ep7-2.pm 10:22 メルミーツェside
エスト …… 30.9%
ツツミコト …… 25.2%
**** …… 19.2%
****** …… 24.7%
『待て待て待て! 我が子らが襲われておるだと!?』
『あら、しかもあれって旧時代の駒じゃないかしら』
『くぅ~……先代め、いらぬ置土産をしおって……』
『初めに結構減らしたはずなんだけどな、正に災害』
『エストの異分子も残っていたし、波乱が多いわね』
『……まぁ、見方を変えれば盛り上がるじゃないですか』
~ ~ ~ ~ ~ ~
■後神暦 1325年 / 春の月 / 海の日 pm 10:22
アヤカシ西地区中心街……
燃える木々や建物の炎で夜の闇の中にあってもここは昼間のように明るい。
この災禍の原因であり、この国の被害者であり、そしてこの誓いで救うと決めた人物と僕は対峙している。
―――――――――
【メルミーツェ装備】
・爆砕槌
・防弾盾
・スタンバトン×2
・ショートボウガン(アイアンボルト)
・アストライトブレスレット
・酸素カートリッジ付きガスマスク
・耐熱コート
【部隊編成】
メルミーツェ……研究者 変更不可
オルカ……剣闘士 フィジカルバフ要員
グランド……槌盾 シールド要員
シャンディ……斥候銃士 スキル要員
ルックス……狩人 弩弓知識要員
ナハト……超常治癒士 回復要員
ティリス……拳闘士 挌闘戦要員
グルース……断罪者 決戦スキル要員
―――――――――
銃火器の類いを持ち込まなくて良かった。
アストライト製の起爆剤を用いた爆砕槌は別として、耐熱コート越しでも感じるこの熱の中、通常の火薬を用いた銃弾はいつ暴発してもおかしくない。
グレネードも然り、投げる前に爆発して死ぬなんて最後は絶対お断りだ。
それに僕は殺し合いに来たんじゃない。
殺傷力が高い武器は元々不要、お兄さんの意識を断ち切れればそれで実質勝ち。
その為の作戦に必要な装備を選んできたつもりだ。
「去らないか……お前、家族を殺されたことはあるか?」
「それ、サーシスさんにも聞かれました」
「そうか、その上での答えか……」
炭化した木がパチパチと立てる音が妙に大きく感じる。
マスクの中で額に滲む汗は暑いからじゃない、これからやろうとする一発勝負への緊張からだ。
「ヨウキョウ人ではない子供を屠るのは気が咎めるが……去ね――黒縄の焔……」
「almA! ”戦術技能 ウォールバッシュ”!!」
almAが多面体の体を長方形の壁に変え、僕を飲み込むほどの大きさの火球を遮り、更にそのままの姿で相手を目掛け猛然と突進していく。
直線的な軌道の突進はお兄さんに躱されるがそれでいい、飛退いたその先へハンマーを振り下ろした。
しかし、ハンマーは彼に当たる直前に逆方向にかかる力に弾かれた。
理屈は分からないが、クレハくんの虚火のように指向性のある爆発を一瞬で起こしたと思われる。
頭を狙ったので殺さないように手加減はしたが、爆風で弾かれるのは予想外だった。
「容姿に似合わない戦い方をするな、それに随分と慣れている」
「色々ありまして、死にそうになりながら頑張ったんです」
「そうか……」
初めに会ったときのサーシスさんのように無表情だった顔が少しだけ寂しそうに笑った。
なんとなくその理由は分かる、たぶん年齢的に近い僕を自分の娘と重ねているんだ。
だったら尚更生きないとダメだろう?
逝ってしまった者が願うのは残された者の幸せだ。
今回のことで僕が出した答えはそれだ、そうカルミアが教えてくれたんだ。
反芻するように決意を思い返し、助走をつけてもう一度ハンマーを振り下ろす。
当然、先ほどと同じように爆風に押されるが、今回叩きつけたハンマーの平は逆向きだ、トリガーを引きこちらも爆砕槌の爆風を起こす。
ぶつかり合う風に周囲の灰が勢いよく舞い上がり、視界がホワイトアウトする。
僕は弾かれる前にハンマーを手放し、持ち替えた盾を構え体当たりで彼の体制を崩した。
――今だ……!!
「ビリっとします……よっ!!」
ベルトからスタンバトンを抜き、バチバチと音を鳴らし放電する鉄芯を突き当てた。
「――!?」
……手ごたえがない、灰で視界は悪くてもマスクをしている僕には彼の影は視えていたし、実際にスタンバトンはそれを捉えている。
「雷の魔導具か? 珍しい物を持っているな」
そう彼が言ったとたんに目の前の影が掻き消えた。
「――叫喚の焔……陽炎は知っているか? 火魔法は様々な使い方ができるのだ」
視界が晴れて来ると彼は僕が捕らえた影の遥か後方にいた。
思惑が外れた僕は盾とスタンバトンを投げ捨て、腰に下げていたボウガンに持ち替える。円を描くように回り込みながらボウガンを射るが、脚を狙ったボルトを彼は微動だにせず弾き飛ばした。
あの爆風は攻守共に万能過ぎない? ズルいよ……
「何をしても通じないのが解ったか? これで最後だ……今去れば見逃してやる。そしてこの街から離れろ、そうすれば巻き込まれずに済むぞ」
「嫌です、さっきも言いましたけど退く気はありません」
「そうか、ならせめて苦しまないように一瞬で灰にしてやろう……――焦熱の焔」
初撃の火球よりは小さいが周囲の景色が歪むほどの熱量の炎が僕を目掛けて飛んでくる。
安全を考えるならスキルを使って避けるべきだが……それは選べない。
「ああぁぁぁぁぁぁっ!!」
マスクを外し視界を広げ彼に向かって走った。
姿勢を低くしたスライディングで頭上すれすれに躱した火球は後方で爆ぜるように燃え上がり、木々が絡みついた建物をみる間に炭化させた。
あんなの当たったら本当に一瞬で灰になっちゃうよ……
でも、ここまでこれた、この為にスキルを温存したんだ!!
――”戦闘技能 スタンスティング”!!
もう一本のスタンバトンを彼に向け、恐らくシエル村でも使ったスキルを放つ。
一度見ているこの武器を近接戦闘用だと思って炎で壁を創ってくれているのも好都合だった。
僕の手元から放たれた電撃は拡散することなく彼を貫いた。
「がっ……!!!!」
僕はボウガンを撃ちながらさっき放り投げたスタンバトンと彼を挟んで一直線になるように移動してたんだ。電源を固定して通電させたままのスタンバトンはスキルで放つ電撃を誘導する電極になってくれた。
加えて炎は意外と電気を通す……火炎整流ってやつだね。
これが一発勝負の不意打ちだ。
もちろん一本目のスタンバトンで気絶してくれれば、あんな高火力の魔法を使わせないで済んだけれど、護国府を正面から一人で相手取る人に正攻法が通じるとは初めから思っていなかったよ。
「早くポータルで拠点に連れていってサーシスさんたちと合流しないと」
「……まだだ…………私は……娘を奪ったこの国を……」
二本の火柱と共にふらふらと彼が立ち上がった。
復讐心で意識を繋いだのだろうか、だとしたら恐ろしい執念だ。
残った武器はバッテリーがイカれたスタンバトン一本……
ここから入れる保険ってあるかなalmA……
僕は浮かぶ多面体を引き寄せる。
【サーシスの兄 イメージ】




