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第五話 喧嘩あるいは大量生産

 


 数多に発動した魔術が全て人(?)に変化したことにコアさんが気が付いたところで、やっと魔術の嵐が治まった。

『……やり過ぎてしまいました。申し訳ありません』

 コアさんはあまりに増えた人に対して愕然としながら僕に謝罪してきた。凄い顔をしている。まあ、僕もさっき気付いたばかりで同じような顔をしていると思うけれど。


「どうしてくれるの? コアさん……」

 僕は笑顔で静かにそう言う。拳は勿論グーだ。

『な、何ですか? その物騒な拳は?』

 コアさんは冷や汗を流しながら造り笑顔で聞いてくる。

 この拳が何かは決まっているじゃないか。

「ふふ、教えてあげるよ。“アーク・パンチ”」

『ぶへえぇー!』

 僕のパンチはコアさんの顔面に直撃し、コアさんは潰れたカエルのような叫びをあげながら吹き飛んで行った。

 これくらいで許してあげよう。


『……うぅーいたたぁ、マスター、どうやってわたくしに拳を当てたのですか?』

 コアさんが顔を擦りながら僕の真横に突然現れた。復活が早い。

 そういえばコアさんは半透明で透けてたね。

「そんなこと知らないよ。それよりもあれ、どうしよう?」

 僕は数え切れない程いる魔術の人達を指差しながらコアさんに聞いた。


 彼らは攻撃用の魔術から現れたせいか、皆完全武装している。とても話しずらい。僕みたいな農家とは全く異なる人種だ。

「コアさん、責任取って何とかしてよ」

 僕はコアさんに丸投げすることにした。コアさんは元ダンジョンだしこういう人達に馴れているだろう。

『…わたくしはマスターのパンチで気絶中です』

 コアさんは目をつむりながらとんでもない言い訳をしてきた。

「……コアさん?」

『気絶中です』

「……」

 僕は非難するような言い方で言ったが、コアさんは目をつむったままだ。


 しょうがないので魔術から現れた人達を観察する。このままコアさんが気絶した振りをするなら、一番厳つい人のところまで飛ばしてあげよう。

 同じ魔術から現れた者達は皆似通った姿をしている。全く同じ訳でもなく異なる訳でもない。しっかり個性がある。驚きだ。一体どうなっているのだろうか? 同じ魔術でも全く同じじゃないということかな?

 魔術ごとの姿は発動した魔術さえ知っていれば、ぎりぎり見分けられる程度に個性的だ。象徴のようなものを持っている。ただし知らなければ絶対に判らないだろう。

 顔立ちは一様に整っていて人間味を感じさせない。一切の挙動もなければ良くできた彫刻と納得してしまうだろう。


「…さてと、どこにコアさんを殴り飛ばそうかな?」

 僕はグーを造りながら笑顔で呟く。今回は植手パンチもサービスで付けておく。

『ひっ! マ、マスター! わたくしはただ今気絶から復活しました!』

 コアさんは慌てて目を開け、僕に手を挙げながら主張してきた。

「ふふふ、そんなこと初めから知っているよ。覚悟はいいかな? “アーク・パンチ”!」

 僕は笑顔で気合を入れ、拳をコアさんに当てようとする。


『ひっ! “ウォール”、“シールド”、“バリア”、“結界”、あと、えーと“盾”、“鎧”、“守護”、“城砦”!!』

 コアさんは諦め悪く、防御魔法を大量に発動した。一度魔術の名を唱えるだけで、その系統の魔術を各種属性それぞれで発動し、それを纏っている。コアさんの魔術の腕前は相当なもののようだ。こんな時に発揮しなくてもいいのに。

 僕はそんな防御お構い無しに植手パンチをお見舞いする。植物で出来た手だからといって、火属性や雷属性の防御魔法程度でどうにかなる程やわじゃない。

 植手でさっさと防御を破りアーク・パンチをお見舞いしてあげよう。


 地面や虚空から生やした植手で全方向から攻撃するが、コアさんは途絶えることなく次々と防御魔法を発動し、なかなか破ることができない。まったくしぶといものだ。

「“植林”、“品種改良【植手】”」

 僕は“植林”で木々を増やし、“品種改良【植手】”でそれを植手に変える。

 僕のパンチは戦士から見たら相当遅いが、これだけ数があれば防ぎ切れないだろう。


『ちょっ、な、何でそんなに遅いパンチなのに、わたくしの防御魔法を破れるのですか!?』

「そんなこと知らないよ。言い残したことはあるかな?」

 僕は再び笑顔でコアさんに応える。そろそろ終わりそうだ。

『まだまだ有りますよ! “防壁”、“街壁”、“城壁”、“人壁”、“冥壁”、“神壁”、“完壁”』

 まだコアさんは諦めない。今度は各種属性の壁を大量に放ってきた。纏って防御を固める作戦から、僕を動きにくくしつつ自分を守る作戦に変更したようだ。

 それにしても、どの属性にも防御魔法って有るんだね。知らなかった。



『「……」』

 しばらく攻防を続けた僕達は周りの状況に気付き、言葉を失い固まっていた。

 コアさんが防御魔法を使いまくったせいで、また大量に人(?)が増えてしまったのだ。しかも防御魔法から現れたせいかとても体が大きく厳つい。

 皆一様に僕が着たら動けない程の重装備で、背は低くとも185センチメール以上はある。


「……コアさん、さっきはごめん」

『……わたくしの方こそ申し訳ありませんでした』

 僕達は謝罪し合った。厳つい人に視線を向けたまま、虚ろな声で……。

「……とりあえず野菜にでも変えておく?」

『…………もうそれでもいいかもしれません……』

「“汝は野菜なり”」

 丁寧にやる気力が全く残っていないから略式で“存在改良”を行う。僕は自分の足元から莫大な量の植物を生み出すと、それを魔術の人達に溶かし込んだ。流が収まると彼らは植物の精霊のような姿となり、やがてゆっくりと元の姿に戻った。


『……それ、さっきのと詠唱が違いませんか?』

「……うん? 同じような意味だったら何でもいいんだよ」

 “存在改良”の詠唱は魔術と同じで、同じような意味であれば多少の変化が起こるだけで発動することができる。

 ゆっくり丁寧に行った方が植物としての可能性を多く与えられるのだが、別に本気で野菜を創る訳でもないので略した。


 僕は野菜に成った人達を見て、何故コアさんがあれほど突っ込みを入れてきたのか理解した。

「……確かにあんな姿をしていると、野菜相手でも会話できないね」

 さっきは素晴らしい解決策が出来たと興奮して気付かなかったが、流石に完璧に人の姿をしていると話しかけられない。

 あんなに厳つい野菜は流石の僕でも手に余る。

『……まだ完全に理解してくださらない様ですが、まあそんなところです』


「僕はあの人達を野菜に変えたから、次はコアさんの番だよ。よろしくね」

 相手を野菜に変えたことで、ほんの少し調子を取り戻した僕はコアさんに頼んだ。知らない厳つい人が近くいるとソワソワするが、厳つい野菜が近くにいるだけでは話しかけられないが緊張はしない。

『しょうがないですね。わたくしも悔しいですがあの方達が厳つい野菜に見えてきたので、頑張って話しかけてみます。ところで何と話しかければいいですかね?』

「えっ? それを僕に聞くの? 自慢じゃないけど僕はコアさん並みにコミュニケーション能力低いよ」

 もう俗にいうコミュ障だということを隠さない。バレバレだしコアさんはいろいろな意味で仲間だからだ。


『それは存じ上げていますが三人揃えば林檎の知恵と言うではないですか、一人で考えるよりも大勢で考えた方が良いに決まっています』

 “三人揃えば林檎の知恵”とは異世界で言うところの“三人揃えば文殊の知恵”と同じ意味だ。他にも“三人揃えばアカシックレコード”等がある。

「確かにそうかもしれないね。僕は元ボッチだから本当かどうか判らないけど……」

わたくしも元ボッチでしたので判りませんが、わたくしとマスターなら良い結果がでるに決まっています』

 コアさんも今まで散々否定していたことを認め、笑顔で僕を慰めてくれた。

「…そうだね! コアさん!」

『はい!』

 僕とコアさんはお互いに笑い合った。二人で良い答えが出なくても、二人で考えることに計り知れない価値が在ることだけは確かなようだ。


「ところであと一人足りないけどどうする?」

 初めての試みなので、験担げんかつぎみたいなものだがしっかり三人揃えたい。

『あの中から適当に連れて来るのはどうですか?』

 コアさんが魔術の人達を指しながら提案してくる。

「他に人が居ないしそうしようか」


 僕は一番近くにいた人を、手招きで呼び寄せた。

「御呼びでしょうか。主よ」

 そう言って来たのは特徴的な炎色の紐を幾つも垂らしただけのマントを羽織った、上半身がほぼ裸の、ファイアダンスが上手そうな人だ。よく観ると彼が居た場所の周りにも、同じような格好をした男女が結構いた。

 多分、ファイア・ボールから現れた人だと思う。他の人は象徴的な物を持っているからね。

「何の魔術の人?」

『ファイア・ボールです』

 当たったようだ。よし!


『本題に入りますがわたくし達と、魔術の方達と会話する方法を考えて欲しいのです』

「御意」

「お願いね」

 僕達は会議を開始する。

「今日の天気の話しをするのはどう? やったことはないけど王道みたいだよ」

 英雄譚ライトサーガではそんなことが書いてあった。コミュ障な僕は克服する為にいろいろと調べている。

「申しにくいのですが主よ、ここは木々に囲まれ天気が判りません」

「ダメか…」


『次はわたくしから。ひたすら話し掛けられるのを待つのはどうでしょう? わたくしはこの方法でマスターと、最終的には友達になれましたよ』

 コアさんが得意気にそう言う。

 僕は静かにコアさんを抱いて背中をポンポンと叩いた。辛かったね~、もう大丈夫。今日の天気は雨のようだ。頬を雫が伝う。

『な、何ですかマスター! どうしたのですか!?』

「ううぅ、何でもないよ。次、ファイア・ボールさんいこう」

 コアさんは無自覚のようだ。当たり前だったんだろうな。


「御意。その前にこちらの手拭いをどうぞ」

 ファイア・ボールの人は涙をお拭きくださいとハンカチを渡してくれた。僕は遠慮なく受け取ったハンカチで涙を拭かせて貰う。お花のいい香りがする。

『…マスターも度胸有りますね…』

 あれ? コアさんが引きながら言う。

「え? 何、が…………………」

 始め何のことを言っているか解らなかったが、ファイア・ボールの人にハンカチを返し、それを彼が仕舞ったことで全てを理解した。そう、パンツのような物の中に仕舞ったことで…………。

 コアさんへの同情が一瞬にして吹き飛んだ。僕は一体何を…………………………。


「いや待て! 彼は野菜だ! 人ではない! そうだ! きっとそうだ! 花に仕舞ってあっただけじゃないか! アッハッハッハ! …………………………」

 今日の天気は土砂降りのようだ。あはは……。

『そ、そうです! 彼は野菜です! 野菜ですとも!』

 今度はコアさんが僕を優しく抱いてくれた。そして背中をポンポンと……。

「ううっ~、コアさ~ん!」

『良いんです。気持ちは解ります。存分に泣いてください』

 コアさんの頬も同情の光が輝いていた。


「御双主よ。何故泣いておられるのですか?」

「君がパンツから出したハンカチで顔を拭いちゃったからだよー!!」

 全く今までのことを理解していない様子の、ファイア・ボールさん、いや奴に教えてあげた。

「はあ、某が〈密林収納〉から取り出した手拭いのことですか?」

『「え?」』

 彼の希望溢れる言葉で僕達は泣き止んだ。そして間抜けな顔で説明を待つ。


「〈密林収納〉は〈アイテムボックス〉と似たもので多くの物を仕舞えるスキルです。それを使い手拭いを取り出したのですが、何か問題でもありましたか?」

「でもパンツに仕舞ってなかった?」

 僕は肝心なことを聞く。そう見えたのは確かだ。

「〈密林収納〉は植物の生い茂る箇所でしか発動できないのです。本来火と植物は一ヶ所に存在するものではありません。よって某の場合、上半身が火、下半身が植物と特性が異なり〈密林収納〉が下半身でしか使えないのです。つまりはパンツに入れたのではなく近づけただけなのです」

「なんだ~、良かった~」

 ファイア・ボールさんの話しを聞き、僕は心から安堵した。


『それにしても貴方は魔術から現れたのにスキルを持っているのですね』

「そういえばそうだね……何で? と言うか本当に君達何?」

 コアさんがよく考えると不思議なことに気が付いたので、せっかくだから聞いてみた。あの魔術の人達を何とかするのにも役立つかもしれない。

「某達は御双主を創造主とする魔術とダンジョンモンスターを掛け合わしたような存在です」

 鏡の人に聞いた時と同じ答えを言われた。

 そのまま聞くと僕は関係ないよね? 魔術もダンジョンモンスターに関係あるのもコアさんだし、僕は何にも関わっていない。


「何で僕も創造主なの? どちらも関係ないよね? 濡れ衣じゃない? 全部コアさんのせいだよね」

 僕は白黒ハッキリさせようと質問した。そしてコアさんを半眼で見る。しっかり反省して欲しいものだ。

『いえ! わたくしのせいではありませんよ! わたくしにそのような力はなかった筈です!』

 コアさんは頑張って反論してくる。残念だけどね、残念なコアさん。真実を変えるのは大変なんだよ。諦めな。

「創られたものに過ぎない某に聞かれて困るのですが、御双主が創造主なのは確かです。某達の中には御双主の御力が流れているのです」

「でもその内の僕の力は君達を野菜に変えた時のものじゃないの?」

 きっとそういう意味だ。根本的なところには僕は関わっていない筈。

『鏡の方は野菜に変わる前にそう言っていませんでしたか?』

 コアさんが諦めなさいという目付きで僕を見てくる。自分がやらかしてしまった可能性が高い為に、せめて僕を同罪扱いにしたいのだろう。少しニヤついているし……。


「コセルシア様の言う通り、アーク様が某達を野菜に変える前から、某達の中にはアーク様の御力が流れていました」

 残念ながらコアさんの目論見は達成する方向に進んでいるようだ。

「うっ、でも何処にも僕の要素がないよね? ただ単に僕とコアさんが繋がっているからじゃないの?」

 僕とコアさんは存在としてほぼ一心同体だ。それなら僕の力がコアさんに漏れ出た可能性がある。と言うかそれしかない…筈。

「いえ、その程度ではなくアーク様の御力も某達に大きく関わっています。創造物でしかない某がそう感じたのに過ぎないのですが…」

 ファイア・ボールさんは困ったようにそう語る。

 よくよく考えると無茶な質問をしたかもしれない。赤ん坊に何故、どうやって創造され、君は何なんだ? と質問するようなものだ。大人でも完全な答えは出せないだろう。と言うか出せない筈だ。

「ごめん、このままだと不毛だね。元の話しに戻そうか」

『そうですね。マスター、ここは同罪…いえ共同作業で生み出したということにしましょう』

 コアさんも同じように思っていたようだ。若干ニヤついている気がするが……。


「じゃあファイア・ボールさんは何か、あの魔術の人達と会話する為の方法思い付かない?」

「普通に話し掛ければいいのでは?」

 彼はとんでもない提案をしてくる。どうやら彼は僕達と違う世界の住人のようだ。…コアさん、いつか必ず一緒にあっち側へ行こうね!

『それが可能ならばこのような話し合いはしていません』

「では一人ずつに話し掛けるのはどうでしょうか? あの人数をさばくのは大変かもしれませんが、会話の練習にも成り良いのでは?」

「それが出来たら苦労しないよ。一人相手でもあんな武装とかしている人になんか話し掛けられないよ」

『その通りです。一人相手でも普通になんか話し掛けられません』


「……あの、某には普通に話し掛けて来ませんでしたか? 今も普通に会話していますよね?」

 ファイア・ボールさんが困ったように確認してくる。

「そうだけどそれがどうしたの?」

『何か新しい案が浮かんだのですか?』

 当たり前のことを何故聞くのと僕は不思議に思いながら答える。雰囲気からしてコアさんも僕と同じように思っているようだ。

「……某も彼等と同じく御双主によって創造された存在なのですが……」

「知っているけどそれがどうかしたの? まだ僕が創ったって納得できないけど」

わたくしも認めたくはありませんが存じ上げています』

 僕とコアさんは若干不満げな表情で答える。コアさんはいい加減に認めよう。

「……もう一度言いますが、某には普通に話し掛け、今も普通に会話していますよね?」

「『そうだけど(ですが)?』」

「…某と会話できるのならば、あの者達とも普通に会話できると思うのですが?」

「『……?』」

 僕とコアさんは“どういう意味か解る?”と顔を見合せる。しかし答えは出ない。

 あんなに厳つい魔術の人達と、普通に会話なんかできる筈がない。ただでさえ僕達はコミュニティケーション能力がほぼないのに。あの中ではそこまで武装していないファイア・ボールから現れた人の内、一人相手でも普通の会話は無理だ。

「…………もういいです……某が提案できる方法はもうありません……」

 ファイア・ボールさんは疲れた様子で、若干呆れたように言う。何故!?


「三人揃っても全然いいアイデアが出てこないね。コアさん、これからどうする?」

『そうですね、いっそのことあの方達を無視して、当初の予定通り夕食でも……食べますか?』

 コアさんは始め冗談のように僕に聞き返してきたが、途中から本気で提案してきた。

「…そうだね、夕食にしようか」

 僕は他にできることを思い付けなかったのでコアさんの意見に賛成する。

 思えば元々夕食を食べるつもりが、いつの間にか忘れていた。僕が夕食を忘れる何て、植物関連以外では初めてかもしれない。


 丁度さっき経緯はともあれ、火の付いた薪を囲む素敵な竃が造られていたので、そこで夕食を作ろうと思う。

 竃は細かく装飾が施され、内側まで火を囲むように神官らしき彫刻がある。芸術としては一級に見えるが、誰もがバカだろうとまず始めに見て思う、そんな一品だ。

 調理器具(?)と言うよりも祭具に見えるが、竃として機能はするだろう。さて、今夜は何を作ろうかな?







 《用語解説》

 ・アーク・パンチ

 アーク怒りのパンチ。そんなに強くはない。魔力は勿論のこと、技術もない只のパンチ。

 何故か実体のない像にも当て、本体にダメージを与えることができる。アーク本人にも理由は判らない。



 ・存在改良

 あらゆる無生物を植物に変える技。アーク曰く農業の基本らしいが、実はアークが初めて生み出した技で、当然農業の基本などではない。


 使ったものの性質を持つ植物に変えることができるが、どのような形で性質が現れるかは決められない。

 例えば金貨に使ったら、金貨が生る植物に成るか、金貨が葉の植物に成るか、そもそも金でできた植物に成るか判らない。

 しかし変える植物の種類は大雑把に決められる。アークは今回、野菜と大きな括りで変えたが、野菜の種類までは決めることができる。



 ・品種改良

 植物の性質を変えることができる技。どこまでできるかはアークも知らない。日々確かめ続けている。


 実は〈農業〉スキルでも“文技”として使うことができるが、アークのようには使えない。植物同士を直接掛け合わせたりはできるが、そのまま育つ可能性は低い。その為、元々性質の似たものを掛け合わせることぐらいにしか、通常は使えない技である。

 因みに〈豊穣〉は〈農業〉スキルのかなり上位の存在だ。



 ・武技・文技

 スキルとはあくまで能力、その成長を補助する力だが、魔力や生命力を対価に、そのスキルのスキルレベルに応じた補助が及ぶ範囲の特定の技能を、完全に再現することができる。それが武技または文技と呼ばれるものである。あくまで再現するだけなのであまり融通が利かない。

 因みに戦闘用のものが武技、それ以外のものが文技である。何故それ以外を全て文技と呼ぶかは世界中で謎になっている。


 武技・文技を使用するのにも鍛練が必要だが、普通にその領域まで達するのよりも遥かに容易な為、技術そのものを鍛えるよりもスキルを身に付け、武技や文技を発動できるように訓練する者が非常に多い。

 魔術系スキルでも同じで、武技として魔術を発動する者が多い。武技として魔術を発動する場合、魔力の消費量が多くなり、使える魔術の種類も少ない為、武技として魔術を発動する者は魔術士として二流以下だとされている。



 ・植手

 アークが自らの手と同じように扱える植物でできた手。大きさや長さ、感触の有無等は変えることができる。


 似た技に“植身”があり、此方は全身を創り出せる。アークによると身体が増える感覚らしい。この“植身”を使ってアークは自分の空間で農業をしている。



 ・密林収納

 広大な固有空間を創り出せるようになるスキル。植物のみ獲得することができるスキルである。スキル所有者の最大生命力量に応じて空間の広さが変わり、生物か無生物か関係なく入れられる素晴らしい収納スキルだ。但し何故か空間内には植物が生い茂り、とても入れたものを取り出すのが難しい。


 このスキルを持つ植物でかつて造られたアイテムは、スキルと同じ効果を持ち、平均的な中規模の国家の五年分の国家予算と同等の価値が付けられた。



 ・アイテムボックス

 生物以外を入れられる空間を創り出せるようになるスキル。スキル所有者の最大魔力量に応じて空間の広さが変わり、スキルレベルによって様々な機能が付く。発動には魔力を必要としない。


 確率的には千人に一人が持つスキルで、生まれながらに持つスキルランキング第1位の謎スキルである。スキルの獲得方法は特異で先天的に手に入れる以外では、同じような空間収納系スキルもしくはマジックアイテムの、発動時の穴に手を入れるというものである。

 因みに最も効率のいいスキル獲得方法は、ポケット型のマジックバッグ、マジックポケットに手を入れ続けるというものだ。値段は張るがそれでも通常のマジックバッグよりは安く性能の低い、訓練専用のマジックポケットが売られており、アイテムボックス獲得を目指す者は多い。その為このスキルを持つ者は珍しくはない。


 文技は主に取り出したい物を瞬時に出す“召還”や、一定時間アイテムボックス内の時間を止める“完全保管”、一定時間アイテムボックスを拡げる“拡張”等がある。

 また一般的には知られていないが、武技も存在する。







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