第二十話 大通りへあるいは嫁創り実践の序章
「アーク、この後は何をしますか? 学都を探索してみますか? それとも私達が案内しますか? このまま休憩でも良いですよ」
早めの昼食を終えた僕は今後の予定を聞かれた。
「う~ん、コアさんと二人でとりあえず学都を見て回ろうかな」
初めての都会だから何の情報も無しに素直に触れたい。
「分かりました。何かあったら呼んでください。学都全体が私ですからすぐに行きますよ」
「ありがとう。じゃあ行って来るね。コアさん、行こう」
「はい、御供します」
僕達は空中庭園を飛び降りた。
僕達は大きな広場に降り立った。
結構空を飛ぶ人がいるからか僕達を気にする者は誰もいない。
このまま田舎者がバレて目立たないように探索しよう。
「うわぁー、凄い人の数だね。学都って言うだけあって皆学生だし」
「…はい、上から視るのと実際に同じ目線で見るのとでは全く違いますね。この広場に居る人の数だけでも、私のダンジョンに来た累計人数よりも多いかもしれません」
僕達はまず人の数だけで圧倒された。変態や変人で精神を鍛えられていなければ半日は立ち尽くして居たかもしれない。
僕達はとりあえず歩き出す。
どうしても田舎者丸出しでキョロキョロとしてしまうが、同じようにしている新入生らしき人が大勢いてあまり目立たない。と言うよりも僕達を見る者等居ない。
意外と田舎者に優しい都会かもしれない。
広場から分岐する大通りはどれも屋台や店に溢れ、活気に満ちている。僕達はそんな大通りの一つを進むことにした。
どの店も学生が営業しているようだ。軽食を売る屋台にしっかりとした飲食店、服屋さんから武器防具を売る店まである。
お値段はどれもお安い。学生が嬉しい通りだ。
「コアさんどうする? 何か食べ物でも買う?」
「まだ食べる気ですか……。そう言えばお金は持っているのですか?」
「持っているよ。村で皆のお手伝いをして貯めたんだ。ほら」
僕は貯金箱代わりにしている空間を広げて見せた。金貨で埋め尽くされた空間だ。
「……凄い量ですね。学都も買えるんじゃないですか」
コアさんは御世辞がみえみえで下手だ。でもその善意は有り難く受け取っておこう。
「村じゃ使うところが無いから貯まるみたいなんだよね。その分古いお金が多いみたいだから多分そんなに価値は無いよ。あっ、このお金使えるかな? 都会じゃ使えないかも…」
下手に都会のお金と違い過ぎると、衛兵さんに連行される可能性さえ十分にある。
「本の知識ですが、確か金貨等は材質その物に価値があるそうですよ。ですからいくら古かろうが多分使えますよ」
「それは間違いだと思うよ。金なんて幾らでも生み出せるから、お金として使える程価値は無いよ。コアさんも金ぐらい幾らでも生み出せるでしょ?」
「そう言えばそうですね。黄金は兎も角金でしたら幾らでも生み出せますからね。本の知識を鵜呑みにし過ぎてしまったようです」
多分コアさんは魔法が存在しないという、異世界の情報が書かれている本でも読んだのであろう。僕も気を付けなければ。
「それでコアさん、この僕の持っている金貨は使えると思う?」
コアさんの間違いを正したところで、僕は一番数を持っている“フォン金貨”を出して聞いた。
「う~ん、フォン金貨ですか。これは軽量化や複製不可、所持者契約に召喚、両替等の機能が付いた硬貨ですから使えると思いますよ。貨幣として必要なものが揃っていますから」
「じゃあ試してみようか。コアさん、あの串焼き三十本買ってきて。タレと塩、半々ね」
僕は食欲を誘う匂いを撒き散らしているお肉の串焼き屋さんを指して頼んだ。
僕が指差した先には頭にタオルを巻き腕まくりをしているいかにもな学生店主が、炭火で大きめの串刺したお肉を焼いていた。
愛想よく元気に受け答えしながら次々と売りさばいている。客は多いのに並ぶことは無い。注文を受け肉塊の状態から捌き串刺し焼いているのに、すぐに串焼きが出来上がる。唯一流れが滞るのは金勘定ぐらいだ。
明らかに何らかの技を使っている。道具も普通のものでは無い。
包丁は薄っすらと青く輝き軌跡を残しながら肉塊を捌き、切り分けられた肉は自分から串に刺さる。炭火は通常よりも紅く光りあり得ない速さで肉を焼くが、どういう訳か肉が焦げることは無い。塩は炭火に落ちることなく肉にだけ撒かれ、タレは球体状に浮きそこを串刺し肉が通ってゆく。そして肉をひっくり返すと紅の炎が上り串焼きは完成する。
見ているだけで満足してしまいそうだ。どれが店主の技でどれが道具の力か判らないが、何にしろ間違いなく美味しい串焼きを提供してくれるだろう。
「私が買いに行くのですか? 嫌です。食べたいのなら自分で行ってください」
「え~、買って来てよ。一本ぐらい奢ってあげるから」
「三十本は全部マスターが食べるつもりだったのですね。そんなに買うのならせめてもう少し串焼きをください。まあ何にしろ私は買いに行きませんからね。私に買い物を出来る程のコミュニケーション能力はありません」
「僕にもそんな高等なコミュニケーション能力無いのに。コアさんも一応僕の眷属みたいなものでしょ? たまにはそれらしい仕事もしてよ」
「マスターこそ、いつも頑張っている私を労って串焼きを買ってくれても良いと思いますよ」
コアさんが言うようになった。友達としては良い傾向かもしれないが、こんなところで発揮しなくても良いと思う。
「じゃあ眷属を喚ぶよ」
「初めからそうしてください」
「だって何かをやらかしそうで恐いじゃないか」
あまり眷属を頼りたくはなかった。もう既に一部の眷属達が衛兵さんに連行されたからだ。それに当然眷属達も買い物をした事が無い。本当に大丈夫だろうか?
「「お呼びでしょうか?」」
話をしている間にも眷属は現れた。サカキとナギの二人だ。もう引き返すことは出来ない。
そして早速問題発生だ。それは二人の服装、いつもの巫女装束だ。こんなコスプレのような格好をしていれば悪目立ちするに決まっている。
僕とコアさんは無言で会話する。
「“装植”」
「“チェンジ”」
僕が二人の新しい服、スーツを作り、コアさんがそのスーツと二人が着ている巫女装束を入れ換える。
「「主よ、これは?」」
「君達にはあそこの串焼き屋さんで買い物をして欲しいんだ」
「それで何故我らはスーツ姿に?」
「主の御命令、遂行には正装でなければ」
「正装で屋台に買い物をする者は居りません。スーツ姿で買いに行ってください」
「「御意」」
どう考えてもスーツ姿の方が正装だが納得してくれたようだ。流石はコアさん。
「あっ、お金はこれね。ここから好きに使って良いから」
僕は貯金箱空間を広げて見せる。いつも僕の無限収納に帰還している眷属達だ。多分許可さえ出せば使えるだろう。
「どれが使えるか判らないので、それも聞いてきてください」
これで何も問題は無い筈だ。
きびきびと二人は串焼き屋さんに向かう。
「串焼きを頂きたいのですが?」
「あいよ! 何本で? 塩とタレがあるよ!」
「その前にこちらの硬貨は使えますか?」
ナギがフォン金貨を出して見せた。
「……そんなもの使える訳ないだろう。場所を考えてくれ」
店主さんはひきつった顔で目を金貨から離さずに答えた。さっきまでの威勢がない。
残念ながらフォン金貨は店主が呆れて顔をひきつらせる程、田舎の通貨のようだ。残念。
「ではこれは?」
「……それも十分に使えないよ」
「ではこちらは?」
「……ふざけないでくれ」
悪ふざけまでしているように思われたようだ。
このようなやり取りが続き、最終的に普通の何の効果も無い金を使った金貨が使える事が判った。
店主さんはもうぐったりとしている。なんかごめんなさい。
「普通の金貨で良かったんだね。何の効果も無いけど」
「ここが学都だからではないですかね? 買い物もあくまで学習の一環なのでは?」
「ああ、なるほど。だから偽物を使っているのかもね」
買い物や商売の練習で本物のお金を使うのはおかしい。きっとコアさんの推測が正しいのだろう。
「この金貨が使えるのですね。ではとりあえずこの金貨一枚で買えるだけください」
サカキがそう言って五センチ程の金貨一枚を渡す。恐らく金貨の価値を計る為だろう。
そう言えば何本買ってもらうか言ってなかったな。
「そんなに買うのかい? うちの串焼き一本50フォンだから、大金貨一枚で二万本買えるけど?」
この言葉で大体判った。学都内でのお金の単位は英雄譚に出てくるのと同じフォンで、サカキの渡した金貨は大金貨と言い百万フォンの価値があるらしい。
「はい、二万本ください」
「ま、まいど! ちょっと準備が必要なんで少々お待ちを。ふぅー、“汝は朽ちた 汝に遺るはその身のみ 我は求める 汝が最期我に預けよ 汝はまだ終らない 今一度輝け 全てを燃やせ出し尽くせ 汝が全て引き出そう 我が身に宿れ 我は真の最期を知る者なり”」
無茶にしか思えない注文を受けた店主さんだが、彼は断ることなく真剣に何やら呪文のようなものを唱えだした。
田舎者の僕では恥ずかしくて唱えられないような呪文だ。
魔力生命力の流れからして、もっと簡単で普通の言葉でも十分同じ結果が得られると思うのだが、きっと都会流の深い意味があるのだろう。
店主さんの周囲には紅の光が溢れてくる。何であれ意味のある行為で間違い無い。
無茶な注文をした二人を連れ戻し注文を撤回させようと思ったが、まだ様子を見た方が良さそうだ。
「“紅炎昇華”!!」
呪文の最期に店主さんは技の名前を唱えた。
紅の光が彼に集り収束していく。そしてまるで赤熱した炭のように紅く輝きだした。
その身体を通り過ぎる風は炎へと変わる。体温まで赤熱した炭のように熱いのだろう。
「文技、“一紅瞬斬”、“百連串刺し”、“紅閃”、“炭焔紅光”」
店主さんは紅く輝いたまま文技を発動した。
技名がどこか武技っぽいものだが、やっているのは元々の調理手順と同じだ。それでいて文技の内容が名前通りといえばそうなのが不思議である。紅の光が移った包丁の一閃で数多の肉を捌いたり、一瞬で串刺し肉を百本程作ったりしている。
屋台という狭い空間でやっていなかったら、戦闘の練習か何かにしか見えないだろう。
しかし明らかにさっきまでの営業と比べて手際が良い。恐らく紅い光が何か関係あるのだろう。
一つ一つの工程もそうだが、全体の文技を挟まないであろう動きがかなり良くなっている。“紅炎昇華”とやらは全体強化能力なのだろう。多分本来は料理に使う力じゃ無いと思う。強化幅が過剰だ。身体が発する熱も必要ない。
それでも店主さんは巧みにその力を使っている。身体が熱いのに木製の串は燃えていない。料理の為に頑張ったのだろう。
「都会の料理は凄いね。こんなのだとは創造もしていなかったよ」
「私もです。それにしても二万本、要りましたか? 注文している段階で止めるべきだったのでは? そもそも二万本も食べられますか? あの串焼きそこそこ大きいですよ」
「そのぐらい食べられるよ。三十本も二万本もそんなに変わらないからね」
「一体どんな食欲を持っているのですか……」
そうこう話しているうちに幾本かが焼き上がりナギが持ってきた。サカキは出来上がったものを受け取る係らしい。
ナギが持参したらしい大皿に串焼きが盛られている。
「ありがとう。早速いただくね、あぐっ」
「では私も、はむっ」
僕達は串焼きに齧り付いた。
口の中には程よい肉汁が軽く塩で味付けされ広がる。何の肉かは判らないが肉の味が上手く引き出されていた。
焼き加減も丁度良い。いや寧ろそれがこの串焼きの一番の特長と言って良いだろう。
タレ味の方を食べるとそれは確信に変わった。炭火あってこその味付けだ。一瞬で焼き上げているのに不思議だが実に上手く焼いている。
何本でも食べられそうだ。
おまけに身体が温まり力が湧いてくる。何らかの効果があるのだろう。
都会の屋台って凄い。
「美味しいね。コアさん」
「はい、私でも三十本ぐらいは食べれそうですよ。もう一本完食してしまいました」
そう言いながらコアさんは次の串焼きへと手を伸ばした。しかしその手は空を掴んだ。
「次の串焼きはまだだよ。ほら、今サカキが受け取って大皿に盛っているところ」
「……ほんの少し前までは飾り用としか使われないサイズの大皿に、山盛りで少なくとも五百本は有りましたよね? ……いつの間に食べたのですか?」
「コアさんがまだ口の中でもぐもぐしている頃には食べ終わったよ。そんなに驚くこと? 店主さんが二万本の注文に応えてくれたから、多分都会の人も食べる人はこれぐらい食べるんだと思うよ」
そうでなければ作れない筈だ。もし作る機会がなければあのような技が身に付くことは無かっただろう。手間の大して掛からない工程で使う必要は無い。
「そんな訳ありませんよ。串焼きを運んでいるナギの周りを見てください」
コアさんにそう言われて見てみた。ナギと僕の食べる量にどんな関係が?
見ると新入生らしき人々を中心に、ナギとその手に持った山盛りの串焼きや凄い勢いで調理する店主さんを凝視し動きを止めていた。
「うわぁー、凄い技術だ。僕もあの先輩みたいになれるかな?」
と料理人志望らしい新入生。店主さんに憧れの目を向けている。
「新入生歓迎の見世物? 流石は【最高学都】と呼ばれるだけはあるわね」
と言うのはプライドが高そうな新入生。由緒ある家系の生まれに見える。
「ここまでレベルが高いなんて! これじゃ夢の知識チートライフが! ハーレム生活がー!!」
人目も憚らず叫ぶのは魂が特殊な新入生。見た感じ異世界からの転生者だろう。初めて見た。後でサインでも貰おうかな。
「あの先輩強そうだな。少なくとも俺よりも強いだろう。後で手合わせ願うか?」
これは完全武装の新入生。既に戦闘経験豊富そうだ。ブーツに血が付いている。
このように反応するのは殆どが新入生で、注目するのは店主さんについてが中心だが、中には違う部分に注目する先輩もいた。
「さっきあの秘書みたいなのが出したの本物のフォン金貨か?」
「いくらこの学園でも屋台に使おうとするヤツが居る訳ないだろ。ここでも博物館に保管されている代物だぜ」
「でもよ、あの金貨出ている間とんでもない圧力感じたぞ。カイルも感じただろ。他の連中も感じたみたいだし」
「他の金貨もヤバイ気配感じたぜ? これはどう説明するんだよ」
冒険者風の先輩達は金貨について話していた。そんなに珍しいかな?
「あの美しい殿方は一体? これ程までに美しい方見たことがありませんわ。財産も素晴らしいようですし、連絡先をお聞きしようかしら」
「な、何を言っているんだい!? 僕と言う彼氏がいるのに! ウォウ! 巨乳の超絶美人! 何て美しい方なんだ。ぜひとも踏んづけてもらいたい!」
縦ロールのお嬢様風先輩と貴公子風の先輩は軽く口論になりかけている。このあと一波乱起りそうだ。特殊な性癖まで暴露しているし。
「今年は、いえ今年から激動の日々が幕開けそうですね……」
「ハァー、今日だけで経験した事がない事件が幾つ起きたことか……もう生徒会辞めようかな?」
「先輩っ!! 待ってくださいっ!! 先輩が居なくなったら私達が過労死しますっ!! お願いだから辞めないでー!!」
真面目そうな学生服を来ている先輩達は……色々と大変そうだ。生徒会に入るのは止めた方が良いだろう。
さて、十人十色な反応だがこれだけは判った。
……これは日常風景では無い。
「……串焼き美味しいね」
「見て見ぬふりは止めてください。どうするのですか? ナギがこちらに来たら、大勢の視線がこちらに向くのですよ」
さっさと食べたおかげか僕達に向く視線はまだ無い。
「それは非常に不味いね……。どうしよう?」
対策を考えるしか無さそうだ。
しかしそんな時間は無かった。
「赤の他人のふりでもしましょう」
「いや、こっちに来るから無駄だよ。と言うかもうこっち向かって来てるよ。どうしよう!?」
「えー、だったらもう気配を消していましょう! あちらの方が目立っているので何とかなるかもしれません!」
僕達は努めて気配を消す。
田舎者は自然と共に生きる存在だ。自然に溶け込むのも得意な筈。やった事は無いけどきっとやれる。
僕は自然。僕は自然。僕は自然。僕は自然…………。
「主よ。御持ち致しました」
駄目だった。気配を消そうとしたがナギが来てしまった。
「……コアさん諦めて串焼き食べよう」
「……そうですね」
気配も戻そう。
ああ~、この串焼き美味しいな。
また大皿を空にすると、僕達は恐る恐る周囲を見た。
「どういうことだ? 急に串焼きが消えたぞ。わざわざ離れたところでアイテムボックスに仕舞ったのか?」
「あの美人は捧げ物を供えるようにしていた。特殊なスキルか何かで神に捧げたのではないか?」
「あの方が神で私達には理解出来ない方法を使い、御召し上がりになったのではないでしょうか? とても人には思えません」
どういう訳か僕達の姿は見えていなようだ。
気配はいつも通りに戻したのに。
「良く解らないけど僕達は見つかっていないみたいだね」
「その様ですね。元々気配が薄いのですかね?」
「僕達は田舎者で未熟者だからそうかもしれないね。いつかはコミュニケーション能力と力を身に付けて振り向いてもらおう」
「そうですね。今はゆっくりとしましょう」
こうして僕達の安寧は守られ、決意を新にした。
「でも串焼き待っている間暇だね。店主さんへのお詫びでも考えとく? 結構目立たせちゃったし」
「そうですね。待ち時間があるのはマスターの性ですが、兎も角良いと思いますよ。折角なのでマスターの嫁創りになるような方法でお詫びしませんか? 縁結びもどきを迷惑がる人は多分少ないでしょうし」
面白いアイディアが出た。どちらにしろ何時かはやらなければいけない事だ。やってみよう。
「コアさん良い事思い付くね。早速やろう。とりあえずあの店主さんと女の子を付き合わせれば良いんだよね? どうやれば良いのか知ってる?」
「私もマスターと同じで誰ともお付き合いしたことは無いので方法は分かりません。まずステータスを見れば良いのでは? 店主の方を知れば答えが見つかると思いますよ」
「そうだね。“鑑定”」
僕は店主さんを鑑定した。
大量の光の文字が目の前に現れる。そして僕はそれをコアさんにも見えるように限定的な可視化をした。いつもならこのあと余計な情報を省く作業をするが今回はしない。なるべく多くの情報が知りたいからだ。
まず一番重要なのはここ。
プライバシースキル:童貞Lv2
うん、ちゃんとあった。恐らく誰ともお付き合いしていないだろう。
これで縁結びしても問題無い筈だ。喜んでくれる筈。
次に一般的なステータス。これを見れば店主さんの事が大体解る。
名前:アベル・ニーク・グランチャコル
称号:炭焔の支配者、炭職人、炭オタク、アンミール学園生
種族:人族Lv2(人種)
年齢:15
能力値:
生命力 864/864
魔力 73/73
体力 521/521
力 115
頑丈 236
俊敏 141
器用 402
知力 94
精神力 173
運 86
職業:炭焔料理人Lv5
職歴:料理人Lv30、炭職人Lv24、炎使いLv27、炭焔術士Lv18
魔法:火属性魔法Lv2、風属性魔法Lv2
加護:アンミールの加護
スキル:
〈固有スキル〉
炭焔Lv3
〈パッシブスキル〉
火属性耐性Lv7
〈アクティブスキル〉
料理Lv8
炭造Lv7
アイテムボックスLv4
鑑定Lv2
生活魔法Lv3
火属性魔術Lv5
風属性魔術Lv5
炭火魔法Lv3
会計Lv2
身体強化Lv3
包丁術Lv5
うん、大体解った。
見掛けとあまり変わらないが、炭火料理専門の料理バカのようだ。なんと覚醒まで果している。スキルレベルも詳しくは知らないが、高い事から凄いのだろう。
問題はそもそも女の人に興味があるかどうかだ。炭火料理のことだけしか考えない人の可能性がある。
試してみよう。丁度ナギが串焼きを持ってきた。
「ちょっとナギ、お願いが」
僕はナギの耳元でゴニョゴニョと指示を出す。
全て聞き終わるとナギは大皿を僕に渡して、スタスタと店主さんの方へ向かった。
「マスター、どんな指示をしたのですか?」
「まあ見ててよ」
ナギは店主さんの目の前まで行った。
「店主さん、ここは暑いですね」
汗一つかいていないのに態とらしく手で自分をパタパタと扇ぐ。店主さんはナギを見た。
そしてナギは胸のボタンを一つ外し出した。店主さんは胸元を凝視する。
スーツの中に無理矢理収納されている双丘は残りのボタンを弾き飛ばす。店主さんは鼻から赤い液体を噴射した。
「あの店主さん、アベルさんは女の人に興味があるみたいだね。良かった。縁結びをしても大丈夫そうだ」
「それを確認したのですか。まあ確かに大丈夫そうですね。ですが……流血沙汰になっていますよ」
コアさんが手で周囲を示す。
「あっ……」
ナギを見ていたらしい人達が大勢鼻から血を流していた。
男女問わず多くの人が鼻血を吹き出させて大通りを赤く染めていた。
何故女の人も混ざっているのか疑問に思うが今は良い。またアンミールお婆ちゃんに怒られたらどうしよう?
嫁創りは前途多難のようだ。
《用語解説》
・フォン金貨
全ての金貨の中で二番目に強力な金貨。
当然とんでもない価値がある。所持していない大国の方が遥かに多いような代物である。
対価として捧げると大抵の事は出来る。
様々な能力があり軽量化や複製不可、所持者契約に召喚、両替等がある。
軽量化と複製不可は名前の通り、所持者契約は買ったものを絶対的に自分の所有物に出来、召喚はどこにあっても所有するフォン金貨ならば出現する財布兼防犯機能、両替は崩せば小さい通貨になる機能である。
・童貞
プライバシースキル。
名前の通り童貞が獲得してしまう恥ずかしいスキル。
似たものに当然〈処女〉スキルがある。
童貞を失うと消失する。
スキルレベルのアップは特殊で年齢制である。
生まれた時にLv1、14歳でレベル2、16歳でレベル3と2歳毎に上がっていき24歳でLv7となり、その後は30、40と上がっていき50でカンストする。
名前だけではなく強力な効果があり、その内容は基本的に〈処女〉と変わらない。
具体的には特殊な職業に就けたり、特殊なスキルを得れたりする。神職系が多い。尚、それらのスキル等は童貞を失った後、レベルが上がらなくなるが消えはしない。
童貞の転生者が強くなるのもこのスキル効果の一つである。
・プライバシースキル
他人にお見せ出来ない、したくないようなスキル。スキルであってスキルでは無い。もっと根本的な存在。
誰かが気を使ったのか〈鑑定〉がLv10であっても普通は見ることが出来ない。
しかし個別のプライバシースキルに反応する迷惑な魔法道具は存在している。
処女や童貞を判断する道具がそれである。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。




