計都と家族
これにてM2本編はとりあえず完結です。近いうちにイラストというか登場ペットたちのイラストがアップできると良いのですが・・・。
「計都ちゃ~ん、ご飯だよ~。早くおいで~~」
のんきなりゅうの声にあたしは更に歩くスピードをあげてリビングに行ったわ。だってそうしないとりゅうに片付けられるより先に欠食児童さながらのコウにあたしのご飯まで食べられちゃうんだもん。
案の定先に来ていたコウが自分の分を食べ終わってあたしのご飯まで狙っていた。
「ちょっとコウ!!先に逃げてきたあげくにあたしのご飯を食べるなんて許さないからねっ!!」
「コウ?」
あたしの怒鳴り声と、別に荒げてるわけじゃないけど妙に言うことを聞かずにいられない九曜の声に伸ばしかけていたコウの手が止まる。
「あれ~?計都ちゃん、その子、お友達?」
何も知らないりゅうが見慣れない黒猫を見て首を傾げてる。
さすがにあたしが食べてる間こいつに何も食べさせないっていうのはプライドが許さないのでりゅうに黒猫の分のご飯も頼んでみる。
「猫のご飯は計都ちゃんの缶詰しかないんだけど、分けてあげてもいいのかな?」
しょうがないか。頼んだのはあたしだし、この家に猫はあたし一人だもんね。
頷くとりゅうは新しい缶詰を開けて皿に移すと黒猫に差し出した。
「どうぞ~。遠慮しないでゆっくり食べてね~」
ニコニコとりゅうが食べるのを見てるけど、正直言ってご飯食べてるのじ~っと見られるのって食べ辛いんだよね。
それは黒猫も思っていたらしく何だか落ち着かない様子。
「あのね、りゅう。そんなにじ~っと見てたら食べ辛いでしょ」
「あ……」
まったく。猫に注意される人間ってのも普通いないわよね。
でもりゅうはボケてるからこれぐらい言わないと時々気付いてくれないことがあるのよ。こーゆーところはどっちかって言うと、ときのほうが気が回る。
とりあえずあたしも自分のご飯を食べることに専念して、全部食べ終えてから隣を見ると黒猫も食べ終わった所だったみたい。さあ、これから理由を聞かせてもらって謝ってもらわなきゃねっ!
そのあと、なし崩し的に皆がソファーに移動して原因をコウに問い詰めたの。そしたらやっぱり一番悪いのはコウだということが判明したわ。
だってコウのバカったらボール拾いに家の外に行ったらこの黒猫が落ちてたから拾ってきたって言うのよ。信じられる?!
「だって、どう見ても疲れてるみたいだったし、何だかほっとけなかったんだもん~~」
だからって犬が猫を拾ってきてどうすんのかしら。やっぱりバカなんだわ、こいつ。
「あのね、にーちゃん。この子をうちに置きたいのかも知れないけどそれはにーちゃんが一人で決められることじゃないし、もちろん私一人でも決められない。それはわかるよね?ねーさんとも相談しないといけないことなの。確かに捨てられてたこの子をかわいそうに思って連れてきたんだろうけどさ」
あ~あ、さすがのりゅうも渋い顔してるわ。これじゃときもおんなじ反応するわね。どうする気かしら?
「でも、でも、こんなにちっちゃいんだからほっとけないだろ?!お願いだからここにおいても良いだろ?」
んんん~~~っと腕組みをしてりゅうが考え込んでる。大体においてコウに甘いりゅうだけど今回はさすがにねぇ……。
いくらほっとけないって言ったって、時と場合があるということをコウには少しわかってもらわないと駄目みたいね。
「あんたいい加減にしなさいよ?りゅうやときの都合って物もあるだろうし、第一こいつがうちに来たら誰が面倒を見るって言うの?!」
「オレが見る!!」
コウの言葉にりゅうもあたしも九曜も、そして黒猫の目も丸くなってしまった。
「そうだよ!オレが拾ってきたんだから俺が面倒見るのが当然だろ?!ご飯もオレのぶん分けてあげるし!」
グッドアイディア!とばかりに叫び、食い下がるコウにりゅうがさらに困ってる。
「………と、とりあえず、結論はねーさんが帰ってきてからね……」
しぶしぶりゅうが出した結論は先送りにすることだった。
その日の夕方、ときが帰ってくるなりりゅうは早速黒猫問題を相談していたみたい。
「はい?コウが黒猫を拾ってきた?」
「そーなのよ。その上面倒はオレが見るから、ご飯も自分のを分けてあげるからって聞かないのよ。……どうしよう?」
「いや、いきなりそんなことを言われてもなぁ…。とりあえずその猫どこにいるの?」
「さっきまでは出窓のとこにいたけどねぇ…。あれ?姿がないや。計都ちゃ~ん、黒猫どこに行ったかしんない?」
玄関先にいたりゅうに呼ばれたけどリビングにはいないみたい。コウがどこかに連れて行ったのかもしんないなぁ…。
そう答えると今度はコウを呼んでる。
そのあと、しばらくしてときが黒猫を抱いてリビングにやってきた。
「ふ~ん、この猫、前足の先だけ白い靴下履いてるんだね。あたしは可愛いと思うけど、皆は何て言ってるの?」
「アー、えーと、計都ちゃんはどう思う?」
ときに聞かれてようやくあたしと九曜の意見を聞いてないことに気付いたみたい。
「別に~。昼間の暴言に対しては謝らせたし、その子がどーしてもここに居たいって言うんなら置いてあげてもいーっかな―って感じ?」
「別に僕はここに居付きたいわけじゃない」
むっ!ほんっとに生意気なんだからっ!!こういう口の聞き方すると可愛げの欠片もないわね。
「くーさんは?」
「反対する理由はないけど?」
日が暮れてからようやく本格的に動き出した九曜が読み終わった本を片付けに行く途中で答えてる。
「だって。どーする?」
「どーするもこーするもねぇ…。コウはこの猫の保護者気分なんでしょう?今更この子捨てたりしたら一緒に家出するんじゃない?」
とても冷静にありえそうな予測を立てたときに対しりゅうが頭を抱えて絶叫する。
「い~~~やぁぁぁ~~~!!にーちゃんが家出なんかしたら悲しすぎるぅぅぅぅ~~~!!」
とまぁ、半泣きのりゅうの叫びにときがとうとう折れて5人目の居候が決まったのだった。
そして現在。
あたしの家には人間のりゅうと、とき。茶犬のコウ。グレイの毛並みの九曜。白い靴下を履いた猫ランと5人(?)もの居候がいるの。
毎日が楽しいけれどマイペースな九曜には何故か頭が上がらないし、そのストレスとコウとりゅうにぶつけてときにちょっとだけ怒られる。
ランはいっつも無関心を貫いて誰ともあまりかかわろうとしない。最も、コウは纏わりついて構おうとしては邪険に扱われてるみたいだけどね。
わいわいがやがや、少しぐらいうるさいほうが好きなあたしとしては今の生活はとても満足できるかな。
この近所にはうちの居候達よりも個性的なのが一杯いるから次の時はその話をしたげるね♪
だ・か・ら!またあたしが話すときは必ず聞くこと!聞かない奴にはあたしの必殺ダイビングドロップキックを蹴りこむからねっ!
ていっ!!
「んぎゃっ!!」
「むぎゅっ!!」
「うわっ!!」
あ…しまった。飛び降りたらりゅうがいた…。その下敷きにコウと九曜もいる……。
………し~らないっと!!
お終い。
お付き合い、ありがとうございましたv




