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9−4 物置の話し声


「到着〜!!」


「...もる子さん、静かにしないと周りの部活中の方に怒られますよ」


「まー大丈夫っしょ!」


到着したるは半分物置になっている教室前。

部室が並んだ廊下の一番奥の部屋であるそこは、お喋りだったり楽器の音が聞こえる他の部屋とは違って、何か寂しいような暗い雰囲気が漂っていました。


「あいてるかな〜」


早速と言ったように引き戸に手をかけたもる子さん。

鍵はかかっていなかったらしく扉が開かれました。

ですがこの物置、何故かドアの向こう側に暗幕が張られているようで中が見えません。

それだけでも不気味さMAXだというのに、中からは何か小さく囁くような声が聞こえてきました。


「...もる子さん」


「なんか聞こえるね」


「はい...」


「この部屋って真っ暗なんだよね。暗幕貼られてて」


「は、はあ...」


「......おばけ?」


「...ま、まっさか〜、もる子さんったら〜...」


「でも声するよ?」


「帰りましょう」


私はそう言って踵を返しましたが、流石はもる子さん。目にも止まらぬスピードで私の腕を掴みます。その力まさに万力のごとし。

反対側の手は物置部屋の入口をぐっと握りしめていて全く隙はありません。


「江戸鮭ちゃん。これも挑戦じゃん?」


「そういう挑戦はノーサンキューです」


「でもおばけだったらレアだよ?」


「何ですかレアって?いいです。私はノーマルかコモンでいいですから」


「学校の七不思議的なやつならSSRだよ!?見ようよ゛!」


「い゛やです!生きてる人間とだって初対面は苦手なのに、実体ない人と喋るなんて出来ません゛」


「でも欲しいでしょSSRぅ!江戸鮭ちゃん暇なときにソシャゲやってSSR出したら喜んでるじゃん!?」


「いまは暇じゃないですから゛!今日はNかRでいい゛!」


「No,HumanのNとREITAIのRだから大丈夫だよ゛!」


「い゛らないです!もう完凸したん゛です!それかせめて重ねまくって厚み持たせてください゛!」


騒々しかったのか物置の隣の部屋、私の目の前の扉が少しばかり開いて、中からどこかで見た顔がこちらを覗きました。


「何やってんの君ら」


それはいくばくか前に質候さんの刺客として表れた薄緑髪の女の子、占い部「侑來來うらら」のいのうさんでした。


「もる子さん!私はいのうさんがい゛い!祈さんはRだからそれでい゛い!」


「なにそれ、悪口?」


「駄目だよ!いのうちゃんはSSRだから!すごく萎びたレタス頭でSSRだよ!」


「おいもる子くん、悪口だろそれは。あと、レタスはLだよ」


「違いますぅ゛!いのうさん゛はRですぅ!老婆心のRですから゛あ!」


「何いってんの君ら」


ため息をついたいのうさんでしたが、私が困っているということは肌で感じ取ってくれたらしく、教室から出て来てくれました。

この事態から逃れられるかもしれないと思い気が抜けたのか、私はふっと体の力を緩めてしまいました。

その拍子にもる子さんに思い切り引っ張られます。

そうしてがっちりホールドされた私を引っ張って、もる子さんと一緒に暗室へと放り込まれたのでした。


ゴロンゴロンと勢いづいて突入してしまった私たち。

一方はすちゃりとバランスを整えて着地、もう一方は床を滑って教室の窓際までやってきてしまいました。

もちろん後者が私です。

聞いていた通り暗い教室。

しかしながら真っ暗、というわけではなくて暗順応の済んでいないお目々でももる子さんの姿はハッキリと見えたのです。

何故かと言うと、暗がりの教室の奥、会議用の長机の上に置かれたモニターが煌々と光を放っていたからです。


それだけならただモニターがあるという事実だけであまり怖くも無いですが、光を遮るように揺れ動く髪のような物と身振り手振りをする何者かの姿がそこにはあったわけでして...。

私は「ひっ」と息を呑みました。

それと同時にもる子さんは叫びます!


「幽霊の正体見たり〜!!」


「こんあわ〜、今日も何故なにゆえあわちゃんの配信に来てくれてありがと〜!」


もる子さんの叫びは虚しく暗幕に吸収されて、光りに照らされた可愛らしい声の主のシルエットだけが浮かびます。

私たちがいることなんか気にもせずに、彼女はひとりでモニターに向かって話を続けました。


つづきはすぐ

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