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ep4.ツーク村の生活2

『何で確認にこねぇんだよ?』


 前回同じことで確認にくるなって言ったでしょ。


『すみません、どこかに不備がありましたでしょうか』


『いやねぇけど普通確認するだろ?』


『すみません……』


『なぁお前ら、俺間違ったこと言ったか?』


 誰もなんも言えないよね、知ってる。


 ――……


『前は逆のことで怒ってたし、お前は間違ってないと思うよ』


 さっきは何も言わないで今更フォローされてもね……

 いや、違うか。僕だってきっとあの場面で声を上げるのは無理だ。

 それでも事が過ぎた後に話しかけられても惨めになるだけだよ。

 もういいや…………誰とも……話したくない……


 ――……



 ■後神暦 1324年 / 春の月 / 地の日 am 08:30



「んぐっ……」


 少し大きめのベッドで寝相の悪い双子に顔を蹴られ目を覚ます。



「嫌な夢見ちゃったな……」


 この世界にきて初めて人に悪意を向けられたからかな。

 妖精族にアド、オーリとヴィーにその家族……

 良い人たちばかりで忘れてたけど、人と関わる数だけ悪意を向けられる割合も増えるんだよね……

 昨日は気にならないって思ってたけど無意識に反応しちゃってるのかなぁ。



「おはよう、ミーツェちゃん。あら? ふふっ、この子たちのせいで動けないのね」


 僕たちを起こしにきた双子の母親は逆さまになり僕に圧し掛かっている二人を抱き起す。


「おはようございます、コリンさん。昨晩はありがとうございました」


 食卓には既に朝食が用意され、双子の父親シェラドさんは食事を始めている。

 僕はシェラドさんに挨拶し、ティスとまだ眠たげな双子と一緒に朝食を食べ始めた。


「昨日は嫌な思いをさせてしまったね、村長も普段はあんな人ではないんだ。

言い訳になってしまうが、隣村ともうまくいっていないみたいで気を揉んでいるんだよ」


「いいえ、村が抱えてる問題も事情も伺いましたから、

それに村長さんの立場なら警戒してするのは当たり前だと思います。

手放して歓迎されたら逆に不安になっちゃいますし」


「ははは、見た感じアドリアより年下なのに達観しているね。じゃあそろそろ僕は仕事にいくよ」


「「パパいってらっしゃーい」」


「そうそうミーツェちゃん、シェラドとも話し合ったけど良かったら村にいる間うちに住まない?」


「良いんですか? ご迷惑でなければお願いしたいです! じゃあ代わりに狩りで貢献しますね!」


 拠点に戻る方がティスのマナ的に都合が良いけど、

 万が一ポータル使っているところを見られて変な誤解を生むのは避けたい。


「ミー姉ちゃん狩りにいくの?」「ヴィーたちもいく!」


 昨日魔獣に襲われたのにもう切り替えができてるんだ……たくましいね、見習いたいよ。


「コリンさんが許してくれたらいいよ」


「この子たちなりに村の力になりたいのよ、お願いしても良いかしら?」


「はい、危険なことは避けますし、やむを得ない場合も必ず守ります」



 アドも誘い僕たちは森へ狩りに出た。

 危険を減らすため双子木の上から獲物を探し、アドが勢子(せこ)、僕が銃で仕留める。

 双子、特にヴィーは視力が良いようでゲーム感覚で獲物を見つけていった。


「シカ1頭にイノシシ2頭、こんな早くすげぇな! ティスもすげぇよ、木の実に野草をこんだけ見つけるなんてよ!」


「でしょう? それにあたしはお肉より木の実の方が好きなのよ、好物を探すのは得意だわ!」


「それにミーツェの武器もとんでもねぇ威力だな。鉄の塊とばしてんのか?」


「え? 弾見えてるの?」


「身体強化魔法使ってるときはな。さすがに躱すのは無理だけどな」


 冗談でしょ?スキル込みだけど800m/sを余裕で超える弾速なんだよ?

 今の言い方だと普通のハンドガンの弾なら避けられそうだよね、犬人族怖っ……


「やっぱりすごいね、魔法。それにオーリとヴィーの姿が消えるのも魔法?」


「あぁ、あいつらはちょっと特殊で身体強化の他にオーリは光を曲げる魔法、ヴィーは周りの音を減らす魔法が使えんだ」


 光の屈折に音の減衰……ステルス迷彩とサプレッサーみたいな感じかな?

 魔法が使えないのが返す返す残念だ。


「ミーツェはどんな魔法が使えんだ? 俺、猫人族の魔法って知らねぇんだよな」


「ミーツェは魔法使えないわよ」


「マジか!? 嘘だろ? 水とか種火とかどうしてたんだ?」


「本当だよ、マナはあるかもしれないけど感じることはできないんだ。

でも一応魔法みたいな力はあるし、almAもいるから大丈夫」


「そっか、大変だったんだな……」


 妖精族も似たような反応……改めて思うけど本当にこの世界は魔法が生活に根付いてるんだね。

 まぁ確かにマナが続く限り水や冷暖房が使い放題って便利だものね。


「ミー姉ちゃん! 兎見つけた! ヴィーもダダダっやりたい!」


 ヴィーが話に割って入り、僕の裾を引き銃を撃ちたいとねだる。


「いや、これって撃ったときに肩がすっごい押されて危ないからダメだよ」


「やだ~! やってみたい~! ミー姉ちゃんだけず~る~い~!!!!」


 どうしよう……身体強化使えば大丈夫なのかな?いやいやでも子供だし……

 でも聞き分けてくれなさそうだな……うーん……


「……わかった、身体強化を必ず使うことと、僕が後ろから支えるから勝手に撃っちゃダメだよ?」


「うん! わかった!」


 一応治癒士(ヒーラー)の”ナハト”をセットしておこう。



 ……――Ready



「ここに指をかけて撃つときは指で引いてね、何回かダダダってしたら指を戻すんだよ? 弾が出るところが上に跳ね上がるから引きっぱなしはダメだからね?」


「はーい!」


 射線に誰も入ってないね。獲物も止まってる……


「撃っていいよ!」


 短い間隔で銃声が3回響く。

 弾丸は全弾兎の頭を貫いたらしく頭部以外欠損していない。

 跳ね上がり(マズルジャンプ)も抑えて小さな的の同じ場所に当てるなんてあり得るの?

 ビギナーズラックか判断できないが見事なヘッドショットに戦慄した。

 反面、ヴィーは満足気な笑顔を向けている。


「……すごいね、ヴィー……取り合えず今日はもう村に戻ろっか」


 反動を受けても肩は大丈夫そうだし、よくよく考えたら昨日だって魔獣から走って逃げてたよね。

 アドは弾丸を視認するし、どうなってるのさ身体強化魔法……



 ~ ~ ~ ~ ~ ~



 村への帰り道、犬人族の魔法に衝撃を受けつつ村へ戻る途中、もう一つの衝撃が僕を襲った。


 ふと気になり年齢を三人に聞くと双子は7歳、アドは15歳。

 双子は相応だったが、アドは18歳前後に見えていた。

 狼人族は早熟でハーフのアドもその特徴が出ているとらしい。


 ただティスが52歳と聞いて長命種なのは知っていてが言葉を失った……


 今度からティスタニア先輩って呼んだ方が良いのかな?almA。

 僕は浮かぶ多面体にもたれ遠い目をする。



【オリヴァ イメージ】

挿絵(By みてみん)

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