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第二話 出合いあるいはステータス

申し訳ありませんが、ハーレム造りや戦闘等は第一章からの予定です。

第0章は0時に一話づつ更新していく予定で、なるべく早く第一章に入りたいと思います。

  『ダンジョン《最果て》の完全攻略条件が達成されました。攻略報酬を攻略者へと譲渡します』

  そんな無機質で美しい神秘的な声が、僕の頭へ、 そして全身へと響いた。


『………宝物庫の消失を確認。…………保有権能の行使が現状不可能と判断。攻略報酬の譲渡は不可。………特別措置の必要を確認。』

『…………攻略者を現状より最終攻略者と認定。初攻略者であることも考慮し検討。………………全てを攻略者に譲渡します』


「……………!?」

 声が終わると同時に、僕を不思議な感覚が襲った。

 自分が広がったような、満たされていくような、増えたような、魔力や生命力などを全力で出しきり続けながら自分の中でさらに莫大な量の力を生み出し続けているような、とにかくよく判らないがなんだか心地いい。


 そしてそんな感覚の最後に突如、りんごくらいの大きさの小さな星、世界のような球体が宙から現れた。

 球体はどこか薄れていて実体が無さそうだ。それでもとても大きな存在感を放っていた。しかし何故か力は感じられなかった。


 球体はゆっくりと光りの粒子になり僕の身体の中に流れてきた。力が増えていくというような感覚はないが、何かできることが増えていくような気がする。

 球体は完全に消え、全て僕の中に入った。


「…………………、……モグモグ…、ムシャムシャ……。」

 祭壇の光りも消え、異常が全て終わったので、僕はとりあえず予定通りに夕食にして心を落ち着ける。


 因みに夕食は昼のお弁当ではなく、僕自慢の野菜や果物だ。本当はここら辺で軽く料理するつもりだったがやる気が失せたので生のまま食べている。〈時空間魔法〉を使ってどうにか創った空間に畑があるので取れたて新鮮だ。

 無限収納は時間を止められるからといって、やはり取れたてのほうが美味しい気がする。


「モグモグ、ムシャムシャ……ゴクン。ふぅ~美味しかった。ごちそうさまでした。……“クリーン”」

 夕食を終えたので僕はテーブルとして使っていた祭壇を生活魔術の“クリーン”でキレイにする。

 僕が“クリーン”を使うと祭壇はうっすらと光り、光りが収まると祭壇は汚れ一つないキレイな状態になった。

 僕は今のところ〈時空間魔法〉しか獲得していないが生活魔術は使える。普通、同じ属性の魔法を持っていなければ魔術は上手く使えないが、生活魔術だけは別だ。魔力さえあればほとんどの人が使える。何故かは諸説あり解らないが、どの魔法も持っていなくても飲み水を出したり、火種を出したりできる。


「さてと、確認するか」

 さっき僕の身に何が起きたのかを調べる。とりあえず魔力や生命力などを全身に流してみた。普段から少し流しているが、今回は使いきるくらいの量を流してみた。使いきってもすぐに全回復するので大丈夫だ。多分日頃から食い溜めているからだと思う。

 周りの植物や食べた果物の種が急成長しているが、今は無視だ。


 しばらくすると、僕の中の何かが僕に完全に溶け込むのを感じた。でも結局何がどうなっているのか判らない。

 こんなときに自分のステータスが分かればいいけど僕は自分に鑑定を使えない。もう、何であんなに長い名前を付けるかな~。ついため息が洩れてしまう。


『マスターのステータスを表示致しますか?』

「………」

 僕がステータスを確認したいなと思っていると、突然頭の中に声が響いた。

 周りを見渡し、気配を探るが誰もいない。空耳かな? 初めての旅だから疲れているのかもしれない。寝てみようかな?


『誠に申し訳ありません。申し遅れました。わたくし、元ダンジョン《最果て》のダンジョンコアだった存在でございます。あなた様、マスターへのダンジョン攻略報酬として全てを捧げさせて頂きました』

 神秘的で中世的な声でもう一度、僕に話かけてきた。空耳ではなかったようだ。


 あれ? これって旅に出て初めての会話なんじゃ? 僕、今まで村の皆としか話たことないけど大丈夫かな? とりあえず向こうが自己紹介してくれたから僕も返そう。

 え~と、僕の名前は、アークです。まだ状況がよく理解出来ませんが、よろしくお願いします。こんな感じでいいかな?


「我の名は、アーク。汝は、何を望む? 」

 しまったぁぁぁぁーー!! あんなに練習したのに訛りが出てしまった!! 我、じゃなくて僕のバカ!! ううう、僕の第一印象が!! というか言葉、伝わっているかな?


『ご安心ください。わたくしは、マスターの一部、完全に同化しております。わたくしに伝えたいと、マスターが思ったことは全てわたくしに伝わっております。訛りが出ても伝わっておりますので問題ございません。改めてよろしくお願いいたします』

 訛っていても伝わったようだ。感情も読み取れるのかご安心くださいと、声をかけてきた。ただ、何でその感情になっているのかは判らないようだ。

 僕の心配事は、ちゃんと伝わっているか? じゃなくて、田舎者と思われていないか?だ。


『まず、只今の状況についてご説明させていただきますが、マスターはわたくしでありましたダンジョンを攻略なさいました。マスターが夕食のテーブルにしていた祭壇はダンジョン《最果て》の最深部、コアルームと呼ばれる部屋の中心で、そこに触れた者がダンジョンの攻略者となります。つまり、マスターはわたくしだったダンジョンの攻略者と言うわけです』

 コアさんの話によると僕はうっかりダンジョンを攻略していたようだ。

 でも何でダンジョンコアが僕の一部になったのだろう? そんな話聞いたことがない。そもそも何であんなに簡単に攻略出来たのだろう?


『御答えさせていただきます。まず、わたくしがマスターの一部となったのは、マスターがわたくしだったダンジョンを完全攻略なさったからです。

 ダンジョンに寿命はありませんが、わたくしは、太古の昔、それもそこらへんの神々が誕生する前から存在しております。あまりに長い時間、この土地に存在していた為に、ダンジョンのほとんどがが“領域”として存在出来ずに“自然”と化して、わたくしの元から離れてしまいました。わたくしの元に残ったのはこの建物だけです。

 ダンジョンの完全攻略は通常の攻略と違い、様々な条件をクリアする必要がありますが、ダンジョンのほとんどがわたくしの元を離れたことで攻略するだけで完全攻略となったのです。

 普通、ダンジョンが完全攻略されるとダンジョン内に残っている全ての宝物が攻略者のものになるのですが、わたくしの場合、全ての宝物が朽ちておりました。ダンジョンコアも攻略者が所有者となるのですが、わたくしはかろうじて形を保つ状態でした。そこでわたくしに残る全てを力に変換し、マスターに献上させて頂たのです』


 なるほど、何となく解った。まとめると僕は、風化してこの建物だけになったダンジョンを完全攻略したが、ダンジョンには攻略者に与える報酬がなかった為、代わりに残る全てを力に変換したものを受け取ったようだ。


『その通りです。ところでマスターのステータスを表示いたしますか?』

「うん、お願いするよ」

 少し話た(?)おかげか慣れてきた。今度は訛らずに応えられた。長い付き合いになりそうだから、村の皆と話すような口調にする。


「でも、僕のステータス判るの? 僕の名前長いから普通に鑑定しても判らないよ。」

『問題ありません。わたくしには広大なダンジョンでも管理できる処理能力があります。つまり、わたくしはダンジョンまるごと鑑定することも可能です。名前が長いくらいではまったく問題ありません。では鑑定を開始させていただきます。………うわ~長いですね。……あれ? 鑑定できない。たどり着きません………』

  「………………」

 ダンジョンまるごと鑑定できるコアさんでも鑑定できないなんて、僕の名前どんだけ長いのだろう。コアさんの口調まで崩れてしまっている。なんかごめんなさい……。


『くっ、崩れてなんかいません! あれは…その…あれです。とにかくマスターの素晴らしい御名前に呆れなんかしていません!』

「コアさん、また口調が崩れているよ」

 それにコアさん、聞いてもいないのに僕の名前の長さに呆れたことを必死に否定して、本当は呆れたってバレバレだよ。まあ、僕でも呆れることがあるから触れないでおこう。


『触れないで頂き、ありがとうございます。どうせならそのまま忘れて下さると幸いです』

「僕は触れないであげたのに……、そこは分かっていても黙っているところだよ…」

 どうやらコアさんは会話に慣れていないようだ。元々ダンジョンコアだから説明する能力は有っても、会話する能力はないのだろうか? それとも…、単純に話相手がいなかったから?


『わ、わたくしはコココ、コミュ障でもボッチでもありません!!た、ただ、わたくしという高等存在に釣り合うものが存在しなかっただけです』

「図星だったみたいだね……」

『………いや~、それだけマスターが素晴らしい方だということですよ。そんなことよりも、マスターのステータスを鑑定しましょう』

 コアさんは話を反らすことを覚えたようだ。ただ覚えたてのようで少し強引だ。僕も会話が得意な方じゃないから見逃してあげよう。

『見逃して頂き、ありがとうございます』

「……………」


「まあいいや、ところで僕のステータスを鑑定出来るの? さっきは出来なかったけど」

『はい、可能だと考えております。わたくしには、かつてダンジョン内にあった全ての情報が残っております。その中にはダンジョンまるごとどころか、国全体でも鑑定することが可能な秘宝の情報も有ります。マスターの御力をわたくしに分けて頂ければその能力の使用が可能です』

 鑑定に国全体を鑑定出来る秘宝が必要な僕の名前っていったい……。


「じゃあ、頼むよ。でも僕は何をすればいいの?」

『マスターの魔力の使用を許可してください。許可さえくださいましたら、わたくしの方で全て実行可能です』

「うん、僕の魔力を使っていいよ」

『ありがとうございます。では魔力を頂きます。……………………………復元に成功しました』

 僕が許可を出すとかなりの魔力が僕の奥へと消えていった。貯めていた魔力まで少し持っていかれた。

 普通、魔力を大量に消費すると脱力感が襲うが、今回はそれがない。多分、自分の外に消えたのではなく、自分の中に消えたからだろう。魔力はすぐに回復するのでむしろ力が湧いてくる気がする。


『それでは改めて、マスターのステータスを鑑定してもよろしいでしょうか?』

「お願いするよ」

『因みに失敗した場合はわたくしにではなく、マスターの御名前にあたって頂ければ幸いです』

「…………」

 僕がなにも言えずにいると、目の前に光りの文字が現れた。どうやら成功したようだ。

 僕は自分のステータスに目を向ける。出てきたのは一般的な項目だけだ。見易いように整理してくれたみたいだ。なんだかんだ言って、コアさんは優秀なようだ。



 名前:アーク以下略

 種族:過超人オーバー・ハイヒューマンLv1

 年齢:12

 能力値アビリティ

 生命力 1200/1200

 魔力 830/830

 体力 1500/1500

 力 1

 頑丈 1

 俊敏 1

 器用 1

 知力 1

 運 1200

 豊穣 25

 食事 12


 職業ジョブ:生命士Lv4、時空間魔法使いLv26、ダンジョンマスターLv1


 権威オーソリティ:農家、大農家、庭師、造園家、植物学者、生命学者、操植士、操植師、創植士、創植師、創植主、豊穣士、豊穣師、豊穣主、

 大食い家、美食家、料理人、貯蓄家、貯蓄主、食士、食師、食主、

 空間魔術師、時間魔術師、時空間魔術師、空間魔法使い、時間魔法使い


 固有世界ダンジョン:無限収納Lv1、豊穣Lv1


 魔法:時空間Lv5


 加護:境界の超越者の愛、高原の守り人の加護、超越者の加護


 スキル:

 〈固有スキル〉

 世間知らずLv5

 豊穣Lv10

 創植Lv2

 食事Lv10

 千里眼Lv1

 世界創造クリエイト・ダンジョンLv1


 〈パッシブスキル〉

 貯蓄Lv6

 過食Lv4

 呼吸Lv1

 光合成Lv1


 〈アクティブスキル〉

 操植術Lv5

 生活魔法Lv2

 鑑定Lv9

 料理Lv2

 付与魔法Lv2

 魔法道具作成Lv2

 時空間魔法Lv3

 重力操作Lv2




『ステータスの項目やスキルについてご説明致しますか?』

「お願いするよ」

『まず、マスターの御名前は長過ぎるので省略させて頂きました。また、本来なら“称号”の項目もあるのですが、こちらも省略させて頂きました』

「称号って何? 何で省略したの?」

『“称号”は簡単に言うと、持ち主が何者かを示すものです。“称号”によって様々な効果が有ります。二つ名等もこちらに入ります。一般的には身分や賞罰が表示されたりします。

 マスターの“称号”は多すぎた為、省略させて頂きました。おそらく、わたくしを攻略した為だと思われます。また、マスターにとって不名誉と思われるものも多々有りましたので省略させて頂きました』

 僕の“称号”はどうやら名前と同じく、省略しないと鑑定出来ないようなものらしい。


 ところで不名誉な称号っていったい何!? 付くようなことしてないよ!?

「…ふ、不名誉な称号って、例えば?」

『“ド田舎の~”や、“大食いの~”等がございました』

「お、大食いはともかく、ド田舎とは失礼な!! 誰だ、こんな称号つけた奴!」

『“称号”は様々な獲得方法がございますが、土地等に関わるものは自然と付きます。誰のせいでもありません』

「うっ……、あれ? じゃあ、僕の村をド田舎にした君のせいなんじゃ?」

『あっ! いえ……それはその~、しゅ、種族についてご説明致します。種族はそのままです。ステータスの持ち主の種族を表します』

 また誤魔化そうとする……。


「そういえば、僕の種族の過超人オーバー・ハイヒューマンって何? 僕、人間じゃなかったの?」

 初めて自分のステータスを見れた喜びや、コアさんの発言ですっかりスルーしていたが僕の種族がとんでもないことになっている。

 種族図鑑とか読んだことあるけど、僕は特徴からして人間だ。確かに羽を生やしたり、他の姿に変化することもできるけど、いつもは人間の姿だ。なのにどうして種族が過超人オーバー・ハイヒューマンになっているのだろう? もしかしてこれもコアさんのせい?


『マスター、それはどう考えてもわたくしのせいではございません。人間が羽を生やすことは不可能です。可能な者も居りますがその場合は何かしらのスキルを獲得しております。また、人間がスキル〈歩行〉を獲得していないように、その種族が自然と苦労なくできることに関してはスキルの獲得が通常より難しくなっております。マスターには羽を生やしたりするようなスキルが有りませんでしたので確実に人間ではないと言えます』

「えっ!でも村でお前は過超人だって言われなかったよ」

『当然知っていると思われていたのではないでしょうか?』

「そうなの? 本当にコアさんのせいじゃなくて?」

『だから、わたくしのせいではございません。確かにダンジョンを攻略すると、ダンジョンマスターという種族に成ることも有りますが、今回の場合マスターが元々人間でないことから精々超人から過超人に変化した程度だと思われます』

 もうステータスにも書かれているし、人間ではないことが確定しているからここらで納得することにしよう。


「ところで過超人ってどんな種族なの?」

『申し訳ありません。見当もつきません。わたくしの宝物庫に有った種族図鑑の情報を復元致しますか?』

「頼むよ」

 僕がそう言うと、また僕から大量の魔力が消え、代わりに別の何かが僕の中に現れた。


『………検索の結果、過超人の記述は有りませんでした。申し訳ございません。これからはマスターのスキルと可能なことから過超人についての情報をまとめて置きます』

「宜しく」

 どうやら僕の種族はダンジョンの宝物庫に有る書物にも載らない程、珍しい種族のようだ。

 大丈夫かな?差別されるとかないよね? あっ! よくよく考えれば見かけ人間で鑑定もされないからバレないか。


『ではステータスの説明を続けさせて頂きます。“年齢”はそのまま所有者の年齢のことです。これは暦にも利用されています。異世界では太陽から考えられているようですが、この世界には太陽が複数有る為に決められたようです。』

「へぇ~、そうなんだ。因みに太陽って何個有るの?」

 僕の村は高い山脈に囲まれていて、太陽の姿を見ることができないから、英雄譚ライトサーガで知っていても詳しくは知らない。何故か何個有るのかは書かれてなかった。


『太陽の定義にもよりますがわたくしが最後に観測したときは、観測可能な範囲内に六つ程ございました。太陽の数は増減致しますので、申し訳ありませんが現在の数は分かりません。ダンジョン内限定ですがわたくしもかつて太陽の作成が可能でした。マスターの固有スキル〈世界創造クリエイト・ダンジョン〉のスキルレベルが上がれば、再び使用可能になると思われます』

 太陽って創れるんだ………、もしかしてコアさんって意外と凄い存在!? 創れるようになったら農業に協力してもらおう。


『お誉めいただきありがとうございます。そうです、わたくしはボッチでもコミュ障でもなく、マスターの優秀な補助能力なのです』

「……」

 本当にコアさんは残念な存在だ。説明しているときは優秀な感じがするのに……、コミュ障のせいだけであっていずれ変わると信じたい。


『次に“能力値アビリティ”のご説明をさせて頂きます。まず、生命力は生きている全てに存在する力のことです。生命力がゼロになると死に至り、逆に有る限り死ぬことはありません。この力は身体と関係が深く、身体を動かすことが得意な者程操り安い傾向にあり、使い方によっては魔法のような現象を引き起こすことが可能です』

「僕の生命力は多いの?」

 僕の情報源はほとんど英雄譚ライトサーガなので、一般的なステータスがあまり判らない。

 そもそもステータスについても、詳しく書かれたものが少ない。異世界人が主人公だとゲームのようだと書かれることが多く、この世界の人が主人公だとステータスについて考えること自体少なく、また専門的過ぎて解らない解釈が多く基本が分からない。


『現在の一般的なステータスが分からないので、判断出来ませんが、マスターの生命力の質がいいことだけは確かです』

「生命力の質って?」

『生命力は所有者によって引き起こせる現象に差が生じます。例えば、マスターはほんの少しの生命力でも植物を急成長させることが可能ですが、ほとんどの者は同じ結果を生み出すのにマスターより莫大に多くの生命力が必要です。この適性とも呼べるものが生命力の質です。

 生命力は身体に関わる力の為に、身体強化など自分に使うことに適しています。マスターは自分ではない植物にあそこまでの事が出来るので質がいいと言えます。』

 なるほど、つまり僕の生命力は植物を急成長させる方向に強い力を発揮できるらしい。確かに質がいい、農業に向いているなんて最高だ!


『多少認識が間違っておりますが、その認識でも問題ありません。魔力のご説明に移っても宜しいでしょうか?』

「うん、お願い」

『魔力は主に魔法など、持ち主の思い浮かべた現象を引き起こすことが可能な力のことです。こちらは生命力と違い生きていない存在でも持つことが有ります。魔力は精神や思考と関わりが深い為に、頭の良い者が操り安い傾向にあり、生命力より幅広い現象への変化が可能です』


「じゃあ、畑仕事には生命力より魔力の方が向いてるの?」

『一般的にはそうと言えますが、マスターの場合はどちらでも同じだと思われます』

 そうなんだ、だったら今まで通り両方使って行こう。良かった、生命力があまり向かないなら、魔力を増やす修行するとこだった。


『次に体力は動く為の力です。体力が無くなり死ぬことはありませんが、無くなると動けなくなり、無理に動くと生命力を消費することになります。また、生命力や魔力は何もしなくても勝手に回復していきますが、体力は食事を取る事でしか回復しません。体力を現象に変換させることは不可能ですが、生命力や魔力に変換させることは可能です』

 あれ? 体力は寝て回復できないの? 寝て体力を回復するイメージがあるけど?


『それは食べた瞬間に回復する訳ではないからです。食べたものを吸収し、体力に変換されるまでには時間がかかります。体力に変換されるのは身体を回復させた後なので、大体寝た後に回復しています。寝たことで回復している訳ではないのです』

 へぇ~そうなんだ、そういえばコアさんって何処から情報を仕入れて来きのだろう? ボッチなのに。


『だからわたくしはボッチではありません。』

「じゃあ、知り合いでいいから名前を上げて」

『え~と、アーク様、あと……、さて、情報の仕入れ先でしたね? それはステータスです』

 誤魔化したな、やっぱり居ないんだ。

 というか情報の仕入れ先ステータスなんだ。コアさんいろいろなことを知っていて能力は優秀だなと思っていたのに…。


『うっ、マ、マスターはお友達がいらっしゃるのですか?』

「えっ! それはその…、ゆ、優秀なコアさんのステータス解説聞きたいな~」

『えへへ、優秀だなんて、お誉めいただきありがとうございます。本当のことを言われても嬉しいものですね』

 チョロい! なんかイラッとくるが上手く誤魔化せたようだ。それにしてもコアさん、全てを捧げたとか言ってるくせに、なんて質問してくるのだろう。僕は決して、決してボッチではないが……ボッチじゃないけど……、そう! まだ作ってないだけだ! ……とにかくそう言う質問は辞めた方がいいと思う。


『では、優秀なわたくしによるステータス解説を続けさせていただきます。力、頑丈、俊敏、器用、知力はそのままです』

 こらっ! せっかく優秀だと褒め…おだててあげたのに解説が雑! 確かにそれでなんとなく伝わるけど…。


『あれ? なんだか納得して頂けていないみたいですね。では補足説明をさせていただきます。これ等の値は持ち主の基礎能力を表しており、各能力等の平均値ではありません。例えば、力だったら腕力、握力、脚力等の平均値ではないということです。全体の地力を表しています。各能力の値等については、この後にご説明する“スキル”によって判断することができます』

 しっかりとした説明ができるのなら初めからして欲しいものだ。この説明があるだけで、ギリギリコアさんを優秀と勘違いするくらいには違う。


『運に関しては誠に申し訳ありませんが、わたくしには上手くご説明することが不可能です』

「何で? 他の能力値アビリティと違うの?」

『はい、運は持ち主自身の力と言い難いものです。持ち主の力とはなりますが常に在るものではありませんし、自らの意思で使えるものでもありません。それに多くの場合、持ち主の外側が関わってきます。つまりほとんどが外からの力なのです』

 そう言われてみると運以外の能力値アビリティは常に使えてるものだし、いつも同じだから違うのかな?


「でも、確かに運は他と違うかもしれないけど説明できない程のこと? ただ運がどのくらい良いかを表しているんじゃないの?」

『それが違うのです。能力値アビリティは主に種族レベルや職業レベルが上がると上昇するのでレベルが高いほど大きな値になります。つまり値だけ見ると運が良いと呼べる者は高レベルに大勢居るのです。しかし高レベルの者が全員運が良い訳ではありません。

 それに能力値アビリティにはマイナスの値が存在しません。つまり値から考えると低レベルの者が運が悪いことになってしまいます』

 確かにそうだ、英雄譚ライトサーガで語られる主人公たちはほとんどが高レベルだ。だけども運が良い人ばかりじゃない。むしろ登場人物には運が最悪だと断言できる人がいる。


「じゃあ、高レベルに至れた証明みたいなもの?」

 よくよく考えてみたら高レベルに至れるだけで運が良さそうだしね。

『それも違います。あやふやですが一応この値が高い程起こる現象があるのです』

「どんなこと?」

『例で宜しいでしょうか?』

「いいよ」


『運の値が高いとマスターの好きな英雄譚ライトサーガでよくある、ピンチの時に新たな力に覚醒するとか、動けない程のダメージを受けたのに立ち上がり敵を倒すとか、倒せない敵を仲間が掴んで動きを止め、そこに必殺技を当て敵を倒したのに何故か掴んだ者が無事等のことが起こります。あと、最後の言葉を残して死亡するのも起こりますね』

「…………えっ!? それ、運の値が高いおかげだったの!? 挫けない強い心のおかげとかじゃなくて!?」

『はい、あくまでもこれは統計ですがそのような結果が出ました』


 ん? 統計ってことはコアさんが出したってこと? ステータス読んだんじゃなくて。

 だったらコアさんが見間違えただけなんじゃ?

『失礼な! わたくしは優秀なマスターの補助能力です!

 見間違えることなどございません!』

 ……そういうところだよ。やっぱりコアさんは残念感が凄い……。

 

『うっ、とにかく運は他の能力値アビリティと違うのです。ご理解して頂けましたか?』

「確かに運って何か聞かれたら答え難いね。本当だったらだけど…」

『もういいです、今信じて頂けなくてもそのうちわたくしが優秀で完璧だと嫌でも理解することになりますから!』

「……だからそういうところだよ」

『?』


『まあいいです。職業ジョブについて説明しても宜しいでしょうか?』

「まだ長く続きそうだから夕食の後にしてくれる?」

『了解しまし……へっ? さっき召し上がっていませんでしたか? 畑数個分程の野菜果物を……』

「えっ? だってまだそれだけしか食べてないよ。それにさっきは混乱して料理もできなかったし、落ち着いたからしっかり食べようかなって」

『…………』

 あれ? 僕、何か変なことでも言ったかな?





 《用語説明》

 ・最後の歴史家(ココエラビ)

 遥か太古の神代に創られた創世級の鑑定の神器。

 神殿のような形状の神工浮遊島で、国家まるごとを鑑定する能力を有する。その為、かつてこの神器を巡り数多の争いが繰り広げられた。

 常に浮遊し移動していたがある時、ダンジョン《最果て》の領域に入りダンジョン《最果て》の宝物となった。


 遥か長い年月の経過により風化し、完全に消失してしまったがダンジョン《最果て》に情報として残っていた為に能力だけだが少し復元された。



 ・英雄譚ライトサーガ

 異世界で言うところのライトノベル。ただし殆どが史実で、英雄本人の書いたものも数多く存在する。

 一般的な神話や英雄譚には英雄譚ライトサーガ版が存在することが多い。


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