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5−5 それと

いつのまにか、聞こえていたはずの吹奏楽部の音はなくなっていました。

空もより赤く赤く色づいて、特有の寂しさを醸し出していました。

この学園に転校してきて何日か、今日は一番平和だった気がします。

私が願っていたキラキラした日常とは少し違うかもしれません。

ですが、決して間違ってはいないなとも思いました。

ほんの短い時間でしたが、第二軽音部の皆さんは私に愛おしいと時間をくれた気がします。

勿論もる子さんも、ですかね。


「...そういえば、もる子さん。まだかな...」


私はポツリと吐いて、机に突っ伏しました。

毎日の疲れが出たのか、それとも何か安心したのか、瞼が段々と重くなってきます。

このまま寝てしまってはいけないと思いましたが、欲求には勝てそうにはありません。

歪んでいく風景に安らぎを感じていると、廊下の方から何やら音が聞こえた気がしました。

かつん、かつん、と、きっとそれは誰かの足音だったのでしょう。

段々とこちらに向かって来るような、一定のリズムでなる音が、私に近づいて一番大きくなったところで止まりました。

ですが、今の私にはもう、それが現実なのか夢なのかは定かではありませんでした。


「もう下校時刻じゃぞ」


微睡んだ瞳で、私は廊下を隔てる窓を見上げます。


「あ...はい...友達をまってまして...」


「そうか」


「...はい」


「その友達は、良いやつかの」


「...滅茶苦茶な人です。でも...笑顔が素敵で、とっても楽しい人ですよ...」


「そうか」


「はい...」


「瀧笑薬が戻ったら、早う帰るんじゃぞ江戸鮭」


「...はぃ」


かつん、かつん、と再び一定のリズムを刻み、人影は遠ざかっていきました。

その時の私は夢心地、浮かぶような気分でしたが、とある違和感にハッと目を覚ましました。

急いで窓から身を乗り出して話しかけてきた人物が夢だったのか、現実なのかを確認します。

廊下の突き当り、そこに人影はありませんでした。

ですが誰かはいたのです。

突き当りはちょうど階段になっていて、そこで誰かの長い髪がキラリと光ったのを、たしかに私は見たのですから。

夕日が反射したせいか、それともと廊下の暗がりのせいか、はたまた私の目がまだ微睡んでいたからか...その髪色はとても妖艶に映った気がしました。


「紫...?」



6−1は本日中に投稿いたします。

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