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ep2.犬人族のこどもたち

■後神暦 1324年 / 春の月 / 空の日 pm 05:40


 さて、ティスへ汚名返上できたところでこの子たちはどうよう……


「「よ……よよよ妖精族だーーー!!!!」」


 ティスを見て叫んだ犬人族の子供の周りの景色が一瞬歪んだかと思ったら姿が掻き消えた。



「え!? どこいったの??」


「魔法ね、ミーツェそこにいるわよ」


 なるほどステルス系の魔法か、ティスには効かないね。

 僕も出会った時にパッシブスキルのステルスを看破されたから経験済みだよ。

 でもこの子たち後退っていたのに足音も衣擦れも聴こえなかったよ、どうなってるの?


 とにかくあまり怖がらせないように目線を下げて……



「ねぇ、そこにいるのかな? 怖いことはしないから姿を見せてくれない?」


「「ほんと……?」」


 出てきてくれたけど不安そうだね、今こそ花畑で作った秘密兵器の出番だ。

 ふふ、食らうがいい……


「飴食べる? 花の蜜で作ったから甘くて美味しいよ」


「「食べる!!」」


 よしよし、さすが対子供最終兵器。コロコロ飴転がして夢中だね。

 本当は僕とティスのおやつのつもりで妖精の花畑を出発する前に作ったけど結果オーライだ。



「僕はメルミーツェで、こっちの妖精族のお姉ちゃんはティスタニアだよ。君たちの名前聞いてもいい?」


「オーリ!」「ヴィーだよ!」


 フワっとした髪の毛の男の子がオーリで、さらさらのセミロングの女の子がヴィーね。

 顔がそっくりだから双子だよね?

 犬耳にふわふわのしっぽ、これが犬人族か。

 茶色に白いメッシュの髪……犬種はシェルティとかかな?


 そんなことを考えているとティスが口を子供たちに近づく。



「ねぇ、どうして妖精族(あたしたち)をそんなに怖がるのかしら?」


 そうそれ!僕も気になってた!


「ぴぃ!! ……よ、妖精族は悪い子を森に迷わせて」「食べちゃうんでしょ??」


「ティス……そんなことするの?」


「しないわよ! だから迷い込んだ人で警戒する人がいたのね……

オーリ、ヴィー、いーい? あたしたちは普段は木の実や蜜を食べてるの」


「それにオーリとヴィーより小さいティスが二人を食べられないと思うよ? だから安心していいよ」


 すごい風評被害だね、ダフネリアが聞いたら魔法を撃ち込まれそうだ。

 どうしてそんな話になってるんだろう?童話とかにありそうなテーマではあるけど悪意を感じる……



「あなたたちはどうして魔獣に追われてたの?」


「アド兄ちゃんと狩りをしてたらおっきい牛が2頭出てきたんだ」

「アド兄ちゃんが逃げろって言ったからオーリと逃げてきたの」


 え……2頭!?

 じゃあこの子たちがいう「アド兄ちゃん」はもう1頭に襲われてるってことだよね?



「それってまずくない? ティス、もう一人を助けにいこう!」


 間に合うか?二人を助けてもう一人を死なせるとか寝覚め悪すぎる。

 でもどうしてこの子たち落ち着いてるんだろ?



 ――おいっ!!



 不意に背後から声がした。

 振り向いた先には黒髪に褐色の肌、血の付いたマチェットをこちらに向ける犬人族の青年。



「誰か知らねぇけど、そいつらから離れろよ!!」


 ガラ悪いし血だらけの刃物向けられるとか怖いんだけど……

 でも犬人族だし、この子たちの知り合いかもしれないから一応確認しようか。



「僕も君のこと知らないんだけど? 

素性も分からない人に保護した子たちから離れろとか言われても困るよ」


 もし敵対的なら気は引けるけどこの子たちを追いかけられないように足を撃とう。

 きっと近くにこの子たちの集落があるはずだから逃がして僕はもう一人の子を助けに行く。



「「アド兄ちゃん!!」」


「は? え?」


 犬人族の子供たちがガラの悪い男に駆け寄っていく。



「えっと……キミがアド兄ちゃん? 魔獣に襲われたってこの子たちに聞いたんだけど?」


「あぁ、2頭いたけど1頭は倒した。

でももう1頭がこいつらを逃がした方に抜けちまって……

だから急いで追いかけてきたんだ。

それで……さっき保護したって言ってたけど、あんたは誰だ?」


「メルミーつぁんだよ!」「おっきい牛から助けてくれたの!」


 オーリ……「とっつぁん」みたいな呼び間違えはしないで欲しい。

 中身的には正解かもしれないけど何だか心に刺さる。



「メルミーツェだよ、たまたまこの子たちが追われてたから助けたんだ」


「そっか、俺はアドリアだ。こいつら助けてくれてありがとな。

魔獣が抜けたときはマジで焦ったぜ。それに……ごめんなお前ら、でも無事で良かった」


 へぇ、さっきはガラ悪い(やから)に見えたけど、子供をなでる姿は「お兄ちゃん」だね。

 威圧的だったのもこの子らを心配していたからか。


「ねぇ、そろそろ日が暮れるわよ。集落は近いの?」


「……ッ!! 妖精族だっ! 逃げるぞお前ら!!」


 うーん、その(くだり)さっき見たね。

 ティスも怒ってる怒ってる……



「紹介遅れてごめんね、この子はティスタニア、僕の仲間だよ。

オーリとヴィーにもさっき話したけど妖精族は他種族を襲ったりしないよ」


「妖精族の噂話はさっき聞いたわ。腹立つくらいデタラメよ!」


 アドリアたちの集落で魔石の認識を調べようと思ったけど、

 ティスを見たらみんなパニックになるかな?


 前途多難かもしれないねalmA。

 僕は浮かぶ多面体を子供たちと一緒になでる。



【アドリア イメージ】

挿絵(By みてみん)

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