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新作です

ガッツリ厨二系なのです

更新は超遅いと思います。気が向いたらどうぞ

感想戴けたら光栄です

「大丈夫、あなたは私がきっと守るわ」


 綺麗な声、とても暖かくて優しさで満ちている声が聞こえる。

誰かはわからない、でもすごく安心できる。

遠くでは怒声や怨嗟、恐怖の声と銃声や破壊の音で溢れ、風は血と何かが燃える嫌な臭いを運んできた。


「大丈夫、大丈夫だからね」


 女性はしきりに俺にそう言い聞かせるように言葉を紡ぐ。


「おひいさま、これ以上はもう・・・」


 別の女性の焦るような声が聞こえた。


「そうね、××××この子をお願い。足止めは私がするわ」

「なりませぬ!!それならばこの私が・・・」


 しかし、その言葉は最後まで語られなかった。


「いいえ、奴らの狙いは私とこの子よ。それなら私が姿を見せることで奴らはまず私を始末しようとする。ちがって?」

「ですが!」


 綺麗な声の主は気丈に、焦る声の主は従者のようで主の行おうとしている事を引き留めようとしているようだ。


「××××、今この子を守れるのは私たちだけ、そして奴らの足止めをできるのは私だけよ。この子の未来の為なの、わかってちょうだい・・・」

「ッ・・・」


 結論は決まっているようで、従者の人は言葉を失う。


「では、必ず生き延びてください。そして―――」


 おそらく行ったら最後、決して生き残ることは不可能なのだろう。しかし従者はわかっていてもそう願った、叶わない事と知っていても・・・。

荒々しく激しい音が近づき、もう時間が残されていないことを二人に告げる。


「えぇ、じゃあこの子のことお願いね」

「はい、この命に代えても」

「ありがと、じゃあね私の愛しい子。あなたたちに始祖と月の祝福を」


 そして額に何かが触れた気がした。ソレは冷たく、しかし暖かかったと思う。

やがて音は近づき


「見つけたぞ!こっちだ!!」


 と追っ手たちの声とともにいくつもの足音が響く。

ザンッという音の後に、地面に倒れる音がした。


「行って!早く!!」


 その声を聞き従者は腕の中にいる俺を大事に抱え主に背を向けて走り出した。

暗く、深い闇の中へ優しい主の願いのために。

そして俺の意識も暗闇とともに静かに沈んでいった。








―◇―◆―◇―◆―




―――目が覚める。

 頭を上げベットから体を起こして窓を開けると、朝の清々しい空気が部屋いっぱいに入ってきた。空に上がっている太陽は燦々と輝き、雲一つ無いそこで町を照らしている。

重い身体を動かし、俺は部屋に流れてくる風を胸一杯に吸い込んだ。

 俺は最近よく見る不思議な夢が気になった。何かを訴えようとしている、そんな気がするのだ。

まぁ、分からないことを考えたところで時間の無駄である。それなら少しでも早く働いて、お金を稼ぐことの方が人生に役立つと言うものだ。

と自己完結をして、身支度を整えて下に降りる。

 するとちょうどそこには深い蒼色の瞳、透き通るような白い肌、宝石のように輝く銀髪を三つ編みにした20代前半くらいの女性(こう見えて実は37歳らしい)がいた。

彼女は俺の育ての親で、名をリンベルという。

彼女は無口―――というより話すことが出来なく、故に彼女は筆記と手話によって相手に言葉を伝える。


「おはようリンベル、今日もいい朝だね」

『おはようございます。これならパンを買いにお客さんがたくさん来るでしょう。また後で配達をお願いします』


 彼女の手話に了解と伝え、リビングに行く。

ふと後ろを振り向いたら、リンベルがフロアへ向かおうとしていたが,なぜか動き方がぎこちない気がした。

まぁ今までにもときどきそういうことがあったし、本人に聞いても『大丈夫』と言っていたので気にしないでおこう。

机にはいつも道理朝食が並べられていた。

 俺は素早く椅子に座って食事前の神への感謝の言葉を語り、朝食に手を出した。今日は麦で作ったパンにいくつもの野菜とベーコンを挟んだバケットサンド、牛から絞ったミルクとお手頃メニューだ。

 パンは出来立てフカフカで野菜のシャキシャキとした食感とベーコンの香ばしさがたまらない。ミルクは贔屓にしている牧場でとれる新鮮なミルクで味がとても濃厚なのだ。

俺は味わいつつしかし素早く食事をすませ食器を洗い、店の方へと向かう。

 途中でトーマスさんとフレデリカさんにあった。トーマスさんは赤髪に琥珀色の瞳、たくましい筋肉を持つ褐色肌のおじさんで、とてもおもしろい人。

フレデリカさんは腰ほどにあるくすんだ金髪に、目立たない程度に化粧で隠したそばかす、活発な雰囲気の女性だ。呼ぶときはフレンさん。

二人はこのパン屋の従業員兼オーナーであるリンベルに雇われた人たちだ。

年はトーマスさんが27でフレデリカさんが19と聞いている。


「おはようトーマスさん、フレンさん」

「おぅ、おはようございやす坊ちゃん」

「おはようアル君、今日もとってもキュートね」

「だから男にキュートはおかしいってば」


 忘れてたけど俺の名前はアルヴィン。

この《ルナミス》というパン屋のオーナーであるリンベルに拾って育てて貰った14歳です。


「ほれフレンも坊ちゃんが来たんだ、さっさと仕事しな」

「わかってるわよ!じゃ、アル君こんなおっさんほっといてフロアにいきましょ」


 俺はトーマスさんに手を振ってフレンさんと一緒に店の中に向かった。

そこにはリンベルがすでにパンを並べて営業の準備をしているところだった。


「おはようございますオーナー、作業引き継ぎます」

『おはようございますフレンさん、今日もよろしくお願いします。ではアルは店の前の掃除を頼みます』

「了解、行ってきます!」


 俺は道具を持ち店の前の掃除をする。すると近所のおばさんや常連客の人が声をかけてくれる。

俺は元気に挨拶をして掃除を続けた。

ゴミを片づけ、道具をなおし、リンベルに報告する。


『では、今日の分の配達です。今日はガリーさんのお宅は少し多めですので間違えないように』

「うん、わかった。じゃあ行ってきまーす!」


 俺はパンがたくさん入った籠を持ち、配達に向かう。

そうして今日もいつもと変わらない一日が始まるのだった。







―◇―◆―◇―◆―





 町の中を配達のために歩く俺は、いろんな人に声をかけられる。


「おはよう、アルちゃん。今日も元気ね」

「おはよう、ハンナおばさん。今日も元気だね」

「おぅアルヴィン、配達お疲れさん。リンゴ一つもっていきな」

「ありがとうオルバさん」

「おはようアル、あんたとこのパンがなきゃ一日の力が入らんさね」

「おはようコロンさん、いつもありがとうございます!」


 配達をしながら町の人に挨拶をし、3分の2くらい終わったところで後ろから肩をたたかれた。

振り向くとそこには俺と同じ年くらいの少女がいた。

栗毛と髪とオパール色の瞳の少女で名をシリアという。

教会でシスター見習いをしている俺の同じ年の幼なじみだ。


「おはようアル!あんた相変わらず町の人気者ね」

「おはようシリア、別にそんなことないよ。後、今は礼拝の時間じゃないの?」

「それが聞いてよ!理由は分からないんだけど、教会に行ったら中が荒らされたようにメチャクチャにされてたの!」

「教会が!?」

「えぇ、まるで魔物が暴れた後のようでとっても怖かったわ」


 基本町の外は魔物がいるにはいるが、町の周りは城壁に囲まれており、町のなかに入り込むことは不可能のはずなのだが・・・。


「おかげで時間が余っちゃった」

「で、俺のとこに来たの?」

「そういうこと」

「全く、そんな暇があるなら治癒術や聖歌術の特訓に使えばいいのに・・・」


 治癒術は教会関係者なら効果の大小はあるが使える人を癒す魔法。

聖歌術は教会の中でも女神ミトナス様に選ばれた女性セレーナのみが使える対魔族に絶大の効果を持つ魔法のことである。

シリアはこの町でたった一人の《セレーナ》なのだ。


「そんなの私の自由でしょ。それとも私に見つかりたくないやましいことでもあるの?」

「・・・別にないけどさ」

「ならいいじゃない・・・せっかく時間作って・・・」

「えっ?何か言った?」


 最後の言葉が小さくて聞き取りにくく、聞き返したのだが、


「なんでもない!!」


 と顔を真っ赤にして怒られた。なんでだろう?女の子ってわかんないなぁ・・・。


 しばらく話をしながら俺とシリアはパンの配達を行った。

世界はこの瞬間にもいろんな出来事が起きているのかもしれないが、関わりのない俺たちは今日も平凡で幸せな毎日を送る。

いつまでもそうであると思っていたんだ。

けど、世界は俺にそんなことを許してはくれなかった。


「よし、これで配達おしまいっと」


 俺は空になった籠を掴み店に戻ろうとした。


「ねぇアル、今日は何時まで仕事なの?」

「ん?えっと、昨日リンベルが昼のピークを過ぎたら上がっていいって言ってたから、昼の1ルークちょっとくらいかな」


 昔は時の精霊を呼び時間を確認して鐘を鳴らしていたのだが、異才の発明家オーヴァ・ルオーマの作った時計により時間はより身近で細かく使えるようになった。

まぁ、少し高価なものではあるのだが・・・。ついでに鐘は一応今でも使われている。

―――閑話休題


「そう、じゃあ2ルークくらいにに迎えに行くわ」

「なんで?」

「この前言ったでしょ、シスタークランのプレゼントを買いに行くのよ」

「・・・・・・あぁ、そういえばそんなこと約束してたなぁ」


 シスタークランは教会で一番えらいシスターで、自分にとことん厳しく周りにも厳しい鬼ババァだ。近所の子供は大体彼女の説教をくらうのだが自分のために怒っているとわかっているから皆に好かれている。

俺はシリアに引っ張られて町の外に行き、そのたびに何度も拳骨を受けたので苦手だ・・・。まぁ嫌いというわけではないけど

で、そのシスタークランが次の週末に63歳の誕生日を迎えるので、お祝いになにかプレゼントを贈ろうと近所の子供たちと一緒にお金を少しずつ出しあい、俺たちが代表で買いに行くこととなった。


「じゃあ私いったん帰るわね。アルちゃんと待っててね」


 と要件を言って帰って行った。

俺も急いで戻ろうと町を走り出すとものすごく嫌な視線をかんじた。

視線の方向を見ると町で見たことのない汚れたフードの人がいた。うーん、会ったことなさそうだし気のせいだろうと結論を出す。

帰り道なのでその人のそばを通るとフードの人はブツブツと何か言っているようだ。


「・・・けた。・・・見つけた・・・」


 何だろう、やっぱりちょっと不気味だな。少し気になったけど俺は店に向かって走り出した。

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