計都とコウ
だいぶ前に書いた作品ですので誤字脱字があったらすみません><
ペット視点のお話、お楽しみいただければ幸いです。
それは今からほんのちょっと前、あたしのおうちに2人の人間が来たことから始まったの。
「ねーねー、ねぇさーん。ホントーにここにすめるなんて夢見たいだねぇvv」
「ホント、よく当たったもんだ。あんたのくじ運って時々異様なほどに良いよね。確かここの倍率って150倍以上だったって聞いたけど?」
あたしが2階のベランダの片隅で気持ちよ~くお昼寝をしているときに聞こえてきた声。それに興味を持って下を覗き込むといきなり黄色い声が飛んできたの。
「いや~んvねーさん見てみて~~!!あんな所に猫がいる~~vv」
「何?!どこどこ?あたしにも見せろ。…ああ~本当だ。白猫?可愛いね。でも、いつの間にいたんだ?」
「そんなことより猫~~vv早く入ろうよっ」
そういうと髪の長い女の人が短い髪の人が止めるのも聞かずガチャガチャと玄関の鍵を開けて入ってくる。
ばたばたと足音を立てて近づいてくるけど、あれじゃ転びそうね。
なーんて思ってたら「ばった~~ん」と痛そうな音が聞こえた。…くすっ。やっぱり転んだのね、どじな人間だわ。
なのにめげなかったらしい女の人はあたしに一番近い部屋のドアを開けると勢いよく走ってくる。
「にゃんこ~おいで~~vv」
あ~あ、鼻の頭が赤くなってるじゃない。なっさけないわねぇ。
……でも、悪い人じゃないみたいね。後からきた女の人も呆れつつもあたしに興味持ってるみたいだし……。
「ねーさん、ミルクか何か持ってない?にゃんこの好きそうなもの~」
「はぁ?いきなりそんな事言ってもなぁ…。ちょっと待て。食べるかどうか知んないけど、今夜の祝杯を上げるために買ったつまみが…」
ぴくっ?!祝杯?ってことはお酒だよね?おつまみも用意してくるなんていい人たちなんだわ、この2人。
後からきた女の人がビニール袋から取り出したのは…くんくん、このにおいはチーズだわ。すきすき~vv
「にゃんこ、これあげるよ~おいで~~v」
髪の長い女の人がチーズを振ってる。そこまで言うなら行ってあげてもいいでしょう。
そう判断してとことこと近づくとあたしの食べやすい高さで止めてくれる。あら、この人前にも猫を飼ったことがあるみたい。わかってるじゃない。
おいしく頂いた後、ふっと見上げると瞳をうるうるさせて顔中に抱きたい!!ってかいてあるのを見ちゃった。
う~ん、あんまり人に触られるの好きじゃないんだけどな~。ま、暫らくここにいるみたいだし、たまにならいいでしょう。
そう考えてあたしから擦り寄るといきなり抱きかかえられた。
「可愛い~~vvねーさんっ!この子飼ってもいいよねぇ?」
「どこの子かは知らないけどさ、後でご近所にあいさつ回りに言って聞いたらね。あたしだって飼いたいけど、もう他に飼主がいたら駄目だよ」
ねーさんと呼ばれてた女の人が真面目な顔して言ってるけど、あたしは生まれた時からここにいるのよ。誰かに飼われたことなんて一度もない。母さんと他の兄弟たちは気が付くといなくなっていた。それからはたった一人でこの家で生きてきたんだから。
プライドを持ってふんぞり返ると抱いていた女の人はあたしの顔をジーっと見つめて叫んだ。
「この子の名前、計都にする!!いいよね?」
ねーさんは大きな溜め息を一つつくと仕方なさそうに言った。
「良いも悪いもないでしょう、全く。これから一緒に暮らすんだからちょっとは人の意見も聞けや」
そうしてあたしはいきなりあたしの家に住み着いた2人の女の人と同居することになったの。
二人が住み着くようになってまずあたしが覚えたこと。それは最初にあたしを見つけた髪の長い女の人が「りゅう」、短い髪の人が「とき」という名前だということ。
だけど「とき」はいつも「ねーさん」って呼ばれてる。どうも本当の姉妹じゃないみたいなんだけど。どうしてりゅうがそう呼んでるのかはしんない。あたしには関係がないから興味もないしね。
そして、ときは毎朝どっかに出かけて夕方6時ごろ帰ってくるかな。
いつも家に残っているりゅうに聞いたら「ねーさんはお仕事に行ってるんだよ」って言ってた。ついでにどうしてりゅうがいつも家にいるのか聞いたら妙に遠い目をして「ふっ…、私は家でお仕事なのさ。そして締め切りはもう少しだというのにまだ後50ページ以上残っている……ふふふふふ……」となんだかイッちゃってる目をしながら笑ってた。さすがのあたしも怖かったのでとりあえず逃げちゃった。
あとね、この家には他にも住人が増えたんだ。2人が住み着いて間もなくりゅうがどっかからチビ犬をもらってきたの。
そいつの名前は「コウ」。手足が大きくてすっごくなつっこい犬なのよ。
だけど初めて会った時の一言が、
「オレ、コウって言うんだ。計都ちゃんだろ?可愛いなー。美人だけどすっごくわがままで暴れん坊だって聞いたんだけどホント?」
なんてキラキラした目で聞いてくるのよ。本当に失礼しちゃうわ。そんな風に聞かれて誰が「はい、そうです」なんて答えるって言うのかしら。ちょっと気に食わなかったので「とりあえず」簡単にしつけをしておいたわ。うん。何事も初めが肝心だからね。
なのに、コウったらちょーっと鼻の頭を引っ掛かれたぐらいでいきなり泣き出しちゃうんだもの。男のくせに情けない。こんなのが家来だなんてちょっと不安になっちゃうわね。
え、いつ家来になったかですって?そんなのあたしが決めた時からに決まってるじゃない。この家に居候してるのはみ~んなあたしの家来。そう決まってるの(きっぱり☆)
「どうしたの~にーちゃん?」
コウの泣き声に驚いたりゅうが通称仕事部屋って呼ばれてる部屋から飛び出してきた。……この人、コウのことを「にーちゃん」って呼ぶのよね。ときのことを「ねーさん」って呼ぶのもおかしいし、なんだか変な人よね。
「ああ~、鼻の頭から血が出てる~!計都ちゃんだね。駄目だよ~、ちゃんと仲良くしなきゃ。にーちゃんも計都ちゃんの言うこと良く聞いて仲良くしてね」
そう言いながら涙目のコウを抱いてリビングの方に行っちゃったけど、猫の言うことを犬が聞いて仲良くするって言うのもなんだか違う気がする……。
でも私がこの家で一番エライんだから当然といえば当然よね。あくまでこの家に最初に住んでいたのはあたし。りゅうやとき、コウはあとから住み着いたんだもの。あたしが許さなきゃ縄張りに入れてもらえなかったんだからそこの所はきっちりしておかなきゃね☆