6−1 部活作ろうよ!!
「じゃあここに『きらら部』の設立を宣言しちゃうよ!」
パチパチと拍手がなる中で私だけは眉をひそめて、少しばかり憂鬱な気分でした。
嬉々として『きらら部』なる謎部活を立ち上げことを祝うもる子さん。
欠けた眼鏡で拍手をする蛍日和さん。
いつも通り表情がない些細さん。
苦虫を噛み潰したように苦悶の表情と血管を浮かせながら、唇から血が滲まんばかり食いしばって手を叩く持さん。
全く合わないパズルピースをねじ込んで無理やり完成させるかのように出来上がった、凸凹まみれの私たちの部活動の始まりです。
これからの私の行く末がどうなるのかは甚だ心配なところですが、なぜこうなってしまったのか、少しばかり今日を振り返ってみましょう。
───
「江戸鮭ちゃん!今日暇?」
「え、はい。まあ...」
「よっし!じゃあ部室いこ!」
「ぶ、部室...?」
はじまりはもる子さんのお誘いでした。
いつもの学園、いつもの放課後。
転校から早二週間ほど。クラスにも慣れて少しばかりはお話するような仲の友人もできました。
しかしながら、やはりといってはアレですが、転校初日の一件で未だに敬遠されているのはあいも変わらず。
皆さんのどこか余所余所しい雰囲気は拭いきれません。
未だに毎朝、質候さんには絡まれますし、その度にどこからかやってきたもる子さんが一撃を加えますし、私はゴスロリを強要されていますし。
一度制服で登校したこともありましたが、どこで手に入れたか、もる子さんの鞄から出てきた少し小さめのゴスロリ衣装を身に纏うようにせがまれて、いえ無理やり着せられて、結局はもうお約束になっているわけで、
「江戸鮭ちゃんは革命のシンボルだから絶対ゴスロリね!」
という謎の脅迫に身を縛られているのでした。
さて、私が連れてこられたのは部室棟三階にある一室です。
ところどころ剥げた木製の扉の上には、これまた時の流れを感じる古めかしいプレートがくっついていました。
『第二軽音部』
どうやらここは蛍日和さんたち部室のようです。
「たのもー!」とぶち破るのではないかという勢いでもる子さんは扉を開けました。
「あら、早速いらっしゃいましたわね」
中にいたのはピンク色した自称お姉さん系の蛍日和さん、それに加えて毒舌無口な銀髪ショートの些細隣さん、博学で優しいけど何処かおかしい持鍍金さんのいつもの三人組でした。
「うん!善は急げって言うからね!」
「生徒会を乗っ取るのが善かはわかりかねますが、いいですわ。お座りになって」
蛍日和さんに促されガタつくパイプ椅子に座ります。
授業を受ける教室の半分ほどの大きさの部室、中央には二つ揃って並んだ長机。
乱雑にものが積み重なって、役割の放棄を余儀なくされた棚。
ワタの飛び出したパイプ椅子。
壁に設置されているホワイトボードには多数の文字や落書きがされています。
その中心にはでかでかと『天下を取る!』と書き込まれていました。
私とはもる子さんの向かいには些細隣さんと持鍍金さんが既に座っていました。
そして上座に蛍日和さんがゆっくりと腰掛けました。
「それでは早速始めますわ!」
「はいっ!蛍先輩!」
「いぇ〜い!」
「わー」
「ではもる子さん!まずどんな事をするかですわ!」
「えっとね!毎日がキラキラ〜ってできる感じで!それにユルユルも出来たらいいな!」
「いいですわね!」
「はいっ!蛍先輩!」
「はい、鍍金」
「ユルユルでキラキラというのは良いと思うのですがっ、それでは具体的内容を聞かれたときに困ってしまうと思いますっ」
「困ることあるの?それ」
「学園に申請する際に具体例がないと困ってしまうと思うんですよっ」
「確かにそのとおりですわね。些細はどう思いますの?」
「なんでも」
「ちょっと〜!些細ちゃん!真面目に考えてよ〜!」
「めんどう」
「あの...すみません....」
「はい。ゴスロリさん。なんですの?」
「...みなさん盛り上がってるところ悪いんですが...えと、何のお話をしているんですか...?」
私は肩をすくめて恐る恐ると言いました。
「何って、そりゃ部活動のお話でしてよ?」
「ぶ、部活動...ですか?」
眉をハの字にして困惑を顕にする私に、持さんが声を上げます。
「え?鮭ちゃんさん。物質さんから何も聞いていないんですか?」
「は、はい。なにも...」
私を含め一斉にもる子さんへと視線が集まります。
「てへへ!言うの忘れちゃった!」
続きは本日中に投稿いたします。