しくした。
皆はやる気に満ち溢れている。
「解りました。私もチャンバラごっこをさせて頂きましょう。
ではシンプルに、“終末の使者”」
コアさんがそう告げると、自然に破壊の命が吹き込まれ、自然の脅威の化身が巨人の姿をとって現れた。
山も、海も、空も。
固体も、液体も、気体も。
温度や形状までも密集し、絶対なる自然の脅威として皆の前に立ちはだかった。
絶対的な質量を持つ山脈の巨人。
波や海流の渦巻く海の巨人。
大嵐の如く天を覆う空の巨人。
熱をかき集めた太陽の巨人。
熱を奪われた後に残った霜の巨人。
宇宙まで突き抜ける大きさを持つ五柱の巨人だ。
星よりも巨大だ。
太陽の巨人は正しく太陽に匹敵し、空の巨人何かは四柱の巨人を覆える程の大きさを持つ。
幾つもの創世の果てに出来た広大なこの大世界でなければ存在出来ない、死骸が世界となる原初の巨人サイズの巨人達だ。
尚、真に巨人ではなく、コアさんが各々の源を人形にしては操作している。
おそらくダンジョン特有、地形操作能力の延長だ。
魔術を使えば眷属になってしまうからこういう手を使ったのだろう。
チャンバラごっこにぴったりな技だ。
攻撃ではなく地形等を動かしているだけだから、当然魔物を一匹倒す力も無い。
地形を動かすだけで魔物を倒せるのならば戦士何かいらない。もしそうならば大工さんだけで十分なのだから。
下手したら軽い創世を使えるだけでも強い事になる。使える僕が弱いのだからそれは間違いない。
それなのに見掛けは迫力満点。
ここまでチャンバラごっこにぴったりな技も中々無い。
「さて、巨人達よ! 邪魔者を凪ぎ払いなさい!」
切り替えよく早くもノリノリなコアさん。
巨人に命令を下す。
操作しているとは言え、多少の自立機能は付けたらしい。
巨人は各々動き出す。
圧倒的な体積質量密度を持って攻撃を放った。
何の技も無いパンチキック踏みつけだが、それだけで絶対的な世界の力が込められている。
まあ、そう視えるだけだが。
兎も角、巨人達は軽い動きで親族の皆を蹴散らして行く。
「いやぁぁぁぁーーーーっっ!!!!」
「ドゥワッハッーーーーっっ!!!!」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
またまた見事なヤられっぷりだ。
奥義で防ぐも弾き飛ばされ、巨人の討伐を試みるも呑み込まれ、そんな演出が素晴らしい。
特に顔芸、悲壮感や絶望感の表現は額縁ものだ。涙鼻水顔のインパクトは芸術作品である。
さて、僕もコアさんに負けていられない。
「それそれそれっ!」
次々と聖樹の能力を発現させ、見掛けだけは大天災級の攻撃を放ち続ける。
それに合わせて皆彼方に消えていった。
気が付くと世界神級の僕により近い親族達だけになっている。
いつの間にか倒していたらしい。
よく視れば飛ばされた先でヤられた皆はのびていた。
チャンバラごっこなのに演技が細かい。流石は大人の本気遊び。
残りの皆もさっさと倒して魔力測定に向かうとしよう。
「コアさん、あと少しだね」
「はい、全力でいきましょう」
僕達は気合いを入れる。
「「ひぃぃぃぃっっっ!!!!」」
対して皆は見事な悲鳴。
うん、やっぱり成りきり度が凄い。
祈られ願いを向けられる世界神のこんな有り得ない姿は間違いなく稀少だ。
ここまで凝っているとなると僕の方までやる気が出てくる。
ふふん、僕も取って置きを出そうかな?
真種ユグドラシルの性質を――。
「アーク、魔力測定の準備が終わりました」
僕が真種ユグドラシルの力を振るう前にアンミールお婆ちゃんが現れた。
どうやらチャンバラごっこの時間はここまでらしい。
きっと僕達が魔力測定を忘れていると思ってアンミールお婆ちゃんはここに来たのだろう。
さっきは何故か水鉄砲を当てられ、それから流されチャンバラごっこをする事になったが、僕達の望みを知っていたらしい。
それで迎えに来てくれたようだ。
この好意には甘える他ない。
元々の目的だしね。
「皆、ごめんね。もう僕達は魔力測定に行かなくちゃ」
僕は残念な気持ちで言うが、不思議と皆の方は物凄くほっと安心している。
やっぱり歳だからはしゃぎすぎて疲れたのかな?
何にしろ僕達は魔力測定会場へと向かう。
創世の連発のせいで違う世界まで来てしまったから移動は転移だ。
光速を越えての移動は時間の操作や衝撃波の緩和とかで多少面倒だが、これなら瞬時にそう望むだけで出来る。
そして転移後、目の前にあったのは大儀式会場。
………………魔力測定会場だったよね? ここ?
龍玉を使った魔力測定器等は同じだが、前よりも明らかに規模が拡大していた。
限りなく容量無限の龍玉には何故か容量拡張や補強の至高術式。更に龍玉のある舞台を中心に同様の効果のある術式が超大規模で刻まれている。
どう見ても大規模に刻んで大いなる魔法を成立させる大儀式の神殿の様式だ。
魔力測定の施設らしさがこれっぽっちも感じられない。
しかも周囲にはこれまた先程までよりも大規模な結界、封印術式の刻まれた施設群。
余りにも大袈裟過ぎる設備だ。
多分、世界神級の大邪神でも容易く封印できる。
一体何のために?
そしてそこを囲むはほぼ勢揃いしているのではないかと思われる親族達。
各々永い永い詠唱を唱えている。
これも封印や結界の術式だ。それも権威権能真理概念の域まで到達する術式。
英雄の中の英雄が大勢で協力し、やっと紡いでいる。
コアさんに仕草で問いかけるも、首を傾げて返された。
コアさんにも検討がつかないらしい。
結局、疑問は解けぬまま、案内される。
よく視れば周囲には親族しかいない。
生徒達はかなりの遠方だ。
余りにも遠く、全員、何かに牽かれるように此方の方向に目を向けているが、見えてはいないらしい。
まあ、こんな設備が整っていたらつい顔を向けちゃうよね。
兎も角、ここは僕達の貸し切りだ。
色々と不思議な事はあるが、大した問題ではないし、緊張する環境でも無いからやり易い。
魔力測定器の前に歩み出る。
ここに来てから色々なことがあったが、やっとこれが最初の一歩だ。
スピーチと言う変則的なイベントこそあったが、僕が都会の舞台、英雄達と同じステージに踏み入れる場所は今、ここからだ。
本格的に世界と繋がる、自分を知る切っ掛け。
思えば村を出てから色々なことがあった。
大きく僕の道は変わった。
一日も変わった。
明かりの差す頃、まだ暁が世界を治める頃、田舎から旅立ち、コアさんと言う初めての友達と出会い、朝日と共に広い世界を知った。
初めて魔物と遭遇し、その脅威を知り、立ち向かったりもした。
正午には、大いなる太陽が昇る地、都会で色々な事を自分で学び成長した。
短いその時間で、僕達は都会を知り、未来を知り、未来に進んだ。
夕日が照らす頃には、都会の和を感じ、都会の激動を驚きと共に知った。
魔物に立ち向かう人々、信念、どんなに破れても進み続け彼らは道を築く。
僕はそれに憧れた。
夜は田舎とは大きく違った。
明かりは昼のように灯り、彼らは友と平和に安らぎつつも田舎では有り得ぬ進歩が、文化がそこには成立していた。
たった一日に例えても僕の日々はこれだけ変わった。
気持ちを一転させ希望を見据える朝、本格的に動き始める昼、最も活発になる激動の夕方、そして最も安らぎ自由で人の光が灯る夜。
田舎の悠久の時しかない、日すらも知らない僕に取っては、一日の意味だけでもこんなに変化したのだ。
そして今、日が変わる。
僕の一日は、確実に変化を迎える。
明日にまた一歩踏み出すのだ。
その先にあるのは早朝。
希望と望みに溢れる朝だ。
令き月日が、新たなる和がやってくる。
まだその先に、希望の先に何があるのかは、僕にはまだ分からない。
しかし、明日が来ることだけは確かだ。
僕はそんな事を思いつつ、龍玉に手を伸ばした。
《認識整理》
・アーク&コセルシアの攻撃
本人達にとってはごっこ遊び用だが、簡単に世界を複数滅ぼせる攻撃。
尚、アークの親族達はアーク達が存在する限り不滅なので、当たっても問題はない。吹き飛ばされる程度で済む。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
それでは皆様、良い御年を。
令和も宜しくお願い致します。




