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〈田舎者の嫁探し〉あるいは〈超越者の創世〉~種族的に嫁が見つからなかったので産んでもらいます~  作者: ナザイ
第1章 〈都会までの道程〉あるいは〈逆向きに最果て攻略〉

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第九話 初戦闘あるいはラスボス戦?

申し訳ありません。投稿が遅くなりました。

 

 ───ズズドゥォオオン────

 コアさんの横を掠めたブレスが大爆発を引き起こし、後方で呑み込まれるような爆音が響いた。


 コアさんの横を掠めたことで神輿の最上部の柱や鳥居が幾つか消滅している。神銀コーティングの世界樹の芯がこの有様である。

 ブレスの当たる瞬間、幾重もの防御障壁が発動するのも見えたからこのブレスは相当な威力だったに違いない。


 横のコアさんを見ると得意気な笑顔のまま固まっている。まだ現状を理解できていないようだ。突然超高威力のブレスが自分の真横を通り過ぎたのだから仕方がない。

 でもこの現状を乗り越える為にはコアさんの協力が必要だ。早く正気に戻って貰おう。


「“アーク・ビンタ”」

「ギァッブヘェェー」

 バッッッ───ツゥィィ───ン!! 僕のビンタがコアさんに、凄まじい音と凄まじい衝撃波を発しながらヒットした。コアさんは残った神輿をさらに破壊し、元の植物の形を取り戻してきた光りを砕きながら吹き飛んでいき、山脈の一部に大きなクレーターを造る。

 これでコアさんは現実に目を覚ますだろう。

 何故か僕のビンタがとてつもない威力を発揮したような気がするが、きっと気のせいか田舎から都会に近づいたからだろう。都会って凄い。



「なっ、何をするのですか!?」

 吹き飛んだコアさんが一瞬にして僕の隣に戻ってきた。頬が少し赤くなっている以外に目立った外傷はない。コアさん凄い……、もしかしてさっきのブレスでいろいろと柔らかくなっていたのかな?


「そんなことよりコアさん、あの龍どうする?」

 僕は龍を指差しながら聞いた。どうやらコアさんはあの龍に近い龍のことを知っているようなので、多分弱点なり逃げ道なりを知っているだろう。

「ダンジョンの時と変わりなければ倒すしかないです。あの龍の力は見ての通り強力で、その為戦闘中外にブレス等の被害が及ばないように山脈と山脈の狭間の果てには結界が存在します。あのブレスでも破壊出来ない結界です。あの龍を倒さない限り、外には行けません」

 コアさんが真面目な雰囲気で答えた。龍を見て現実に戻ったようだ。


「それなら倒すしかないね。でも僕達がここにくる時は森と森の境界に結界何て無かったよ?」

 ブレスは当然僕の村の方向にも放たれる。実際にさっきはその方向に放たれた。ならばそこにも始めから結界が存在するか、僕達が通った後に結界が発動された筈だ。しかしそのようなことは無かった。だったら外への道にも今は結界がないんじゃ?


「そちらには元々結界は無いです」

「ちょっ! 酷くない! 僕の村にブレスが来てたらどうするのさ!?」

「いえ、そもそも必要がないのです。ブレスの着爆地点を見てください」

 その言葉に従い僕はその方向を見た。すると無傷の森が見えた。ブレスの通り道は大地が抉れているので間違いない。確実にあそこに直撃した筈だ。森の木々は雲を貫き天も貫く程高いから、もしブレスが上に逸れても当たっている。それなのに木々は無傷。

 何で!? 確かにこれなら結界要らないね……。


「……僕達はあの龍を倒さなければ先に進めないんだね?」

 少し長めの間が空いた後、僕はコアさんに聞き直した。

「はい、そうなります。マスターの村の方向へ逃げることは簡単ですが、どうしますか?」

「勿論進むよ。コアさんはそれでいい?」

 僕は力強く答えた。

「はい、どこまでもマスターに御供します。正直、わたくしはダンジョンコアだった存在なので、戦闘能力はそれほどありませんが、それでも最後まで御一緒させていただきます」

 コアさんも僕の選択に力強く応えてくれた。

「「「「「我等も御供させて頂きます!!」」」」」

 眷属の皆も付き合ってくれるようだ。姿を消していた人も全員現れ応えてくれた。

「ありがとう。さあ、行こう!!」

「「「「「「はい!!」」」」」」

 初戦闘の始まりだ!



 僕はまず龍を観察する。


 龍は軽く高さ千メートルを越す巨体で、その蝙蝠の羽のような翼を広げれば横は縦の数倍にもなるだろう。尾も相当長くそこらの湖ならば囲めるだろう。

 何処に潜んでいたのかと気になったが、身体中から木々の再生の光りと同じものを発しているから、僕が木々を採取するまでは木々が身体から生えて判らなかったのだろう。


 身体は黒く見えるが、よく見ると様々な色が混じっている。龍は通常その身の色に属性が現れるので、この龍はかなりの属性を持つのだろう。魔術攻撃等の属性攻撃の中にに弱点は無さそうだ。

 無数の角が生える額には身体の色とは対照的に白く輝く宝玉が目立つが、これもよく見るとその宝玉を中心に無数の色を持つ宝玉が存在している。龍に宝玉が弱点の存在もいるが、この数あると弱点にはならないだろう。

 相性等関係なく、力で倒すしか無さそうだ。


 夜闇で光る金の眼は絶えず僕達の方を仰視し、辺りに特殊な眼を持たなくても見える程濃い魔力や生命力を撒き散らしいる。弱い存在ならばこの溢れる力だけで死に至るだろう。ここにこの龍しか居ないのもそれが原因かもしれない。

 無数の牙と髭が生えた口からは、強烈な白い光りと魔力が漏れだしている。次のブレスがこちらに来そうだ。


 龍が口を開く瞬間、僕達は動き出した。


「“アーク・ブレス”」

 まず僕が深く息を吸い込み、その息に力を込めて黄緑色のブレスを放つ。〈呼吸〉スキルも手伝ってなかなかの威力だ。

 僕のブレスは進路の周辺を森にしながら進み、龍のブレスに直撃し大爆発を引き起こした。それによって龍のブレスの進みを遅らすことが出来たが、龍程ブレスを持続出来ずに数秒の時間稼ぎに終わった。


 しかしその僅かな時間に準備していた防御系魔術で生れた魔術の人達眷属が、各々盾を構え陣形を組み、僕のブレスが生み出した森を破壊したことによって威力を落とした龍のブレスを受け止める。コアさんも防御系魔術を大量に発動してそこに加勢し、次々に新たな眷属達を生み出していく。

 この隙に攻撃系魔術で生れた眷属達が龍に向かって移動し、攻撃の準備に入る。



 攻撃可能な範囲に移動した者から次々と攻撃を開始していく。


 ボール系の魔術で生れた人は身体を回転させ、球体のような状態になりながら手数の多さで攻める。

 ファイア・ボールの人達が紐を垂らしただけの変なマントを羽織っていた理由が解った。彼等が回転するとそのマントが球の形になり、彼等はマントを構成する紐の一本一本に強力な炎を生み出し、それで無数の炎鞭を振るうかのように戦っている。まるでファイア・ボールが戦っているかのようだ。

 アイスやアースのボールの人は、ゴツゴツとした氷塊や土塊を身に纏い、実際に球体になりながら回転し、龍の鱗を削っていく。

 ライトニングやウィンドのボールの人は、雷や風を回転しながら龍に打ち付ける。悪いがこの人達の回転は無駄な気がする……。


 ランス系の眷属達は各々属性の槍を持ち、まず自らを一本の槍のようにして突撃していく。端から見ると滑稽だが、一撃で多くの鱗を削っている。

 そして一撃を加えると直ちに退き、巧みな槍さばきで次々と龍を攻撃していく。

 ソードやハンマー、チェーン等の武器系魔術の人も同様に、その属性のこもった武器で龍に挑む。中には見たことも聞いたこともない武器を持つ人もいた。


 アロー系の人達は遠くから無数の矢を放つ。それぞれの属性のこもった矢は矢とは思えない威力で、龍の鱗を穿ち削り取る。

 ジャベリンやブレット系の人も加勢し、弾丸を撃ったり槍を次々と投擲したりしていく。ジャベリンなんかはランスと同じようにしか見えない魔術だが、こうして見ると違いはあるようだ。

 龍と同じ大きさの岩山ならば、この遠距離攻撃だけですぐに崩壊させることが出来るだろう。


 これらの猛撃を受けている龍だが身体がかなり巨体な為、殆ど攻撃に対処出来ていない。

 反撃しようとブレスを放ったまま首を動かし、辺りに破滅を振り撒くがこちらに被害はない。眷属達は空を飛べ、多くの者は龍に接近しているからだ。


 しかし僕達が圧倒的に優勢かと言うとそうではない。

 いくら攻撃を加えても、精々鱗の一部を抉る程度のダメージしか与えられていないのだ。全身を覆う鱗が分厚過ぎて、同じ強度の鱗を持つ平均サイズの龍を、一撃で倒す威力の攻撃でもかすり傷にしかならない。

 その僅かな傷も龍の凄まじい再生能力ですぐに元通りになってしまう。今のままでは何年経っても倒せないだろう。



 眷属達が攻撃を開始したことによりブレスが僕達の方向に来なくなったので、ブレスを受け止めていた僕達も攻勢に出る。


 コアさんは防御魔術を止め、攻撃魔術を大量に発動し始めた。その発動速度は凄まじい。常に幾つもの魔術が発動され続けている。

 眷属達の攻撃は龍に殆どダメージを与えられていないが、この調子で数が増えれば倒すことも可能になってくるだろう。

 そしてよく見ると付与魔術や鍛冶魔術、生活魔術まで発動している。魔術が交り合うと思わぬ効果が現れることがあるからだろう。


 僕達の側でブレスを防ぐことに協力していたサカキとナギも、それぞれ御幣と鈴を武器に突撃していく。……いつの間にかスーツを着て。


「その武器で何故今着替えた!? その武器だったら巫女装束のままの方がいいよね!? というかスーツ有るなら始めからそっち着なよ!」

 思わず口から突込みが溢れた。意識を強く保たないと龍のことを忘れそうだ。

 もしかしてコアさんが攻撃魔術以外も発動しているのは、二人の姿に動揺しているからかもしれない。いや、二人の方を向いて固まっているから間違いないだろう。


「実はお恥ずかしながら巫女装束だと違和感があるのです。今回は万全を期す為に、一番しっくりくるスーツ姿にならせて頂きました」

「主の御前では正装姿を心掛けたいのですが、今回はどうか御容赦を」

 僕達のイメージ通りに、やっぱりスーツ姿が一番しっくりくるんだ……。

「……常にその姿でいいよ」

「「いえ、そう言う訳には!!」」

 僕が呆れながら言うと、凄い迫力で断られた。もう何でもいいや…。


 そう言い残して龍に接近した二人は、手に持つ武器(?)を一閃する。光りの衝撃波を放ちながら振るわれる御幣と鈴は、一撃で数枚の鱗を完全に粉砕した。


「「それ(御幣と鈴)、鈍器として使うんだ(ですか)……」」

 威力うんぬんの感想よりもまずそんな感想が、僕とコアさんの口から同時に漏れた。

 異世界の神社にあるような神具を武器にしているから、魔術を補助する杖として使うと思ったら違った。

 魔力こそ籠っているが、あの攻撃は完全に魔術ではない。強化した鈍器の一撃である。戦士の使う武技に近い。

 つまり今の二人は、秘書のようなきっちりした雰囲気の人が神具を鈍器にして破壊活動をしている状態、である。僕達は一体何を眷属として生み出してしまったのだろうか?

 この二人の姿を見た都会の人から、部下がとんでもない暴走を始める程酷いストレスを与える上司、とか思われないよね?


 そんな僕達の思いとは裏腹に、二人の鈍器による破壊活動は続いていく。

 華麗に無駄のない動きで、鱗を複数粉砕し続ける。見ようによっては、まるで隕石が山に直撃しクレーター生み出しているかのようだ。衝撃波がここまでくる。

 何故か龍の討伐ではなく破壊活動のに見えるのが不思議だ。



 二人が鱗を大幅に削ったことで、他の眷属達はそこに攻撃を加える作戦に出た。鱗の下は鱗よりも圧倒的に防御力が低く、彼等の攻撃で次々に血飛沫が舞う。

 この調子で行けばすぐに決着がつきそうだ。


 しかしここで予想外の事象が起きた。

 龍の血飛沫を浴びたある程度大きな鱗の欠片が、龍へと変化したのだ。血を浴びた鱗は崩れていくと、龍の形だけが残り、次々と動き出す。

 誕生した龍は本体を単純化し小型化したような姿で、存在感からすると恐らく、能力もそれ相応に落ちているだろう。しかし魔術の眷属達と比べると、二人居なければ勝てない程の力を感じる。

 戦いはまだ続きそうだ。


 僕も攻撃の準備を始める。

「“極寒”」

 僕は豊穣の力を反転させ、不毛の力を使う。本当は僕の周りの植物も枯れてくるし使いたくないが、先に進む為に致し方ない。

 僕が“極寒”を発動すると僕の周囲に全てが止まりそうな、命の存在を許さないような、壮絶な全てを奪う冷気が溢れ出す。余り広範囲に広げたくないので、僕が極寒を身に纏っている状態だが、それでも辺りはピキピキと凍てつき、領域の温度が極点の冬並みに下がっていく。


 僕は英雄譚ライトサーガのような冒険には憧れているが、実は戦闘は殆ど出来ない。出来るのは精々この不毛の力を使うことぐらいだ。

 しかし龍相手ならばこれで十分だろう。龍は魔物ではないし、僕の村でもペットとして飼っている。それにこの龍は僕の飼っていた山脈の飛龍よりも力を感じないから、多分不毛の力を使えばすぐに倒せるだろう。


「“虚空風”、“氷嵐”」

 まず僕は虚空に吹くような、虚空と化すような極寒の風を龍にぶつけ、その風で龍を囲った。そして風の中に氷塊を生み出す。

 この極寒は寒い冷たい力と言うよりは奪う力であり、龍は渦巻く極寒の冷気に力も熱も奪われ続け、その風に乗るゴツゴツとした氷塊や渦の中で発生した雷に次々と鱗を砕かれていく。


 龍に接近して戦っていた眷属達はそのまま攻撃を続けている。彼等は僕の豊穣の力で生まれた存在でもあるから、不毛の力の中でも活動できるようだ。何故か流れる氷塊もすり抜けている。

 彼等は極寒で極度に破壊しやすくなった鱗を砕き続ける。龍の再生速度も弱くなり勝利が見えてきた。



 龍が大きなダメージを受けてきたことで、鱗の欠片から次々に小型の龍が誕生していくが、眷属達は危なげなく対処していく。

 相手の数も増えていき、一体一体の力は鱗の龍の方が大きいと思ったが、一対一でも僕の眷属達は撃破できている。数の力がなければ彼等には鱗の龍を倒せないと思っていたが僕の読みは外れたようだ。


 何故眷属達は撃破できるのかと観察してみると、眷属達の動きが始めと比べて良くなっていた。力も強くなっているので恐らく、戦闘でスキルレベルが上がり、職業レベルもしくは種族レベル、又はその両方が上がったのだろう。

 よく見ると装備も変わっている。初めとは違う属性の武器を持つものもいるので、魔術が合わさった結果だろうか? 眷属同士で融合でもするのかな? 元々魔術から生まれたから、魔術のように合わせることができそうだ。


 後方を見ると剣士にも見えるような鍛冶師のおじさんが、剣を造って配っていた。感覚を研ぎ澄ませると、彼からは付与魔術の力を感じた。恐らくこの人は斬撃の力を付与するスラッシュの魔術から現れた人だろう。

 そのおじさんの周囲にも同じく付与魔術の力を感じる人達が装備等を製造している。

 どうやら付与魔術の人が造った装備を他の眷属が持つと、魔術同士が融合したような力を発揮できるようだ。合体とかではなかった。合体するところを見てみたかったので少し残念だ。


 ボール系の眷属は両手に新しい武器をかまえ回転しながら、凄まじい勢いで連撃を繰り出していく。

 武器系の眷属はその武器に新たな属性や追加効果を付与し、鱗の龍を一撃で葬り、龍の鱗にクレーターを生み出す。

 防御系の眷属も盾とは呼べない程、攻撃的な盾で突撃を仕掛けている。

 一体何がどうなったか解らないが、巨大な眷属や人以外の形をした眷属も出現していた。

 何はともあれ、もはや完全に僕達が優勢だ。



 龍は全身から血を流しているがまだまだ致命的なダメージは受けていない。剰りにも巨大な為に、人で言うと恐らく過度の日焼けをした程度のダメージしか受けていないのだろう。

 しかし僕の極寒が常に力を奪い、眷属達が攻撃を続けている為、僕達が負けることはないだろう。ただ時間は掛りそうだ。三日ぐらいは掛かるかな?


「そろそろわたくしも微力ながら攻撃の御手伝いをしましょう」

 眷属達を生み出し続けていたコアさんが、魔術の発動を止めそう言った。……コアさんにとって魔術は攻撃じゃないのかな? 確かにコアさんの魔術は僕に当たってもなんともなかったけど……。


「“簡易迷宮創造【流星】”」

 コアさんは流星を想わせる光りを放ちながら技の名前を唱えた。流星のような光りはあちらこちらに溶け込むように消えてゆく。

 すると龍を中心に光りの粒子が集まっていき、その光りはパズルを組み立てるように世界を構築していった。


 そしてコアさんによって創られたのは不思議な光景だった。

 龍の上下に星空が開き、そこから無数の流星が飛び出す光景だ。

 下が星空のようなものになっているのに龍は落ちることなく、上下以外に壁がある訳でもないのに流星が星空を過ぎ去ることはない。流星が星空の下もしくは上を通り過ぎようとしても、元からなにも無かったかのように消えていく。

 僕の極寒もまだ続いており、凍った水分が流星の光りに照らされて美しい。龍が空に吹き出した血飛沫も一瞬で砂状に凍り、流星の光りで輝いている。

 戦闘中だが暫く見ていたいと思える、そんな光景でもあった。


 流星は龍に衝突し続け、衝撃波と共にクレーターを造る。

「───グルォオオーー!!」

 流石の龍もここにきて苦痛の咆哮を上げた。

 流星が衝突する毎に鱗と肉片が盛大に砕け散り、大量の血が空に舞うのだから、このような咆哮を上げて当然だ。


 もう待つだけで勝てそうだが、数時間は掛りそうなので追い討ちをかける。


「“先駆”」

 今度は豊穣の力だ。不毛な状況でこそ使える力である。

 僕が龍に黄緑色に光る風のようなものを送ると、龍は次第に苔むしていく。

 これは見かけは地味だが、極寒よりもさらに相手の力を奪うことのできる力だ。本来は不毛な大地に苔を生やし、植物の育つ大地に変換する為の技なのだが、その過程で苔は不毛なるものを吸収分解し育つので、豊穣の力を強く持つ僕にはこんな風に攻撃にも使える。


「“肥沃”」

 龍が全体的に苔むした頃合いで、僕は次の豊穣の力を使った。

 龍を覆う苔から草が生え、そこからさらに木が生える。苔や草木は龍から力を奪い続け、やがて枯れ土へと変化する。それが延々と繰り返し龍が土へと還っていく。

 僕の植物達は極寒と流星の簡易迷宮までも吸収し、それを肥沃な土へと変えていく。


 龍が最期の悪あがきにブレスを放とうとするが、そのエネルギーすら植物達に吸いとられ放つことができない。

 やがて龍は地に倒れた。恐らく僕達は龍の討伐に成功したのだろう。その考えを肯定するように、飛んでいた鱗の龍達が一斉に墜落していく。

 僕達の勝利だ。



「ふう~、やっと倒せたね」

「はい、わたくし達の勝利ですね」

 これでやっと進める。


「「「「「ウォオオーー!!」」」」」

 僕達がのんびりとした雰囲気でいると、眷属達は勝利の声を上げた。

 えっ!? そんなに喜ぶようなこと? 魔物でもない龍相手の戦いだよ? あ~、初めて皆で一緒に戦えたのが嬉しいのか。よし、僕も交ざろう。


「うぉおおー!」

「え、マスターもやるのですか。ではわたくしも、うぉおおー!」

「「「「「「ウォオオーーー!!!!」」」」」」


 こうして僕達は初戦闘で勝利を果たした。





 《用語解説》

 ・最果ての龍

 初期ステータスが世界最高の値を持つ龍。所謂世界のラスボス的存在。自然出現する種族の頂点に位置する。

 最果ての龍と言うのは通称で、本来の種族名は誰も知らない。実はアークが発見者であり、アークが気にしない限りこれからも知られることはないだろう。


 初期ステータスは世界最高の値だが、この龍以外にあの領域には生き物が存在しない為、レベル等は比較的低く世界最強の存在等ではない。

 しかしそこらの英雄の軍勢が何軍居ても、この龍を倒すことはできないだろう。



 ・鱗の龍

 最果ての龍の鱗と血から誕生した龍。そこらの龍より強力な存在。

 正確には龍ではなく、竜牙眷属スパルトイの亜種であり、鱗と血さえ揃っていれば誰でも誕生させることができる。

 尚、召喚した存在が居なくなると鱗と血に戻ってしまう。かなりの回数使い回せるエコな存在である。


 ・アーク・ブレス

 アークの強い息。



 ・極寒

 アークの不毛の力の一部。

 全ての力を奪う冷気を操れる。



 ・簡易迷宮創造

 コセルシアの技。その名の通り簡易的な迷宮を創造する技である。

 因みに簡易的なところは、迷宮にダンジョンコアがないことと、迷宮が存在する時間に制限があることである。




ここまでお読み頂き、誠にありがとうございます。

申し訳ありませんが、今月は第九話の投稿で最後とさせて頂きます。


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