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7−3 先生


「ってことがあったんです!」


「そうだったんですねぇ」


時は過ぎて、放課後。

私たちは寂しくなった教室にいました。

クラスメイトは既に誰もいません。


「部活を作りたいけど顧問の先生がいないということですね」


そのかわり、といってはなんですが教卓で話しているのは私たちの担任である叙城ヶ崎先生です。


「そう!そうなんです!」


「たしかに蛍日和さんの担任の鵺茶ぬえちや先生は生徒会の顧問ですからねえ...」


「ってわけで〜!叙城ヶじょじょうがさき先生!私たちの部活の顧問になってくれますか!」


「先生がですか?」


「そうです!この前の放課後言ったじゃないですか!何かあったら何でも言ってねって!」


「そうですけれども...う〜ん」


「お願いします先生!頼れる人いないんです!」


叙城ヶ崎先生は深く考える素振りを見せました。

ですが、もる子さんはどう答えられたとしても押しに押すでしょう。

叙城ヶ崎先生が今現在顧問をしている部活は服飾部。部員も少なく、活動もほとんど行っていないようでして、幽霊部員ならぬ実質幽霊部。顧問らしい姿を見ることもないとてでらさんの調査で既にわかっていますから。


「わかりました。いいですよ顧問。先生でよければ」


「やったぁ〜!」


もる子さんは先生の答えに飛び上がりました。


「ただし、瀧笑薬たきにこみさん。いくつか条件があります」


「え〜。なんですか〜」


「ひとつめ。この前も言いましたけど、ちゃんと授業を受けること。今度から寝てたなんて聞いたら許しませんよ」


「は〜い」


「ふたつめ。部活を作るならちゃんと活動すること。きらら系っぽい活動、ちゃんとできますか?」


「勿論です!」


「いいですね」


叙城ヶじょじょうがさき先生の快い返事にもる子さんは今一度感嘆の声を上げました。


「みっつめ、の前に。瀧笑薬たきにこみさん。噂というか、まさに鵺茶ぬえちや先生から聞いたんですけれど、毎日のように風紀委員の質候さんとなにやら揉めているというのは本当ですか?」


「もめてるって訳じゃないですけど、七並べちゃんがいつもつっかかかってくるんですよ〜」


「何か原因があるんですか?」


「う〜ん。私達がきらら系っぽくないとか...。あとなんか江戸鮭ちゃんの服装がだめって言ってました」


「あ〜...」


叙城ヶ崎先生の目線がすいっとこちらに向きました。

そして私を舐め回すようにゆっくりと瞳を動かします。

足元から始まり、ふくらはぎ、膝、ふともも、腰、おなか、胸元、首、そして頭。

見られている私がわかるほどにゆっくりと。

毛先までじっくりと見終えると、先生は少しだけニヤリと口角を上げたように感じました。


「たしかに。江戸鮭さんの服装は今の生徒会が決めた校則ルールでは違反ですもんね。風紀委員が怒るのも仕方ありません」


わかっていましたが、この格好は校則違反。

学園のルールを守らない学生に注意しない先生はいないでしょう。

今まで風紀委員の質候さんだけが注意してきていたことだけが逆におかしいのです。

いくら自分の意志とは関係なく、もる子さんに半強制されてゴスロリ登校しているとは言え、怒られて当然です。

私は身を強張らせました。


「生徒会が決めた校則ルール校則ルールです。でもですね、それは生徒会が決めただけのルール。学園側の定めた正式なものではありません。ここはきらら系育成のための機関ですからね。好きなことを好きなように出来なければいけません。だから先生は悪いとは思いませんよ。それに元々は服装も自由でしたしね」


意外な答えに、私は面食らいました。

このまま先日のもる子さんのように生徒指導室コースだと思っていたのに。


「いまも学園自体が自由なのは変わっていません。ルールはルールですけれど、それは生徒会が決めたことですからね」


「...えと、じゃあこの格好は」


「先生として咎めることはありませんよ。今まで通り風紀委員にはなにか言われるかもしれませんが」


「お〜!よかったね江戸鮭ちゃん!」


「あ、ありがとうございます...」


「じゃあ一件落着だ!先生が顧問になってくれるし!江戸鮭ちゃんもこれで生徒会長になれるね!」


「いや、それは...」


「先生!ありがとうございました!じゃあ早速、部活スタートだよ!」


ぎゅっと私の手を掴み、もるこさんが教室の後方へと駆け出します。

向かう先は勿論、蛍日和さんたちが待っている第二軽音部の部室です。

私にとって部活の始まりは、少しばかり嫌なことです。

生徒会長になる気はありませんし、暴力も嫌ですから。

ですが、すこしだけワクワクしている自分もそこにはいました。


瀧笑薬たきにこみさん」


もる子さんがドアに手をかけたそのとき、先生の声が響きます。


「なんですか?」


歩みを止めて、もる子さんは先生に顔を向けました。


「まだお話は終わってませんよ?」


「あれ?そうでした?」


「はい。まだ先生は最後の条件を言ってません」


「え!まだあるんですか?」


「ありますよ」


叙城ヶ崎先生がニコリと首を傾けました。

視線の先はもる子さん、ではなく私。

もる子さんと話しているはずなのに、見つめる先はなぜか私でした。


「最後の条件ですけれど、」


何かおかしいと思ったその瞬間、何やら白い線が教室中を反射して、まるで蜘蛛の巣のように張り巡らされました。

そのうち私に向かってきた一本をもる子さんは叩き落とします。

その一閃を攻撃と認識したもる子さんは叙城ヶ崎先生へと教室の端から端へと飛ぶように距離を詰めました。

敵意があるならば、彼女にとっては相手が先生だろうが何だろうが関係はないようです。

いつものように放たれたもる子さんの一撃。

昏倒必至の一撃必殺は叙城ヶ崎先生を捉えたと思われましたが、二人を阻んだのはまたしてもいつか見たような光を放つ華。

持さんのもつ能力である花盛でした。

それも、持さんが出したものよりも一段と鮮明に見えます。

瞳の形を変えた先生は、こんな状況でもいつもの授業と変わらない態度で言いました。


「少しばかり江戸鮭さんをお借りしてもいいですか?」


続きは本日投稿いたします。

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