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6−5 せつりつせんげん!


「争いごとは得意かな?」


ドロップキックの要領で空を切ったいのうさんに、私は驚きを隠せませんでした。

先程が言っていた戦いは苦手というのは不意をつくための嘘だったのでしょうか。

もる子さんは些細ささいさんと掴み合っています。

私からではもう、いのうさんに手を伸ばしても届きそうにはありません。

このままでは直撃は免れないでしょう。

そう思いました。


「どっせーい!!!」


「いたくなぃい!」


「ねぎぃ!」


ですがもる子さんが一筋縄で行くわけがありませんでした。

掴みかかっていた些細ささいさんをその怪力で瞬時に軽々と持ち上げると、そのままライダーキックをかました祈さんに叩きつけたのです。

祈さんは一撃ノックアウト。

ついでに些細さんも床に伸びています。

小さな教室のなかで、七人中五人が床に伏しているというなんとも謎の状況。

これにて今日の戦いは決着となりました。



──────



「貴様ら!次はないからな!覚えておけ!」


祈さんを肩に抱えた質候しちばそうろうさんは、そう言い残すと勢いよく部屋の扉を締めました。


「嵐のごとくってやつだね!」


もる子さんが嵐では?と言いかけましたが、今はやめておきました。


「でも『きらら部』か〜。ぴったりちゃぴったりかもね!」


「...まあ、良いんじゃないですかね...?祈さんもシンプルが一番って言ってましたし」


いのうちゃん?さっきの襲ってきた子?」


「そうです...。争い事を望むような方ではないと思ったんですけどね...」


「あれが七並べちゃんの言ってた刺客ってやつ?ま、勝ったしいっか!」


「もる子さんが良いなら...まあ」


改めて私は辺りを見回します。


「蛍先輩っ!メガネ大丈夫ですか!?ヒビ入ってますよ!?」


「大丈夫ですわ。こうなることを予想して予備持ってきましたから。それより鍍金めっきも大丈夫ですの?」


「私は大丈夫ですっ!むしろイキイキしてます!寿命がすごく伸びましたっ!!」


「ならいいですわ。それに比べて...些細ささい〜?大丈夫ですこと?痛くなかったですの?」


「痛かった。てでらのガードあったけど痛かった」


「あらあら。なでなでして差し上げますわ〜」


「ゆるさん。もる子。いつかつぶす」


「ぐぎぎぎ...東北みぎちゃん...私の、私の先輩なのにっ...ゆるさん...」


第二軽音部の皆様も一応は何の被害もないようでした。

いつものように...なのか、きっとこれも彼女たちなりの日常風景なのでしょう。

もる子さんが自分勝手に盛り上がって、蛍日和さんはとってもマイペース。

些細隣さんは静かで毒舌だし。

持さんは持さん。


これがきっとこれからも、私の日常になっていくのでしょう。

これが正しいのか間違っているかはわかりません。

でもこれはこれで...。

...生徒会長になるということだけは納得はできませんけれど...。


「じゃあここに『きらら部』の設立を宣言しちゃうよ!」


パチパチと拍手がなる中で私だけは眉をひそめて、少しばかり憂鬱な気分でした。


嬉々として『きらら部』なる部活を立ち上げことを祝うもる子さん。

欠けた眼鏡で拍手をする蛍日和さん。

いつも通り表情がない些細隣さん。

苦虫を噛み潰したように苦悶の表情と血管を浮かせながら、唇から血が滲まんばかり食いしばって手を叩くてでらさん。


全く合わないパズルピースをねじ込んで無理やり完成させるかのように出来上がった凸凹まみれの私たちの部活動の始まりです。

これからの私の行く末がどうなるのかは甚だ心配なところです。

ですけれども、少しばかりは楽しみなのかもしれません。




続きは本日

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