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ep7.ツーク村の会議

*** … 32.2%

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****** … 24.3%


『どうした****? まだぬしの巡ではないだろう?』


『そうなんだけど……なんかイベント起きそうなんだよ』


『あら、いいじゃない。動きがあるのはいいことじゃありませんこと?』


『誰の駒か知らないけど盤面を引っ搔き回してくれたら面白いな!』


『あなた……自分が不利になるかもしれないこと考えてないの……?』



 ~ ~ ~ ~ ~ ~



■後神暦 1324年 / 春の月 / 獣の日 pm 10:20



 集会所には副村長のバゼットさんを始め無事だった村民がほぼ全員集まっていた。

 みな感情的になっているが、方向性は混乱していない、副村長が纏めているのだろう。

 攫われた村民を救い村長とシエル村を断罪することで概ね意見は一致している。


 憤怒……愉悦……不安……憎悪……心配……

 人数が多い分、様々な感情が飛び交っている。


(もう一度襲撃があるかもしれないことは気にしないのかしら?)

 ティスが耳打ちをする。


 その通りだ、攫われた村民の救出は間違いではないけど、どうしてそれしか議題になっていないのだろう。



「あの……良いでしょうか? 今回の襲撃はツーク村の食料備蓄を狙われたのではないでしょうか?」


 水を打ったように静まり、今気づいたように「あ……」と声を漏らす者もいる。


「そうかもしれませんが、食料目的なら既に奪われていないとおかしくありませんか?」


「目的を果たせなかったのではないでしょうか? 今回ツーク村は人的被害を受けましたけど、それでシエル村になんの利益があるんでしょうか?」


「それは私にも分かりません。

ですが村長一家はアドリア以外は行方不明、攫われる者も私が見ました。

故に戦うことになったとしても助けなければいけません」


「それなら僕がシエル村いって様子を見てきます」


 よし、取り合えず予定通りシエル村いくことは提案できた。

 副村長の言い分は分かるけど、村の守りを手薄にして攻めるのは悪手だよ。

 もし攫われた人たちを助けても戻ったら村が壊滅してたら本末転倒だろうに……


「申し出はありがたいですが君はまだこの村にきて数週間、私たちもあんなことがあって疑心暗鬼になっています。

言い方は悪くなってしまいますが、よそ者の君をそこまで信用する訳にはいきません。

君が村長と繋がっていない保証はないでしょう? だから君はアドリアたちとおとなしくしていてください」


 どうしよう、村の人たちも同調し始めた……よくない流れだね……


 ツーク村に残ってアドたちと防衛戦に切り替える?

 いやでも副村長の言い方だと戦える大人を連れてシエル村に行く気だろうし、向こうの人数もわからない。

 そうなったらツーク村で怪我で動けない人たちを守りながら戦うことになる……

 それはさすがに無理だ。



「それなら、あたしがここに残るわ」


「ティス!?」


「ミーツェが裏切ったら、あたしを好きにすればいいわ。なんなら監に入ってもいいわよ」


 ティスを人質にするのは不本意だけど、要求を通すならこのタイミングしかない。



「シエル村は食料不足で逼迫していることはアドから聞きました。

それなら襲撃をして略奪をしないのは不自然です。

もし略奪が失敗したのであればもう一度襲撃があると思いませんか?」


「それはそうですが……」


「もし、みなさんがシエル村へ行っている間に襲撃されたら村に残った怪我人や戦えない子供はどうなりますか? 

同じ轍を踏まないようにシエル村へ赴くのは向こうの思惑が分かってからでも遅くないと思います」


「バゼット、俺はこの子を信じてみて良いと思う。俺にとって一番大事なのは家族を守ることだ」


 一人の発言をきっかけにこちらの意見を支持してくれる村民が増え、副村長もシエル村への偵察を承諾してくれた。


 疑念……焦燥……不安……期待……心配……



「わかりました。ただし、君が言った通り、妖精族の方はこちらで監視させてもらいます」


 こうして僕は翌日にシエル村に向けて発つことになった。

 ティスが鳥かごに入れられたことについては扱いに納得いかなかったが、

 『大丈夫よ』と強気に笑うティスに再度最善を尽くそうと決意した。


 双子の家から拠点へ戻り、アドたちにこれまであったこと、そしてこれからのことを話す。

 武器の製造も夜明けまでには終わるだろう。


 この世界に放り込まれて1年と数か月、初めは死にたくないから生きることが目的だったけど、野菜が食べたいから島を出て、妖精族に出会って人との繋がりの大切さを思い出した。


 ツーク村にきたのはただの偶然……妖精族と平穏に暮らすために魔石を調べて流れ着いたけど、ここでも大切な繋がりができた。


 だから襲撃の件は許せないし、双子の両親のことは取返しがつかない。

 この子たちの今後はどうなるんだろう?僕に何かできることはあるだろうか……



 今は難しくても、この子たちの今後に幸せが多くあって欲しいねalmA。

 家に戻った僕は浮かぶ多面体ではなく、寄り添って眠る双子を撫でた。

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