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キャッチできない相棒

“しゃべる”シリーズ第1話です!

今回は、やんちゃで不器用なボールと、めんどくさがりなグローブのすれ違いコメディ。

普段は意識されない道具たちにも、ひそかな会話があるのかもしれません。

少しだけ笑えて、ちょっとだけ仲良くなれる(かもしれない)ふたりのお話をお楽しみください!

「おっしゃー!今日もビシッと決めてやるぜ!!」


朝、野球バッグの中から飛び出してきたのは、ひときわ元気なボールだった。

空気はパンパン、やる気もパンパン。

おかげで昨日の泥がまだ乾いてないけど、本人は気にしていない。


「……まだ寝てたいんだけど」


隣でミットを半開きにしたまま、低音ボイスでうなるのはグローブ。

ぐでんとした様子で、まるで布団から出たくない人間のようだ。


「なーに言ってんだよ、グローブ!俺たち相棒じゃん?今日こそ華麗にキャッチされに行くからな!」


「……昨日も言ってたよな、それ」


「昨日は……あれは俺のバウンドの仕方が悪かった!今日は完璧だって!」


「“完璧なバウンド”とか言い出すボール、聞いたことないけど」


「大丈夫!俺、今日は“まっすぐ飛ぶイメトレ”してきたから!」


「お前、飛ぶだけで曲がるじゃん。風に弱すぎるんだよ、根性足りてない」


「俺のせいじゃなくて!それ、風のせい!あと人間の投げ方のせい!!」


「また人間のせいか。なんかあったらすぐ“ピッチャーが悪い”って言うよな、お前」


「いや、だって実際さ……スライダーっぽい変化とか入れといて“取ってもらえないの?”みたいな顔するんだよ?」


「お前が勝手に落ちてくるんだよ。こっちは予知能力者じゃないの」


「グローブ〜〜!!そこはもっと“信じる力”ってのがさぁ〜」


「はいはい。信じてたら取れるなら、誰もエラーしないよね」


「ねえ、ちょっと冷たくない?オレたちって相棒じゃなかったの??」


「相棒は、“ちゃんと来る”奴に言うんだよ」


「うわぁああん!!相棒にまで見放されたァァ!!」


(しーん……)


「……泣くな。めんどくさいから」



---


そんなやりとりをしていると、少年の手が伸び、ボールは再び空中へ。

シュッと風を切って、一直線に飛んでいく。


――バシッ。


「……! とった……!」


「……まあ、今日のは受けやすかったよ。変に落ちもしなかったし」


「マジ!?今日の俺、まっすぐだった!?飛んでた!?」


「うん、飛んでた。ちゃんと俺のど真ん中に」


「やっっったぁあーーー!!!」


「うるさい」



---


数分後。再び飛ぶボール。

が、次の球は思い切り左に曲がり――


ズサァァッ。


「いってぇ……!!肘打った……」


「知らんがな」


「なんで取ってくれなかったのぉおおお!!??」


「こっちのセリフだよ。お前、バウンド2回して“こっち向いてウインク”みたいな動きしただろ」


「サービス精神だよ!!“受け止めてくれてありがとう♡”って!」


「そういうのいらないから。普通に来い。普通に」


「グローブって、ほんとクールだよな……」


「お前が熱すぎるだけだろ」



---


ふたたび投げられるボール。今度は真上へ。


「うわ!フライか!?よーし、いっちょ、背面着地でも……」


ボールは高く、高く、空へ舞い、そして……。


――バシッ。


「うわ!ナイスキャッチ!グローブ、天才!好き!!」


「……ああもう、めんどくさい」


「えへへ、でもなんだかんだ受け止めてくれるじゃん。オレのこと」


「……まあ。お前が本気でまっすぐ来るなら、な」


「ん? 何それ、プロポーズ??」


「帰れ」



---


今日もボールは跳ねて、グローブはぼやきながらそれを受け止める。

息は合わないけれど、なんだかんだ悪くない。

そんな、絶妙にすれ違ったままの相棒たちの物語なのでした。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!

このシリーズでは、人間以外のものたちが主役になって、日常のちょっとした面白さや優しさを描いていけたらと思っています。


ボールとグローブのやりとり、楽しんでいただけたでしょうか?

感想・コメント・評価など、ひとことでももらえると、とても励みになります。

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