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ep9.風雪の白尾1

■後神暦 ????年 / ?の月 / ?の日 ?m ??:??


――????


 ……またここ?


 以前に見た真っ白な空間、相変わらず様々な景色が点々と浮かんでいる。

 地に足はついているものの、下を見ても同じ空間が広がって地面の境目が分からない。

 僕が高所恐怖症だったら発狂していると思う。


 そんな事よりサーシスさんのお兄さんを拠点に連れていかないといけないんだ。

 こんな夢を見てる場合じゃない、醒めろ~醒めろ~醒めろ~……



 ――……ダメか。


 平原、湖、森、街、室内……場面も時代もバラバラ、これも前と同じ。

 それならきっと前回の男女がどこかにいるはずだ。

 あの人たちの話を聞いている最中に目が醒めたし、探してみようか。


 少し歩くと見覚えのある室内の景色が見えてきた。


 ……ほらやっぱりいた。

 面子も一緒だけど着物の人がなんだかイラついてるみたい。


『前時代の者どもめ……のう、一巡だけ結託し駒を排除せぬか?』


『嫌ですよ、ツツミコトがやりたければ自分の巡でやればいいじゃないですか』


『こっちもアイツら近いから乗ってもいいけど、全員でやらないと意味ないよなぁ』


 なんかあんまり穏やかな話じゃなさそうだね。


 ――……!!


 きたきたきた、景色が白くなっていく。

 これで起きれる、それにしても本当に変な夢だ。



 ~ ~ ~ ~ ~ ~



 …

 ……

 ………

 …………


 あぁ、温かい……さっきまで寒かったから最高だ、これ布団かな?

 いいねぇ、僕、布団はちょっと重みを感じるくらいが好きなんだよね。

 肌ざわりもとっても良くて気持ちいいし、このままもう少し……



「……じゃない!!」


 一気に身体を起こし周りを見回すと見覚えのある和室、ここってゾラの屋敷?

 腰には双子が抱き着いている、布団被って息苦しくなかったのかな?

 それに浴衣なんていつ着たんだ?


 両手を広げて真っ白い浴衣を見る。

 僕は最後の記憶と現状があまりにかけ離れていて理解が追い付かなかった。


 疑問だらけで挙動不審になっていると、部屋の襖が勢いよく開けられた。

 ”すぱーん”と文字が浮かびそうな軽快な音に僕は肩をビクつかせる。



「ミーちゃん! 目覚めたのでございますね! 昨晩は驚きました、扉の先でユウカク達を待っていたらalmA(そのこ)が一糸纏わず死んだように眠るミーちゃんを背負ってきたときは心臓が止まるかと思ったのでざいますよ!」


 部屋に入ってきたミヤバさんがあの後のことを彼女の視点で話してくれた。


 僕はサーシスさんのお兄さんと決着がついた後の記憶がないけれど、拠点の温室にいたミヤバさんのところに何故か運ばれたらしい……リム=パステルのときと似ている。

 そのすぐ後にユウちゃんさんたちが戻り、お兄さんを回収して今に至るそうだ。


 心底僕を心配してくれているが、僕は彼女の手から目が離せない。



「ミヤバさん、その腕……どうされたんですか?」


「これはユウカクと姉様とで兄様のところに行ったのでございますが、厚い氷に覆われていまして、少し無理をして溶かした時にちょっと……」


 ()()()()のレベルではない、ミヤバさんの両腕は肘まで包帯で巻かれ痛々しい、本当に何があったんだ?


 それに……もう一つ、聞くのが怖いけれど聞かないと。



「……お兄さんは無事ですか?」


「はい、別室で眠ってございます……衰弱しているようでございますが生きています、今は姉様が看ておられます」


「良かった……僕はお兄さんと同じところにいなかったんですよね?」


「えぇ、兄様のことろに向かったのはミーちゃんが運ばれてきた後でございます」


 あれ……時系列がおかしくないか?


 普通に考えれば気を失った僕はお兄さんと一緒に倒れているはずなんだけど。

 almAに運ばれたってことはalmAもポータルから拠点に戻れるってこと?


 うーん……ダメだ、これは考えても答えがでない。


 それよりもお兄さんだ、実質ゾラ家が匿っている状態だし、医者も呼べないだろう。

 もし呼べたとしても秘薬なんて劇物の治療ができるとは思えない。



「僕はどれくらい眠っていたんですか? あと今の時間は?」


「半日ほどでございますね、今は正午を少し過ぎたくらいでございます」


 良かった、前に記憶が飛んだ時は数日眠ってたみたいだけど、今回はすぐ起きれたんだね。

 カルミアのときのことを考えたら一刻も早くお兄さんを治療した方が良い。



「ありがとうございます! ちょっと出てきます、almA!」


 僕は着替えもせず寝巻きの浴衣のまま、拠点を経由してリム=パステルの自宅に戻り、アレクシアのいる雑貨屋へ急いだ。



 ~ ~ ~ ~ ~ ~



■後神暦 1325年 / 春の月 / 星の日 pm 00:50


――リム=パステル カーマイン商会 雑貨屋



「アレクシア! 助けて欲しい人がいるんだ!!」


「は? え? ミーツェ!? ヨウキョウに行ってたんじゃないの!?」


「あとで全部説明するから、一緒にきて!」


 まだ営業中のお店を強引に閉店にして、雑貨屋の裏でポータルを出しゾラの屋敷まで戻った。

 勝手にお店を閉めたことはウカノさんに後日謝罪しよう。



 ~ ~ ~ ~ ~ ~



――アヤカシ ゾラ屋敷


「この方がアルコヴァンの聖女様でございますか?」


「そうです、お兄さんを救える可能性があるとしたら彼女しかいないと僕は思っています」


「左様にございますか。聖女様、どうか……どうか兄様をお救いください」


 アレクシアは両手を握り涙ながらに懇願するミヤバさんに困惑していたが、事情を話すと防衛戦後にも見た張り詰めた表情で出来る限りのことをすると言ってくれた。

 他力本願で申し訳ないが、正体不明の秘薬の副作用に対処できるのはアレクシア(チート)以外に考えられなかったんだ、ごめん。


 治療魔法や浄化魔法、どんな状態かわからないお兄さんへ一通りの魔法を行使してくれたアレクシアをリム=パステルへ送り、カーマイン商会へ説明に向かった。

 拠点の力がバレてしまったが後悔はない、後はお兄さんが回復してくれることを願うばかりだ。


 死を望んだ彼にそれは余計なことかもしれない。

 それでも僕は生きて欲しい。それはサーシスさんやミヤバさんの為だったり、カルミアの願いだったりと色々あるが、僕自身が前世で残される人を悲しませたことへの贖罪(しょくざい)の気持ちからくる願いなのかもしれない。



 ひどく独善的かもしれないけれど、どうしても譲れなかったんだ。



 ……僕は約束を守れてるかな?almA。

 僕は浮かぶ多面体に跨り日が落ち始めた道をゆっくりと進んだ。

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