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〈田舎者の嫁探し〉あるいは〈超越者の創世〉~種族的に嫁が見つからなかったので産んでもらいます~  作者: ナザイ
第2章 〈アンミール学園入学〉あるいは〈都会生活の始まり〉

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第二十八話 魔物大進軍あるいは喜劇

申し訳ありません。また更新が遅くなりました。

早く書き上がった時はそのまま投稿するのでどうかご勘弁を。

 

 僕が暫くおやつを食べているとまた放送が流れた。


『ききき緊急!! 緊急連絡!! また魔物が大量発生しましたー!!』

 しかも放送する人間とは思えない程の動揺ぶりが伝わる放送が。

 声はさっきと違う人だ。新人さんが緊張しているのかな?


『ゴブリンに続き新たな魔物の大軍です!! コボルトッ、オークッ、おおおオーガッ、とととトロールッ、きぎぎぎギガントッッ、みみみみみミノタウロスが大軍を率いて進軍中ー!! たたた大変です!! 非常時です!! 皆ー!! ににに逃げてー!!』


 パニックを引き起こす為に流しているような放送で内容が今一入って来ないが、どうやらまた魔物が現れたらしい。

 放送の人は凄い恐慌状態だが先輩達なら今回もなんとかなるだろう。今はおやつおやつ。


 放送はまだ続く。

 ゴブリンの放送の時の人が今の人を叱りに来た。


『なんだその放送は!? 報道に携わる者は常に冷静であれと口を酸っぱくして教えて来た筈だぞ!』

 僕は叱る声が校内中に流れるのもどうかと思う。そもそも学園の放送って報道?


『そんな事言ったって副部長! ゴブリン以上の大軍が多数ですよ多数!! しかもゴブリンより強力な魔物の!! ミノタウロスの大軍まで居るんですからね!!』

『そんな事で動じるな! この学園に居れば信じられない事の百や二百日常だ! 後は私がやる! お前は休んでいろ!』


 そんなこんなで放送の人が代わった。

 放送を聞いている人達は困惑しているが恐慌状態ではない。恐らく恐慌状態になる前に副部長さんが乱入したからだ。意外とわざと叱る声を放送に乗せたのかも知れない。


『皆さん大変失礼致しました。慌てず冷静に最後まで放送をお聞きください。

 えー、情報科からの情報です。第三校舎と第五校舎の間にてコボルトの大軍を確認。建築科試験場の北東三十キロメートル付近にてオークの大軍を確認。 第二校舎西五十キロメートル冒険科訓練場にてオーガの大軍を確認。薬学科砂漠実験場にてトロールの大軍を確認。工学科山脈実験場にてギガントの大軍を確認。第七校舎南三十キロメートル付近にてミノタウロスの大軍を確認。

 えー、数の規模は……ゴブリンの大軍と同等……』


 この放送部の副部長さんは全く動じる事なく情報を読み上げた。

 やはりそんなに非常事態ではないらしい。最後の方は少し変だったが恐らく長い文を読んで疲れてしまったのだろう。

 内容に驚いている先輩達も居るが冷静に聞いている。やはり伝える人は冷静であれば聞く人も冷静である割合が多いようだ。


 まあどちらにしろ慌てるような事ではないだろう。

 ゴクリ、このジュースも美味しいや。


『失礼致しました。各々魔物の上位種等に関しましては……これもゴブリンと同じく素の種を合わせて五種!? いいい居るそうです! ごゴホンッ、し失礼致しました。

 今回最強種のミノタウロスで言うとランク7のミノタウロス、ランク9のハイミノタウロス、……ランク11のグレートミノタウロス、…………ランク13のラストミノタウロス、………………ランク15のディバインミノタウロス………………が、い、る、そう、です。

 その中で最強種はランク19!? ししし失礼致しました! らららランク19のディバインミノタウロスキングです!!』


 あれ? どうやら本当に非常事態らしい。

 ゴブリンの時とさっきはあんなに落ち着いて放送していた先輩がこの有り様だ。

 放送を聞いている人達もパニックになりかけている。


『冒険者で言うとミノタウロスのランク7の時点でB級冒険が一人必要な強さです! もしくは複数のC級冒険者のパーティーが必要な強さです! ランク11ではS級冒険者が必要な強さと言われています! ランク13は一般的な勇者が必要な強さ、一般的な魔王と同じ強さです!! ランク19なんて知りません!! 知りたくも無いです!!

 皆さーん!! 落ち着いて!! 落ち着いて避難の準備をーー!!』


 落ち着かせるつもりの無い避難指示だ。

 実際聞いていた人達は完全なパニック状態になり始めていた。鎧を着たまま走っている人もいて危ない。

 と言うか恐慌状態になるの早くないかな?


 僕は魔物の大軍を探す。


 …………。


「……コアさん、どの大軍が居るところも僕達が修理のお手伝いしたダンジョンの在った場所だよね」

「……はい、都会って本当に恐ろしいですね。まさか危険があんな近くに在ったとは……」

 危ないところだった。ここに来るのが遅かったら巻き込まれていたかも知れない。


 それにしてもあの時は壊れたダンジョンしかなかったけど、あの魔物の大軍は一体何処から?



 アンミールお婆ちゃん達も簡単な会議を始めた。


「…………とんでもないのが出ましたがどうします?」

「今度ばかりは生徒達だけではきついかと」

「ランク19なんて普通に世界そのものが滅びる脅威ですよ? しかもそれが複数体、現在も数が増えている」

「我々で倒して来ますか?」

 どうやら放送の先輩達がパニック状態になって当然の事態らしい。しかし先生達にとってはどうってこと無い事案のようだ。


「有り得ない現象なので犯人捜しはしなくても判って居るのですが、それだけに今のうちから生徒達に慣れさせた方がいいかも知れませんね」

 何故かアンミールお婆ちゃんは僕達を見ながらそう言う。

 それに合わせてここに居る全員が僕達を見た。まるで僕達が犯人だと言っているようだ。


 いや、きっとか弱い僕達を心配して見ているだけだろう。そうに違い無い。


「アキホ、あなたの力で生徒達を護ってください。それで問題無いでしょう」

「解ったよアンミール様。もう始める?」

「いえ、まずは生徒達に戦うように通達しましょう。覚悟やらを学ばす事も大切です」

「了解」


 アンミールお婆ちゃんから頼まれたのはアキホと言う人で、僕達を迎えに来た時も一緒に居た、にっこり穏やかでどこか楽しげな雰囲気の黒目黒髪の女の人だ。

 僕の知っている英雄譚(ライトサーガ)の登場人物に同じ名前で、【喜劇のヒロイン(ハッピーエンド)】と呼ばれる人が居るが、まさかね。


 アンミールお婆ちゃんの言う通達は放送としてすぐに流れた。

 放送部の先輩達は使い物にならなくなって居るのか、声は先生のものである。


『全生徒に連絡します。先程の放送通り、現在終結していないゴブリンの大軍も含め魔物大軍が七つ発生しました。

 これは訓練ではありません。全員討伐に向かってください。

 繰り返します。これは訓練ではありません。魔物の大軍が七つ発生しました。全生徒の皆さんは討伐に向かってください』


 この放送で先輩達は一斉に転移やらで学都から逃げようと試みる。しかし弾かれ無効化され騒ぎ出した。

 何故かパニック状態が一周回ってしまったのか、口々に学園を非難している。


「鬼悪魔人でなし!!」

「これはスパルタ教育じゃない! 虐待だー!!」

「PTAー!! 仕事しろー!!」

「家のモンスターペアレントが黙って無いぞ! こう言う時にこそクレーム言いに来い!!」


 中にはいつの間にかプラカードや拡声器を持って本格的に抗議する先輩まで居る。

 そんなに道具を整えて文句言う暇があったら今すぐに戦闘準備を整えるべきだと思う。


 高学年の先輩達が特に抗議に参加しているから、やはり慣れと言うものが存在しているのかも知れない。

 そして何処か先生達への信用もあるのだろう。高学年の先輩達からは絶望感と言うものを感じられない。ただ嫌がっているだけだ。


 これと逆に低学年、特に今年から入学する僕の同級生君達は大パニック状態だ。

 安全と判っている僕からすると悪いけど、派手な大根演技を視ていると思えるくらいに色々と凄い。


「はは、だ大丈夫さ! お俺達は死霊王を倒して、へ平和に、く暮らすんだろ? ま、魔物なんて、た倒せばいいさ!」

 と悲壮感漂わせる同級生君。玩具のようなペースで震えている。

「に、兄さん、漏れてる!」

「しょ、しょうがない、だろ! お俺は魔物の気配に敏感なんだから! そ、そう言うお前だって!」


 うん、この兄妹はあまり視ないであげよう。


「神よ私をお救いくださいお救いくださいお救いくださいーー!!」

 こちらは一心に狂信的に祈る同級生さん。

「神像に落書きしたの謝ります! お布施と称して勝手に小遣いを稼いだのも謝ります! 薪代わりに教本燃やした事も謝りますからぁ! どうかお助けてくださいお助けくださいお助けくださいーー!!」

 狂信的に祈っていても狂信者では無いようだ。寧ろ背信者のようだが神に祈る心境らしい。


「ははははははは、ははははははは、わはははははは!!」

 目を見開きながら泣き笑い狂う同級生さん。人形のような整った顔の子で怖い。

「ははは、何でよ、わははは、何なのよこの学園は、強すぎる魔物ははは、出るし、強化薬、ははははは、笑い薬の効果あるしはっはっははは!! わっはっはははは!!」

 壊れて笑っていた訳では無いらしいが最後の方は本気で笑い出した。


「ははは、何もかも終わりだ…………。そうだ、もう何してもいいって事だよな? ひゃはは! おっぱい揉んでやるぜ!」

 と善からぬ事を企む同級生君。


 すぐさま女の人が居そうな可愛らしい洋服屋さんに飛び込んだ。


「アッラァ~、可愛い子がワタシの胸に飛び込んで来たわぁ~。こんな時だし少しぐらいカワイガッテもいいわよぉねぇ~?」

 洋服屋さんは漢女さんの経営するお店だったらしい。どんな時でも天罰は存在するようだ。

「いやぁーーーー!! せめてキレイなまま死なせてーーーー!!」

 同級生君は漢女店主さんの脇に抱えられ店の奥に消えて行った。


「前世の約束、覚えているか?」

 こちらは念願叶い出会ったばかり転生者二人。

「忘れる訳無いでしょ。伝説の勇者魔王として何度も召喚されついに魂が保てなくなったあの時、生まれ変わることがあったら一緒に暮らそうって、今度こそ普通の生活を送ろうって」

「ああ、だがここでもそれは叶いそうに無い。だからまた約束してくれ、いつか一緒に暮らそう」

「勿論。次こそは必ず。永い永い因縁から解放されて、たった千年で廻り会えた。私達は何処までも繋がっている。必ず願いを叶えよう、二人で」


 なんか凄そうな物語が展開されている。そう言えば二人からは某有名大人災と似た気配を感じるが、気のせいだよね?

 どちらにしろ後でサインを貰おう。


 それにしても二人の反応から知識を持っている、しかも元が勇者や魔王の人でも死を覚悟する状況のようだ。

 ……高学年の先輩達の身に一体何があったのだろうか? 嫌がっているだけって?



 先輩達や同級生の皆がまだ意志をはっきりさせない中も魔物達は進軍を始めた。


 しかしそれを阻む存在が無い訳ではない。

 出現場所やその近くに在った兵器等が動かされていた。特にオークの出た建築科試験場、トロールの出た薬学科砂漠実験場、ギガントの出た工学科山脈実験場にはその手の兵器等が大量に在り、無人ながらも魔物を駆除し続けている。


 何人かの先輩は遠隔ながらも戦闘に参加し出したらしい。魔物の近くにある兵器や街中にある遠距離兵器を操作し出した。


 オークは建築科の試験場に建つ無数の砦や城、果てはピラミッドのような前衛的(?)な建造物やどう見ても一般的な家に設置されていた兵器に足止めされている。

 矢や銃弾、砲弾に魔術撃、ミサイル等の嵐を受けてオークはその数をかなり減らしていた。しかし前列にいる弱い種のオークぐらいしか倒せていない。


 まあ設置型の兵器で全ての脅威を払えたら今頃戦士は居ないから、ここの武器は十分役立っていると言ってだろう。

 それにしても何で建築科の建物には兵器がくっついているのだろうか? しかもここ、学園だよね?


 しかし長くは持たないだろう。無人で弾や魔力の補充が無いからだ。多少は自動生産も出来るようだが消費量の方が明らかに多い。

 それに下手にオークに鎮圧され乗っ取られたら大変だ。後は先輩達のなるべく早い到着を信じるしか無い。


 トロールの大軍が出現した薬学科砂漠実験場には建築科の所とは違って建物の類いが殆ど無い。乾燥の酷い砂漠が広がっているだけだ。

 だが兵器に類する物は存在した。

 火炎放射器のように広範囲を焼却するものや、逆に冷却する設備、しかも砂漠全体を何重もの結界が覆っていた。どれも即席で造ったものではなく何ヵ月もかけたような本格的なものだ。

 これらの設備は対魔物ではなく対薬災用なのだろうが、今は十分な効果を発揮していた。


 トロールの再生力は問題だがここは暫くこのままで持つだろう。


 ギガントの出た工学科山脈実験場は高い山脈で幾つも分けられた兵器実験場のようだ。

 その為幾多の兵器とその被害を外に洩らさない為の強化された山脈がある。

 しかし相手は魔物の巨人、ギガントの大軍に対してはそれなりの成果しか上げられていない。


 また人が居ないと動かせない兵器も多数あるようだ。強力そうなものほどその傾向にある。

 ここも早く先輩達が到着しなくては駄目そうだ。


 先輩達も遠隔操作や遠距離から攻撃出来る先輩から次第に戦闘に参加し出す。


 僕のいる建物がある街、第一校舎でも様々な動きがある。

 各所ではゴブリンとの戦いとは比べものにならない巨大かつ複雑緻密な魔法陣が数人がかりで展開され、今まで隠れていた兵器が姿を現す。

 そして飛行艇等の乗り物も姿を現し出した。あれで出撃してそのまま戦うのだろう。


 これらの設備のお陰で景色が大きく変わった。

 ただの草原だった場所には魔術増幅装置である百メートル級の高い塔が地面から突然突き抜けて来たり、砲門が所狭しと備え付けられているメタリックな要塞が出てきたり、山が割れた中から巨大過ぎる砲台が姿を現したりと、自然風景だったところに兵器な建造物が立ち並んでいた。

 一体どうやって造ったのだろうか?


 第一陣としてゴーレムの乗った何隻もの船が各地から飛び立つ。

 船は海に浮いているのと同じ姿のものから空を飛ぶ為に進化したものまで多々あり、木造のものから金属製のものまで揃っている。空を飛ぶ原理や推進力の方式も様々だ。

 作り手によって船の型の文化が違うと艦隊に世界の連合軍と言う感じが出て頼もしい。幽霊船のような船もここに混ざると頼もしさが出ている。


 そして第一陣が到着する前に遠距離攻撃が放たれ始めた。


「「「儀式魔法“天柱”」」」


「「「儀式魔法“インフェルノイグニス”」」」


「「「儀式魔法“ギガブロー”」」」


「「「儀式魔法“レギオンアロー”」」」


 大人数で発動することが前提の儀式魔法、対軍用の魔術は目標違わず魔物に炸裂する。


 ファッスゥンッ!! バゴォーーンッ!! ドゥオゴォォーーン!! シュパバババッッ!!


 広範囲を包む高エネルギーの光の柱はオークを消し去り、波のような爆発を伴う獄炎はコボルトを焼き、黒紫に輝く圧力はオーガを引き潰し、光矢の雨は各地の魔物に穴を開ける。

 他にも各地から放たれる超広範囲かつ高出力の魔術は魔物を滅ぼし続けた。


 街等に設置された遠距離兵器も火を吹き始める。


「第一から第八魔晶石、魔力充填よし!」

「全魔力回路接続良好!」

「標的確認、誤差修正!」

「“超大型魔穹オリオン”発射準備よし! カウントダウン開始!」

「「「「3、2、1、発射ー!!」」」」


 斜めに建つ塔を軸とする魔法の大穹から巨大な光矢が射出された。

 空気雲を裂きながら瞬く間にオークの真上に招来し、オークの大軍に突き刺さる。

 ジュッドオーン!!

 そして一帯が光に包まれる。


「コボルト上空の掌握完了!」

「各種属性血晶石も良好、いつでもオーケーだよ!」

「“気象管制機関ウェザリエ”! 奴らを凍らせろ!」


 五つの紅く輝くユニットの軌道を周囲に持つドーム状の施設はコボルトの上空に氷色の光線を送り続ける。

 するとコボルトが居るところの天気が豹変し、猛吹雪が吹き荒れる極寒の世界に早変わりした。強風に加速された西瓜大の雹とそれらの摩擦によって生じた雷が凍えたコボルトを減らしていく。


 他にも魔物へは条約か何かで使えなくなりそうな兵器の猛威が襲いかかり続けた。

 本当に何故学園にこのようなものがあるのだろうか? 都会ってよく解らない。


 しかし魔物もただ殺られている訳ではなかった。

 上位種等は結界を張り防いだり、大規模魔術でやり返したりしている。それで稀に破壊される設備もちらほらと視え始めた。


 そんな中、ゴーレムの乗った船は途中撃墜されるものを出しながらも魔物へ攻撃が届く範囲に到着した。

 まずゴーレム達は空の船からゴーレムコアを地面に落とす。ゴーレムコアは周囲の地面を纏いながらゴーレムになり、そしてこのゴーレム達が魔物に突撃していった。

 船に乗ってきたゴーレムはそのまま船に乗り込み、そこから攻撃を開始する。備え付けの大砲や弓矢、魔道具を使って攻撃した。


 さて次は人の到着だ。

 そろそろ本格的な戦いが始まる。



「アキホ、そろそろお願いします」

「じゃあ始めるね」


 おっ、アキホ先生が何かを始めるようだ。

 どんな力で生徒を護るのだろうか?


「ゴホン、“全ては喜劇♪ 一緒に笑おう楽しもう♪”」

 アキホ先生は朗らかに歌い出す。

 そして周りの先生達もそれに合わせて演奏をし……させられ始めた。何故か楽器でなく武器やそこらにあるものを使っているのに美しい音楽が奏でられている。


「“魔物軍勢怒涛の進行♪”」

 先生達も歌に参加させられ始めた。まだ効果は解らないが周囲を巻き込むようだ。

「“楽しめる筈無い恐怖と絶望♪”」

「「“涙と絶叫♪”」」

「“街を埋め尽くす大火と黒煙♪”」

「「“狂気の宴♪”」」

 そしてこれはただの歌と言うよりもミュージカルのようだ。


「“何で楽しめない? 何で笑わないの?”」

「“死が笑える訳が無い♪”」

「“だったら死ななければいい♪ これは喜劇♪ そんなことは赦されない♪”」

「「「“喜劇♪ 喜劇♪ これは喜劇さ~♪”」」」

「「“喜劇の中に♪”」」

「「「“喜劇♪ 喜劇♪ 喜劇に生きる~♪”」」」


 歌声が学都中に響き渡り浸透する。

 桜吹雪も舞い始めた。あれ? よく見たら僕が出していた。いつの間に?



 先輩達の方でも変化があった。

 あれほど嫌がっていたのに今は見事なステップを踏みながら船に乗り込んだ。


「嫌だ嫌だ俺は行きたくない♪」

 歌って居るが顔に全面的に嫌だと書いてある。足だけ勝手に動いて居るようだ。

「私も嫌よ何なのこれは♪」

「PTAに訴えてやる♪」

 先輩達は船の硝子に張り付きながら連れ去られて行った。


「俺の死に場所それはー彼処ー~♪」

「いざ行かん♪ 戦場へ♪」

 一方ノリノリの先輩もいた。因みにリズムはミュージカルっぽければ何でもいいようだ。

「「それがー~♪ 俺達の生き方~♪」」


 どういう原理かスポットライトを浴びている先輩達もいた。


「それでも行くのか♪」

「死ぬかも知れないのよ♪」

「ああ、それが俺の生き方♪ 定めなのさ♪」

 王子のような先輩を友人の騎士っぽい先輩とお姫さまっぽい先輩が止める。まさに演劇のようだ。


 そしてラブロマンスへ。

 二人は熱いキスを交わした。

 王子のような先輩と騎士っぽい先輩が……。

「「――――ッ!!」」

 二人共凄く嫌がっている。どこまでも喜劇のようだ。


 視たことある人もいた。


「そこのお嬢さん俺の愛を~♪」

「ごめんなさい♪」

「そこのお姉さん付き合ってください~♪」

「無理です♪」


 この流れに身を任せちゃえと異世界勇者のイタル先輩。ゴブリンをリア充とか言って爆破していた人だ。

 求婚しまくっては振られている。


「誰でもいいから抱かせてください~♪」

 イタル先輩は歌の力で何とかしようと粘る。

「「「嫌よキモい♪」」」

「童貞のまま死にたくなあいーーーー♪」

 これが今回の行動原理なのだろう。


「あなたはまた童貞で死ぬんです~♪」

「そんな嫌だ♪ 俺は童貞を捨てる~♪ そうだ女神様付き合ってください~♪」

「絶対に嫌です♪」

「実力行使だ♪ せめて胸を~♪」

「させる訳無いでしょこれでも食らえ♪」


 それから暫くパチンッ!パチンッ!パチンッ!とリズミカルな音が響き渡った。


 もう戦闘を始めた先輩もいる。


「所詮は猛牛斬り倒しやる♪」

 と歌っては居るが如何にも戦士なゼルディア先輩。両手剣でミノタウロスを一撃必殺で倒し、ミノタウロスの大軍の中を切り開き走り込んでゆく。


「誰もついて来なくていい♪ 俺は一人でも突き進む♪」

 振り降ろされる斧の間を潜り抜けミノタウロスを切り伏せる。ゼルディア先輩は後ろを振り向かない。

 だが危ない! 後ろから刃が! ゼルディア先輩はわざとらしくあっしまったという顔をする。


 キンッ!


「なに一人で行って居るのよ♪」

「俺達は仲間だろ♪」

「共に進むって決めたあの日♪ 忘れたのでしょうか♪」

 ゼルディア先輩のクラスメイト達が助けに入った。こちらもわざとらしく。


 そしてスポットライトを浴びたゼルディア先輩は。

「ありがとう♪ すまなかった♪ 俺はいつも一人で突き進んでしまう♪ 仲間のことを考えずに♪ それなのに皆俺の為に~♪」

 剣を地面に刺して歌い踊り出す。


「「「当たり前さ♪ 見捨てたらこっちまで成績が下がるのさ~~♪」」」

 うん、やっぱりここに感動やらは無いらしい。あるのは喜劇だ。


 だんだんと他の人達も混ざり始める。

 その動きに何故か踊りが交ざって居るが戦闘の邪魔はしていない。寧ろ本の少し本来よりも動きがいい気がする。



 そう言えばここでつり橋効果の縁結びを出来るだろうか?


 危険、恐怖が喜劇に入れ替わってしまっている。まあやるだけやってみればいいかな?


 まあそれよりも今は。


「「アキホ先生! サインください!」」

 これが一番大事だ。アキホ先生は力から本物の【喜劇のヒロイン(ハッピーエンド)】に間違い無い。あの英雄譚(ライトサーガ)、【喜劇の勇者】の最後を飾る喜劇の勇者達全員の子孫、喜劇の勇者達全員の力を一人で持つ最強の勇者。大英雄だ。


「“それも喜劇ね~♪”」

 アキホ先生はまだ歌いながら苦笑してサインを書いてくれた。


 今日はもう良い日だ。





 《用語解説》

 ・原種ゴブリン

 アークが初めて倒したゴブリン。

 ランクは測定不可。少なくとも二桁では無い。見かけはただのゴブリンだが気配は絶対強者、歴史に残り続ける大英雄以外では束になっても倒せない。

 当然この事をアークは知らない。

 またこれも当然の事だが最果ての龍はこれより何段階もさらに強い。




 《英雄譚(ライトサーガ)

 ・【喜劇の勇者】

 初代勇者・・・・の物語。喜劇を公演していた一クラス全員が彼らの言う異世界に召喚され、世界を救う内容である。

 勇者達はそれぞれ喜劇での役割を元に力を与えられ、喜劇風のことしかできない。その為か作中、一切の死者が出てこない稀有な救世系の英雄譚ライトサーガである。

 尚、アークの愛読しているのは全て史実のオリジナル版である。

 世間では昔からある童話扱いで、史実どころか英雄譚とも思われていない。

 また知名度はかなり高いが、全て読んでいる者は殆どいない。これはこの英雄譚がかなり古く、所々失伝している為である。


最後までお読み頂き、ありがとうございます。


追伸、次話の更新が諸事情により10日以降になってしまいそうです。申し訳ありません。

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