後悔のない、私の人生
この話しは、私の自伝であり、生きてきて本当に良かったと思える自分自身を振り返った作品である。
私の地獄の日々は、元夫のこんな一言から始まった。
「お金ちょうだい。」
「えっ?」「何に使うの?」私が聞き返すとこう言った。
「ローン会社に払わないかん。」
この人は朝から何を言ってるんだ。頭の整理がつかない。しかも、新婚旅行から帰って一週間後だっていうのに!
「だから、私が言ったじゃん!何にもないのかって!」
問い詰めると、そそくさと会社に行ってしまった。
このやりとりが、その後の私の人生に多大な影響を及ぼすことになろうとは、この時の私には知る由もなかったのである。
無論私も、全く心当たりがなかったわけではない。何となくおかしいと嫌な予感はあったのだ。追及するのが恐くて夫に聞かなかった私にも非はあるのだ。
話しを聞けば、ローン会社に借金があり、毎月返済しなければならないという。全部で6社。金額にして400万ほど。目の前が真っ暗になった。
住んでいるマンションだけでも、金融公庫と銀行から借りており毎月の返済がある。車のローン、税金、光熱費、食費、出ていくお金は山のようにある。
この人はどうするつもりだったんだろう。どうして、もっと早く言ってくれなかったんだろう。もはや、怒りのやり場は夫にしかなかった。
ローン会社の毎月の返済はトータルで12万円。キャッシュコーナーでひとつひとついくらか振り込む、何とも言えない虚しい作業。溜め息が自然に出てしまう。これを貯金や生活費に当てられたらどんなにいいだろう。仕方がないのに、どうしてもそう思わずにはいられなかった。私は悩んだ。夫の両親に頼めば、もしかしたら貸してくれるかもしれない。無利子で毎月返せば、今の状況は変わるかもしれない。だが、夫には両親には言うなと口止めされていた。自分の家族に相談しようか。でも、心配をかけたくはなかった。それに、夫と結婚する時家族の反対を押しきって結婚したのに、今さら何と言えばいいのか。誰にも相談出来ない。孤独感と絶望感が私を無気力にしていった。
もはや、私は毎日が苦痛でしかなかった。朝が恐くて、夕方までボーッと過ごし、なけなしのお金でご飯を作るのがやっとだった。夜がくると、一日が終わることに安心して、また朝が来る…。こんな日々が続くと、自分でも気付かないうちにうつ病のような状態に陥っていた。どうして、私がこんな目にあわなきゃならないんだろう。結婚して幸せになるはずが、なんでこんなことになっちゃったんだろう。泣いても泣いても涙が尽きることはなかった。いっそのこと、死んでしまおうか。そんなことまで考えるほど、どうしたらいいのかわからなかった。
だが、不思議なもので、そこまでになるとふと別の考えが浮かんだ。
もし、私が死んだらこの子まで道連れになってしまう。私のお腹には、新たなる命を宿しており、そう簡単には死ぬ訳にはいかなかった。私は、この子の母親だ。私が強く生きなきゃダメだ!それに、このまま死んだら夫に復讐出来ない!負けてたまるか!
自分自身、お腹の大事な命と夫への怒りが生きる支えになっていった。こうして、私は奇妙な覚醒をとげ、生きていこうともがき苦しむ海に、飛び込んでいったのである。
この話しを読んで、こんな人がいるんだ。私も私に生まれて良かったのかも。そんなふうに共感してもらえたら…。誰かのほんの小さな希望になれればと思っています。