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閑話.メルミーツェ、弄ばれる

■後神暦 1324年 / 冬の月 / 海の日 pm 01:00


――インディゴ商会 飲食店 店内


「皆でランチなんて久しぶりよね」


「うん、この子たちとも最近ゆっくり外食することできなかったから、今日は誘ってくれたのはとっても嬉しいよ。ありがとう、アレクシア」


「ミー姉ちゃん! この旗もって帰ってもいい?」


 最近分ってきたことだけど、嗜好がそっくりな双子でも少しづつ違いがある。


 例えばコレだ。

 オーリはちょっとした収集癖があって、ヴィーにはそれがない。



「いいよ、また宝箱に入れようね。それにしてもこの世界にお子様ランチってあるんだね……旗まで刺してあるし」


「わたしが考案したからね! まぁ、ウカノさんには『安売りしちゃダメです』って怒られたけど……」


 なるほど、器が”お腹を空かせた子供に自らの顔面を分け与えるヒーロー”にそっくりなのは君の仕業だね、納得。



「そうだ、来週のパーティどうする? 一緒に行く?」


「なにそれ?」


「ウカノさんに聞いてない? カーマイン商会(うち)は定期的に懇親会も兼ねて商会全体でパーティがあるのよ、半年か3か月に一回ね」


 へぇ、福利厚生が手厚いだけじゃなく、そんなこともやってたんだ。

 カーマイン商会は本当に労働者に優しい商会だね。



「そうなんだ、それって家族も参加していいの?」


「もちろん、双子ちゃんもティスちゃんも大丈夫なはずよ。

ただ……それなりのお店だからドレスコードがあると思うわ」


「え……どこでやるの? そんなフォーマルな服なんて持ってないよ」


インディゴ商会(うち)のお店ですン!!」


「ブハッ……なんでパイロンさんがここにいるんですか? 代表のお仕事とかしなくて良いんですか?」


「各店舗のお料理の指導もパイのお仕事ですン!」


 突然の登場に飲み物を吹いてしまった……ねぇ僕の紅茶を返して。

 テーブルを拭きながら嫌味を言うがパイロンさんは意に介さないようだ。



「それに服のことならパイにお任せですン!」


 厨房にいそいそと戻っていくパイロンさん、不安しかないんですけど?



「予備の服ですがミーツェンに差し上げるですン」


 いや、それ貴女のサイズですよね?

 僕が着ようものならズリ落ちますよ?

 よしんば着れたとしても、バニー(その)姿でパーティに出ろと?


 パイロンさんにはいつもお世話になってるから、こんな事を考えること自体失礼なのは承知だけど……


 ――殴りたい、その笑顔。



「無理です、勘弁してください」


「そうですン? じゃあシンディンのところで買いましょう! 既製品も豊富なのできっと気に入るものがあるですン」



 ~ ~ ~ ~ ~ ~



――ヴァージャ商会 仕立て屋



「なんか流れで来ちゃったけど……」


「まぁいいじゃない、双子ちゃんの服もパイロンさんとわたしでコーデしてあげるから!」


 なんか随分楽しそうだね、でもオーリとヴィーにも服買ってあげたいし良いか。


 …

 ……

 ………

 …………


「おぉ~!! 可愛いよ二人とも!!」


「ねぇ、お店に入った時と違い過ぎないかしら?」


 だって実際可愛いんだから仕方ない。ティスにはこの良さがわからないの?


 本物の双子の双子コーデ!!

 サロペットにオーリはベスト、ヴィーはブラウスでちょっとだけ違い出してるのも最高だよ。

 優勝!! アレクシアGJ!!



「ごめんね、妖精族サイズの既製品はないみたいなの……でもシンディさんが今度ティスちゃんの服をオーダーメイドで作ってくれるらしいわ」


「そう言えばシンディさんは?」


「奥でちょっと……まち針が手に浅く刺さったみたいですン」


 あービクンビクンしてるのね……この子たちには見せられない。



「じゃあ、次はミーツェね……」


「いや、僕はこのスーツみたいなので良いよ、そっちの方がフォーマルでしょ?」


「ダメですン」


 あ……これダメなやつだ……僕はこの感覚をよく知っている……

 思い出されるのは幼いころ、親戚の姉ちゃんたちに着せ替えさせられて玩具にされた懐かしい記憶だ……


 …

 ……

 ………

 …………


 おい、嘘でしょう?

 この世界にこんなモノあるの?

 プリーツスカートにデカいリボンのついたブラウス……これって……



「地雷系じゃん……」


「地雷系? 西暦2005年(わたしのとき)にはそんなファッションないわよ? 系統で言えば甘ロリに近いんじゃないかしら?」


「……恥ずかしいからやっぱりスーツみたいなのが良いんだけど」


「なんで? いつもの服より露出少ないのに?」


「スカートだよ、落ち着かないよ、絶対に風魔法耐性低いよ!」


「ドレスコードよ、あまり肌を出さない、公式の場では常識よ!」


 マジかよ……肌を出さないって足出てるじゃん。

 オーリとヴィーのコーデは素晴らしかったよ?

 でもさ、僕にこれを着てパーティに行けと?


 アレクシアは僕の前世知ってるよね?

 知っててやったよね?



 ~ ~ ~ ~ ~ ~



■後神暦 1324年 / 冬の月 / 黄昏の日 pm 07:00


――パーティ当日 インディゴ商会酒場



「……アレクシア、僕をハメたね?」


「なんのことかしら?」


 やられた……

 一緒に来たアレクシアは確かにお洒落しているけど、ウカノさんも着物の要素を取り入れたドレスでお洒落だけど……


 モリスさん普段着だよね!?

 他の人も普通だよね!?

 作業着の人もいるよ!?

 場所だっていつもの酒場だよね!?



「あらぁ、メルちゃん、今日は随分と可愛いですね、双子ちゃんもとっても可愛いですよ、ふふ」


 あ……わかったぞ、黒幕はウカノさん(このひと)だ……


「アハハ……アリガトーゴザイマス」


「アレクシアちゃんにお願いして良かったです、メルちゃんもせっかく可愛い顔してるんですから、たまにはお洒落しないとダメですよ?」


 そうなんだよ、確かにメルミーツェの容姿は整ってるんだよ……

 でも、だからって、僕がこの格好するのとは違うんじゃないかな?


 畜生……もう今日は飲んでやる……未成年? 知るか、中身は成人だ。



 介抱は任せたからね、almA。

 僕は浮かぶ多面体に全幅の信頼をおき、樽ジョッキを煽った。



【ハメられたメルミーツェ イメージ】

挿絵(By みてみん)

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