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夢ノ園学園  作者: 音里奏
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最低最悪の高校受験

 2185年3月○日、今日は高校入試の日だ。

 俺、信条春斗しんじょうはるとは難関高校の『県立夢ノ園学園高校』を受験する。定員は200人に対し、倍率は毎年20倍くらい。

 なぜこんなに人気かというと、充実した施設に一流の教師、いろんな資格まで取れ、そしてリクルートまでも完璧に整っている。毎年学力調査やスポーツテストは全国一位、部活動も全種目全国優勝。卒業生は全員が一流大学や王手企業、プロスポーツ選手などという驚異の実績を持っているためここまで人気がある。

 全国模試でも上位だった俺はもしかしたら合格できる可能性を信じ受験する。

 だが、こんな学校受験するんじゃなかったと後悔するのはあと1時間後だった。


「行ってきまーす」俺は家のドアを勢いよく開け、家から駅までチャリで10分かけて着き、東京の渋谷にある県立夢ノ園学園高校へ向かう。

 駅のホームで1人電車を待っていると後ろから慣れ親しんだ声が聞こえた。

「よぉハル、いよいよ今日が受験日だな〜。」

 同級生の蒼井暎羅あおいあきらだ。

 小、中学と同じで親友と呼べるほど仲が良い。アキは茶髪で少しチャラいがすごく頭がよく顔立ちもいい。

「おはよアキ!お前は毎回余裕そうな顔してるよなー。」

「そうか?でも今回ばかりは涼しい顔もできないぜ。なんせハルと同じところに行くからな。」

 そう、アキも夢ノ園学園高校を受験するのだ。今日は友達である前にライバルになる。そんな会話をしてる間に電車が到着し、中に入って出発を待った。

 《間も無く電車が出発いたします》

 アナウンスが聞こえ今から受験会場まで行くのかとドキドキしていたら

「ちょっとその電車待ってーー!!!」改札口が混雑して中々通れないで困っている女の子が叫んでいた。俺はどこの学校の人だろうと思っていたらまさかの同じ学校の同級生だった。

 夏川舞衣なつかわまいだった。彼女は俺のもう1人の幼なじみだ。少しボーイッシュな彼女は男女両方から人気があり、女子サッカー部に所属していた彼女は勉強だけでなくスポーツも万能だった。

 ギリギリ間に合ったマイは車内に入ると同時に膝に手をつき、呼吸を整えていた。無邪気な子供のような笑顔で「危なかったー」と笑いながら言う彼女は本当に可愛らしい。

「もっと余裕持って来なよバカ」「一本遅らせても時間は間に合うだろアホ」俺とアキは次々と罵倒し続けるとムキーっと怒るマイがまた可愛い。俺は小学校から片思いをしているが告白できないでいる。アキはそんな俺を見て、告白しろだのなんだのと言うが俺は今の現状が心地よくて言うのをためらっている。

 俺らは電車の中で勉強のことや中学のことなどの思い出に耽っているとすぐ目的地の渋谷に着いた。渋谷ですることもない俺らはすぐに受験会場に足を運び校門の前で止まった。

 丁度試験開始ちょうど一時間前、校門では試験会場の案内と手荷物検査をしていた。受験生が1,000を越えるので20組ほど列を作り、先生がうまく対応し、案内をしている。案内と検査を終わったら最後に青い腕輪のようなものを受験生の左手につける作業をしていた。俺の番になった時、少しこの腕輪が気になって「これってなんのためにつけるんですか?」と先生に聞いてみた。先生は「これがなければ受験はできません。腕輪の側面にある三つのボタンがありますよね、上から時間、受験番号が表示されます。一番下のボタンは試験開始時間になりましたら連絡があると思いますので押さないでくださいね。」俺はその親切な説明と裏腹に何か隠しているような顔をしているのがすごく気になった。

 まぁ言われた通りに動こうと思い、校門での作業を終えた俺たちは案内通りに教室に向かう。残念ながら3人は別々の教室だった。別れる時にアキが「悔いの残らないようにやれよ!特にハル!」アキは俺が緊張に弱いことを知っている。励ましたつもりなんだろうなと少し思い、平常心を保ったつもりで「俺よりマイの心配してやれよ。」「あ、それどう言う意味かな〜ハル君?」とマイに話を振りやり過ごす。

 マイは顔を真っ赤にして俺に殴りかかる準備をしてる、その光景を見てアキが笑う、これが高校でも続いたらいいなと思い3人はそれぞれ教室に向かう。


 試験は新校舎で行われる。新校舎は教室が全部で40、一クラス100〜120ほど席がある。試験開始は10時00分。今はまだ20分前。

 俺は教室に入った瞬間、違和感を覚えた。「この教室やけに白いな。あとあれは監視カメラ?しかも数が多い。」いくら名門高校で受験人数が多いからとはいえカンニング対策が強すぎるんじゃないかと思った。でも俺はすぐに気のせいだと思い席に着き、周りのみんなが勉強しているので俺も自分の勉強をする。

 開始10分前、みんなが自分の勉強をやめカバンにしまい、試験官が教室に来るのを待つ。物音一つしない教室がより一層緊張を高める。そんな時、放送が流れてきた。

【みなさんこんにちわ、今回は本校を受験していただきありがとうございます】

 みんなビクッとし、放送に耳を傾けようとより静かになった。

【定員は200人に対し今回の受験者人数は4,126人、また〜〜〜〜】あと10分で試験開始なのに無駄な説明が多い。早く問題用紙を配れよと周りがイライラしてるのがわかった。

【本校では試験官をつけない受験制度を行なっています。】じゃあ問題用紙はどうするだよ!と言う発言が教室を飛び回った。これじゃ試験にもならない。

【ですが問題用紙はもうみなさんのもとに配られております。】放送は予知していたかのような口調で喋り続ける。え?どこに!?みんなが騒ぎ出した。すると一番後ろの席のやつが大きな声で「おいみんな!机の裏を見てみろよ!」みんなはまさかと思いその声の通りに机の裏を見た。そこには真っ白なA4くらいの封筒がガムテープで貼ってあった。

【一番最初に気づいたのは岡島君でしたか、みなさん机の裏に貼ってありますのでそれを取ってください。開封はまだしないでくださいね。ちなみに私たちは教室にある監視カメラで君たち受験生を見ています】

 そうか、だから監視カメラが多いのか。活気的な試験の仕方だなと俺は感心した。あとあいつは岡島っていうのか。

【あと1分で試験開始のチャイムが鳴ります。それと同時に開封して試験を行なってください。】

 みんなはホッとした感じでチャイムを待った。

 1分なんてあっという間だ、チャイムが鳴りみんなは封筒を開ける。

 中に入っていたのは真っ白な紙が一枚。裏表白紙かと思い反対側を見る。そこに書いてあったのは大きな文字で

  合格

 え?という間も無く急にブツッとマイクが入った音がした。

【おめでとう合格した受験生諸君!それとさようなら不合格者!】その放送が流れた途端に、ピーっと何か不快な音が鳴り響いた。俺の目の前の席の男が急に苦しみ始め倒れた。それにつられたかのようにもう1人、さらにもう1人と苦しみ始める。俺はすぐさま目の前の男に駆け寄り声をかけた。

「どうした!?大丈夫か!?」俺の声が聞こえたのか男は振り絞った声で「腕が…痛い…。」腕が痛い?そう聞こえたので腕を見ると腕輪がついてある腕全体が紫色になっていた。

 この腕輪のせいだと思い、取り外そうとしたその時、腕輪からピピッと言う音が聞こた。それからは一瞬のことだった。

 風船が割れるような破裂音がした、熱い何かが顔に飛び散った。少し目に入り、周りがよく見えない。その間に女の悲鳴が聞こえた。いや、女子だけじゃない。男もだ。俺はすぐ顔を手で拭こうとするが中々取れない。くそ、何が起こってるんだ。せめて目だけでもと思い目を何回も擦り、ようやく見えるようになってきた。でもそれは見たくない光景だった。目の前で苦しんでいた男が首だけになっていたのだ。「うわぁぁああああ!」俺は驚きのあまり腰を抜かし失神しそうになった。顔や手、制服は全身血だらけになり、今でも破裂音のような音が左右から聞こえてくる。そんな中、かすかに放送が聞こえた。

【さぁ、次の試験始まるよ】

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