ep19.5.メルミーツェの愚痴
■後神暦 1325年 / 春の月 / 海の日 am 03:10
――ウカノ邸 テラス
拝啓 お父さん お母さん
今の地球の季節はいかがでしょうか。冬でしたら寒さにお気をつけください。
夏でしたら水分補給をお忘れなく健やかにお過ごしになっていましたら幸甚です。
先立つこととなって今も申し訳なく思っています。
お二人の息子は娘になって更には猫耳が生え、2度目の人生を歩んでいます。
何を言っているのか、頭がおかしかくなったのかとお思いなことでしょう。
私もそう思います。
幼いころに親戚に女子の服を着せられて遊ばれていた私が、本当に女性の服を着る生活をすることになるのだから数奇なものです。
孫の顔を見せることが出来ずに終わってしまった私ですが、
なんと今、子供が二人、それも双子がいます。
どうも今の私の身体年齢は中学生程度なので母ではなく姉と呼ばれています。
以前はあまり私の交友関係を話す機会がなく、
どのような友人がいるかあまり知らなかったことかと思います。
2度目の人生の話になりますが、多くの人たちと人間関係が構築できました。
それこそ人種も性別も年齢も様々です。
某夢の国の作品の主人公、永遠の少年の相棒に似たシルエットの妖精族の女性。
犬の特徴を有した犬人族と呼ばれる種族の人々、私の子供たちもこの種族です。
きっとお二人も大好きになってもらえると思います。
その他には、
私と同じく2度目の人生を歩んでいる女性と彼女を溺愛する父親。
魔導具、そちらで言うところの家電に近いものに偏執的な執着をみせる男性。
商売に異常な情熱をもつ、とても美しい容姿の男性、心は女性です。
何故かバニーガール姿で料理に勤しむ女性。
子供相手に腕の関節を全て脱臼させる脳と書いて”きんにく”と読むであろう男性。
任侠映画に出てきそうな強面で飲む打つ買うの三拍子を地でいく男性。
少し触れるだけで絶頂してしまう女性。
角を曲がってすぐに絡まれる治安の悪い地域の少年たち。
とても個性的な方々が仲良くして下さっています。
おかしいとお思いでしょう。私もそう思います。
むしろイカれているとさえ思います。
多くの人と会うと当然ですが、友好的ではない人たちとも出会いました。
立場ある人でありながら絵に描いたような小悪党。
自分の非を絶対に認めず他者を貶める見栄っ張りのドラ息子。
いきなり童女の頬を舐めてくるそちらなら即通報必至の変態女。
お前は大丈夫かとお思いでしょう。私もそう思います。
特に変態女と出会って良く生き残れたと我ながら感心しています。
また、2度目の人生は物理的に戦いに身を投じることがままあります。
つい先日も激しい戦いがありました。
正直、死ぬかと思いました。
私は守りたいものがあり必死に戦いました。
それは成就することができました。
しかし『錆鉄の猫姫』と通り名がついてしまいました。
きっと私が今の身体年齢相応の子供だったら喜んでいたことでしょう。
ですが、中身はお二人の息子だったころの大人のままなので、ポンポンペインペインです。
何が言いたいのかとお思いでしょう。私もそう思います。
つまり私は元気です、と言うことです。
それではお二人にこれからも幸多きことを心から願っています。
敬具
「……もう寝よう」
こんな時間に僕はなにをやっているんだろうね、almA。
僕は浮かぶ多面体と室内へ戻る。




