ぼくとおかあさん5
おかあさんは帰ってこなかった。おかあさんは病気になったんだって。知らない人から言われて、ぼくは家から出て知らないところで住むことになった。
知らない大人たちはぼくのお世話をしてくれた。でも、ぼくみたいな子供がいっぱいいて、全然落ち着かなかった。特に寝る時だ。おかあさんがいなくて寂しかった。おかあさんがいるだけで、ぼくは嬉しいのに。
ぼくはおかあさんにすごく会いたかった。会って沢山謝りたかった。
おかあさんに許してもらえるように、良い子になります。言葉も先生みたいに丁寧にします。泣いたり叫んだりして、もう困らせません。乱暴なこともしません。絶対におかあさんに触れません。でも、おかあさんからはいっぱい触ってほしいです。前みたいに手を繋いで散歩したいです。にこにこと笑うおかあさんに優しく抱っこもしてほしいです。
わたしが良い子にしていたら、きっとおかあさんが元気になって、わたしのことを迎えに来てくれると信じていました。
でも、新しく年が明けても、おかあさんは来てくれませんでした。わたしの胸の中にぽっかりと穴が空いた気分が続きました。でも、代わりに知らないおじさんとおばさんがぼくのもとにやってきました。
「初めまして、はると君」
その人たちは、優しくわたしに話しかけてきました。
「わたしは五月と言うんだよ。はると君、よろしくね」




