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1−3 風紀委員さんの登場

「待て!貴様ら!」


大声を上げられるという経験の少ない私は思わずビクリと体を震わせて足を止めました。


「何だその格好は!」


続けざまに怒声が響きます。

声を荒げるのはどこからどう見ても風紀に厳しそうな女の子。

長髪を高めポニーテールに縛って、不機嫌に顰めた眉で私たちの方へとツカツカと近づいてきたのです。

しかしもる子さんはそんな姿を気にもとめず、元気いっぱいに挨拶します。


「おはようございます!」


「ごきげんよう、だ!貴様もきらら系なら言葉遣いは気をつけろ!」


もる子さんにビシッと言葉遣いを訂正してから、すぐにその方は私の姿を舐め回すように見ました。


「なんだその格好は...。制服はどうした!」


反論するのも憚られる勢いに、私は気圧されっぱなしです。

しかし答えなければもっと状況は悪化していく一方でしょうから、私は口ごもってもごもごと答えました。


「それはその...えと...私服登校が許可されていると聞きまして...」


「私服登校だと?いつの話をしているんだ貴様。この学園にそんなルールはない!」


「え、えぇ...!?」


いえ、たしかにありました。

学園のパンフレットにも、ホームページにも記載があるのは確認済みです。

綺羅びやかで自由気ままなファッションを楽しむ学生の写真を見て私はこの学園への転校を決めたのですから。

しかし周囲を見渡す限り私服登校の学生はいません。

それどころか、いかにもきらら系っぽく髪色を奇抜に染めた学生すらほとんどいませんでした。


「学園の規則を乱す者はこの風紀委員会副会長の質候しちばそうろうが見逃さない。そこの黒ゴスロリ!いますぐ指導室へ連行だ!」


そう言うとその方は私の手を掴みました。

私は何の抵抗もできずに目をくるくる回してされるがままでしたが、そっと優しくそれを静止するように手が伸びます。そう、もる子さんです。


「なんだ貴様」


「風紀委員さん。学園の規則では私服登校自由ってパンフレットに書いてあったよ?ほら見て見て!」


なぜ登校初日に学園のパンフレットを持ってきているのかは分かりませんが、たしかに私服姿の学生の写真が掲載されています。

私の間違いではありませんでした。


「言っただろう、それは古いルールだ!今は今だ!全身真っ黒なロリータファッションなんかが許されるはずがない!」


私はたしかに真っ黒なゴシックロリータ一色でした。

この日のために新調したお気に入りの一着です。

コルセットを締めて、頭にはヘットドレスをかぶり、学生カバンもフリルとお花。

靴だって十センチちょっとの厚底ブーツです。


「でもこの学園では『好きなことを、好きなように』できるって聞いてるよ!?」


私に代わって、もる子さんの口撃。

自分より大きい風紀委員さんのお顔ににじり寄っていきます。


「でもでもうるさい!服装も髪色も自由だった時代は終わったのだ!」


口撃には口撃をと言わんばかりに、風紀委員さんもグイグイと顔を寄せて、鼻と鼻がくっつきそうなくらい二人はいがみ合いました。

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