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ep4.商会トップはヤバい人ばかり2

■後神暦 1324年 / 夏の月 / 空の日 pm 6:00


「ミーツェ、そろそろ閉店準備しよー、そっちの拭き掃除お願いしていい?」


「わかった、あ、ごめんアレクシアまた水出してもらっていい?」


「あぁ、そうだったわね。マナが使えないのって結構不便ね」


 モリスさんの雑貨店で働き始めて1週間経った。

 面識のある人たちの店でもあったので順調に働けていると思う。


 前世の僕に見せてあげたいね、今世の僕、頑張ってます。


 問題はツーク村以上に魔法……というより魔導具が生活インフラの根幹にある。

 つまり、マナがない僕は蛇口から水を出すこともできない。


 以前、ツーク村で感じた建物の様式と機能がちぐはぐな印象はリム=パステルで更に差が開いたように思う。



 建物は石材やレンガ、木材なんかが多用され、現代から7~8世紀くらいは昔の建築様式。

 なのに機能は現代と同レベルとまではいかないものの、蛇口から水は出るし(僕は出ないけど)、冷蔵庫やコンロのようなもの(僕は使えないけど)まである。



「あ、お店閉めたらまた試作付き合ってよ、双子ちゃんにも食べてもらいたいし」


「助かるよ、あの子たちアレクシアの料理大好きなんだ」


 僕が働いている間、オーリとヴィー(あの子たち)は店の裏でティスが面倒を見てくれている。

 元々子連れの従業員の為に託児スペースを各店舗に設けているらしい、福利厚生がしっかりしているカーマイン商会には本当に感謝だ。



 ~ ~ ~ ~ ~ ~



――閉店後


「今日はショートケーキ作ろうと思うのよ」


「あ、今日はお菓子なんだね、砂糖って高くないの?」


「この国ってテンサイが栽培が結構盛んだからそんなに高くないの、お菓子は気軽に作れる程度には一般的よ。問題は生クリームね」


 ヒロインスマイルで僕に温めた牛乳が入った水筒を渡してくる……なにこれ……?



「コレを袋に入れて振り回して、全力で」


「僕……一応非力な女の子なんだけど?」


「中身は違うでしょ?」


 ヒロインスマイルは崩れない……

 あぁやってやりますよ、部隊編成の力を見るがいいよ。


 ”オルカ”をセットして爆速で作ってみせるよ。



 ――……Ready

 おおおおぉぉぉっぉぉおおぉおおっぉおぉぉおお!!!!



 袋がちぎれんばかりの力で振り回し、ようやく水筒に上澄みのような少量のクリームを作ることができた……



「うーん、やっぱりミーツェでもこれくらいかかるかぁ」


 アレクシアが言うには、以前から店の食品エリアに製菓を置きたかったけど、材料的に焼き菓子が限界で専門店には敵わず諦めていたとのこと。

 そこで僕やalmAが生クリームを作れれば、こちらの世界では珍しいお菓子を販売できるのではないかと考えそうだ。



「ぜぇ……はぁ……あ、あのさ、魔導具で遠心分離機みたいなものないの……?」


「それがないのよ。

一から作ってもらうオーダーメイドは高すぎてとてもじゃないけど買えないし、仕組みも説明できないのよね。だからもう何回かふりまして」


 鬼かな……?いや、魔人族だったね……



 肩の軟骨がなくなったと錯覚するころにはケーキは完成した。

 子供たちとティスは大喜びだった……うん、作ろう遠心分離機。


 その夜は拠点に戻り製造所でアストライトのバッテリーとモーター、それに牛乳をいれる金属製の筒と固定する部品を作り、遠心分離機もどきを作成した。


 アトーメント・ノア(ゲーム)に登場しないものは仕組みが解っていないと作れないので工作に近かった。

 医療用の遠心分離機はスチルに少し映ってた気はするけどアレじゃ小さすぎるしね……



 ~ ~ ~ ~ ~ ~



■後神暦 1324年 / 夏の月 / 黄昏の日 pm 4:00


 遠心分離機もどきを作って数日、クリームを使ったお菓子は飛ぶように売れた。

 オーリとヴィーも店の裏で楽しそうに機械を回してはクリームを取り出している。


 雇い主のウカノ代表へ報告で実物を見せた際は『今こそ商魂を爆発させるのです!!』って言って大喜びだった、と言うより目がヤバかった。

 きっとスイッチが違うだけでベリル代表と同種の人で間違いないと思う。



「売れてますねぇ、アレクシアちゃんはいるです?」


 噂をすれば、ではないがウカノ代表じゃないですか……


「はい、います。呼んできますのでお待ちください」


「あ、メルちゃんにもお客さんですよ、もう少しで着くと思うんです」



 ――カランカランッ



 店のドアのベルが鳴ったかと思えば、両目をかっぴらいた強面が真っ直ぐにこちらを迫ってくる。


 目が……ヤバい……



「おい猫の嬢ちゃん! 新しい魔導具作ったんだってな! どんな仕組みだ!? ってか魔導具作れたんだな!! 早く見せてくれ!!」


 ひぃぃぃ!!ベリル代表!怖い怖い近い近い!!



「ベリルさん、カウンター壊れるです。それにメルちゃん怯えてるので落ち着いてください」



 ――カランカランッ



「クリームを作ってるお店はここであってますン!?」


 今度は誰!?アレクシア早く戻ってきて、もうキャパシティ超えてるって!!



「お、パイロンか? 何でお前がここにきてるんだ?」


 ……オッパイロン?

 いや、確かに「その名に偽りなし」ではあるけど……

 藍色の髪に長い耳、兎人族とじんぞくだよね?

 話し方のクセとか言いたいことは色々あるけど……


 そんなことより何でバニー姿なの!?

 ねぇ、ここ街中だよ!?



「お願いですン! クリームのレシピを教えて欲しいんですン!!」


 僕が困惑していると、オッパイロンさんはそれはそれは見事な土下座を披露された。

 この世界の所作に土下座ってあるんだ……



「まぁまぁ、パイロンさん、インディゴ商会の代表がそんなことしたらダメですよ。

そこは商談ってことで私がお話うかがうですよ」


 あ……「パイロン」さんね、大変申し訳ございませんでした。


 …………?

 ……代表!?


 土下座で涙目のインディゴ商会の代表に()()()()をするカーマイン商会の代表……どういう状況?


 この国の有力者って濃い人ばっかりだよalmA……

 僕は浮かぶ多面体を抱き寄せる。



【ウカノ イメージ】

挿絵(By みてみん)

胸があるって?詰め物に決まってるでしょう?

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