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第一話 旅立ちあるいは降臨

はじめまして、ナザイと申します。初投稿作品です。暖かい目で読んで頂けると幸いです。

少し長くなってしまいました。毎回どれ程の長さで書くかはまだ決めていません。

どうぞよろしくお願いいたします。


 

  『ダンジョン《最果て》の完全攻略条件が達成されました。攻略報酬を攻略者へと譲渡します』

  そんな無機質で美しい神秘的な声が、僕の頭へ、 そして全身へと響いた。




 ~~~~~~~~~~数刻前~~~~~~~~~~


  慣れ親しんだ村の前、慣れ親しんだ人々の前で

僕は立っている。

  今日は僕が村から旅立つ日だ。


  僕の住んでいる村は、子供が僕一人しかいない。

僕の次に若いのもお母さんという有り様だ。

  その次に若い人はなんと僕のお爺ちゃん。


  この村は高い山脈に囲まれた高原にあり、その山脈の頂上付近には飛龍が住んでいる。

  この村から見えるほど大きな飛龍だ。


  この飛龍の存在だけで、昔からこの村には人があまり寄り付かなかったのだが、この村の近くでいい薬草が取れるということで、そこそこの交流はあったそうだ。


  しかし、あるとき外から山脈を越えずに、唯一この村に入ることができる森にダンジョンが発生した。それによって、ただでさえ少ない外との交流がさらに減り、周囲への影響が少ないとのことで、ダンジョンが攻略されることはなく、ダンジョンはやがて広がり、ついには外からも、中からも、行き来出来ないほど強大なものになってしまったそうだ。


  幸い山脈の飛龍のおかげでこの村の方にダンジョンから魔物が来ることはなかったが、外との交流はやがて完全になくなってしまった。


 つまりこの村は、僕の愛読書バイブル英雄譚ライトサーガに出てくる異世界の勇者達の言葉で言うところの超限界集落というやつだ。


  だから僕はこの村の皆の為、何よりも自分の為にこの村を出る。この村にお嫁さんを連れて来るか、村 の皆で暮らせる場所を外で作るつもりだ。

 

  それに僕だって男だ、英雄譚ライトサーガで語られるような冒険を、出会いを、恋をしてみたい。


  でも僕の所に嫁いでくれるようないるかな? 旅立ちの前になると急に心配になって来る。

  でもきっと大丈夫だ!

 この日に備えていままで準備してきた。村の皆も手伝ってくれた。


 初めは皆、反対していたが゛お嫁さんを連れて来る゛と言う話をしたら何故か急に態度を変え、僕が引くほど全力で協力してくれた。


  それに僕はかつてない胸の高鳴りを感じている。もう自分でも止められない。 

 心配してもしょうがない、全て乗り越えて見せる!


 そう決意を改めていると、村の皆が僕に声を掛けてくる。暖かく、優しく、ときに厳しく、そんなあらゆる愛情のこもった声を。


「アーク、体に気をつけるのよ。毎日三食しっかり食べること。分かった?」


「分かっているよ、お母さん。それにスキル〈光合成〉をちゃんと獲得したから大丈夫だよ。ほら髪が黄緑がかっているでしょ」

 僕は髪を指差しながらそう答える。


 スキル〈光合成〉は村の皆が、外でもしも食いっぱぐれるような時が来ても生きていけるようにと、獲得させられたスキルだ。これがあると水と光だけで生きていけるようになるそうだ。獲得したばかりだから詳しくは知らない。


 それに僕はスキル〈過食〉も持っている。これはスキル〈大食い〉の上位スキルで、食べれる量が増えるスキルだ。必要な食事の量は変わらないので、食い溜めることができる。村の皆が毎日のようにいろいろな食べ物をくれるので、かなり前から持っている。その過程でスキル〈貯蓄〉まで獲得している。


 ここまで食事関係のスキルは揃っているから、お母さんの三食しっかり食べろは、心配し過ぎだと思う。まあ、守るけど。


「アーク、何かあったらすぐに帰って来ていいからな!! 無理するんじゃないぞ!!」


「そうですよ、アーク。私達は外の者達より長命です。焦ることはありません。自分の身を第一に過ごして下さいね」


「何かなくても定期的に帰って来るのじゃぞ、アーク。その度に野菜や果物を持たせてやるからな」


「必ずそうするよ皆。すぐに帰って来られるように〈時空間魔法〉を覚えたからね」

 僕はそう皆に言葉を返す。


 〈時空間魔法〉を覚えるのは僕が村から出る為の条件だ。転移は〈空間魔法〉でも出来るのだが、より遠くに転移出来る上位魔法の〈時空間魔法〉を覚えさせられた。


  因みにこれを覚えたおかげで、時間を止めたまま多くのものを収納出来るスキル〈無限収納〉を覚えた。中には貰った野菜や果物、外で使えそうな道具が大量に入っている。


「嫁さんができたらすぐに帰って来るんだよ!! なぁに、おまえはアタシらの子さ。きっといいのが捕まるよ!!」


「うむ、そうであるぞアークよ。御主は我らの子だ、期待してるぞ。必ずやいつか御主の子を見せるのだ。」


「お嫁さんと子供を必ず作るんだよ。いつまでも待ってるからね」


「うん、皆、約束するよ!! 必ず最高の家庭を築いてみせるよ!! だから待ってて!!」

 僕は皆から少し離れて、大きな声で決意表明する。


 僕はまだ同年代の娘と話したこともないけど、きっと大丈夫だ。村の皆と一緒に訛りも直したし、こっそり女の子と話す練習もしたし大丈夫、教科書に世界中で読まれているはずの英雄譚ライトサーガを使ったから多分完璧だ。


 でも未だに、特に右腕に何もないのに『オレの封印された右腕が疼くぜ!!』と言ったり、ただファイヤーボールという〈火魔法〉の初級魔術が使えるだけで『我は紅蓮の業火を支配する大魔術師!!』と言ったり、普通の剣で武技も使ってないのに『我が聖剣ハイパースーパーウルトラソードでお前を塵にしてやる!! 必殺ハイグレートトルネードサイクロンスラッァァァァーシュ!!!!』と言ったりする理由が分からない。


 でも英雄譚ライトサーガの異世界の勇者自身が書いたものの中の一般人の模写で、こんなのがいたと書かれているのをよく見るから、きっとこれが外の常識なのだろう。

 恥ずかしいけど、こっそり練習してたからきっと大丈夫。


 そういえば、練習初めた日から食事の量が増えたり、僕の好きなものが多くでたり、『悩み事があるなら相談しろ。だから早まるな』と妙に優しく言われたりしたような気が……。まあ、大丈夫だ。


「アークに家庭かぁ~。想像しただけで涙が」

「うふふふ、今から子供服作ろうかしら」

「まあ、いいわね。私も手伝うわ」

「俺はアークの家でも作るか!!」

「儂はアークの畑を広げるとするか」

「我輩はアークの子に付ける名を考えるとしよう」

「「「「「「まて~い!!それは譲らん!!」」」」」」


 ヤバい…皆、暴走してきた……。確かに決意表明したけど、気が早過ぎでしょ。今日、僕の旅立ちの日なんだけど……。それに僕の子の名前は僕が付けるから!!!!


 僕の名前を付けるときも、生まれる前から大喧嘩したそうだ。結局は一番上の名前を母さんが゛アーク゛と決め、その下に皆それぞれが決めた名前を繋げるということでおさまったそうだ。

 おかげで僕の名前はとんでもなく長い。皆、例外なくフルネームまで入れている始末だ。


 因みに僕の名前は上の方にそれぞれが考えた新しい名前、下の方に血が近い順にそれぞれのフルネームとなっている。


 閉鎖された小さな村だから皆、血が繋がっている。新しい子が生まれる度に、誰が名前を付けるか大喧嘩しては、結局この方法で名付けているそうだ。


 被っている名は省いているが、毎回こんな方法で名付けているので新しい子ほど長い名前になっていく。僕、子供の名前覚えきれるかな………。まあ、皆のフルネームは言えるから大丈夫かな?


 まあ、それだけ愛されていると納得しておこう。

 でも流石に長過ぎると思う。僕はスキル〈鑑定〉を持っているが、自分の名前途中までしかステータスを鑑定出来ない。しばらく鑑定していると、目と頭が痛くなって来る。


 村の皆も同じで自分以外のステータスを鑑定出来ないらしい。自分のステータスは慣れてくると、特定の項目だけ見れるようになるそうだ。


 でも僕のステータスが分からない訳ではない。村長が持っている鑑定の魔法道具(モノクル)を使って調べてもらっている。これからはそうもいかないので、〈鑑定〉のレベルを上げたいと思う。


 さて、騒ぎが大きくなって来たので、皆が僕の旅立ちの日だということを忘れないうちに旅立つとしよう。


「じゃあ皆!!そろそろ行くね!!」

 僕はそう大きな声を皆に掛けた。


 すると、さっきまでの騒ぎが嘘だったかのように静まり、皆、僕の方にいろいろな感情の籠った、暖かい眼差しを向け、僕がいままで聞いたことのない声音、厳かに、優しく、心に直接語りかけるかのように、僕に別れの言葉を掛けた。


「アーク、自分の信じる道を歩み続けなさい」

「例え、周りの全てがその道を否定したとしても」

「どこにも絶対は存在しないのだから」

「後悔しないように進みなさい」

「後悔しなければ、それはお前にとって正しい選択だ」

「そして、それは誰にも否定出来ない」

「運命は未だあるのだから」

「運命は進まなくても力になる。ときにより強大に」

「自分の好きなようにしなさい」

「アークにはそれが出来るのだから」

「「「「我らは常にアークと共にある」」」」

「「「「永久とわの子よ」」」」

「「「「新な世代の子よ」」」」

『『『『『我らの子よ!!』』』』』

『『『『『『『行け!!』』』』』』』

『『『『『『『そして戻ってこい!!』』』』』』』

『『『『『『『未来を携えて!!』』』』』』』

『『『『『『『『我らは待つ!!』』』』』』』』

『『『『『『『『『『永久に!!』』』』』』』』』』

 

「………」

 僕はすぐに反応出来なかった。身体が熱くなった。いままで見たことのない皆の一面に、言葉の難解さに、それでも伝わって来る暖かい感情の嵐に、ただただ、圧倒された。


 そして僕はすべきことに気づく。僕は前に進む、村の皆が全員視界に収まる所まで、そこで皆の方に振り返った。

 大きく息を吸う。


「皆ぁ~!! ありがとう!! 行ってきまーーす!!!!」

 僕は生まれてこのかた出したことのない、一番大きな声で、手を大きく振りながら、そう皆に伝えた。


「「「「「「行ってらっしゃーーい!!!!」」」」」」

 そうするとすぐに、これまた僕がこれまで聞いた中で一番大きな声をそれぞれ出しながら、大きく手を振ってくる。


 目が一気に熱くなった。我慢の限界だ。今一度、大きく手を振り。皆に背を向けた。僕の頬を熱いものが伝った。


 僕は前に歩み出す。しばらく歩いて涙を拭った。歩みは止めない。村が見える限界ぐらいの所で、最後に振り返った。


 雲ひとつない空の下、皆はまだ手を振っていた。頬を伝う涙を輝かせながら笑顔を浮かべて。


 僕も片手を上げ、皆に笑顔を向けた。

 そして再び、前を向いて一歩を踏み出した。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 あれからしばらくたった。もうすぐで、外へと繋がる森の入口が見えて来る頃だ。


 別れのときの感情も修まってきた。今ある感情は新たなるものへの好奇心や興奮だ。まだ来たことのある場所だけど、心なしか初めて来たように感じる。


 少し肌寒いが、とても心地の良い風が僕の少し長い黄緑じみた白髪をゆらす。


 日光も〈光合成〉が手伝ってか、とても心地が良い。また周りの景色を美しく照らしている。


 野を飾る露のついた草花、地面から顔を出したり突きだしたりする岩、崩れた遥か昔の建造物、全てが美しい。


 草は若々しく生命力を溢れさせ、花は可憐に小さな聖域をぽつぽつと築きながら、風にゆられ、露を輝かせている。


 ここは高原で、まだ少し寒いが、それは僕に春を感じさせてくれた。


 岩は椅子に丁度よいものから、半ば崖のような頭に草花を生やしたものまで、様々なものが点在している。


 僕が歩いている道も、ここら辺にある岩と同じもので出来ている。


 遥か昔、まだ僕の村に人が度々訪れていた頃、今より遥か多くの人々がこの地に暮らしていた痕跡は、ただの石材としてしか存在しない。


 この地は飛龍によって、魔物も動物も近寄らないが為に、風化だけで崩れ去ったのであろう建造物を見ると、長き年月の偉大さを感じる。


 この高原を囲む山脈は未だ雪を積もらせ、圧倒的な存在感を放っている。しかし、この山脈にも確かに春が来ているようだ。


 僕が歩いている道の岩の隙間を、山脈から来る小川が流れている。とても透き通った水だ。よく見ると同じような小川があちらこちらを流れている。


 僕はその水を手で掬って飲んだ。冷たくとても美味しい。



 そうこうしているうちに、゛高原の境界゛と呼ばれる所に来た。ここに来るまで、高原を緩やかに降りてきたが、ここは高い急な崖になっている。

 山脈の端と端を除いて、正面にはここより高い所はない。下には、いくつかの霧のような雲が出来ているのが、見える。


 僕は崖の端の方まで出て、景色を眺めた。

 僕はスキル〈千里眼〉を持っているので、遠くの景色も近くで見たかのように見える。しかも視野はそのままで。


 崖の真下には、高原の水が流れ込んで出来た小さな湖が見える。

 崖の一ヶ所から流れる水の量は、どれも滝と呼べない程度しかないが、゛高原の境界゛の幅は広いのでかなりの水量がそこに集まっている。


 そして正面には、山脈を越えずに唯一、ここと出入り出来る森が見えた。


 森の手前は、背の高い立派な大木だ。ここからでも分かる。生命力が溢れんばかりの、青々とした葉を付けた枝は、雲を貫き、大地を覆っている。


 森の中頃からは、全く違う景色が広がっている。

 木々は手前のものより、遥かに低い。だが十分、大木と言える大きさだ。手前の方とは違って、こちらは地面まで見える。

 そこには無数の柱が転がり、木の根がによって、かつて床を構成していたであろう石板が散らされていた。

 おそらく、ダンジョンを構成していたものであろう。


 森にあったダンジョンは、ついには誰にも攻略されることなく、寿命を迎えたそうだ。

 どんな英雄譚ライトサーガにも、そんな記述がなかったので、初めて聞いたとき、とても驚いた。

 ダンジョン攻略系やダンジョンに関する話は、英雄譚ライトサーガに多いからだ。


 中にはダンジョンマスターが主人公の話もあったが、それらにはダンジョンとダンジョンマスターは、ダンジョンコアが存在する限り不老不死である、と書かれていた。


 ダンジョンコアが破壊されると、ダンジョンで産み出された魔物は、一部の例外を除き全て光りとなって消え、そのときの光景はとても美しく、近くならすぐに分かるらしい。

 そのような光景は誰も見ていないので、ダンジョンコアが破壊されていないことは確かだそうだ。


 お母さんが僕と同じ歳のときには、すでにダンジョンがあった所は、普通の森になっていたそうだ。

 山脈の飛龍に怯え、最後に産み出された魔物もどこかに行ったのだろう。森の出前と中頃からの光景が違うのも、同じ理由だと思う。


 因みに僕は森の手前までしか入ったことがない。

 つまり、そこから先が僕の本当の旅の始まりだ。



 ひとしきり景色を眺めたところ、村を出てから三時間位経っていたので、ここで昼御飯を食べようと思う。


「よっこらせ」

 〈無限収納〉からお弁当を出し、近くにあった岩に座る。村の皆にもらったうちの一つだ。


『皆どこから、そんなにお弁当箱を持って来たの!? 』と渡されたときに驚いた。だって、僕の家より大きく積まれてたんだもん……。中身の食材は、僕も作っていたから大量にあるのを知っていたけど、めったに使わないお弁当箱が大量に出てきてビックリした。

 いったい…、何年分あるのだろう………。

 〈過食〉や〈貯蓄〉も貯まり続けて下手したら何十年も持ちそうな気がするし………。


 そんなことを思いながらお弁当箱を開けた。

 半分がご飯で、半分がおかずだ。卵焼きを一つ箸で取り、口へと運んだ。


「モグモグ…ゴクン。…ん?んん!? ………」

 周りの景色を楽しみながら、卵焼きを食べ、視界をお弁当に戻すと衝撃の光景があった。

 卵焼きを取ったところに、また卵焼きがあったのだ。


「…………」

 気のせいということにして、今度はご飯を口にする。するとやはりご飯が戻っていた。

 目を凝らしながら今度はタコさんウィンナーを取る。すると、下から新しいタコさんウィンナーが出て来た。

 

 僕はお弁当箱を〈鑑定〉した。すると、お弁当箱の上に光で書かれ鑑定結果が見えた。この光りは自分だけで見ることも、皆に見せることもできる。

 因みに僕を鑑定した結果を皆に見せたら、皆まで目と頭を押さえていた。いったいどんな仕組みなんだろう?


 僕は光る無数の文字を出した状態で、知りたい情報を意識する。するといくつもの文字が消え、知りたいことが書かれたものだけが残った。

 こうしないと、分厚い百科事典を読む労力が必要になる。

 因みに自分の鑑定をすると、この作業をする暇もない。村の皆は自分のステータスを初めから必要なものだけ見れるらしい。


 名称:アークのお弁当箱

 作製者:アークの村の一堂

 効果:中に入れた食料を入れた瞬間のまま、お弁当箱から完全に出すまで保存する。

 中の空間は拡げられており、容量に限界はない。

 取り出された食料と同じ種類のものをお弁当箱表層に補充する。

 所有者以外は蓋を開けることはできない。所有者から離れると、所有者の元へ戻って来る。

 重さはお弁当箱表層に納まる食料の分だけである。

 空の状態で゛ごちそうさま゛と近くで唱えて蓋をすると、お弁当箱は洗浄される。

 空の状態で、゛ありがとう゛と近くで唱えて蓋をすると、作製者の元へ転移し、所有者設定は消える。この場合、中に手紙を入れることができる。大切だからもう一度言う。中に手紙を入れることができる。何度だって言う。中に手紙を入れることができる!!

 追伸、食べ終わると中に手紙が出て来ます。必ず読んで下さい。手紙は毎回、返して来なくてもいいです。

 因みに白紙とペンも入っています。大切だからもう一度言います。白紙とペンも入っています。何度だって言います。白紙とペンも入っています!!



「…………」

 僕はもういくつかお弁当箱を鑑定すし、同じ結果を確認すると、しばらく無心になってお弁当を食べた。景色が綺麗だなぁ………。


 僕はスキル〈早食い〉を持っているので、そんなに時間がかからずに食べ終わった。

 僕は食事系のスキルをほとんど持っている。理由はなんとなく察して欲しい。この前なんか〈食事〉と言うスキルを獲得していた。村一番の物知りの村長も驚いていた。見たことも、聞いたこともなかったそうだ。『どれだけ食い意地をはったのだ。』と小さく失礼なことを呟いていた。絶対、あなた達のせいです!!


 空のお弁当箱をしばらく覗いていると、お弁当箱の底が白く光り、その光りの中から手紙が現れた。二つ折りにされた手紙だ。

 手紙はゆっくりと浮上して行き、ある程度の高さまで上がるとそこに止まった。手紙はうっすらと光っている。


 僕は手紙を手に取ると広げて読んだ。中身は別れのときに言われた内容とほぼ同じだ。母さんからの手紙のようだ。

 ただ、『今はきっと、゛高原の境界゛にいる頃でしょう。寒くないですか? 落っこちないように気を付けて下さいね』などという一文が、あったのには驚いた。多分、お弁当箱を開けた当たりから書き初めたのだろう。お弁当箱のステータスにはそんな記述は無かったから、お弁当箱の効果ではない。いったいどんな方法を使ったのだろう?


 僕が手紙を読み終わると同時に今度は白紙とペンが、手紙と同じように現れた。偶然だと信じたい。

 偶然でなかったらどんな仕組みだろう? 手紙を読み終わると同時に出てくるなんて、一体どこで判断したのだろう?僕も簡単な魔法道具を作れるけど想像もつかない。

 お弁当箱ならギリギリ作れるけど。


 そんなことを思いながら、僕は手紙の返事を書いた。

 当然、書かないという選択肢はない。あそこまで絶対に返事を書けと暗に(?)伝えてきたのだ、書かなかったらどんな暴走をされるか……、考えるだけで怖い。


 そういえば、どうやってお弁当箱のステータスにメッセージを書き込んだのだろう?

 自分で作った物だからといってステータスは決められない、出来た物の性能などで勝手に決まる。つまりここ自体にメッセージは入れられない筈だ。

 スキル〈偽装〉辺りでも使ったのだろうか? このスキルは異世界の勇者が主人公で、召喚された国がヤバい系の英雄譚ライトサーガでよく出てくる。効果はいろんなものを偽装できるというものだ。例えばとあるスキルを隠したり、持っているように見せかけたりできる。ただ、ステータスを偽る場合それぞれ決まった欄の中でしか偽れないそうだ。例えばスキル欄で名前を偽ったりはできない。このことからメッセージは書けないかもしれない。

 因みに僕は持っていない。村の皆曰く僕は嘘が下手のようだ。

 他にも色々と方法は浮かぶがどれも確証が持てない。今考えなければいけないことでもないから、外でゆっくりと学ぶとしよう。


「……書けた。」

 僕は手紙を書き終わり、その手紙をお弁当箱の中に入れた。ペンは無限収納の中に入れた。


「゛ありがとう゛」

 そう言いながら僕は手紙の入っているお弁当箱の蓋を閉めた。

 するとお弁当箱は暖かい光りに包まれながら、ゆっくり溶け込むように消えた。


 こうして僕は昼食を終え、座っていた岩から立ち上がる。そしてもう一度崖の近くまで進み出て景色を眺めた。


 僕は服を軽く整える。スカーフのようなネクタイを締め直して、足の前に布がない着物の襟の中に入れる。その上からローブを羽織り直し、帯の代わりの蔦を締め直した。


 そして崖の縁まで行き普段はスキル〈貯蓄〉で貯めている余分な魔力や生命力等の力を解放した。僕は純白に輝き辺りを照らす。かなり遠くまで光りが届いているが不思議と眩しくない。

 この状態になると僕は羽を生やさなくても空を飛べる。

 飛行魔法を使うと光りが出ることなく空を飛べるらしいが、僕は時空間魔法しか今のところ魔法は使えない。



 僕は崖からゆっくりと降りる。辺りを照らしながら僕から溢れ出た力がゆっくり広がるのが分かる。

 長い時間をかけ僕は地面に降り立った。まだ数度しか踏んだことのない高原以外の土に。


 僕が降り立った場所は湖に浮かぶ島になっていて、周りは湖から突き出た柱に囲まれている。僕の正面、つまり森の方向には大きな石の鳥居があり、その先には橋が続いていて、橋の両側には湖から突き出た台座に鎮座した石像が並んでいる。これらが湖の岸まで続いていた。

 ここにある建造物は高原の遺跡と違って、植物を所々生えてこそいるが、どれもまったく壊れていない。


 僕は力を再び蓄えに回して光りを納める。そして改めて辺りを見渡しながら鳥居をくぐり、岸の方へと進んだ。

 島以外は岸まで全て建造物だが、所々から美しい花ばなを生やして完全に自然と調和している。美しい湖もそれに拍車を掛けている。

 石像は様々なものがある。筋肉隆々の羽を生やした戦士、長い髭を生やした賢者、角を生やした聖女、大きな何本もの尾を生やした狼等々、なんの統一感もない姿の石像が並んでいる。ただ、どれも生きているかのようにリアルで、圧倒的な存在感を放っている。そして、どこか見守ってくれているような気がした。身体が少し軽くなったような気がする。

 そんな石像達に気が付いたら「ありがとう。」と告げていた。


「………わぁ~」

 僕は一瞬絶句し、思わず溜め息を洩らした。

 岸まで到着すると風景が一変した。

 森までの全てが花ばなに満たされ、全ての風は花びらと香りを伴っている。湖から流れる小川も花びらや水生の花ばなに飾られ森の奥へと流れていく。所々にある遺跡も花ばなに飾られ、まるで遺跡が人の為にあったのではなく初めから花の為にあったのではないかと感じられる程、美しい。

 何より凄いのがえず花が咲き続けていることだ。花が散ってもすぐに新しい芽が出て新しい花が咲く。それも違う種類の花が、悲しい花、おめでたい花、ただ美しい花等々、あらゆる花が次々に咲いている。

 花が散ったあとは光りの粒子となり何処かへと消えていく。

 初めて見た。上から見るのと全然違う。

 そういえば僕は春にここに来たことがない。夏にも確かに花が咲き続けていたがここまでではなかった。秋は紅葉と落ち葉、そして実りが絶えず起きていた。僕のスキル〈豊穣〉で僕の畑は実りまではすぐに起きるから綺麗だったけどそんなに感動はしなかった。もしかして村の皆は僕がいつか旅立つと分かっていて、この光景を僕に見せずに取っておいたのかもしれない。



 ゆっくり花ばなを見ながら歩いているといつの間にか森の入り口に着いた。花畑と苔の絨毯、くっきりと入り口の前で境界ができている。


 森の入り口には巨大な白い石柱が二柱そびえ立っている。ただ、森の木々があまりにも巨大な為にそこまで大きくは感じられない。


 石柱から先は石畳の道がある。石畳はうっすらと光りながら木々の根を避け、宙に浮いている。

 おそらく太古の昔は一本の道だったのであろう。木々の根を取り除いたら全ての石畳がぴったりとはまりそうだ。つい、試したくなる。


 僕は森に踏み込んだ。そして石畳の上を進む。

 森の上部は木々の葉で埋め尽くされているが、不思議と光りが差し込んできて明るい。お昼寝するのに丁度いいくらいだ。ただ、空は全く見えないから木々が出しているのかもしれない。

 木々はとても太く、高く、そして力に溢れている。なぜか太古の昔からある古木である筈なのに、何処か不思議と若々しさも感じさせる。枯れ葉や枯れ枝などひとつもない。

 地面は全て根がか苔、何らかの草花に覆われている。


 空気がとてもおいしい。力がみなぎって来る気がする。スキル〈呼吸〉のせいかな?

 因みにこのスキルはたくさん食べ物を食べていると、呼吸する機会が少なくなるから獲得したスキルだ。というかいつの間にか持っていた。


 僕は石畳をの上を歩き、時に跳び移りながら先へと進む。途中に別れ道もあったが僕は真っ直ぐに進んだ。真っ直ぐに進めばダンジョン化していた森との境界まで行ける。

 その境界から先はそもそも道がなく、人里に出るまで何日も掛かるそうだ。



「モグモグ、ムシャムシャ…ゴクン」

 いつの間にかおやつの時間になったので、僕はおやつの果物を食べる。異世界の勇者達の言う時計とやらは持っていないが、僕の腹時け……体内時計は正確だ。

 因みに僕が食べている果物は、帯代わりに巻いている蔦に実らせたものだ。帯代わりに使っている蔦は、僕の作り上げた゛思い通りの果物が成る木゛の若い枝で、欲しい木の実を思い浮かべながら〈豊穣〉を使うとその木の実を実らせることができる。


 僕の自信作だ。農業のことなら外の人達とも張り合える自信がある。

 それ以外は………、木の実が旨い!!


「どんなにひどくやられても~♪ どんなにひどくやつけても~♪ 起こるは黒焦げ、爆発アフロ~♪ 」

 景色が美しく気分もいいので、僕は歌を歌う。歌いながら歩くとさらに気分がよくなる。


「あるのは喜劇~♪ なんでも喜劇~♪ 彼らの前ではみんな一緒に笑い合う~♪ それが我らの喜劇の勇者~♪」

 この歌は僕が好きな英雄譚ライトサーガの一つ【喜劇の勇者】の歌だ。気分がいいときに歌うのにぴったりだ。

 元の世界で文化祭とやらの出し物で喜劇をやっていた勇者達が、演じていた役や係を、何より喜劇をそのまま力として授かり、争いが絶えず滅びに向かっていたこの世界を救う物語だ。

 数多くある異世界の勇者の物語の中でも珍しく、仲間割れもなく全員が主人公と言うところも面白い。劇がベースの力で、しかも喜劇の為に誰もが1人だとポンコツで様々な笑いを起こし、力を完全に発揮させる為に絆を深め合う。そんな彼らに惹かれいつの間にか誰もが笑い合う世の中になる、そんな話だ。



「どんな戦争だとしても~♪ どんな陰謀だとしても~♪ 結果は喜劇、大喜劇~♪」

 【喜劇の勇者】の歌を歌い続けて129番まで来たとき、ついにダンジョン化していた森が見えてきた。


「……はぁ~良かった~」

 僕はそれを確認して安堵の息を吐いた。

 実は途中、いつの間にか真っ直ぐ進んだ筈なのに、続いている筈の道が途切れて迷ってしまっていたのだ。

 まあ、途中の道も美しくいろいろな遺跡があり、勇気付けられたのでそこまで困ってはいなかったが。


 丁度この森とダンジョン化していた森との境界に、小さいが白くとても美しい遺跡があったので、ここで夕食にしたいと思う。

 遺跡はもうほとんど床の一部と倒れた柱ぐらいしか残っていないが神殿のような建物だけかろうじて形を残している。


「お邪魔します」

 僕はそう言って小さな神殿のような建物に入った。

 天井は完全に落ちて、壁も一部しか残っていないが、とても美しく神秘的だ。

 建物のほぼ中心には祭壇のようなものがある。丁度テーブルにいいのであそこで夕食を食べたいと思う。後で軽く掃除でもすれば罰はあたらないだろう。


「失礼します。 …………えっ!?」

 そう言って長方形をした白い石の祭壇の上の埃を、手ではたき落とした。すると祭壇が青白く光り、僕を不思議な感覚が襲った。自分が広がったような、軽くなったような、重くなったような、とにかく不思議な感覚だ。


『………………ダ…ジョ…の……が達…されま……』

『フロ……ターのざ……確認、……ンスターの…伐……確認、……アイテムの……確認』

『………ス……から当ダンジョンの難易度確認』

『施設状況確認。周辺状況確認』


  『ダンジョン《最果て》の完全攻略条件が達成されました。攻略報酬を攻略者へと譲渡します』

  そんな無機質で美しい神秘的な声が、僕の頭へ、 そして全身へと響いた。






 《用語解説》

 ・ステータス

 全ての存在が持つ絶対評価による個の情報。



 ・スキル

 様々な技能や能力を、またその成長を補助する力。

 スキルによって獲得条件は異なり、さらに素質によっても獲得条件は変わる。生まれながらにして持つものもいる。


 あくまで補助する力なので、持っているからといってスキル名通りのことができる訳はないが、才能が手に入るようなものなので、訓練さえすれば基礎程度ならばすぐに使用することができる。


この世界にはスキルが常識として根付いているので、スキルと技能自体の認識が曖昧なことが多い。例えばアイテムボックスが使えると〈アイテムボックス〉が使えるでは、前者の方が正確だがほとんどの者は判っていない。特にスキルがなければ出来ないこと程この傾向にある。

この為現在ではどちらの表現も使われる。



 ・ダンジョン

 魔物が自然発生する特殊領域、ダンジョンコアと呼ばれるものが創り出していると言われている。

 領域内はいくら破壊されても、ダンジョンが攻略されない限り再生し、成長し続ける。

 一般的にダンジョンコアに触れると攻略できる。


 ただし、あまりにも多種多様に存在し、どこからどこまでがダンジョンか、明確には判らない。


貴重な時間を割き、お読み頂きありがとうございます。

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