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8−2 これきらら系だ

講義棟と部室棟、私たちの通う学園は大きくこの二つに別れています。

講義棟は授業を行う一般的な教室や、理科室に家庭科室に図書室といった、学校によくある教室が揃っています。

部室棟については名前の通り、各部活が活動の拠点にしている教室が並んでいるところで、教室自体は講義棟の半分ほどの大きさ。

第二軽音部の部室も部室棟にあります。

学園に認可された部活は基本的に部室棟を使用していますが、例外がないわけではありません。

なんせここはきらら系の学園。

よくある部活から、聞いたこともない謎部活まで千差万別。

その数は非公認の部活を合わせたら学園側も認知していないほど。

部室棟の部屋も無限にあるわけではありませんから、必然的にあぶれる部活もあるわけでして、もうひとつの「きらら部」もそれに該当しているようです。

失礼のないようにと、なぜか部の代表になっていた私と、きらら部設立の張本人であるもる子さんが選出されて、もうひとつの「きらら部」へと訪れたのでした。

叙城ヶ崎先生の「穏便にね」の言葉が果たしてもる子さんに届いているかは定かではありませんが、ここでもうひとつの「きらら部」の方々と話し合いをして、同じ部活として統合するか、もしくは名前を変えるのかを決めるというわけです。

ただ、まあ...。


「よ〜し。全員ぶっ飛ばそうね江戸鮭ちゃん!」


「...穏便にって聞いてました?」


「最近できた同じ名前の部活ってことはやっぱりこれは陰謀だよ!絶対全員ぶっ潰すから」


「ニコニコしながら怖いこと言わないでくださいよ...」


「っしゃ〜!カチコミじゃ〜!」


「あ、ちょ...」


「たのも〜!」と、もる子さんが勢いよく扉を開けました。


静止しようと、私なりにもる子さんを引っぱりましたが、猪突猛進な彼女を止めるには至りません。

雑という概念を通り越した彼女の開け放つ扉の先には、鬼が出るか蛇が出るか...。





「──コーヒー、少なくなっていますよ?おかわり飲みますか」


背筋の伸びた美しいシルエット。とても綺麗な立ち姿に雪のように白いロングヘア。

髪飾りなのか頭頂部には大きな丸い柔らかそうなものが乗っているというあまり見かけない風貌。

すこしだけ無愛想な声色ですが、そこにはそこはかとない愛を感じます。



「うん!折角だから頂こうかな。ありがとう!」


声色だけでわかる天真爛漫。

もる子さんに引けを取らない輝く笑顔にキラキラの瞳と栗色の髪。薄手のピンクのカーディガンが優しさを引き立てます。

きっとだれにでも慕われるんだろうなと思わせる雰囲気の漂う女の子。



「私も貰ってもいいか?自分で淹れたコーヒーもいいけど、やっぱり誰かに淹れてもらったのは一味違うな」


賢そうな凛々しい顔つき、座っているだけなのに大人びた気品ある仕草。自分にも他人にも厳しいんだろうなと思わせるストイックな雰囲気。それとは正反対に大きなツインテールに結ばれた髪は、どこか幼さも覗かせるお姉さん。



「せ、先輩がそう言うなら私も少しだけ...もらってあげてもいいわよ!」


ぱっと見とてもお嬢様。

上品な空間の中でも際立って品があるように見えますが、それとは対象的にどこかあどけなさが残る少女。

爛々としたくりくりお目々は幼さを正直に映し出しています。

背伸びした金髪の癖毛が夏になりかけた空に映えて、まるで海に来たように感じます。



「あらあら。コーヒー大丈夫?苦手じゃなかったかしら?」


一言で言えば目立つ女性。

それは彼女の服装のせいもあるでしょうが、長い髪とスタイルの良さも拍車をかけているでしょう。

お淑やか、大和撫子、面倒見が良さそう。三拍子揃った和服美人。

当然周りに違わず、生き生きとしたキラキラなお目々はここにも。





──見たこと無いのにどこかで見たことがある。



そう思った瞬間に、私はもる子さんが開け放った扉を勢いよく戻しました。


「江戸鮭ちゃん、どしたの?」


「...もる子さんヤバイですって。本気マジですよこの教室の中」


「本気?なにが?」


「何がって...その、すごく、既視感が...」


「既視感?」


「...天真爛漫とツインテールと金髪、それに和服美人と頭になんか乗っけてる子がいたらもう確定というか、ヤバイと思うんですけど...」


「ヤバイ?つよいってこと?戦いがいがあるね!」


「そういう次元の人たちじゃないんで辞めてくださいマジで...」


「どういう次元なの?」


「いや、なんていうか...その、すごく注文してきそうな気がして...」


「注文?ご注文するのはこっちだよ!私達がきらら部だって言わなきゃ!ご注文は不可避ですよって感じ!」


「わかって言ってます?」


「なにが?」


「...ならいいですけど」


「よし!じゃあ、ご注文に向かいますか!」


「やっぱりわかって言ってます?」


「なにが?」


「...ならいいですけど」


もる子さんは含みを持った私の言葉なんて全く気にせずに、もう一度扉を開け放ちます。


続きはこのあとすぐ

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