朝
立ち止まったままで 吊り下がっている
縦横無尽とは程遠く 自由自在とは逆さま
あふれる怒りが指先から 土にと零れていく
それが波紋のように拡がって そして、静かになる
何も変わらず 何も、終わりはしない
始まりもせず 続きもしない
同じ場所を 歩いているのですね
それなら安心だ 知ってる道だもの
肩先に鳥が、とまりましたよ。
「鳥の話」
雨が通り過ぎた音 そっと窓を開ける
遠くの空に微かな虹の影 家々は日差しに湿って
手を伸ばしても 日々は掴めはしない
そこで少年はサッカーボールを 蹴った
白と黒の六角形の重なりが 飛んでいく
哀しみの批評家には 絶対になりたくないな
そんなふうにと、とれました 少年の、その姿
だって楽ですものね そうなるのは
哀しみの批評家になるのは 簡単です
大事な何かを諦めてしまえば それだけでいい
少年が蹴ったサッカーボールよ 雨上がりの彼方に
飛んで 消えてしまいなさい
飛んで 消えてしまいなさい
「雨上がりの」
意味のない事に理由をつけて 体裁を整える
無駄に時間を過ごすのは 罪とは思わない
もっと挑戦的に 未来と殴り合いたい
もっと戦闘的に 自分と付き合っていきたい
優しさの下には 冷たい仮面が一つ
私が楽観的になるには 長い時間が必用だ
一旦砕けた何かを どうにかしたくはない
それはそれで美しい風景 そのままがいい
手を差し伸べるのは やめたほうがいいな
奴らは、そのうち成功して こっちを嘲笑うかもしれない
そんな事は 何時でも何処でもある話
関わらずして 静かに笑っていたいね
誰にも理解はしてもらいたくない
自分の世界の住人は 自分でいい
それでも生きていけたら それでいいね
「堕落の閉鎖」
気にするなと云われても よけいに
憂いの風が 丘から沖へと吹き抜けて
差し伸べられた右手に 手は差し伸べない
握手をするほど 信頼は、そこには無いよ
旧い友人には 会うべきではない
その間に自己が創り上げた そう、幻想が
無残に崩されてしまう そんなものだ
危険は話をくぐり抜けて 明るい笑顔を見せておくれ
私たちの未来は光に満ちていると 優しく笑っておくれ
でも、そこには誰も居やしない 無風状態
船は動かず 鳥は飛ばない
ただ土が固まって 少し草臥れていた
「無風状態」
貧しきものは夢も希望も捨てて ポツンと一人で
世の中の冷たさを胸に抱えて 最期を待っている
偏見と差別に満ちた世界に 背中を向けて生きてきた
暗い部屋で一人きり テレビの画面の賑やかさよ
両親は既に、亡くなり 兄弟とも疎遠に
自分の家族はなく 友も去り行きて
後は静かなる最後を待つのみ 名は残したくはない
全ての人々に忘れ去られたい 時は流れて行く
静かに波の終わりの音が 近付いてくる
穏やかな孤独が 暖かく灯りを灯したよ
「孤独の哀歌」