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〈田舎者の嫁探し〉あるいは〈超越者の創世〉~種族的に嫁が見つからなかったので産んでもらいます~  作者: ナザイ
第2章 〈アンミール学園入学〉あるいは〈都会生活の始まり〉

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裏あるいは表の十八から三十三話

更新が遅くなって申し訳ありません。

遅くなったのにも関わらず、全てを書ききれずに中途半端かつ説明回のようなものになってしまいました。

今章中にもう一度、下手したら二度、裏あるいは表の話を挟む予定です。

 



 アーク暦元年の昼から、各地では常人の与り知らぬところで、これからの歴史を大きく左右する会議が開かれていた。





 ~【大聖地フィージスゥール】、【ハシィー・ラトゥワーニ最奥神殿】~




【ハシィー・ラトゥワーニ最奥神殿】は全世界で唯一、最奥神殿と呼ばれる神殿である。

 ここは全神殿、いや宗教の総本山にして最古の神殿であり、最大の規模を持つ大神殿だ。

 そして世界最大規模にして最強と吟われる英雄達が守護する、世界最重要地点だ。


 神殿の各所にはその時代時代の最高技術の粋を集め創られた装飾や建築が下水管の中まで施されている。建材も全てが一級品だ。どれも売られていないものばかり。一目でどのような存在でもこの神殿の力を理解してしまうだろう。

 限りなく永久に近い年月、限りなく無限に近い土地土地で最高位と認められてきたこの大神殿の力は、どうやっても直視せざるを得ないのだ。


 そんな最奥神殿のさらに最奥には、屋内にも関わらず全生物発祥の地とされる広大な草原が存在しており、その中心にある一本の若い木とそれを囲む石柱が並ぶ丘、【始まりの墓所】の上空では会議が行われていた。

 いや、誰か(アンミール)の策に嵌められた絶対存在達が仕方なく話し合っていた。




「あのロリババアめ。アークが此方に来るからと来てみれば」

 芯のしっかりした意思を凝縮して重力崩壊する程集めたような中年に見える、しかし若々しく世界を軽く呑み込む覇気を放つ男、冒険者ギルドの創始者【冒険者】ドラスラーは疲れた様子で愚痴を溢す。


 彼は自分の子孫であるアークがそろそろ降臨するだろうと、アンミール学園に向かったらアンミールに此処にアークが来ると騙されて、何故か次々と自分の行く手を塞ぐあり得ない脅威を退けながら、やっとの思いでここまで到達したのだ。

 そして真実を知ったが、気が付いた時にはアンミール学園に絶対的な結界が展開されており、進入することが出来ず此処に戻って来たのだ。


「全く貴方は、同じ様に騙されるのは何回目ですか?」

 そう言うのは優しそうな、警戒心を完全に解いてしまいそうな笑みを浮かべていて、しかしその細められた隙間から覗く眼光が恐ろしく鋭い策士のような男、商業ギルドの創始者【商人】ウルカウだ。


「そう言うお前も騙されたんだろうに」

「はい、あのロリババアにしてやられました」


 そしてウルカウもアンミールの策略でここに追いやられていた。

 全ての商業の上に立つ彼が、どうやってアンミールの策に嵌まったのかと思うかも知れないがなんて事無い。アークがここで会いたがっていると聞かされただけだ。

 それでだけで有頂天になり日が真上に昇る今頃になって、やっとアンミールの策に嵌まった事に気が付いたところだ。


「まあまあ、どちらにしろアンミールは我々をそう簡単には入れないでしょう。ですが必ず後になったら入れる筈です。いつものように。

 せっかく集ったのですし、今は例の件についてでも話し合いましょう」


 と軽く宥めるのはここの主、慈母のような雰囲気にも関わらず、圧倒的な美を誇る【信仰】のハシィー・ラトゥワーニだ。

 因みに彼女は何も言っていないが、しっかりアンミールに騙されてここに居る。


「その通りです。今回はアークの降臨と共にかの存在が史上初めて世に舞い降りました。その事について議論致しましょう」

 とラトゥワーニの言葉に頷くのは【記録】のシャガン。見掛けは青年に見えるが人生を謳歌した老人のような雰囲気を放つ男だ。

 彼はアンミール学園で教師もしているのだが、当然のようにアンミールの策でここに居る。


 シャガンの言葉に他の面々も頷いた。

 それを見てドラスラーとウルカウも話題を移す。


「【ダンジョン】か」

「永年に渡り姿を見せなかったかの存在ですね。そもそも皆さんの中で一度でも会った方はいますか?」


 ウルカウの言葉に誰もが首を横に振った。


「何度か接触を試みたが駄目だった。そもそもダンジョンの攻略が出来ない」

「私もです。あのダンジョンが風化してからも試してみましたが、そのときも攻略出来ても法則が変わっていて会えませんでした」

「俺もだ。そのときの史上最強の冒険者達と攻略に挑んだが、殆ど進めなかった。風化してからはあんた達と同じだ」


 最後のドラスラーの言葉に少しざわめきが起こる。

 冒険者を束ね彼等を力の源とする。この中で、世の中で最もダンジョン攻略に向いていると言って良い彼でも駄目だったのだ。

 薄々この答えを解っていても、ざわめきは止められない。


 そんな中で口を開いた者がいた。


「まあ大丈夫ですよ。知っているでしょう? 此方は知らなくても向うは知っていると。攻略出来ないダンジョンの奥にあるユートピア村に行くときは、すんなりと通してくれていました。此方に好意的なのは確かです。それに――」


「「「ロリババア!?」」」


 そう、アンミールだ。


「人の言葉を遮らないで最後まで人の話しを聞きなさい」

 自分が原因なのにアンミールは溜息しながらそう言った。

「そんなことよりも何故ここに居る?」

「アークがお昼ご飯を食べるのに夢中で、こっそり抜け出して来ました。感謝してください」

「何が感謝しろだ! 早くアークに会わせろ! 独り占めするな!」

「「「そうだそうだ!!」」」


 この場の総意も何のその、アンミールはマイペースに話を続ける。


「そんなことよりも連れて来ましたよ。アークの友にして一部のコアさんです」

 そう言って、コセルシアを手で示した。


 紹介されたコセルシアは懐かしそうにしながら、自己紹介を始めた。

「アンミールさんに呼ばれて着いてきてみれば、貴方方は遥か太古の昔にわたくしを攻略しに来た方々ですね。いやぁ~、お恥ずかしながらお客様は歴代でも数えられる程しか居なかったので、よく覚えていますよ~。

 改めまして、わたくしは元ダンジョン《最果て》のダンジョンコアにしてそのもの、コセルシアと申します」


 アンミールのせいで騒がしかった面々だが、皆コセルシアを見て驚き、沈黙がこの場を支配した。


「「「…………」」」


 しかしコミュ障気味のコセルシア、そんなことに気が付かずに話を続ける。


「それしても何処かで直接会ったこと、ありましたっけ? 何故か他人とは思えないのですよね? わたくし、人と話すのは苦手なのですが、皆さんが相手だとすらすらと話せますし?」

「「「いえ、会ったことはないです」」」

 コセルシアの話に対して何故か敬語の面々。


「それで何故私わたくしはここに呼ばれたのでしょう?」

「ただの顔見せ、そして雑談などの為ですね。後は決意表明、毎回ユートピアの誰かが降りてくるとやるのですよ。ちょうど良い節目ですから」

 答えられる状態でない面々の代わりにアンミールがそう答えた。


 そして続けて言う。


「では決意表明をしてしまいましょう」


 この言葉で他の面々も元の状態に、それも真剣な、厳かでいて重さをもった様子、足りない言葉で言うなら神聖と呼ぶしかない雰囲気に変わった。


 そして再び大聖地を以て誓う。


『全ての存在が力を出し切れるように』

『歩みを止めないように』

『途切れないように』

『自らで切り開けるように』

『認め会うように』


『我らは保証する』

『与える』

『見守る』

『定義する』


『殿は我ら』

『何者も後ろに通しはしない』

『前へのみ進ませよう』


『我らの存在する限り』

『故に永遠に繋げる』


『『『始まりに誓って』』』


 何気に紛れ込んだコセルシアを含めてこの時、誓いが結ばれた。


 この誓いに何の効力もない。ただの決意表明だ。口約束と言っていい。

 しかし世はこの時、確実に動いた。誰も気が付かない程の一瞬、全てが自ら薄く輝いた。

 こうして新たな世が静かに始まり迎えて行く。



 そして誓いが終わるとガラリと場の雰囲気が変わる。


「……ふぅ、でだ。アンミール、誓いは終えたぞ」

「色々と話を聞かせてもらいましょう」

「まずはアークに合わせろ!」

「“ダンジョン”よ。貴方の御話を聞かせて欲しい」


 神聖な雰囲気は幻覚か、この場にいる面々は各々好きに、身内の団欒のようにワイワイと話始めた。



 それを気が付かれずにアンミール達のさらに頭上で見守っていた、白色の着物の上に黒色の白衣を纏いネクタイを締めた、白髪黒目の存在は微笑ましそうに、そして遠くを眺めているように追憶しながら、また誓った。


『我らの宝を何時までも、そして必ずいつか』


 ただの意志が込められただけの言葉。しかしそれがが発せられたとき、明らかに世に力が溢れた。

 静かに、それでいて剰りにも力ある風が彼を中心に広がる。


 それによってアンミール達に居る事が気付かれると、黒色の白衣をはためかせながらそこまで降りた。


「御父様、いらしていたのですね? どうぞ此方へ」

「御父様? そういう関係だったのですか。複雑ですね」

「普通の親子ではないかもしれませんが、そうですよ。因みに他の面々は私の姉弟達です」

「そうですか。だから他人とは思えなかったのですね。わたくしとマスターは一体の関係ですから」

「まあそれもありますね」


 コセルシアも交ざった平和そうな光景を見て彼は微笑む。

 そしてゆっくりとのめり込むように全てを眺めた。

 新たな世に願いと愛と希望を込めて。確実に変わっている事を感じながら。





 ~【聖恥サラ・ケダス】、【レイシャベル大狂会】~



 レイシャル教、世間では露出教と呼ばれる世界宗教の大本山、【レイシャベル大狂会】と呼ばれる教会を中心としたこの都市は白亜のキャンバスにサファイアとエメラルドを散りばめたような非常に美しい都市だ。

 数え切れない程の彫刻や噴水が建造物の中にまで溢れ、噴水から流れる水路の脇には沢山の花々が咲き乱れている。

 最も美しい都市と讃えても遜色は無い。実際に幾人もの高名な天才達はそう評している。


 なので当然、観光客も月にこの都市の人口以上もの人々が訪れるのだが、彼らがこの都市の美しさに目を奪われる事は、余程の変人でも無い限りまず無い。

 何故ならここの住人が老若男女問わず全員、全裸だからだ。

 皆そちらに目を奪われてしまう。


 ただの全裸、場所によっては見ることができ、珍しくとも驚愕には値しないと思うかも知れない。しかしここは異様だ。

 露出狂のように見せ付けてくる変態も居れば、服を剥ぎ取られたかのように羞恥に悶える者も数多くいる。寧ろ恥ずかしがる者の方が多いくらいだ。

 それでも皆、全裸であろうと努力している。例え観光客が何人居ようと、例え吹雪の吹き付ける寒空の下でも。


 この都市で全裸は自然としてそこに在るのではなく、造り物として在るのだ。

 全裸で居る文化では無い。全裸で居ようとする文化だ。


 まあ、何よりも旅人達を驚かすのは住人達の異様な精神構造だが……。

 ここの住人は解放されているせいか、それとも羞恥を誤魔化す為か、テンションが異常に高い。

 最低でも外の住人を容赦なく全裸にひん剥き布教しようとしてくる。

 お陰で聖地ではなく聖恥、教会ではなく狂会と世界公式に呼ばれている程だ。


 兎も角そんな、何だかんだと陽気なこの都市だが、今日は何時もよりもさらに異様な空気が漂っていた。


 何故か……何故この日は皆服を着ていたのだ。

 しかも羞恥に悶えながら…………。

 裸教徒にとって服は恥ずかしいものになってしまっているらしい。……全裸で恥ずかしがり服を着ていても恥ずかしがる人々に救いはあるのだろうか?


 そして中心の“レイシャベル大狂会”は天空から差し込む純白のオーロラに囲われていた。


 これらは彼等の崇める主神、【全裸全能の神】レイシャルからの神託で知らされていた。なので服を着ているのとこのオーロラは直接関係無い。

 しかし服を着ている原因はこの神託にある。


 その内容は人々の心に直接語られた。

『レイシャベルにて近々神々の宗教会議が開催される。都の者は我が神威が消えるまでの間、服を必ず着用するように』と。


 この神託から都市の者達は服を着ているのだ。


 そしてこの神託の内容は嘘ではない。

 レイシャルの全裸を止めさせたいと言う思いも可視化できる程詰まっているが、会議を開催するのは本当だ。

 つまり神託を意訳すると、他の神々に君達を見られるのが恥ずかしいから今だけでも服を着てくれ、と言う嘆願である。ただ適当な理由をつけてまともに軌道修正しようと訳ではない。


 実際に力がひしひしと伝わってくるオーロラが現れたのだから、何時も試練の為に適当な神託を出している(と信者達が自主的に思い込んでいる)レイシャルの神託にも今回は大人しく従った。

 そして現在に到る。



 そして【レイシャベル大狂会】の最深部にある純白の神殿、レイシャルの神域では神々による会議が今開催されていた。



「【露出教主】よ。【露出卿】は何処か?」

 ある程度神々が集り始めた中で最初に口を開いたのは、威厳を押し固めたような気難しそうな若い青年の姿をした、【絶対正義の勇者】ザラスシュトラだ。

 彼は会議の主催者とも呼べるレイシャルの姿が無いこと気が付くと、レイシャルの側近でありレイシャルにとっての諸心労の根源でもある【露出教主】マリアンネにそう質問した。


 全裸に純白の一枚布を羽織った聖女と呼ぶに相応しい絶世の美女神、マリアンネはそれに答える。

「申し訳ございません。我らが主は『後は任せる。僕には大切な用事があるから』と書き置きを残して何処かへ行ってしまわれました」


 その答えにザラスシュトラはやはりかと溜息をつき、他の神々も会話をし出した。

「やはりそうですか。レイシャル様の気配が遥か遠くに行った事は確認しておりましたが」

「この気配の離れよう。まさかアーク様の処へ?」

「アンミール様とも連絡が取れなくなりました。それで視たところ強力な結界が学都全体に展開されていました。恐らくアーク様はそこに降臨なされたのでしょう。アンミール様はそれを少しでも隠そうとしているのです」


 神々は一様に疲れた雰囲気になった。毎回ユートピアが絡むとこうだからだ。

 そして何度挑戦してもアンミール達の妨害を乗り越える事は出来なかった。

 そして無駄な会議に召集されたことに今更気が付いても、怒る気にはなれなかった。酷い目に遭った事を思い出してしまうからだ。


「とりあえず、会議でもしましょうか? 何かしら議題はあるでしょうし?」


 この空気の中、一番に口を開いたのは神聖な掃除のお姉さんと言った風の女神、【トイレの女神】ウォッシュレーテだ。

 元々苦労人体質で、貧乏クジを引きがちな彼女は立ち直りが早かった。いや、立ち直らなくてもいつも通りにいられるのだ。


 それに“大罪教”の主神【最高傑作】ノーメンが応える。


「そうですね。折角集まったのですし話でもしましょう。と言うことで私から一つ。アーク様の系譜候補は集まりましたか? 私の司る者達の内、覚醒者はアンミール学園へ、それ以外は現地でまだ様子見しているところです。何名かの移動に【黒光の天災】に強力を要請しましたが、予々順調です」


 ノーメンの議題はアークの嫁創りについてだった。

 実はここに居る神々は全員アークの親族で、アンミールとは別に嫁の先祖候補を探していたのだ。と言うよりもそう言う神々がこの場に集まっている。

 神々はその信者が居る一定の範囲なら、どれ程離れていても見守る事が出来る。その能力の応用での候補集めだ。

 ついでに言うと、主にその候補が子供だったらアンミール学園へ、それ以外は適任者が導いて行く手筈である。


「私の信者の中にとても良い娘が居たので送り出しました。後は一度でも祈ってくれた方の何人かに加護を与えておいたので様子見ですね。まだ候補と呼べる人達はそのぐらいです」

 とウォッシュレーテ。彼女は究極の一瞬に祈られるような女神なので固定の信者は少なく、そもそも司るもの的に信者で超越者に至るような存在が少ないのだ。

 しかしその信仰の広さから候補の候補は沢山見つけ出していた。


「我が信者には勇者や元々強力な者も多い。そうした者達の多くを既にアンミール学園へと導いた。そして我を祈らない者達も信者の近くに多く居る。そうした者達も信者に神託を降し間接的に導いておいた」

 とザラスシュトラ。彼が主神の絶対正義教、通称正義教はその信仰の広さも圧倒的だが、その信者に勇者や英雄、中には魔王までも強大な力を持つ者が信仰していることで有名だ。

 その力で彼はアンミール学園へ、勇者達を仲間やライバルごと導いていた。その数は常人なら絶対に信じない程だ。


 次に口を開いたのは【必要悪の魔王】アンリ。【絶対正義の勇者】と同規模の力を持ち、ほぼ真逆かつ最も近い存在だ。

「私も信者の魔王や勇者達を中心にアンミール学園へと送り出して起きました。中高齢の者達には子作りや後進の育成に取り組んでもらっています」

 彼女はいつもの決意に満ちた冷たい仮面を取りはらい、慈愛に溢れた真の表情を今日だけは見せてそう言う。


「俺はまだだ。とりあえず広告はったり神託を降したりはしたぞ」

 と円卓の上に気力なくグデーと伏せている【平穏なるニート】ゼン。こう見えて世界宗教の一つで安らかな睡眠にこそ平和があると説く“平穏教”の主神だ。

 彼はその教えと見掛け通りに、大して動いていないらしい。


 そんな彼に対してザラスシュトラとアンリは説教を始めた。


「お前と言う奴は、真面目に働かんか! 神と言うのは寝ているだけで賽銭を稼げる仕事では無いのだぞ!」

「そうです! 何時になったら貴方と言う子は働くのですか!」

「えーと、百万年後?」

「百万年前にも同じ事を言っていましたよね!」

「たく、うるさいな。こっちは今寝ようとしてるの」

「「――っ! 親の顔が見てみたい!」」

「鏡見ろ」


 と彼等の親子喧嘩は始まって行く。



 他の神々は何時もの事なので無視して話を進めた。

 大方の嫁造りの準備が済んでいる事を確認すると、この場を提供している側のマリアンネが司会代わりに話題を変える。


「では皆様、大方既存の候補達は導いていると言うことで。

 他に何かこの場で話して起きたい事はありますか?」

 マリアンネはそう言いながら神々を見渡す。


 そして一柱の神が軽く手を挙げた。

「では我輩から」

 彼は【神々の生みの親(プロデューサー)】エー、かつては世界貴族の一人でもあった偶像教の主神だ。つまり信仰対象をプロデュースし数多のアイドルを育ててきた世界の仕掛人である。


 そんなこの神の出した議題は。

「最近、邪神を始めとした災悪や大人災、大災害の封印が解けております。そちらの処遇もどうするかここで相談しておくべきかと」

 と言うものであった。


 このエーと言う神の特長は、本当にどこにでも信者がいると言うことだ。大々的に力を貸さなくとも全てのアイドル志望者に陰ながら力を与えて見守っている。

 そんなアイドル達のファンは例えエーの存在を知らなくとも彼の信者と同等の存在となる為、しかも熱狂的な信者が多い為に彼の見守れる地域は非常に広い。


「確かに近頃は善悪神人関係無しに封印が解けたり目覚めたりするな」

「混乱も生じ始めていますね」

「だが対策を急ぐこともないと思うが? 魔王の封印が解ければ勇者が眠りから目覚める。全体的に問題は無いだろう」

「しかし放置と言うのは?」

「そもそもこの時期に集中するのは強者を生むためです。下手に手を出すのもどうかと思いますよ?」


 最後の神の言葉に神々は考え込む。


 そう、この事態の原因ははっきりしていた。

 と言うよりも彼等にその一端がある。


 まず封印と言うものは管理が必要だ。一度封印したらそれで終わりなんて事はない。

 どんなに堅牢な牢獄も老朽化し崩れ落ちる。それが魔術や力で構成され、しかも囚人に寿命がなければその崩壊が早いのは当然の理だ。維持したければ常に補強が必要である。それが封印だ。

 ある一種の保存状態にある封印対象よりも先に、術者が朽ちてしまう場合も多い。

 つまり封印は一度すると維持管理の手間が万年単位でかかり続け、何時かは解ける可能性の高い非常に厄介なものなのだ。


 なので自分達の手に終えない場合にしか利用されない。

 だから当然封印を解くことも不可能だ。どんな災悪が解き放たれるか分かったものじゃない。


 しかしこれらの問題を一気に片付けられる時がある。

 それがユートピア村の子が伴侶を探している間だ。

 彼等ならば如何なるものが解き放たれてもどうにでも解決出来る。しかもただの試練として有効利用出来てしまうのだ。災悪自体を導いた例も数多にある。


 だから封印を施す存在もこの時だけは手を抜く。

 いや、安心して永き眠りに入ってしまう存在が多い。

 それが大きく歴史を動かして来たことにより、今では彼等の存在を知らない存在でも、アークの気配を感じただけで休眠してしまった程だ。


 そしてここに居る神々が施した封印も一斉に緩んでいた。

 彼等の施す封印に関しては維持管理する必要が無いほど強力なものだ。そもそも手に終えない存在がいないのだから当然でもある。

 しかし気が緩む比率は彼等の方が圧倒的に大きい。安心は勿論の事、そこに莫大な喜び等が加わるからだ。

 そんな些細な事どうでもよくなるとも言える。


 そんな自分達に原因、しかも半故意的なものがあるのを気にも止めず、ここに居る神々は会議を続けた。


「では、今回も候補達にその解決を任せてみると言うのはどうでしょう?」

「どのみち勝手に行くか導かれるかの違いで誰かの試練となるのだからな」

「アーク様が喜ばれそうですね」


 そして何時も通りの解決法が採用された。

 ここでまた一つ、世は大きく動くことになるであろう。



 これでこの議題が終結したところで“偽善教”の主神、【死んでも治らない馬鹿(絶対偽善者)】アシュタルテが口を開いた。


「ところで、どうしますかアーク様の件? 無駄だと判っていても私は会いに行こうと思うのですが?」

 通り名のように馬鹿は死んでも治らないを体現する彼は諦めきれないらしい。


 その言葉を聞いて神々は呟き出す。

 アンミール達によるトラウマと静かに向き合った。


「アーク様に………」

「アーク様に……」

「アーク様に…」

「アーク様に」


 だが皆アークに会いたい気持ちは決して隠せないもののようだ。


「アーク様に!」

「「会いたい!!」」

「「「会いに行こう!!!!」」」



 こうして学ばない馬鹿達、いや、学んでも馬鹿な道を選ぶ存在達は会議を切り上げ、アンミール学園を目指す事になった。

 そしてアークと接触した時、真に世は動く事になるだろう。






 《用語解説~世界宗教編~》

 ・世界宗教

 幾つもの世界に股がって信仰される大宗教。



 ・絶対正義教

【絶対正義の勇者】を主神とする宗教。

 人がいくら悪と断じる正義でも、正義のために悪を断罪し続け、世界を救った【絶対正義の勇者】の教えを守る。

 主な教義は一億の悪を断罪し滅ぼしてでも一の正義を優先すると言うもの。

 信者の信仰心の高さはかなりばらつきがあるが、その信者の数は一つの世界の始まりから終わりまでの全人口を優に越すほど。

 特に勇者を始めとした強力な存在が信仰する事の多い宗教として知られている。



 ・必要悪教

【必要悪の魔王】を主神とする宗教。

 全ての悪の根源と自称する【必要悪の魔王】の教えを守る。

 その主な教義は【必要悪の魔王】こそが全ての悪の元凶であり、人は本来善性のものである。だから真に悪人と言うのは存在しない。分かり合えるやり直せるものである。負の感情は全て【必要悪の魔王】に向けよ、団結せよ。と言うもの。

 信仰心、信者の数や強力な力を持つ信者の数は絶対正義教とほぼ同等。ただ魔王などの信者が多い。



 ・大罪教

【最高傑作】を主神とする宗教。

 大罪スキルを管理する【最高傑作】の教えを守る。

 その主な教義は制御せよ、全ては汝の力なり。

 信者は基本的に“大罪スキル”もしくはそれを持つ者に近い者しか居ない。しかしどの世界にも大体七つの“大罪スキル”ぐらいは存在する為、信仰地域の範囲はとてつもなく広い。



 ・流水教

【トイレの女神】を主神とする宗教。

【トイレの女神】の教えを守る、がこの宗教の場合は一瞬しか信仰されない事も多い。

 その主な教義はトイレはマナーを守って。これくらいしかない。

 本格的な信者はすぐに神官になれる程度しか、普通の信者は存在しない。しかしその祈られる一瞬の信仰心の強さは圧倒的。



 ・平穏教

【平穏なるニート】を主神とする宗教。

 自称平穏に過ごしていると言う【平穏なるニート】の教えを守る宗教。

 その主な教義は深く考えるな、寝ていろ、それが一番平和だ。と言うもの。

 何故か信者数が異様に多く、特にニートな方々から圧倒的な支持を得ている。因みに何故だか異世界人の信者数も異様に多い。

 尚、最も穏健な宗教であることは世界的に認められている。



 ・偶像教

神々の生みの親(プロデューサー)】を主神とする宗教。

 主神よりもその眷属神であるアイドル達が信仰対象にされている。

 その為特定の教義は無い。強いて言えばアイドルへのマナー及びに信者達間の取り決めだ。

 自然発生した宗教で【神々の生みの親(プロデューサー)】がとりあえずまとめたものである。

 その信者数は隠れ信者も合わせると驚異的で、信仰心も異様に高い。



 ・偽善教

死んでも治らない馬鹿(絶対偽善者)】を主神とする宗教。

 二つ名通りの【死んでも治らない馬鹿(絶対偽善者)】の教えを守る。

 その主な教義は偽善は善とは言えない、しかし偽善を行わないのは悪である。と言うものだ。

 一般的な宗教に最も近い世界宗教と言える。その為信者数信仰心共にほどほどに大きい。




 《オマケ~その他の世界宗教~》

 ・露出教

【露出卿】レイシャルを主神とする宗教。全裸の教えを信じている。


 ・在教

【記録】シャガンが名誉主神。主に祖先や歴史上の偉人達を信仰している。


 ・世界神道教

喜劇のヒロイン(ハッピーエンド)】アキホが一応名誉主神。異世界人(主に日本人)が伝えたもので、高位存在を全て信仰する。


 ・平等教

絶対平均アブソリュートアベレージ】タナカ・タロウを主神とする宗教。平等を求める。


 ・勇者教

喜劇のヒロイン(ハッピーエンド)】アキホを名誉主神とする宗教。勇者達を信仰する。特定の教義は無い。


 ・喜劇教

喜劇のヒロイン(ハッピーエンド)】アキホを名誉主神とする宗教。笑顔を何よりも尊いものとする。


 ・聖教

【信仰】ハシィー・ラトゥワーニを名誉主神とする宗教。“聖地”を信仰対象にする。


 ・神教

【信仰】ハシィー・ラトゥワーニを名誉主神とする宗教。神々と言う存在そのものを信仰する。


 ・黄金こがね

【黄金ヶ原のダンジョンマスター】ルクを主神とする宗教。食にまつわる宗教。


 ・金忌教

【金忌の黄金都市】を信仰対象にする宗教。主神は強いて上げれば【金呪の黄金龍】。


 ・学教

【教育】アンミールを主神とする宗教。成長を尊ぶ。。


 ・冒険教

【冒険者】ドラスラーを名誉主神とする宗教。死んだ盟友達に祈りを捧げる。


 ・商教

【商人】ウルカウが名誉主神として運営されている宗教。金を信仰すると主張する。


 ・叡智教

【大賢者】を名誉主神としたい宗教。世の理を信仰する。



 ・理想教

 アーク暦元年からはアークを名誉主神とする宗教。ユートピアの村人を信仰の対象とする。信者は彼らに近い者だけ。


最後までお読み頂き、ありがとうございます。

次回は通常通り、三十四話を更新する予定です。

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