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8−4 ご注文が多い自己紹介


「ご注文はお名前をつけてほしいわけでしょ〜。どんな部活にしたいとかあるのかな?」


「...もる子さん。端々に驚くので言葉選んでください...」


「と、それよりまず、自己紹介しようよ!私はもる子だよ!こっちのゴスロリは江戸鮭ちゃん!」


「先ほど聞きましたね......。まあいいです。じゃあまずは私から。私の名前はちの...」


「ちーっ!?」


「どうしたの江戸鮭ちゃん。急に叫んで」


「どうしたのって!ヤバイですってもる子さん...!完全にパクってますよ。訴えられますよ!」


「だれに?」


「誰にって...げ、原作者...?」


「原作者?何言ってるの江戸鮭ちゃん?この子たち何かきらら系っぽい作品に出てるの?原作付きなの?」


「...いや、あの...いいえ。すみません。なんでもないです...名前ですもんね...うん。似てることもありますよね...うん」


「変な江戸鮭ちゃん。名前だよ?普通にみんなの名前なんだから、自分自身で故意《Koi》に似てる名前なんてつけられないんだからさ!」


「分かっていってます?」


「なにが?」


「......いいですかね。続けても」


「あ...はい」


「では改めて。私はちの、茅野海ちのうみです。どうぞよろしく」


「よろしく!えっとなんて呼べばいいかな?」


「呼びやすければ何でも構いませんよ」


「じゃあちのちゃ─」


「名前はなんていうんですか!!!」


絶対にいけない愛称をつけようとしたもる子さんを差し置いて、私は叫びました。


「うるさいですね......。名前ですか。渋滞おしです」


「オシさん!じゃあ呼び名はオシさんで行きましょうねもる子さん!うん!呼びやすい!最高!親しみやすい!」


「なんか今日気合入ってるね江戸鮭ちゃん」


珍しいもる子さんのツッコミもなんのその。

私は背中に汗をびっしょりとかきながら、なんとか呼び名を決めました。

白髪の子は渋滞おし。誰がなんと言おうと渋滞おしです。


「茅野海ちゃん。気になってたんだけどさ。頭の上のそれは何?」


「これは教室に落ちてたでかめの綿埃です」


「へ〜」


「それでは次の自己紹介に。じゃあココア─」


「美味しいですよね!ココアァ!」


禁止ワードを気軽にポンポン発する渋滞さんに、私はあらん限りの声を上げました。


「なんか今日気合入ってるね江戸鮭ちゃん」


「......ココア好きな部員の甘露かんろさんです」


「か、甘露だよ、よろしく〜」


先程およそきらら系と思えない叫びをあげた栗色の方がおずおずと言いました。

なぜ最初に好きな飲物を言ったのかは理解できませんが、今言えることはひとつです。

よかった。


「あらあら。じゃあ次は私ね〜」


続いて和服美人さんが一歩前に進み出ました。


「じゃあ、私のお名前はクイズ形式で行こうかしら〜」


「クイズ?」


「ええ。ヒントは、和風っぽい名前よ〜」


「和風か〜。江戸鮭ちゃん。なんだと思う?」


「...サー。ナンデショウネ...」


「どうしてカタコトなの?」


「じゃあもうひとつヒントよ〜。私としては緑色のイメージね〜」


「緑色か〜。江戸鮭ちゃん。なんだと思う?」


「...サー。ナンデショウネ...」


「どうしてカタコトなの?」


「ヒントみっつめね〜。お茶の〜」


「アウトー!はいアウト!ギリアウトです!」


「江戸鮭ちゃん気合入ってるね」


「ぶぶ〜。アウトって名前じゃないわよ〜」


「いや、それはわかってますよ...!アウトはお茶の方!お茶の方です!お茶であったとしても京都じゃなくてせめて静岡茶でお願いします!」


「江戸鮭ちゃんお茶の産地にこだわりあるんだ」


「あらあら〜。私は宇治の」


「はいアウトー!アウトです!ちょっと超えた!ちょっとライン超えた!アウトです!アウトですから!!!」


「江戸鮭ちゃんって意外と落ち着きないね」


息を切らせる私に和服こけしが微笑みます。

まるでこちらの焦る様を面白がっているかのように。


「うふふ、じゃあ最後のヒントね。和風だけど、お茶じゃなくってお菓子の名前なの〜」


私はその一言に、ほっと胸を撫で下ろしました。

なんだか遊ばれていたような気もしますが...。


「う〜ん。お茶じゃなくってお菓子か〜。う〜ん...はい!」


「はい。物質もるこちゃん!私の名前、何かしら?」


「宇治抹茶さん!」


「うおおおお!」


「江戸鮭ちゃん!?どうしたの急にタックル仕掛けてきて!何事!?」


「点入っちゃった!もる子さん一点入っちゃった!!」


「ど、どういうこと!?落ち着いて江戸鮭ちゃん!?」


「お菓子って言ったじゃないですか!お菓子って言ったじゃないですか!お菓子ですからもる子さん!和服でこけしで抹茶でネーミングセンスが壊滅的なのは許されないんです!許されないんですよ!訴訟不可避!不可避です!」


「どうどう、どうどうだよ江戸鮭ちゃん!?何が江戸鮭ちゃんをそうさせるの!?なにが江戸鮭ちゃんを掻き立てるの!?」


「全部...!全部です!やっちゃってます!私の心のざわめきがとめどないんです!」


「何言ってるの!?」


私が混迷を極める最中、和服さんはこちらを面白がるように微笑み、ココア好きの甘露さんは頭にがハテナを浮かべ、渋滞さんはコチラを「うるさいですね......」と言わんばかりに見つめていました


「うるさいですね......。面白がるのもそろそろ良いんじゃないですか?」


「うふふ、そういうとおもったわ。でも実際の反応見たくなっちゃって。ごめんなさいね江戸鮭ちゃん。物質もるこちゃん」


「私はいいけど江戸鮭ちゃんが」


「教えてください...もうお茶じゃなければ何でも良いんで...」


私は半泣きでそう言いました。


「あらあら。うふふ。じゃあ教えるわ。お菓子の名前。正解は落雁らくがんでした〜」


「彼女は落雁さん。羽書越はかけおち 落雁らくがんさんです。お茶はあんまり関係ないですよ」


「...よ、よかった...」


「そんなに!?泣き崩れるほど良かったの江戸鮭ちゃん!?」


倒れ込むほどの安心感に、私は心を撫で下ろしに撫で下ろしたのでした。




続きは本日

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