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後悔のない、私の人生

子供はすくすくと成長し、あっというまに六ヶ月を迎えた。そんな頃、子育てサークルに行ってみようと思い立った。参加してみると、うちのマンションのすぐ裏に住んでいる友達が出来た。Kさんの子供は女の子でうちは男の子だったがすぐに意気投合した。Kさんはとても人柄が良く、孤独だった私にとって本当に救いの神に思えた。

毎週、サークルが楽しみとなり、子供より私の方がその場の居心地が良かったのかも知れない。

相変わらず、辛い状況は変わらなかったが、実家以外の憩いの場所が増えたことで、ちょっとだけ心にゆとりが出てきた。

だが、所詮そんなゆとりはまやかしにすぎなかった。夫の給料明細は残業手当が大きく関係しており、少ない時はいけないとわかっていても夫を責めた。給料に不満を言っても仕方がないのは重々わかっているのに、つい愚痴がでる。その度に、夫と大声で喧嘩になった。子供の目の前で、喧嘩をして申し訳ないとは思ったが、怒りがこみ上げると自分でもコントロール出来なくなっていた。どんなに、誰かに相談しようと悩んだことか。

だが、夫との約束をやぶることになるのは抵抗があり、約束を守ることが自分のプライドでもあった。それに、どうしても心配をかけたくない。

私さえ、我慢すればいい。それで全てが丸く治まる。そう信じるしかなかった。

そんな日々が一年ほど続いたある日、とんでもない大事件が起きた。夫が今の会社を辞めたいと言い出したのだ。会社は某港の貿易会社なのだが、業績が悪く、今のうちに辞めたいという理由だった。私からすれば、自分から辞めることはないし、会社がよほど危なくなってからでも遅くはないと夫を説得した。会社の同僚も、夫を説得してくれたが、夫は頑として受け入れなかった。仕方なく、私が折れると、夫は本当に会社を辞めてしまった。それと同時に、健康保険はストップし、次の職場が決まるまで子供が病院にかかれなくなってしまった。幸い、手に職がある夫はすぐに新たな職場が決まり、どうにか難を逃れた。だが、どうにもお金がない時には、電気を止められてしまった。その次はガス。最後の水道は止められずに済んだが、明かりを灯せない時は本当に悲しかった。片言を話し始めた息子の「点かないねえ。」という悪気のない言葉が私の胸に突き刺さった。「そうだね。」そう返すのがやっとだった。自分が惨めで、情けなくて、私にとって一生忘れることのない出来事だった。


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