2−1 どうして転校してきたの?
一方的な暴力から早四時間がたちました。
今はちょうどお昼休み、私ともる子さんは机を向かい合わせて一緒にご飯を食べているところです。
「江戸鮭ちゃんはどうして転校してきたの?」
なんて、のほほんとした質問ばかりしてくる彼女ですが、私はそれどころではありませんでした。
朝に目撃してしまったあれが脳裏に焼き付いて離れないのです。
もちろん出会いの話ではありません。
風紀委員を名乗る質候さんを叩きのめしたあれです。
迅速かつ早急に相手をねじ伏せることだけを考えた無駄のない圧倒的制圧力はもはやきらら系のそれではありません。
多分ドラゴンボールです。
まるで白昼夢のような惨劇がくるくると頭の中を巡りに巡り、私は上の空でした。
「...はい」
「え?江戸鮭ちゃん?はいってなに?」
「...はい」
「も〜!」
業を煮やしたかに見えた彼女に私は意識を取り戻します。
そこで眼前にはヤバいヤツがいるのだということを認識しました。
「え、あ...すみません...」
「どうして江戸鮭ちゃんは転校してきたのかなって質問!」
「あ...転校してきた理由ですか...?えと、前の学校では、その、理想の自分になれないなというか...キラキラ出来ないなと感じまして...」
「ふーん、そっかー!」
もる子さんは、むしゃむしゃと二つ目のサンドイッチを頬張りました。
「えと...もる子さんは、どうして転校してきたんでしょうか...?」
「うーん、そうだなあ」
もる子さんはさらにもう一袋、サンドイッチを頬張ります。
「私も似たような感じかな〜!」
「そうなんですね...」
「うん!この学園でキラキラした日々を送りたいなって思って!」
私は彼女の答えに少しだけ安堵しました。
少しだけ手が早いかもしれませんが、もる子さんも思考だけは意外と普通な女の子なのだなと。
もしもここで普通の女子高生らしからぬ豪快な理由を告げられてしまったら、きっと私は今後この方と上手く友達付き合いができるのか心配になってしまうところでした。
「あ、それともうひとつ!」
「...なんですか?」
「生徒会をぶっ潰すことかな!」
もる子さんは笑顔でそう言って、四袋目のパンを頬張りました。