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10−5 気づき


「もしかしてぇ、いままで風紀委員に勝ったってのはぜぇんぶマグレもマグレぇ?たまたま運が良かっただけって感じぃっ?」


「違うもん!ちゃんと毎朝毎昼毎放課後戦って勝ってるし!マグレじゃないよ!実力!」


「えぇ〜?ほんとぉ?私を捕まえられないのにぃ?」


「ホントだよ!!今日はちょっと調子...、いや運が悪いだけ!!」


「でぇもぉ、運も実力のうちって言うしなぁ〜。運だけじゃないならぁ、もっとバンバンかかってきてほしいなぁ。ほらぁ、時間ないよ時間〜」


「ぐぬぬ!」


彼女の煽りにもる子さんは立ち上がろうとしましたが、一歩を踏み出すと同時に些細さんの握っていたであろう箒につまずいてまたもや転倒。

しかも運の悪いことに些細さんのオデコに思いっきり顔面からダイブ。

そこら中を転げ回り痛みに耐えるのでした。

私は心から心配しました。

本当に大丈夫だろうかと心から思いました。

もちろん些細さんの方をです。


「ぷぷぷぅ〜っ!運もなし、実力もなしじゃぁ、この鰐噛稀わかまれ兎籠おいこみちゃんに勝てるわけないじゃぁん。降参しなよぉ、こ、う、さ、ん」


「やだよ!私は絶対勝つんだから!誰にも負けたりしないんだから!」


「えぇ〜?マグレで勝ってて実力はぜんっぜん伴ってない全身よゎよゎ甲斐性無しぃって感じなのにそんな無責任なこと言っちゃぅのぉ?」


「だから今日は運が悪いだけなの!!」


「だ、か、らぁ〜、運も実力のウチだってぇ」


「ぐむむ!私が本気で追いかけたら一瞬だからね!鰐噛稀わかまれちゃん!」


もる子さんは今までにないくらい本気で悔しがっていました。

腕をピンと伸ばして、肩は上がり、呼吸は荒くなり、小さく地団駄なんかも踏んでいます。

それでも鰐噛稀さんは煽りをやめません。

むしろ怒っているもる子さんを見て楽しんでいるようでした。

もしかしたらそうやって冷静な判断を奪うのが鰐噛稀さんの作戦だったのかもしれませんが、例えそうだとしても限度というものがありまして...。


「ぷぷぷぅ、できないことはいっちゃだぁめ、今すぐ負けを認めるかぁ、命乞いとかしてみちゃったりするぅ?実力も運もな〜んにもない、ヨワヨワなザコ虫ちゃん♡」


「は?」


瞳孔がカッぴらいたもる子さんの行動はとても早かったです。

それはもう今まで見たことないくらいの速度で扉に飛びつくと、隙間に両手を突っ込んで無理矢理に開け放ちました。

あまりのことに行動が遅れた鰐噛稀さんは体を反らせるも時すでに遅し、頬を両側から鷲掴みにされていました。


「ザコって言った?ザコって言ったよね?ねえ?そんなに言うんだったら、それなりの責任持ってね。鰐噛稀ちゃん」


カチ


────


瞳孔が開いたもる子さんの行動はとても早かったです。

それはもう今まで見たことないくらいの速度で扉に飛びつくと、隙間に両手を突っ込んで無理矢理に開け放ちました。

あまりのことに行動が遅れたかに見えた鰐噛稀さんでしたが、もる子さんが飛びつくと見るやいなや脱兎のごとく逃げ出しました。

ですが、いまのもる子さんはそのくらいでは止まりません。

私が廊下を覗き込みまでのごく短時間に鰐噛稀さんを手中に、


カチ


───


瞳孔が開いたもる子さんの行動はとても早かったです。

それはもう今まで見たことないくらいの速度で扉に飛びつくと、隙間に両手を突っ込んで無理矢理に開け放ちました。

あまりのことに行動が遅れたかに見えた鰐噛稀さんでしたが、扉を開けた時にはすでに姿はありません。

彼女はすでに廊下のはるか先まで逃げていたようで、教室から顔をのぞかせたもる子さんは、眉をしかめて遠くを見ていました。

私も廊下を覗き込むべく近づこうとしましたが、今度はもる子さんの姿がありません。

兎を捕まえる猛禽類かと言いたくなる速度で、遥か彼方、廊下の突き当りにある階段を目指しているであろう彼女を追いかけています。

そしてついに、


カチ


───


彼女はすでに廊下のはるか先まで逃げていたようで、教室から顔をのぞかせたもる子さんは、眉をひそめて遠くを見ていました。

私も廊下を覗き込むべく近づこうとしましたが、今度はもる子さんの姿がありません。

兎を捕まえる猛禽類かと言いたくなる速度で、遥か彼方、廊下の突き当りにある階段を目指しているであろう彼女を追いかけています。

そしてついに、というところでまたもや転倒。

何につまずいたのか分かりませんが、中々派手に倒れ込んだもる子さん。

ですが、そんなこと今の彼女には関係ないようで即座に立ち上がると階段の上に消えたおかっぱ頭を追っていきました。


私は二人を追うべきか迷っていました。

きっと私のようなヘナヘナが追いかけても追いつけないなと言う自負がありましたし、多分カチンと来てしまっているもる子さんに近づくことも少し憚られたからです。

あたりをキョロキョロしながらどうしようかと考えていると、後ろからポンと肩を叩かれました。


「い、いのうさん...。私、どうしましょう...」


「うーん、そうだね」


「もる子さんのこと追ったほうが良いです、よね?任せっぱなしなのもあれですし...なんだか転んでばっかりで心配ですし...」


「うん、まあ一階落ち着こう。な?」


「時間戻されちゃっても困りますし、それに...いやでも、なんか怖いし...ど、どうしましょう。それに私なんかじゃ、足手まといに...」


「一階落ち着こう、江戸鮭くん」


「は、はい...」


私は何度か深呼吸をしました。

少しばかり落ち着いた私に向かって、祈さんが口を開きました。


「江戸鮭くん。君、気づいてるかい?」


「気づいてる...?何がでしょうか...?」


「はあ、やっぱし気づいてないのか。さっきからおかしいんだ。君ももる子君も」


「おかしい...ですか?」


私は自分の体を見回します。

不審なところは何もありません。


「君たち多分、既に彼女の言うところの時間を戻されてるよ」


「...へ?」

つづきはすぐ

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