後悔のない、私の人生
こんな思いをしても、私は離婚するのは思いとどまっていた。息子にとっては父親であり、私自身、息子を一人で育てる自信がなかったのだ。
それに、夫は仕事が変わると同時に夜中にコンビニの弁当を製造するアルバイトを始めた。自業自得とはいえ、頑張ってくれている夫を見捨てる事が出来なかった。愛情というより、同情に近い感覚だった。夫婦仲は冷えきっていたものの、お互い性欲には勝てず、週に二回はセックスしていた。夫には変わった性癖があり、革のタイトスカートを履かせては興奮を高め、行為に及んだ。
私は履くのが嫌だったが、性癖は仕方がないと諦め、我慢した。冬になると、ロングブーツを履かせて外出から戻ると、玄関でブーツの中の匂いを嗅いで至福の笑みを浮かべていた。不気味だったが、好みはそれぞれと言い聞かせそれも受け入れた。衰えない性欲と、仕事を掛け持ちしている分、収入が僅かながら増えたことで、気持ちのゆとりから二人目を授かった。自分にとって姉の存在が大きく、息子にも兄妹が必要と考え、計画的な妊娠だった。お金の大変さより、家族が増える嬉しさの方がこの時は勝っていたのだ。そう、これから巻き起こる様々な試練が待ち受けているとも知らずに…。