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5−2 桃、銀、金。それと

もる子さんが連れられて、既に三十分ほどがたちました。

スマホでお洋服の通販サイトを見ていたらあっという間でしたが、こうも帰ってこないというとなると、彼女はコッテリと絞られていることでしょう。

私はうんと伸びをして欠伸をしました。

するとすぐ隣りにある、廊下に面した窓から見たことのある顔が覗きます。


「あら。ゴスロリさんではないですか」


私は大慌てで口をおさえました。


「はわ...!ほ、蛍日和さん...!こ、こんにちわ...」


蛍日和さんは慌てる私を見てクスッと笑いました。


「ごきげんようですわ」


「ど、どうも...。えっと...なにか御用でしょうか...?」


「いいえ、特になにもありませんでしてよ。今日は部活もありませんので。一人で帰るのも寂しいですからね、些細がいないかと思って教室まで行く途中ですわ」


「あ、そうでしたか...。仲いいんですね」


「そうですわね〜。もう一年も付き合ってますもの。嫌でも仲良くなりますわ〜」


「些細さんは一年生の頃から軽音楽部なんですね」


「ワタクシが勧誘して入ってもらいましたの。あの頃の些細は可愛かったですわ〜」


「今とは違うんですか?」


「もっとこう、ストレートに罵声を浴びせてきましたわね」


「それは可愛いんですかね...?」


「それに今よりもっとちんまりとしてましたわ。物質さんより少し大きいくらいですわね」


「小さかったんですね」


「とっても可愛らしかったですわ。今とは違って物怖じしないド直球な罵声を浴びせかけてくるあの精一杯感...今思い出しても愛くるしいですもの。目に入れても痛くありませんわ〜」


「それはホントに可愛いんですかね...?」


「まあ一回目に入れたときはクソ痛かったですわ」


「入れたんですか...」


「一緒にお出かけしたときなんかも意見が違ったりするとよく目潰ししてきますわ」


「入れたと言うより入れられてるのでは...?」


「些細は流されやすそうに見えますけれども、アレでいて結構意思が固いんですのよ〜」


「いや...固そうに感じます。とっても」


「この前も晩御飯にパスタを作ろうと準備をしていたのですけど、些細が牡蠣フライを食べたいとゴネ始めたんですのよ」


「これまた面倒ですね...」


「牡蠣なんてないですわ〜って言ったのですけれども、食べたい食べたい言うものですからしょうがなく買いに行きましたわ。小雨降ってるのに買いに行きましたわよ。一回ゴネたらもうどうしようもないんですわあのコ。ワガママったらありゃしませんわ」


「それは大変ですね」


「せかせか一人で行っちゃうんですもの。それにパン粉買い忘れましたし。洗濯物も干しっぱなしでしたし。踏んだり蹴ったりでしたわ〜」


「あはは...」


「ほんっと笑っちゃいますわよね。でもやっぱりパン粉がないからといって、加熱用の牡蠣を生食はヤバかったですわね。死ぬかと思いましたわ」


「全然笑い事じゃないと思うんですが...」


「苦しみに悶える些細も愛らしかったですわ〜」


「蛍日和さんってなんかこう、無敵ですね...」


「ま、些細も今じゃちょっと人見知りというか、あまり喋らないかもしれませんが、仲良くしてあげてくださいまし。ゴスロリさん」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


「では、ワタクシは行きますわ。もし些細を見かけたらお声かけてくださいまし。あ、ついでに連絡先も交換していただけますこと」


「あ、はい」


連絡先を交換し終えると、登録された蛍日和さんから早速メッセージがやってきました。

「よろしく」と書かれた他愛もないスタンプが表示されます。

それと一緒に彼女のアイコンも。

そこには蛍日和さんを中心に、些細さん、持さんの三人がギュッと抱き合った自撮り写真でした。


「じゃあお先にですわ。ゴスロリさん」


「あ、はい。また...」


蛍日和さんはそう言うと、すたすたと去っていきました。

私はもう一度じっと蛍日和さんのアイコンを見つめます。


「晩御飯...牡蠣フライって言ってたけど...一緒に暮らしてるのかな」


「カキフライ」


「うわあ!?」


突然にゅっと窓の下から現れた銀髪に私はビックリして声を上げました。


続きは本日投稿いたします。

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