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10−2 窓の外の笑み

「うっせえ!いいだろ!こんくらいでしかイキれねえんだよ!」


目童かなめって中二ネームも祈ちゃんが考えたの?」


「中二っていうな!汎用能力は元から名前が付いてるの!」


「ふーん。そっかー。でも汎用じゃなんかカッコつかないなあ」


「あのね、汎用だったとしても特異に変化するものもあってだな。花盛はなざかりの最終段階だったり、目童で言えば二色以上の色が混じったりもして...」


「祈ちゃんって得意なことだけめっちゃ喋るね」


「だから言うんじゃねえ!」


「でもそっか〜!私にも能力あったんだ!やったね!それに瞳が赤くなるとか、私も実質忍者じゃん!名前つけよ名前!赤いから〜...スカーレットヴァーミリオン〜春風に季節の果物を添えて〜とかどうかな!?」


「君も中二じゃないかそれ?」


中二回というよりは小洒落たレストランのシェフが作った気ままなディナーセットみたいになっていますが、もる子さんがそうしたいなら私は何も言いません。

ここ最近ではあまりなかったツッコミを入れてくれる人がいることに、私は心から笑みを浮かべました。


「君もなに笑ってんの?」


「いくぜ、我がまなこ!レッドクリムゾン!」


「名前変わってるけど!?」


両手を広げてブーンと室内を駆け巡るもる子さん。彼女の自由奔放さには毎度毎度驚かされます。


「走り回るなあ!隣に怒られるからさあ!!それに暇なら扉なおしてくれよ!」


「やっとく〜」


もる子さんは今度こそきちんと言うことを聞いたようで、外れた扉をガタリガタリとつけ直しはじめました。


「まったく...今までで一番嫌な客だよ君たちは...」


「すみません...」


「まあいいよ。止めようと思って止められるものじゃなさそうだし、彼女」


「ごもっともです...」


私の意見と合致するような考えを持ってくれた祈さんに、自分って間違っていなかったんだな、と安堵しました。


「ところでなんだけど江戸鮭君や」


「はい?なんでしょうか...?」


「君のことも見てもいいかな?」


「わ、私も?」


彼女は重そうなとんがり帽子を抑えながら頷きました。

私は躊躇いながらも会釈をします。

許諾が取れたと見て、彼女はもる子さんのときと同様に私の胸元にぐっと顔を近づけました。

まるでそこに心という実体があるかのように。


「......なぜ胸元を隠す」


「いや、なんか、こう条件反射で...」


「見えにくいから手ぇどけて」


両腕を掴み上げられ、無理矢理にでも心を覗こうとする祈さんに私はこれまた条件反射で抵抗してしまいました。


「ちょ、やめてください!」


「いいじゃないか。減るもんじゃないし」


「もっと言い方ありませんか!?」


「よいではないか、よいではないか」


「ひぃ変態!」


なんてやり取りをしていると、扉を直し終えたもる子さんがどうしてか、私と祈さんを見ていることに気づきました。

見ていないでさっさと止めてほしいところでしたが、どういうわけか彼女は挨拶をしたのです。


「こんにちは!わたし、もる子だよ!こっちのゴスロリは江戸鮭ちゃん!こっちの緑色のがいのうちゃん!」


様式美のようになったその名乗りをなぜ今ここであげたのか。

その疑問はすぐに分かりました。

もる子さんの目線は私と祈さんの間を通り抜けて、向こう側の窓を見つめていたのです。

私たち二人は争いの手を止めてから、もる子さんの眺める先を見ました。


窓の外は学園の裏庭が広がっていていますが、立ち入る学生はそんなに多くありません。

これといって何もないところですし、その上土が剥き出しで足元も悪い。

よほどの物好きか掃除をお願いでもされなければ立ち入ることはないでしょう。

ですが確実にそこに人影はあるわけでして、その方は開け広げられた窓のふちに両腕を起き、片一方で頬杖をついていたのです。


「ぷぷぷ、タイミング悪かったかなって感じぃ??」


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