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夢ノ園学園  作者: 音里奏
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なんのために

【さぁ、次の試験を始めるよ】

 放送はかすかに聞こえたが、俺は目の前で起こったことがまだ飲み込めない。人が破裂し死んだ、これをすぐに受け入れる人間はいないだろう。

 意識が朦朧とする中、ひとまず落ち着つくために周りを見渡してみると数人が嘔吐している。だが人が死んだというのに平然としている女の子が1人いる。

 なんだあいつと疑問を抱き始めた時、

【みなさん、そろそろ静かにしてください。せっかく合格したのに不合格者と同じになりたいんですか?】

 その言葉に全員が静かになり始めた。静かにしなければやばい、と悟ったのだろう。

【やっと静かになりましたね。では次の試験を発表し・・・】

「お、おい!ちょ、ちょっと待てよ!」

 淡々と放送が流れる中、さっき問題用紙を見つけた岡島君が放送の途中で怯えた声をあげた。

【なんですか岡島君?】

「なんですかじゃねぇよ!なんだよこれ、ちゃんと説明しろよ!なんで人が死んだんだ!」

 そうだ、これは一体なんなんだ。何もわからないまま人が死んで、次の試験なんて言われても誰もやらないと思う。

 今でも腰を抜かし立ててない人がたくさんいるのに。

【そうですね、何もわからないまま試験を進めてたらみんな死んじゃいますよね、では説明しましょう。君たちには計6個の試験を受けてもらいます。その6個の試験を全て合格した者が本校へ入学できます。】

 みんなが死ぬ?本当に訳がわからない。俺らはここに受験しに来ただけなのに。

【先ほど受けてもらったのが最初の試験、『運』です。君たちは見事最初の試験を合格しました。おめでとう。】

 おめでとうと言われて喜んでる人なんて1人もいない。恐怖心でもう受験どころじゃないからだ。

【これで説明を終わりにします。】

 もう終わり?多分みんなが思っただろう。俺はその思いを代弁するかのように怒鳴った。

「待てよ。なんでただの運で人が死ななきゃいけないんだよ!」

 ただの子供の遊びのような事で人が死ぬなんて馬鹿げてる。

 だが放送の奴は狂っていた。

【これは社会に出るための予行練習のようなものです。君たちは社会に出て活躍しなくてはいけない、そのため仕事をしていく中で理不尽なことに出会うでしょう。君たちもこんなの理不尽だと思ったことが生きている中で何度かあるでしょう。それと変わりまりません。】

 確かに理不尽な事は時に起こるが、でも今起こってる事は認められない。

「じゃあなんのために人を殺すんだ!なんのために!」俺はもう怒りが抑えられなかった。言葉がうまく出てこない。

【何のために?それはもちろん君たちのためにです。君たちが上にいくために、それ相応の対価を支払うべきなのです。君たちは今の自分がなんも犠牲もなしにあると思いますか?】

 犠牲?最初何を言っているのかわからなかった。

【私の友人の話ですが部活動で、頑張って3年間練習に励んでも実力やセンスがあるやつには勝てなかった、それで自分は選手に選ばれなかった。その時、そいつはなんて言ったと思いますか?自分はそいつらを引き立たせるための犠牲にすぎなかったと。】

 俺はなにか言い返そうとしたが、言葉が出なかった。俺も同じ経験し、同じことを思ったからだ。そう考えると俺は色々犠牲にして来たんじゃないかって思えてきた。

時間やお金、友達すら犠牲にしていた時があったのかもしれない。

【わかりましたか?これは君たちが他人の死というものを犠牲にして強くなってもらうための試験です。】

 もうこんなの嫌だ、そう言って1人の男が走って逃げようと、教室のドアノブに手をかけようとした瞬間、

【言い忘れてましだが、この教室からは誰も出れません。家に帰りたければ生きてこの試験を合格するしかありません。】

 その言葉の通り、鍵がかかったかのように開かないし、開かないなら壊そうとしていたが傷一つつかない。

 それを見ていたみんながもう終わった、という絶望した顔をしていた。俺も鏡で見たらそんな顔をしているだろう。

【ではみなさん、次の試験の内容を発表します。『グループディスカッション』です。みなさん10〜12人ほどでグループを作ってください。】

 みんなイヤイヤだったが、やらなきゃ殺されるんじゃないかという感じがしてすぐにグループを作った。

【それじゃあみんな自分の席を持ってくっつけてください、それができたら話す議題を話しますので。】

 それぞれ席を持って来て、給食を食べる時のような形でみんなと顔を合わせた。何人かはまだ顔が真っ青で今にも倒れそうだ。俺の隣にはさっき平然としていた女がいる。髪が長く、インドア派のような女の子だ。少し見とれてしまった。舞衣とは正反対だ、舞衣は髪は短く、アウトドア派のような奴だった。

 そうだ、あいつらは大丈夫だろうか。俺はあいつらなら生きていると信じるしかなかった。いや、あいつらなら生きている!

 心配はしているが、次に始まる試験を合格して生き残るしかあいつらに会うことができないと考え、試験に集中する。

【では次の試験を…なんか試験って少し硬い感じですね。そうだなぁ…あ!ゲームにしましょう!そっちの方が親近感も湧くでしょう。ゲームとなれば今後、私のことはゲームマスターと呼んでくださいね。】

 くそ、放送の奴は楽しんでやがる。早く発表しろよ!頭の中ではもう冷静を保ってられない。

【では、話す議題を発表します。グループの中から5人この教室に残ってもらう人を話し合いって決めてもらいます】

 その言葉にみんなが顔を見合わせた。

【制限時間は50分、さぁ生き残りたいんでしょう?】

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