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12−9 ──次は私が勝つから



「江戸鮭」


「は、はい」


「よくわかったね」


「は、はあ...」


一件落着して私たちは公園の一角のベンチに座って、火照った体を冷やすために水分補給をしていました。

もる子さんは一気に飲み干して先程の戦地辺りを何やらウロウロしています。


「私の能力、『結束けっそく』。言った通り」


「そうですか...」


「相手を信頼すればするほど強く、はずれない。私はもっと江戸鮭を知ってから来るべきだった」


「...そうなってたら完全に負けてましたね」


「ただ、江戸鮭やもる子の信頼だけじゃない。これは私の先輩への信頼も含まれる」


「第一軽音部の先輩ですか...?」


「そう。先輩を信頼している分の強さも枷に反映される。普通は外れない。だから、もる子の力は想定外。馬鹿」


「...やっぱりあれって力でねじ切ってたんだ...」


「うん。でも私の信頼も弱かった。江戸鮭へのも、先輩へのも」


「いや、そんなことは...」


「ある」


「え...」


「絶対に壊されない枷、江戸鮭は壊してるから」


「そ、そんなことありました?...私にそんな力ないですよ」


「最後。もる子を助けた時。私の能力がわかったうえで『絶対に勝てないと思って』挑んできたなら、もる子の枷が壊れないことを知ってたはず。いくら『私には無理』と思い込んでも、『無理と思いこめば壊れる』と思ってしまっている時点で疑念が生じてる。だから壊せない」


「いや、でも私、あのときわかってはいても『絶対に壊せない』と思いながら壊しましたし...」


「──ふーん」


臨ヶりんけはまさんはスッと立ち上がって、軽くおしり汚れを叩きました。

そして私を見おろしながら言いました。


「──素直になればいいのに」


それがどういう意味だったのかは分かりません。

腰に手を当てて、臨ヶりんけはまさんはスポーツドリンクを飲み干しました。


「─じゃ」


「お帰りですか...?」


「うん」


「そ、そうですか...。あの、臨ヶりんけはまさん」


「ん」


「ありがとう、ございました...」


「────うん」


そう言うと彼女は背中を見せて去っていきました。




「まっってえええ!臨ヶりんけはまちゃああああああん!」


折角の雰囲気をぶち壊すように、もる子さんが絶叫します。

公園の近くにはもうセミはいないことでしょう。

もる子さんは臨ヶ浜さんに近づくことなく、遠くから叫び続けます。


「なに」


「さっきのさあ!輪っかさあ!落ちてたら貰ってもいいかなああぁ゛!」


「なんで」


「硬いから筋トレに丁度いいじゃん゛!!!」


渾身のもる子さんに、私は思わずため息をつきました。

そのため息と同じくらい、小さく小さく臨ヶりんけはまさんは囁きます。


「─いいよ」


「いいの?駄目なの?どっちいいい?あ、行かないでよ!臨ヶりんけはまちゃん!臨ヶ浜ちゃああああん!」


もる子さんの声は虚しく、臨ヶりんけはまさんの影は小さくなっていきました。

走り寄ってきたもる子さんも、流石に彼女を追うことまではしませんでした。


「良いのかなあ?」


「...落っこちてるのなら良いんじゃないですかね」


「ん?あ、そっちじゃなくってさ」


「なんです?」


「臨ヶりんけはまちゃん。自分でも種明かししてたじゃん?先輩との信頼がパワーだって」


「...よく聞こえてましたね。で、それがなにか...?」


「うん。能力って皆隠しがちなのに良いのかなって」


「あー...まあ...。私も種明かししちゃいましたし...」


「もし次また戦うことがあったら困んないかな〜」


「...戦うことがないのが一番なのでは?」


私がそういったと同時に、小さく臨ヶ浜さんの声が聞こえた気がしました。

それは空耳だったか、はたまた本当に彼女の声なのかはついに分かりません。





13−1は今日投稿!

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