ツンデレじゃない、観察してるだけ。
しゃべる”シリーズ第3話は、ツンツンしているようでちゃんと見てくれている――そんな猫のお話です。
文句は多いけど、距離はちょっと遠いけど、それでも彼女なりの「愛情表現」があって。
人間が気づかないところで、静かに見守ってくれている存在に、今日もちょっとだけ救われているのかもしれません。
また寝坊か。
目覚ましが鳴ってから、3回は止めてる。
しかも寝ぼけて靴下投げたあと、二度寝してるし。
……ほんと、こいつ飼い主としての自覚あんの?
私はミケ。
三毛猫、2歳。人間換算だと女子大生くらいらしい。
いや、知らんけど。別に大学行く気もないし。
そんなことより、今朝のカリカリの分量、少なかったんですけど。
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「ん〜〜〜……ごめんミケ、ちょっとだけ待ってね……」
飼い主が、むくっと起き上がる。
髪、ぼっさぼさ。
顔、寝ぐせよりひどい。もはやホラー。
「ごはん、ごはん……はい……どぞ……」
おおっと、雑。
なんだその手の動き。
“投げる”に近いレベルで皿にぶち込んだな。
「……まあ、許すわ。食えるし」
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カリカリを一粒ずつ、あえてゆっくり食べる。
あくまで“優雅に”がポリシー。
「……ミケ、さっきから見てたけど、今日も冷たいな〜……」
と、飼い主が嘆く。
うん、見てた。起きてからずっと。
だってこの人、起きたときから寝るまで、いっつも何かしら抜けてんだもん。
昨日はスマホ冷蔵庫に入れてたし、
一昨日はコップ持ったまま風呂入ったし、
その前は私の尻尾ふんだ。2回も。
「……あ〜、なんか疲れた〜……」
ベッドにバサッと倒れ込む音。
あーあ、また洗濯物たまるやつだわ。
この人ほんと“やる気”って概念、どっかに忘れてきてる。
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でもさ。
泣いてたんだよね。昨日の夜。
スマホの画面見ながら。
静かに、でもちゃんと、涙出てた。
「大丈夫」とか言わなかった。
泣きながら寝た。
私の方に背中向けて。
それ、見てたんだけどさ。
私、しゃべれないし、
うまくゴロゴロも言えないし、
「だいじょうぶ?」ってなでることもできない。
だから――
隣、空けといた。
布団の中、ちょっともぐって、
背中、ちょんって触れるくらいの距離で。
何もしない。
何も言わない。
ただ、そばにいるだけ。
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ツンデレ?違うし。
私が“観察してるだけ”って言ってんじゃん。
……でもまあ、
今日も帰ってくるまで、ちゃんと見てるけどね。
あのドアが、カチャって開くまで。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!
今回の主役はツンツンな猫・ミケ。
猫って本当に気まぐれだけど、どこかで人間のことをよく見ている――そんな視点で描いてみました。
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