後悔のない、私の人生
お腹の赤ちゃんも順調に育ち、性別は女の子とわかり、私は驚きと同時に嬉しかった。息子と娘、
両方育てる事が出来る喜びでいっぱいになった。
だが、私には新たな試練が待ち受けていた。
夫が職場を変えたことで、ボーナスをもらえず、ボーナス払いは高額なため、返済が出来なくなってしまった。私は悩んだ。とにかく、ローン会社に返済を待ってもらえるよう、電話するよりほかなかった。こういった電話は本当に気が滅入る。
今に始まったことではないが、夫への不信感は増していく一方だった。しばらくして、私は実家に帰り出産に備えた。すると、実家で暮らせる安心感からか、その日の夜に陣痛を迎え、無事出産した。気持ちと身体はこんなに直結しているのかと改めて感じた。出産費用はお祝いで工面し、役所からの出産手当でどうにか返済した。こんな時は、私は生かされていると感謝し、わずかな希望が励みとなった。
息子も娘も、苦しい環境の中すくすくと成長し、私にとってかけがえのない存在だった。
夫の母親は息子の顔が自分の家系に似ているので、娘より息子のほうを可愛がっていた。まあ、それは仕方がないので、気にしないようにした。
娘が一歳くらいになると、夫から一緒のアルバイトをしようと持ち掛けられた。夫は、夜中の弁当製造から新聞配達のアルバイトに変わり、半年程経っていた。最初は、僅かな時間とはいえ、こんなに小さな子供を置いて働くことに抵抗を感じたが、収入が増えるのを優先した。娘は、夜になると不安から夜泣きが絶えなくなった。なんとか寝かせて、毎晩後ろ髪をひかれながら店に向かった。新聞を配りながら、今もし地震でも起きたらどうしようと不安になった。少しでも早く家に帰ろうと、必死で配達をした。家に帰って安らかな子供の寝顔を見ると、心からほっとした。今日も無事で良かった。ほんとにごめんねと呟き、でもこうするしかないんだと自分に言い聞かせた。初めてアルバイトの給料をもらった時、私は奇妙な事に気が付いた。夫はこれまで給料明細を隠して、全額ではないお金を渡していたのだ。確かに、小遣いを渡せる余裕が無かったので気持ちはわかるが、こそこそしていた夫が腹立たしかった。
今後の給料は全額出させ、冷たいようだが当然だと当時の私は自分を正当化していた。