4−4 まともな人は、どこにいる?
四人は物珍しいと言ったように私に注目しました。
「...一個ずつ聞きます。いいですか...?」
「いいですわよ」
ツッコミたいところも聞きたいことも山程、ひとりひとり聞いても良いのですが、取り敢えず一番マトモそうな持鍍金さんに代表して聞くことにしました。
「じゃあまず持さんに聞きたいんですけど...」
「駄目ですっ!蛍先輩はあげないですよっ!私のものだからっ!絶対だめですっ!」
「まだ何も言ってないんですが...」
「鍍金、必死でキモいですわ。黙って聞けですわ」
「蛍先輩の言うことなら何でも聞きますっ!靴でも靴下でも足でも舐めますっ!」
「マジでキモいから黙れですわ」
持鍍金さんが蛍日和さんの前に跪くのを辞めるのを待って、私はもう一度話し始めました。
「...あー。いいですか。持さん」
「いいですよ」
「あの、最後に言ってた能力...ってなんですかね?」
「え?花盛ですけど?」
「ぼ、何...?洗剤...ですか?」
「え?いやだな〜鮭ちゃんさん、あははっ」
「あはは...え、じゃあ...あの、特技はあの」
「防御関係ですっ」
「あ、はい」
真剣な瞳でこちらを見つめる持鍍金さんに、なんかもう話が通じないと思った私は次にマトモそうな些細隣さんに聞くことにしました。
「えと、些細隣さん」
「なに」
「あの能力ってのは何なんですか...?」
「秘密」
「いや、そういう意味じゃなくって...どういう意味なのか...」
「秘密」
「ですから、能力自体の意味を...」
「秘密だって言ってんだろこのタコ。しつけえんだよ」
「えぇ...」
無口だった些細隣さんが、表情はそのまま冷静に突然口汚くなったことに動揺を隠せません。
「ゴスロリさん。些細はちょっと人見知りでしてよ〜。初対面の方とお話するのは苦手なので許してくださいまし」
「うっせえぞフラミンゴ。ぶっ飛ばすぞ」
「ね?ですわ。そういうとこも可愛いですわよね」
「黙れよカス。飯にドッグフード混ぜて発色よくしてやろうか」
何が「ね?」なのかは全くわかりません。
可愛い要素も全くわかりません。
ですが取り敢えず最後にマトモそうな蛍日和さんに聞くことにしました。
「蛍日和さん...」
「なんですの?」
「あの、」
「ワタクシたち第二軽音部は皆一様に楽器は弾けませんわよ!軽音部にかこつけて放課後を貪っているだけでしてよ!」
「そこ、うん、まあそこも聞きたかったですけど、そうじゃなくて...」
「あら、特技の方でして?ワタクシなぜだか無性に勝負事に惹かれますの〜。ナゼでしょうね?昔はそんなことなかったのにですわ〜。鍍金もぜーんぜんそんなことなかったですものね!些細は昔はから血気盛んでしたけど」
「黙れよフラミンゴ」
「......」
「あ、もしかしてキャラクター性でして?ワタクシは部長兼ちょっと頼れるお姉さんで売ってますわ!些細はクールで無口な冷静キャラ!鍍金は素直になれないツンツンな後輩でしてよ!やっぱり見た目にそぐわないキャラクターはいけませんからね!それ相応のキャラクターを」
「だからー!違いますぅ!!」
大声を上げた私に四人は目を丸くしました。
私からこんな大きな声が出るとは思わなかったのでしょう。
私自身もびっくりしています。
ですが怯まずに勢い任せで単語を紡ぎます。
「色々言いたいです...!ききたいです、けど!違うんです!楽器弾けないのとか、もる子さんがピッコロ吹けるとか!なんで全員そんなに戦闘狂なのとか...!鍍金さんも些細さんもなんかキャラ違うとか!蛍日和さんが生徒会目指してるのに三年生だとか...!ききたいです、けど!もっと聞きたいことがあるんです...!の、能力!当たり前のように言ってますけど!能力ってなんですか能力って...!!」
肩で息をしながら私は言い切りました。
顔もとっても熱くなっています。
ですがそんな私とは打って変わって、四人はポカンとしていました。
「ゴスロリさん」
私を落ち着かせるように、蛍日和さんが優しく言いました。
その声に少しばかり冷えた頭で考えを巡らせます。
もしかしたら彼女たちも勢い任せで色々と話してしまったのではないかと。
新たに生徒会へ入るという目標を前に、きっとテンションが上って変なことを話しまったのではないかと。
私は我に返り、もっと顔を赤くしました。
「あ...あ、す、すみません!私、あの、こういう冗談というか、あの慣れてなくて...!えと」
しどろもどろな私の肩に蛍日和さんがポンと手を置きました。
「ゴスロリさん。大丈夫ですわ。落ち着いて」
「ほ、蛍日和さん...」
彼女の穏やかな瞳に私は少しばかり安堵しました。
「転校生ですものね!イチから全部、ちゃんと説明しますわ!」
「え?」