ぼくとおかあさん2
ぼくにおにいちゃんができたんだ。ぼくと話せてうれしいって言ってくれて、ぼくもいつも遊ぶ友達が増えてうれしかった。
おにいちゃんは優しくて、色んなことをぼくに教えてくれる。おもちゃや本をどこに片づけるのか、指差してくれる。ぼくが幼稚園に行って家にいない間、おかあさんがなにをしているのか、話してくれる。
家の中で、ぼくがおにいちゃんと一緒に本を読んでいると、おかあさんが「おやつよ」と声をかけてくれた。
「今日のおやつはたい焼きよ」
おにいちゃんが前もって教えてくれたとおりだった。おかあさんはたい焼きをテーブルに出してくれた。
「本当だ。おにいちゃんの言ったとおりだ!」
ぼくが驚いて思わず叫ぶと、おかあさんは目を丸くした。
「おにいちゃんがどうしたの?」
「うん、おにいちゃんが教えてくれたの。今日のおやつがたい焼きだって」
おかあさんは不思議そうな顔をする。
「今日は幼稚園がお休みで、お友達とは誰とも会ってないでしょう? そのおにいちゃんとどこで会ったの?」
おかあさんが質問してくるので、ぼくは正直に答える。
「おにいちゃんは、ぼくの横にいるよ」
「え?」
おかあさんは困った顔をしていて、ぼくの周りをじろじろと見た。おにいちゃんのこと、怖がっているのかな? ぼくはおにいちゃんが良い子なんだって、おかあさんに分かってもらいたくて、さらに説明する。
「おにいちゃんは、すごく優しいんだよ」
でも、おかあさんの顔から笑みが消えてしまった。
「なにを言っているの? おにいちゃんなんて、いないわよ!」
おかあさんが怒りだしたので、ぼくは怖くなった。
「でも」
「いいから! もう、そのおにいちゃんの話はしないで!」
ぼくがさらに何か言おうとしたら、おかあさんがとても恐い顔をして、ぼくのことをもっと怒った。そして、おかあさんは部屋からいなくなった。
どうして、ぼくは怒られたんだろう。よく分からなくて、ぼくは悲しかった。




