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計都と九曜

コウがあたしの家来になってからそんなに経ってないある日、今度はときがまた違うのを拾ってきちゃったのよ。


「をや~?どうしたの、ねーさん。その子?」

「いや…今日散歩するときにちょっと足を伸ばして広い草原もどきまで行ってきたのよ。そしたらさ、この子が一人でぽつねんと寂しそうに座ってたから……」

「つい拾ってきちゃったとか?」


どうやらりゅうの言葉は図星だったみたい。いつもは冷静なときが苦笑いしてる。


「ん~~、首輪つけてないし、この付近では見ない顔だね。もしかしたら迷い犬って可能性もあるから外に張り紙して飼主さん来るまで預かっとく?」


灰色の毛並みをしたちょっとトロそうな犬がりゅうに首筋をわしわしされて気持ちよさそーな顔をしている。コウは近寄りたいみたいね。ソファーの陰からずっと様子を窺ってそわそわしてるもの。あたしも興味ないわけじゃないけど……。なんだろうあれ、ただの犬じゃない気がするんだけど……。


「まぁ、その辺りはねーさんに任せるわ。イラスト得意でしょう?特徴描いたのを出しておけば良いし、飼主さん来なかったらうちで飼えばええやん」

「アンタねぇ…。うちには既に計都ちゃんとコウがいるんだよ?もう一匹飼って大丈夫なんかい?」

「ん~、何とかなるっしょ。第一ねーさん今更この子捨ててこられる?」


あははは、ときったら珍しくも鋭いりゅうの指摘に詰まってるわ。そうよね~、ときも動物大好きだもの。そんなことできる訳ないもんね。


「それに今更一匹や二匹増えたって大して変わんないっしょ。うちら揃って働いてるし、別に養えないわけじゃないって。だ~いじょうぶ何とかなるって♪」

「……誰が面倒を見るのだ?」

「当然拾ってきた人。にーちゃんは私が貰って来たんだから私がメンドー見るし、計都ちゃんはここの主だから2人で見るの。で、その子はねーさんが拾ってきたんだからねーさんが見る。OK?」


あっけらかん、と言い切ったりゅうにときが大きな溜め息をついてる。

そうよねー。あたしから見てもりゅうってちょっと能天気すぎる所があると思うもの。能天気って言葉じゃなければただのバカ、って言ってもいいけどね。

しばらく考えた末にりゅうの提案に乗ることにしたらしいときが未だワシワシされている犬の頭を一つ撫でる。


「で、名前どーすんの?」

「そりゃぁ、計都、コウ、と来たら九曜しかないでしょう」

「あ、やっぱり?そうだよね。おしっ!!今日からお前は九曜だよ。計都ちゃんやコウと仲良くね」


りゅうはそう言って九曜の頭をポンって一つ叩いた。あれがりゅうなりのお迎えの方法なんだろうな。コウが来た時もやってたから。


「はぁぁ~~、結局こうなるのか……」

「何か言った?ねーさん?」

「いや~別に~」


ときが溜め息をつきながら立ち上がると自由になった九曜が一つ身震いをしてからこっちに歩いてくる。

チェストの上で高みの見物を決め込んでいたあたしの傍までくると九曜がにっこりと笑って挨拶をしてきたわ。


「初めまして。計都だね?僕は九曜。宜しく」


その笑顔がコウの馬鹿笑いと違って柔らかいものだったから良いな…とかちょっと見ほれちゃったわ。いけないいけない。


「そうね、まずあたしに挨拶に来るのはとってもいいことだと思うわ。うん。九曜、あなたがこの家に住むことを認めてあげる」


ちょっとドキドキしながらも威厳を持ってあたしが言うと九曜はまた嬉しそうに微笑む。この笑顔が曲者なのよ~~。

なんてあたしが思っていたらそわそわと待ち構えていたコウがいきなりソファーの陰から飛び出してくる。


「オレ、コウって言うんだ!!同じ犬同士よろしくなっ!!」


あら?コウが差し出した手は握り返したものの九曜ったらちょっと困ってるみたい。どうしたのかしら?

だけど、鈍感なコウは全く気づいていないわね。あんなに尻尾をばたばたさせたら埃が立つじゃない。


「ちょっと!コウ!!ほこりがここまで来るじゃない!!そのしっぽ、何とかしなさいよ!」

「うへぇ~、気をつけたほうが良いよ、九曜。計都ちゃんは怒らせるとすっごく怖いからな」

「コウ!!」


まったくいっつも一言多いんだからっ(ぷんぷん)。

でも九曜ったらちょっと困ったような顔で笑ってるだけだわ。結構大物かもしれないわね。………うん、決めた。


「ねぇ九曜?あなたただの犬じゃないんでしょ?」


あたしの問いかけに今まで笑っていた九曜が振り向く。…くすっ、やっぱりね。瞳が笑ってないわ。


「どうしてそんな風に思ったんだい?」

「何となく。勘、ね」


へぇ…九曜って笑ってないとこんな表情になるんだ…。ちょっと意外だったかな?気になったから突っ込んでみただけなんだけど。


「…一応犬科だとは思うよ。正直言って僕も自分が何者なのか良く知らないんだ。ただ、気付いた時にはあの草原に一人でいたから」


あ、もうさっきのちょっと困ったような表情に戻っちゃった。もう少し真剣な表情とか見たかったんだけどな。でもこれ以上聞くのは悪い気もするしなぁ…。


「まぁ、そんなことはいいとして、今日から九曜はあたしの副官ね。決定。だから家来よりはちょっとだけ優遇してあげる」


びしいっ!!と指差し指名したら九曜、目を丸くしてるわ。…もうちょっとリアクションがあると嬉しいんだけどなぁ。


「僕が副官ってことは他にも誰かいるの?」

「家来が一杯いるわよ。コウとかりゅうとか、ときもそうね」

「……みんな計都の部下なの?」

「家来」(キッパリ)


言い切ったあたしに九曜が笑いをこらえてるわ。何よー、言いたいことがあったらはっきり言えば良いじゃない。

九曜の隣でコウが何か文句言ってるみたいだけど聞こえな~い。うん。家来の文句は受け付けないんだもん。


「どういう基準で決まってるのかはわからないけど、僕でよければ副官になるよ」


そうそう、最初から素直に従ってればいいのよ。

こうして新しい住人はあたしの副官として活躍してくれることになったのだ!

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